泣く子
聖はことから詳細を聴き、翌日の内にはその内容を音ノ瀬一族全てに行き渡らせた。可及的速やかに宝珠を収集せよという、本家の意向に基づいた副つ家の命を、危機感を以て知らしめた。当主の寿命に猶予がないと知った一族の人間は皆、呆然とし、次には一様に宝珠の存在を求めて動いた。ここまで大規模にした話を、楓に隠し通せる筈もなく、楓はひどく動揺して泣きじゃくった。
「いや、ことさん、そんなの嫌だ」
「楓さん、大丈夫。今すぐという話でもありませんし、宝珠が集まれば解決する問題です」
私は泣く楓を抱き締めた。楓はいやいやと言うように頭を振る。
「どこにも行かないで、私を置いて逝かないで」
「行きません。私も全力を尽くします。私はね、楓さん。成人した貴方や、花嫁姿の貴方、そしてお母さんになった貴方を見るのが楽しみなんですよ」
それは私の本気のコトノハだった。
これまではどこかしら悠長だった宝珠集めに、雅常の言葉を得ることで本腰が入った。聖もだが、今、私の腕の中で泣き喚くこの子を早々に残して逝くことは出来ない。
この報せの風を恭司も隼太も聴いた。
恭司は何としても、早急に宝珠を集めなければと思った。彼には今にも泣き続ける楓の姿が目に浮かぶようだった。彼女にはことが必要だ。そして、口惜しいことだが楓は恭司よりことをより痛切に愛している。接していれば、そのくらい造作もなく解ることだった。
「面白くなってきたな」
隼太の声は愉悦を孕み、今ばかりは恭司の神経を逆撫でした。
「だがあの女が生きているほうがより面白い。宝珠が百八つか。少なくない数だが集まれば良いな」
他人事のように言いながら珍しく日本酒を飲む隼太を、恭司は正面から見据えた。
「隼太。そう思うなら、俺たちが集めた宝珠を、音ノ瀬ことに譲渡することは出来ないのか。もう、相当数、溜まっている筈だ」
隼太が恭司を見る。ふわ、とした視線だった。こういう時の隼太の本心を、恭司は測れない。
「俺は他力本願は好きじゃない。お前にしろ、音ノ瀬にしろ。恭司。俺と交渉したいならそれなりのカードを揃えてからにしろ。お前にそれが出来るものならな」
水木楓が大事だろう?と隼太はこれも他人事のように告げた。
今日は寒い一日でしたね。
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