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ダブル・サイド  作者: 四宮 皇季
第四章 トワ、ダンジョンで出会い、攻略する
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5話 わすれられていた者

 色々あり、遅くなりました。しばらくは、不定期更新になりそうですが、もうしばらくお付き合いください。

 トワの『縛って放置してきた』発言に、全員が息をのみ、場の空気が重くなった。その空気を払拭する為、銀狼族の少女を放置してきたトワに最初に声をかけたのは、国王であった。


「すまぬがのぅ、トワ殿にその娘を迎えに行って貰えんかの? 無論依頼としてだから、金も出す」


 国王はそう言うが、トワの顔は嫌そうである。

 苦い顔……そう表せば、優しいのだろう。全身から『嫌だ!』という空気を漂わせている。


「やだ。あんなナルシスト女と関わりを持ちたくない!」


「なるしすと?なんだそれは?」


 トワの一言にクロードが突っ込む。この世界にはない言葉らしい。


「──例えば、『俺カッコいいー!!』とか『俺(私)キレイ』……そんな風に『自己愛の激しい』人間の別称だ。国王の感じからだと、国の配下もしくは国王直属の間諜だろ?」


 その言葉に一番困った顔をしたのは、国王である。

 実際にその諜報員が当てはまっているからだ。


「確かにあんな性格だが、あやつには重要な役目を与えておる。

 トワ殿は象の人獣のカイゼルを知っているか?」


 面度くさがっていた為、この時点になって国王の言いたいことを感じ取れたのであった。


「国家転覆犯の象野郎ね。ヤッパリ、大量殺人くらいはしていた?」


 驚くも、気を取り直してトワを見つめる国王。その瞳には『疑念』の色があった。雰囲気が切り替わった国王に対し、トワは「やれやれ……」と肩をすくめた。


「ベル様から報告がないかな? マリスの迷宮が『魔物の暴走(スタンピート)』 が起きる手前だった──と?」


 国王はその立派なアゴヒゲを撫でると、トワに対する疑念を消し去った。この光景で一番説明を求めたかったのは、誰でもないリヴィエルナであった。


「ちょっ……父様もトワも何を言っているんだ!?」


「何って──状況確認」


 その場で頷くのは、国王・ベル様・クロードの3人にである。


「姉さん……少しは考えようよ……」


「我が娘ながら……」


「は~──」


 段々と辛辣になっていく、リヴィエルナに対する反応。ベル様に至っては、片手で顔を抑え「やれやれ……」と頭を振っている。

 リヴィエルナはいきなり、味方を失った。


「確認の意味も兼ねて、一つづついくぞ?

 最初に五年以上前から、マリスの迷宮で二十階層を『突破したもの』はいなかった。たぶん国王も、暗部とかから聞いてたんじゃないか?」


 トワはそんなリヴィエルナに苦笑し、話を聞いている国王に質問をする。(実は視線会話で、国王たちと意地悪をしただけです)


「聞いておった。三年前から、今回のようなに間諜を迷宮に送り込んで来た」


「それって、女じゃないか?」


 トワは不要に言葉を濁すことをせずに、話しの急所に突っ込んだ。その言葉に国王は片眉を上げ、小さな反応を返した。その反応を感じ取ったトワは、一つ深い溜め息をついた。


「ベル様は、コレが何だか解るよね?」


 そう言いトワが懐から取り出したのは、『2枚のカード』であった。それは誰の目から見ても身分証と分かり、そこのは『クリーナ』『ミリーヤ』と名前が、刻まれていた。それを見たベル様は黙って国王に渡す。


「トワ殿……これは──」


 ベル様から渡された、カードをみた瞬間、国王は目を見開いた。それもそのはずで、国王自身が選び、送り込んだ諜報員のものだったからだ。


「何処で手に入れたのだ? カードを持っているということは──」


 トワは国王から視線を逸らし、頭をかいている。言うしかないことが分かっていること故の、苦痛を感じられる。


「──ダンジョンの宝箱産(・ ・ ・)だ」


 トワの声音は先程までの勢いがない。いくら自分が無関係でも、『人が迷宮に喰われたら、どうにもならない』と、クオンから教えられている。


「迷宮の魔物はそれほど強い──そう言うことか?」


 それに関しては、トワは何とも言えない。

 実際のところ、ダンジョンボスだった『恐竜もどき』以外、雑魚と言って過言ではなかったのだ。


「悪いが俺にはマリスの迷宮(あそこ)の敵が強いとは思えないな……」


 顎を掻きながら、トワは判断に困っている。あの狼娘が追ってこれた以上、それほどモンスターは強くないのだろう。

 しかしそうなると、ダンジョンボスとの開きがすごく大きくなってしまう。

 ただトワ自身忘れているが、その女が29階層に到達出来たのは、トワが周辺のモンスターを駆逐したからである。


「それはクリアした、トワ殿だけだと思うがの──」


 国王様は小さな声で呟いた。無論、リヴィエルナ以外の耳にはキチンと届いている。


「そうか? 死ぬ気でなら、クロードでも移動くらいは出来ると思うぞ?」


 それの返答が小声ながら男性陣には届き、クロードの顔は驚愕に染まっている。「そんなことは自分には無理だ!」と顔に書いてある気がしたトワである。


「──取り合えず、その娘がいたら象の人獣を処罰(・ ・)出来るのか?」


 国王の「そうなる」という返事を聞いた以上、トワの行動は決まった。国王に一筆書いてもらったら、結構な時間が過ぎていた。


「明日の日の出と共に、ダンジョンに向かうから──昼くらいには、ベル様の屋敷に行くようにするよ」


 明日の予定が決まった面々は、各々の役目を果たすための行動に移る。無論トワが国王に「人獣を油断させよう」と、黒い笑顔で言ったのは確実であろう。

 『ライト文芸賞2MF』に応募してみたのですが、当然の事ながら落ちました。まだまだ未熟な作品故に、理解はしていたのですが……予想以上にダメージが大きかったです。

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