真っ白に
楓、私、聖の順に風呂を済ませ、私は楓を寝かしつけた。楓も隼太の話を聴きたいようだったが、もう遅いからと説き伏せて就寝させた。本当は、私は私の過去の過ちを楓に知られたくなかったのかもしれない。打算だ。隼太は風呂には入らなかった。相変わらず紫陽花色のコートを着たまま、タオルで軽く拭いただけで済ませた。それが何とも彼らしく、隼太はきっとこれからも変わらないのだろうと思えた。風呂から上がった私たちは、私の淹れた桜茶を飲みつつ隼太の話を待った。
「半妖にも清濁があるのはお前らも知っているだろう。今日、俺たちが遭ったのは清のほうだ。特殊な力で人を癒す術を持つ」
「君がそれを探し求めているのはなぜだい?」
隼太がにやりと笑う。
「持っていると色々と重宝でな。取引に非常に役立つ」
「私の業にこれらが作用するのですか」
座卓の上にはとろりとした真珠色の珠が複数、置かれている。
雨に濡れたそれらは一層艶やかだ。
「今回は半々で良いだろう。次からは自力でああした半妖の類を捜すんだな」
「それでは分が合わない」
「不服か? 鬼兎。いつかの仕切り直しをしても、俺は一向に構わんが」
「解りました。半分、頂くことで結構です」
「こと様」
「御当主様はどこかの兎と違って聞き分けが良いな。――――可愛いものだ」
戯言を口にして目を眇める隼太は艶やかな色気があった。
私はどこまでも聖を挑発する隼太を持て余してやれやれと思う。基本、聖は常に沈着冷静で感情を露わにしない。だが、そのアキレス腱が私である。そこを巧みに突いてくるあたり、隼太の観察眼である。
本当に。本当に、それが叶うなら。
私は天井の電気を眺めた。花の膨らむような和紙で出来た電気は、生成と黒の陰影をつけて趣がある。私は宝珠の一つを手に取った。
あの時、聖を喪ったと思った。
それは私の生においてあってはならないことだった。だから私はきつく戒められていた禁呪に手を出した。しかしその代償は、思った以上に大きかった。そして聖にも苦痛を強いた。
「隼太さん」
「何だ」
「ありがとうございます」
「……お前、生きていて苦しくはないか。お前は俺を憐れむが、俺にはお前のほうが哀れと見えるぞ」
私は微苦笑した。そうかもしれない。不器用な生き方をしている。
雷鳴がまた轟いた。真っ白に光る。
真っ白に。
真っ白に光る隙をついて、隼太が私に身を寄せて耳元で囁いた。
「俺が連れ出してやろうか」




