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コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
宝珠争奪編 第二章
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落日

 桜はぼう、と暮れる空を見ていた。縁側の手摺りに掴まり、軽く身を乗り出している。右手のすぐ横には緑王丸がいる。緑王丸は式神であり、通常の動物とは異なる。初めて思い描いた式神が、翼を持っていたことに桜は驚き、得心し、ほんの少しばかり嫉妬した。自分には持たないものを持つ。

「腑抜けているな、桜」

「……昴。宝珠を手に入れたの?」

「ああ。隼太と組むと捗る」

 桜は柳眉をひそめた。彼女は音ノ瀬隼太を今一つ信用していなかった。暮れかかる空が御伽(おとぎ)(ばなし)のような桃色に染まっている。その下で、兄から聴く隼太の名前はどこか不吉とさえ思えた。

「あんまりあの人を信用しないほうが良いわ、兄さん」

「信用はしちゃいないよ。利用してるのさ」

 違う。

 利用されているのは隼太ではなく昴だ。勘の良い兄がそのことにまるで気づかない。警鐘を鳴らしても無駄と悟った桜は、緑王丸の咽喉を撫でた。昴が物欲しそうな目で緑王丸を見る。昴には緑王丸程、強力な式神はいない。麒麟には水草という少女の姿の式神がいる。昴の劣等感はそのあたりにも兆している。

「今度、隼太さんと行く時は私も連れて行って」

「良いけど。危ないぜ」

「平気。緑王丸がいるし、守ってくれるでしょう、昴」

「緑王丸の次っていうのが気に喰わないけどな」

 言外に承知した昴は照れ隠しか落ちかかる黄金の珠に視線を逸らした。

「なあ、桜。俺は、菅谷は、今が隆盛の時な気がする」

「……」

「感じるんだ、最近。親父の代、いや、それより前から。菅谷の家は、落日に向けて突き進んでいる気がする」

 桜は内心、驚いていた。それは、桜自身感じるところだったからだ。

 栄枯盛衰。隆盛という絵物語はもう限界で、細い糸がギリギリで保っている。糸は容易く切れるだろう。切れれば日は落ちるだろう。



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いつもお読みくださりありがとうございます。

めでたさのない内容となりましたが、皆さまが迎える新たな年が、

幸いのコトノハで満ちているよう祈念いたします。

震える雫が、それに反射する光が、吹く風が、あらゆる優しいものがあなたを包んでくれますように。

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