茶会は踊る
どうやら一服、盛られたらしい。
気付けば私は闇の中にいた。
音ノ瀬の闇――――嘗て入ったことのある、矢倉の御舘の蔵の中だ。
ぐるりを見渡せば日本刀や槍、弓矢などが整然と並べられている。私がここに踏み入った以前には無かった最新式の拳銃やクロスボウなどまである。宗吾は戦でも起こす積りだろうか。刀や槍などは公の許可を得ているかもしれないが、拳銃の所持に至っては法に触れているのではないだろうか。
宗吾。
私をこの蔵の中に飛ばすことによって、訴えたいものがあったのか。
長らく音ノ瀬の暗部を引き受けてきた功績を、私に認めさせたいのか。
あの男の中にこそ、闇がある。
けれどそれも、音ノ瀬の一部。培ってきた業なのだ。なぜならその闇は、音ノ瀬を母胎に生まれたのだから。
内側から蔵の扉を開けようとしたけれど、頑として動かない。予想は出来ていた。
ここまでして当主の座に拘るとは、尋常ではない。
怒りや憤りよりも憐れみが勝った。
ともあれ、今の私に出来るのは救出を待つだけだ。
呼び鈴を鳴らし、出てきた使用人と思しき男をコトノハで押し退けて、恭司は硝子が割れる音がした場所を目指した。
辿り着いた応接間には、拳銃を構えた隼太。今までも何度か見てきた構図だ。その度に恭司は静観してきたが、今回ばかりはそうも行かない。
聖と秀一郎、宗吾、カレン、そして楓が恭司を見ている。
「壁!」
三発、連続して発砲した隼太の弾は、聖の処方したコトノハに阻まれ落下する。
考えるより先に身体が動いていた。
恭司は宗吾を庇う聖の前に出て、両腕を広げて立ちはだかった。
隼太の表情は変わらない。
「そこを退け、恭司」
「お前が銃を下ろしたらな。ガキたちの前で人殺しする積りか」
「道徳のお時間か? いつの間にそんなに良い子になった?」
「こんなことする必要ないだろうが」
「あるからやっている」
隼太と恭司の二人が遣り取りしている間、聖と秀一郎は、隼太を止めるコトノハを処方する機会を窺っていた。
「音ノ瀬宗吾は二重に謀反の罪を犯した」
「二重?」
隼太の冷徹な声に聖が怪訝に訊き返す。
隼太がそんな聖と秀一郎、そしてカレン、最後に宗吾を見た。最後の一瞥には氷の冷たさが加わった。
「先代音ノ瀬当主たちがウサギ島に向かう情報を他組織に洩らしたのはこいつだ」
一瞬、静寂が応接間に満ちた。誰もが隼太のコトノハを咀嚼するまでに時を要したのだ。




