4話 国王に会おう
遅れてしまい申し訳ありません。
ベル様が王城に向かって、数時間……トワたちは昼食を食べている。
「トワはガイゼルたちをどう思っているんだ?」L
「?」
クロードが問いかけるが、トワにその辺の記憶がない。
「誰?」
この程度の存在だった。基本的にトワは頭がよく、記憶力も高い。実際に、ダンジョンマップを暗記したり、モンスターの弱点を見付けたり──そういうことに対する能力はあるが……。
「三日前までの『マリスの迷宮攻略筆頭』の名前だ。もしかして……覚えてないのか?」
「──ああ。確か国家犯罪者ね……」
クロードは何か危険な言葉が、聞こえたように感じた。しかしそのことに触れる前にベルフォート様が帰宅した連絡があった。
「ベル様どうだった?」
ベルフォート氏は黒く上質なスーツ?っぽいものを着ていた。
パッと見ズボンらしきものも履いていない。
「いや~トワ君の言っていた通り、ガイゼルたちが王城に詰め掛けていて、大変だったよ~ (;´д`)」
ベル様は参っているらしい。予想通りの展開に、呆れるトワであった。
「──で? 何を話していたんだい?」
トコトコ歩き近くの空いていたイスに腰を掛ける。
「国家犯罪者のこと──」
「──やっぱり……何か裏があるね?」
「ワシもそう思うよ。遠慮はいらない‼ 真実を話してくれないかな?」
二人に詰め寄られたた形のトワ。トワは、全員を集めてもらう。
この場に居るのはクーリッシュ家当主ベルフォート氏、クリシア夫人、リリステア嬢の三人に、クロード、リヴィエルナ嬢の計五人だ。
「──さて、何処から話すべきか……。クロードは覚えているか?俺がマリスの迷宮に向かったのが三日くらい前だったことを──」
「ああ、覚えている。わずか二日足らずで攻略するとは思わなっかたが──」
俺の問いかけに、クロードはそう答えた。
「本当なら、二~三年くらいかけるつもりだったんだが、迷宮内に入って感じたんだ。何て言うか──『時間がない』って、本能的に感じたんだよ」
その言葉に鋭い反応を見せたのは──ベル様だった。
「それはもしかして──魔物の暴走なのかい?」
それに頷く。クロードたちの疑問も分かったので、話を続ける。
「直感が語りかけてきたんだ! 時間的なものと、原因を──」
「──原因とは、なんだ?」
「冒険者の死亡による『ダンジョン内魔力の飽和』とでも言うか。もっと簡単にいうなら『水のこぼれそうなコップ』が分かりやすいだろう」
使っていたコップを皿の上に置き、中に水を流し込む。直ぐにコップ内は満タンになる。それを見た五人は頷いている。
「この今にも零れそうな状態──と言うわけだね?」
「そうだ。その原因に、例の人獣が関わっていたわけだ」
トワの言葉に、皆は息を飲む。
今まで英雄が一転、犯罪者になったのだ。
「だからトワ君はワシに『丁重にもてなす様に』言ったんだね?」
ベル様は理由を聞いて納得した。しかし、腑に落ちない点がある。どうやって、それを『知った』かだ。
「どうやって、トワ君はそこにたどり着いたんだい?」
貴族としては見過ごせない事なのだろう。
「まず第一に、過去……マリスの迷宮に潜った冒険者と、現存している冒険者の数が"変" だって気付いたんだ」
トワの言葉の指すものが解らないクロードたちである。
「そうだな……ここ十年で、マリスの迷宮に向かったのが冒険者は三〇〇人だ。その内生存しているのが六〇人くらいなんだ。
更に俺は資料を漁った── 明確な答えはなかったが、ある仮説が生まれた。
それは、象の人獣が現れたら時から、冒険者の行方不明が出始めたことだ。一番不明者が出たのは『五年前』ヤツが迷宮の二十階層をクリアしたときだ」
ベル様のミミはピン! と立っている。何かを思い出したのだろう。
「そう言えば五年前にそんなことがあった(´-ω-`)
そして、四年前に『現地調査』をしたけど原因が解らないから結局のところ、実力不足の死と判断をしたのだよ……」
ベル様は目に見えて、落ち込んでいる。当時の調査に加わっていたのだろうか?
「まず、カイゼルたちは『国家反逆者』として、コレに送ったとしてもそのあと『この国を救えるもの』がいなくなったことを住人が知ってしまう──」
クロードは右手を首筋に当て、無感情に『トン』と口にしている。元々ガイゼル?に対する好感度がない以上、そうなるだろう。
今もクロードを見たらリリステア嬢が──そう思い見た自分が甘かった!? 何故って! ポッとしているんだ恋は盲目だね(笑)
ベル様が何かを思い出した!
「そろそろ出発しよう! 遅れるのは不味いからね!」
ベル様以外のクーリッシュ家を残した面々は王城に向かう。
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来賓室に案内されるトワたち。非公式なものにしたから、この場に居るのはトワたち以外に国王・王妃・王女になる。
はっきり言って国王と王女は似ていない。赤の他人と呼べるくらいだ。
「ホホッ──お主がトワ殿だね? ワシはこの国の王、バクードだ。ベルより話は聞いているが、確認させて貰っても構わんかね?」
トワは懐からカードを出し、称号を表示させた。
「俺は、トワです。一応"六級冒険士"です」
トワの置いたカードを、ベル様が手にもち国王に渡す。渡されたバクード国王は一つ頷き、ベル様を介して俺に返した。
「王家の伝承にある通りだな。トワ殿を『マリスの迷宮攻略者』として、認めよう──」
国王はその白いアゴヒゲを撫でている。
「──そう言えば、トワ殿は迷宮で『銀狼の娘』を見かけなかったかの? あの迷宮内で、調べものをさせていたのだが──」
暫し考えたトワは、ある少女を思い出した。
「──わるい。そいつ鬱陶しかったから、二十九階層の小部屋に『縛って放置』してきた──」
悪気なく言い切るトワに、驚きを隠せない。
クロードは『仕方ないか』・リヴィエルナは『ある意味当然か』という顔をしている。
頭をポリポリかいているトワを見る国王は、朗らかに笑っていた。




