赤に染まって蹲る
翌週、私は聖と街の東北にある児童公園に出かけた。秀一郎と俊介は仕事で来られない。麒麟は南に赴いた。まあ、余りぞろぞろ集まっても宝珠収得の利になるとは限らない。聖はTシャツにジーンズを穿き物差しを持ち、私は襟元に青から紫のグラデーションのある刺繍の施されたブラウスに、水色のスラックス。
蒼天に向かって吹き上げる噴水の水飛沫がきらきらと光り、水滴が硝子の欠片のようだ。
平日の午前中ということもあり、まだ乳幼児の子供を連れた母親たちが集い、ちらちら私たちを見ている。私が柔和な微笑みを向けると、ほっとした顔をしてまた世間話に花を咲かせている。人の心を解すことは、自らの身を守る行為にも繋がる。つまりは異端視されない為の――――――――。
「確かに、宝珠の気配が強いですね」
「……」
聖の言葉に無言で頷き、私は噴水の横にある把手のついた鉄扉を見ていた。あれを開けて中に入るには、お母さん方が去るのを待つ必要がある。私は聖に目線で促し、ベンチに並んで座った。
女性陣が去るまで、そう時間はかからなかった。まだ幼い子供連れだ。外に出ているにも限度がある。
私たちは噴水横の鉄扉に寄った。鍵が掛かり、ご丁寧に把手には鎖まで巻いてある。
「聖さん、開けられますか」
聖が試すが、無言で首を振る。コトノハは命宿るものにのみ、効果を発揮する。その筈だった。
「開」
余り何度も使える手ではないが、仮初の命を対象物に与え、コトノハを吹き込む。私が編み出した技法だ。
聖が私を見る目には畏怖も嫌悪もない。ほんの少しの気遣いを除けばいつもの紅玉だ。だから私は、平静に息をしていられる。ガコン、と鉄扉を開けると、中に螺旋状の階段がある。聖がこんなこともあろうかと、ジーンズの尻ポケットに差し込んできていたペンライトを取り出す。先に彼が降りる。この円筒状の空間の空気は濁りが少ない。恐らくは宝珠の影響だろうと思われる。……下に降りる程、宝珠の気配が強く、濃くなる。会話が反響する。ここは何の為に作られたのだろう。私と聖は下まで降り切って息を呑んだ。
そこには血に濡れたナイフを持つ隼太と、恭司。そして太古の恐竜にも似た雄々しい一頭の龍が蹲っていた。
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コトノハがあなたの心に添いますように。




