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ダブル・サイド  作者: 四宮 皇季
第四章 トワ、ダンジョンで出会い、攻略する
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6話 決着! 象の人獣!! 前編

 6ヶ月ほど更新のなかった、四宮です。遅くなって申し訳ありません!

 一応、掲載当初の予定であった区切りまで、あと2話くらいでしょうか?


 お待たせしてばかりで申し訳ございませんが、最後までお付き合いいただければ幸いです。


 期間が延びすぎてしまったため、内容に違和感があるかもしれません。申し訳ありません。

 あるダンジョンの中を、高速で動く影があった。その影は上下左右にある壁を踏みしめながら、光源の少ない奥地に向かって、駆け抜けていた。


「──たっく、急ぎ過ぎたな……」


 その影の主は、少し苛立ち気で呟く。このダンジョンに来たのは、2日前でまだダンジョンについては詳しくなかったことが、ここで悪い方に働いた。


転移装置(ポータル)をどうやって使うのか、聞いてなかったのは大失敗だ!!」


 その駆け抜ける影の主は、再度ダンジョンに潜ることになったトワの声であった。その速度は以前に比して速く、最早"超速"と言っても良いのかもしれない。

 以前のように、魔力を糸のように伸ばし、先手必勝で切り刻んでゆく。このようなことをダンジョン外で行ったら、バラバラ死体があちらこちらに飛散している状況になってしまうだろう。


「やっと20階か……」


 その声音は、疲れよりも飽きが色濃く感じる。同じダンジョンなので駆け抜けてくることに対する、爽快感はあっても"達成感"がない為である。


 ヒュン──


 軽い音が空気を斬る。トンっと地面に足を着け、階下への階段をトワは見つめる。

 そんな彼の周囲には、光の粒子が飛び交っていた。先ほどからここにいた、モンスターを十数体殺したからだ。


 キラン!


 粒子の消え去ったあとに、光る何かに気付いた。それは何処にでもあるような、ごく普通の──装飾すらないので武骨と言ってもいいのかもしれない。


 トワは、クランドールから貰った『神眼』の能力を使ってみた。

 内容を確認したトワの表情は優れない。



 ※王位継承者の短剣・陽


 バクードの兄、バナンに当時の国王が与えたもの。



 こんな内容を見せられて、笑顔を浮かべるような奴はいないだろう。トワの表情は苦々しいく、大きな溜め息をつく。

 獲得した短剣は"重要参考物"として大事に保管することにした。


「(──しかし、何故ここに短剣があるんだ?)」


 その疑問に答えてくれる人物はいない。携帯電話のように、遠方と会話できる『遠話の魔導器』でもあれば楽なんだが……そう思うことしか出来なかった。

 もしかしたら、クオンならそういった手段()の方法を産み出しているいとような気がするので、次の報告会で聞いてみようと思っている。


 思考を通信機から、入手したばかりの短剣に切り替える。基本的には迷宮(ダンジョン)内で死んだとき、その肉体及び、所持品はダンジョンに取り込まれてしまう。

 上記のような現象は、ダンジョンの成長の為には必要ものであるとクオンから聞いている。ただ、次の状況のどちらかで意味合いが変わってしまうらしい。


 1つ目が『ダンジョンマスターがいる場合』だ。このときに言っている"ダンジョンマスター"は人型のモノを指す。これを【変異型ダンジョン】と呼ぶ。


 2つ目が『ダンジョンマスターがいない場合』だ。人型以外の姿であり、"ダンジョンボス"という表現になる。これを【発生型】もしくは【自然型ダンジョン】と呼ぶ。


 このダンジョンが前者の場合は、今回の『短剣出現』は人為的なモノになる。しかしながら、このダンジョンのトラップ関係や部屋の配置方法などに、人間らしさがないので後者の方になる。

 あの恐竜モドキのステータスの高さと、自身に対する誇りの強さから、ダンジョンボスで間違いはないからだ。

 そう言うと、30階層のダンジョンは「浅いのではないか?」と思うだろう。でも、このダンジョンは"マスター"がいない。マスターが支配していないダンジョンの成長は非常に緩やかで、『10年につき、1階層づつ増える』とクオンから教わった。

 ベル様から聞いた話では、このダンジョンは出現してから250年近く経つらしい。先程の説明と食い違っていると思うだろうが、ダンジョンには病気と同じように実は、『潜伏期間』と言うものがある。

 自然型ダンジョンは共通して、50年の潜伏期間が存在する。このことは、トワとクオンしか知らない。説明もしにくいので、話す気がないと言うのが真実である。


 ベル様の話では、ダンジョンを区別する規準があるらしい。『トワ君! ダンジョンの区別は、"魔力(マナ)溜まり"の増減から行っているのだよ! (*´∀`)ノ』と言い、真っ直ぐな猫背を反らしていた。

 まあ、そんなことは関係ない。どちらのダンジョンでも、攻略しないと世界間バランスが崩れたままになるからだ。

 そんなことを考えている内に、目的の階層に到着した。


「やっと、到着か……」


 そこまで汗をかいてはいないのだが、手の甲で拭う真似をしてしまう。完全にクセだ。

 トワは"勘違い少女"を閉じ込めた部屋が何処なのか、周囲を見回し確認するのだがわからなかった。周囲の様子が似ているからだ。いや、言い訳ではない!!


「面倒だが、手前の扉から確認していくか……」


 肩を落としながら呟く。


 延々とダンジョン深くに、バタンバタンと扉を開く音と、グギャァ! グギャァ!と悲鳴のような声も響いていた。

 どれくらいの扉を開けたのだろうか? 数えてはいないが、トワの手の指で2周分は越えているだろう。最下層に抜ける階段手前の扉を開けたとき、室内から異臭がした。

 その臭いは、【アンモニア】というモノであった。平たく言うなら"おしっこ"である。

 部屋の片隅に、蠢く影がある。その動きは、布団にくるまりイモムシのような動きに近い。トワの記憶には残っていないのだが、その物体が何かを認識したとき、『そういえば、簀巻きにしたっけ?』と思い出したくらいだ。ある意味酷いヤツである。


「──うぅ……。汚されるのね……」


 という独り言が聞こえてきた。軽く無視を決めたトワは、『どうすればこの女の"悲劇のヒロイン"精神をへし折れるのか』を真剣に考えていた。「どうして?」と聞かれたら、「うざいじゃん!」と返事が返ってきそうだ。

 トワがとった行動は、その女の周囲にレアドロップの【ゴブリンのゴールデンボール】を無言で並べていった。このドロップは、王公貴族には大変重宝されているアイテムである。

 色々な小説に出ているように、この世界でもゴブリンは女性を拐って孕ませる(同じような)存在であり、そこに種族としての壁はない。いわゆる、異世界版"強壮剤"の材料である。詳しい説明は省こう。


 王公貴族に重宝される薬の材料だが、たった1つだけ大きな欠点がある。『臭い』のだ! クサイと言ってもいい!!

 詳しいことは言えないが、神眼の鑑定からすると『クサヤ』レベルの臭いがしても不思議ではない。

 そんな物体を並べ終わったあと、音を立てないようにソッと離れる。この部屋は他と比べて広いのだが、角にいても臭いが届いてくる!!


「ヒグッ!……この臭いって……」


 トワの目の前の女は泣いていたようだ。そして、自分の置かれた状況を認識するに至ったらしい。正確に言うなら、この状況を演出しているのはトワであり、今も部屋の角で座り込んで眺めている。ある意味鬼畜の所業だろう。


 アイテムボックスから乾いた小枝を取り出すと火を起こして、次の準備を行い始めた。取り出すのは、スライムゼリーと小麦粉だ。

 最初に起こした火の上に、スライムゼリーを入れた小さな手持ち鍋をかざす。火が強すぎても、かざす時間が多すぎても直ぐに焦げてしまう。

 トワは細心の注意をしながら、木匙でかき混ぜていく。スライムゼリーの性質はそのまま"ゼリー"である。熱を加えると溶け、冷えると固まる。

 ある程度トロトロに溶けたら、今度は小麦粉を入れて、とろみを与えていく。あまり入れすぎると、簡単にダマになってしまうので少しづつ入れる。

 丁度いい塩梅になったら、その中にゴブリンの体液ヨダレを混ぜ臭い付けをする。人肌より少し高い、40度くらいまで冷ましたら完成だ。


 これが何かというと、ゴブリンの擬似(ピー)液である。調教のために使われている他は、意外であるが王公貴族にも人気がある。それはお風呂に入ったとき、体を洗うソープ替わりに使えば肌が艶々になるという効果があるからだ。


 重要なのはそれではなく、『調教のために使われている』という部分だ。これは女性を本能的に、状態異常である【恐慌・弱】というパニック状態に陥れる。

 こうなる背景には、小さい頃からの「刷り込み教育」があるのは理解できるだろう。『悪い女の子はゴブリンに拐われて、人じゃなくなる』という、昔から続く"お婆ちゃんの知恵"的なものだ。年間の被害者が各村1人はいる状況だからこそ、効果を発揮するのは皮肉というべきなのだろうか?


 準備が整ったら早速、○液を彼女に向けて引っ掻ける。ヒュン──ベトォっと何度も繰り返し、ぶっかける。最初の頃は分かっていなかったようだが、臭いを嗅いだ瞬間から震え出した。

 そんなことを続けていたら、気付いたときには数時間が過ぎていた。やりすぎである。内容に関しては、黙秘しかない。




 勘違い女の心を綺麗にへし折ったトワは、証拠の品についての確認と自己紹介をした。その時女が「私に恩を売って、からd……」と言った時点で、○液を再度ぶっかけてしまい、時間を無駄に過ごすことになった。迷惑な女である。(違う!)


 ダンジョンの外に出た2人は、特に女性の方が周囲に人目のないことに安堵していた。隣にいたトワにとっては、周囲の目より彼女の放つ異臭の方が問題だった。

 近くに川があったことを思い出したトワは、彼女を川に放り投げた。ちなみに、キチンと衣服は剥いである。意外だったのは、この世界の女性用下着は、地球のモノと変わりがないくらい上質なものであった。


 余談ではあるが男の下着は、【ステテコパンツ】【(ふんどし)】【ブーメランパンツ】【葉っぱ】というラインナップで、トワは『気違いしかいない!!』と内心思ったとか、思わなかったとか……。


 冷たい川の中に強制ダイブさせられた女性は、冷たさと全裸である状況に動くことが出来なくなってしまった。その為、トワに全身をその()で洗われた。

 当然のことのようにタオルを使うことはなく、素手にゴブリンの擬似○液の残りを取り、頭からつま先まで綺麗に掌で擦った。特に念入りに洗われたのは、粗相をした股間部であった。何度もイかされた女性は、息切れを起こしている。それでも綺麗になるまで続けたらトワは、鬼畜というより『悪魔』という方が正しいのかもしれない。

 ぐったりとした女性の体を、拭き逃しのないように念入りにタオルで拭いていく。ある場所は、何度拭いても濡れてしまうので、入念に拭き取る。

 拭き終わったときには、焚き火の近くに干していた衣服は乾いていたので、放置して風邪を引かれるのは不味いので、着替えさせる。結構面倒な服だったので、着替えさせるだけで30分近くかかってしまった。


 女性を見ると、意識を失ったまま戻らなかったので、背負って街まで歩くことにした。スタイル自体はとても良いので、背中に2つの膨らみが当たり潰れる。役得と思いながら歩き出す。

 街に着いたのは、夕陽が沈むちょっと前であった。門の近くには、私服姿のクロードがいた。待っていてくれたのだろうか?


「悪いな。待っていてくれたのか?」


「気にしないでくれ。私が落ち着かなかったから、この場にいるだけなんだ」


 そういいながら、照れ臭そうに頭をかくクロード。そんなクロードに苦笑を浮かべ、視線で合図を送るトワ。2人は肩を並べて、王城を目指して歩いた。


「……で、彼女はどうしたんだ?」


失禁して(やっちゃって)いたから、近くの川に放り投げて洗った」


 端的に話すトワに、苦笑を返すことしか出来ないクロード。城門に着く頃には日が沈み、周囲は茜色から闇に変わっていた。王城入ったら少し早足で、目的の部屋の前まで向かう。

 コンコンとクロードがノックすると、部屋の中から「入れ」との返答があった。クロードが扉を開けてくれたので先に入り、室内にいる人物に目を向ける。国王とベル様の2人が白いテーブルを挟んで談笑していた。


「国王、この娘で間違いない?」


「うむ。間違いなく、我が暗部の1人だ」


「トワ君。なんでルティ嬢は、君の背中で寝ているんだい?」


 トワの質問に髭を撫で答える国王と、背中にいる人物の状態を確認するベル様。隣で苦笑していたクロードが2人に説明する。トワは背負っていた女性を近くのソファーに寝かせると、彼女から聞いた内容を3人に話始めた。

 最初の頃は興味深く聞いていたのだが、話が進むにつれて表情は険しいものになっていく。話を進める中でトワは、ダンジョン内で見つけた短剣を見せるタイミングを伺っていた。丁度いい具合に話が止まった瞬間が生まれた。


「国王。見て欲しいモノがある……」


 そう言って、アイテムボックスから【王位継承者の短剣】を取り出した。出した当初は、何なのかを認識できていなかったのだろう。しかしその短剣の柄に、錆びて欠けた紋章があるのに気付いた国王は、トワに「何処でこれを!?」と視線を向けるのであった。


「……今から話すことは、実際にオレの目の前で起こったことだから、動転しないで欲しい」


 そいうってトワは、ダンジョンの中でドロップした(見つけた)ことを話すのだった。

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