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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
続・宝珠争奪編 第一章
334/817

てらくまさん

 日曜の昼下がり。

 (てら)原田(はらだ)修蔵(しゅうぞう)は五歳の息子と三歳の娘を連れて公園に来ていた。空の気持ちよく晴れた、出かけ日和だった。公園の中心にある銀杏の木の葉もリズミカルに揺れている。寺原田の容姿は、よく熊に例えられる。それも、リアルな熊ではなく、ゆるキャラやアニメのキャラクターにいそうな熊だ。

 ぽよよんとした外見は会う人間を和ませ、子供相手なら尚更、効果は抜群だ。近所でも寺原田の存在は良い意味で知れ渡っていて、今日も、寺原田の姿を見た他の子供たちが、わっと歓声を上げて駆け寄った。保護者である母親たちも、すっかり寺原田を信頼して、その様子を微笑ましく見ている。

 会社の健康診断ではコレステロール値が高いと注意されたが、本人は余り気にせず、食べたい物を食べ、飲みたい物を飲んでいる。かくして熊さんの如き風貌の出来上がりという訳だ。

「てらくまさん、てらくまさん! 飛行機やってー」

「てらくまさん、肩に乗せて!」

 子供たちは寺原田のことを通称「てらくまさん」と呼んで親しんでいる。面白くないのは彼の子供たちで、父親を取られかねない状況に、嫉妬の炎を燃やす。

「パパ、ブランコに乗りたいの!」

「僕、鉄棒」

 娘の美知子(みちこ)は寺原田を「パパ」と強調することで、他の子たちを牽制しようとしている。寺原田は頭を掻きながら、ひとまず娘のリクエストを受けることとした。

 因みに寺原田の妻は本日、ママ友たちとランチである。仕事が多忙な寺原田は、平日、子供たちのことや家事、ご近所付き合いなどの一切合切を妻に任せてしまっている。たまの息抜きは必要だと、夫としても思うのだ。

 気づくといつの間によじ登ったのか、肩に乗せてと言っていた子が、ちょこんと寺原田の肩に座っている。これはもう、熊と言うより大樹だ。ふと脳裏をよぎるのが、職場の曲者揃いの部下たちのことだ。あいつらにもこんな可愛い時期があったのかなあと目を細くする。


 寺原田修蔵・三十八歳、肩書・かたたとらコーポレーション庶務課課長




近所の梅が、見頃です。

特に枝垂れが風情があって好きです。

春が近いことを「春隣はるどなり」と言うそうですが、

きっと今が春隣なのでしょうね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] かたたとらコーポレーションはキャラ層が厚そうですね(^^)
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