営業は足で稼ぐ
恭司は隼太の家に住まいながら、秀一郎の会社で見習いをするという、奇妙とも言える生活をしていた。日曜日である今日、珍しく隼太が寛いで雑誌などをめくり、大海は買い出しに行って留守だった。
そしてチャイムの音に反応、応対するのは必然的に恭司の役割となる。ドアスコープを覗き、恭司は軽く眉根を寄せた。一考の後、ドアを開ける。
「どうもー。かたたとらコーポレーション、庶務課のエース・岡田でっす!」
「……和久です」
「……どうも。間に合ってますそれじゃあさようなら」
「待って待って待って、ちょおーっと待って! 何、コトノハ使いってみんなこんな感じなの?」
「何しに来たんだ?」
恭司は岡田のテンションに早くもげんなりしつつ尋ねた。それはだいぶ、労力の要ることだった。
「うちのことはもうご存じでしょ? 手を組みません? 一緒に宝珠を集めよー。おー」
「おい隼太。面倒臭いから代われ。俺、このテンション無理」
恭司が振り向いて一人悠然と雑誌を眺めている隼太に言うと、笑みを含んだ声が返って来た。
「俺たちはもう相当数の宝珠を集めている。お宅らと手を組むメリットは何だ? 他に狙うところがあるんじゃないか? 庶務課のエース君」
「いやー、慧眼、慧眼。ぶっちゃけて言うとですね。うちの戦力を削がずコトノハ使いはコトノハ使い同士でやり合っていただけたなら非常に助かるなあと」
くく、と隼太が笑う。
「正直な奴だ。お前、そんな風だが相当、戦るだろう。横の小さいほうもだ。惜しむ必要性はないと思うがな。実際問題、俺もあの女たちの相手は骨だ」
「あ、音ノ瀬ことさん! 美人ですよねー、しかもこう、凛として。俺、結構タイプだなあ」
「岡田。また脱線してるし、彼女は人妻だ」
「人妻という響きの甘美な背徳感よ……」
「おい、そっちのちっさいほう。ユニークな相棒だな。苦労するだろう」
「する。そして俺の名前は和久だ。和久陽一」
「岡田に和久か。憶えておこう。まあ漁夫の利を狙うのは止めておくことだな。そして、お前らが俺の行動の邪魔になると判断した場合には、容赦しないということも、心に留めておけ」
「やだ和久君、あたし怖い!」
「「「気持ち悪い」」」
岡田の作った女声に、居合わせた一同は皆、拒絶反応を示した。
しかし隼太も恭司も、この一見おちゃらけた二人組の高いポテンシャルを測ることは忘れなかった。
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寒さの峠を越したように思います。
もう少しの辛抱ですね。




