表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コトノハ薬局  作者: 九藤 朋
風姿花伝編 第四章
246/817

赤に染まって蹲る

 翌週、私は聖と街の東北にある児童公園に出かけた。秀一郎と俊介は仕事で来られない。麒麟は南に赴いた。まあ、余りぞろぞろ集まっても宝珠収得の利になるとは限らない。聖はTシャツにジーンズを穿き物差しを持ち、私は襟元に青から紫のグラデーションのある刺繍の施されたブラウスに、水色のスラックス。

 蒼天に向かって吹き上げる噴水の水飛沫(みずしぶき)がきらきらと光り、水滴が硝子の欠片のようだ。

 平日の午前中ということもあり、まだ乳幼児の子供を連れた母親たちが集い、ちらちら私たちを見ている。私が柔和な微笑みを向けると、ほっとした顔をしてまた世間話に花を咲かせている。人の心を解すことは、自らの身を守る行為にも繋がる。つまりは異端視されない為の――――――――。

「確かに、宝珠の気配が強いですね」

「……」

 聖の言葉に無言で頷き、私は噴水の横にある把手(とって)のついた鉄扉(てっぴ)を見ていた。あれを開けて中に入るには、お母さん方が去るのを待つ必要がある。私は聖に目線で促し、ベンチに並んで座った。

 女性陣が去るまで、そう時間はかからなかった。まだ幼い子供連れだ。外に出ているにも限度がある。

 私たちは噴水横の鉄扉に寄った。鍵が掛かり、ご丁寧に把手には鎖まで巻いてある。

「聖さん、開けられますか」

 聖が試すが、無言で首を振る。コトノハは命宿るものにのみ、効果を発揮する。その筈だった。

(かい)

 余り何度も使える手ではないが、仮初の命を対象物に与え、コトノハを吹き込む。私が編み出した技法だ。

 聖が私を見る目には畏怖も嫌悪もない。ほんの少しの気遣いを除けばいつもの紅玉だ。だから私は、平静に息をしていられる。ガコン、と鉄扉を開けると、中に螺旋状の階段がある。聖がこんなこともあろうかと、ジーンズの尻ポケットに差し込んできていたペンライトを取り出す。先に彼が降りる。この円筒状の空間の空気は濁りが少ない。恐らくは宝珠の影響だろうと思われる。……下に降りる程、宝珠の気配が強く、濃くなる。会話が反響する。ここは何の為に作られたのだろう。私と聖は下まで降り切って息を呑んだ。


 そこには血に濡れたナイフを持つ隼太と、恭司。そして太古の恐竜にも似た雄々しい一頭の龍が(うずくま)っていた。



ブクマ、評価、ご感想など頂けると励みになります。

いつも、ご愛顧に助けられております。

コトノハがあなたの心に添いますように。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ