3話 トワは煩わしいのはキライ
短いですが、切りのよいところで、投稿致します。
マリスの迷宮をクリアしたトワは、静かに身を隠し、街に急ぎ帰った。道中にすれ違う冒険者はなく、静かに移動できた。
(「アテンドール──聞こえるか? 今一つの迷宮をクリアした!」)
暫く経ってアテンドールからの返事があった。
(「随分と早かったじゃないか。主のことだから、一年もしない内に攻略すると思っておったがな……」)
(「最初はそのつもりだったよ……。アテンドールはあの迷宮から、何か感じなかったか?」)
アテンドールは黙って答えない。その沈黙が答えであるように……。
(「…………やっぱりか──。薄々は感じていたけど、『魔物の暴走』はいつ起きてもおかしくない状況だったわけか──)」
(「そうじゃな……長く持っても、三ヶ月……そのくらいだろう」)
(「本来なら、一~二年かけて実力を持つに至った冒険者が攻略したと、するつもりだった。それが入ったらどうだ……。モンスター弱い! トラップもない! そんな迷宮なら簡単に進めるだろう?」)
「そんなに簡単なわけない‼」と言いたいアテンドールだが、トワが単騎でダンジョン攻略した為、言うに言えない状況だった。
トワがアテンドールと念話していると、街の門が見えてきた。
(「もう街に着いたから、念話は切るぞ? また落ち着いたら、連絡する」)
(「……わかった。くれぐれもダンジョンを舐めんでくれよ……」)
(「大丈夫だ! 流石に今回の攻略で、ソロプレイの面倒くささがわかったから……」)
そう言って、念話を切るトワ。面倒だったのはモンスターに対してではなく、魔石の回収に関してだ。
「(小説だと奴隷を連れて、ダンジョン攻略──とかあるけど……どうなんだ?)」
あの夜で自身の考え方を替えたトワは、奴隷に関してある程度寛容になってきている。ただ『酷使すること』に対する葛藤はもちろんある。
それなら自分で奴隷を使う際のルールを作れば、無体な扱いはしないだろう。トワはそう考えた。
そういうことなら、ベル様に任せておけばお膳立てをして貰えるのじゃないかと、トワは考え始めている。始めている。そんな自分に苦笑する。
「マリスの迷宮を攻略した、勇者様だ‼ さっさと通さないか‼」
門の方から怒鳴り声が聞こえてくる。ここから見る限りは、件の|
象の人獣らしい。こちらとしては、迷惑な話ではあるが──周囲の注意が向こうに向くなら、今のところは好都合だ。
周囲を見回すと、クロードを見つけたので近寄っていく。
「クロード、今帰ったぞ」
その声に過剰に反応を返したのは、ある意味当然なのだろう。
「──トワ!? これは……」
トワはクロードの口をふさいだ。騒ぎを大きくして、色々聞かれるのは現状不味い。クロードの口をふさいだのはトワにとって当然の行動である。
「──言いたいことはわかるが、今は静かにベル様の屋敷まで移動したいんだ!」
トワは小声で、クロードに話しかける。
「──わかった……ベルフォート様の屋敷で詳しいことは聞く」
納得していない感じのクロードだが、現在の状況から隠密に行動したほうがいいと、直感で感じていた。
クロードに入門の手続きをしてもらい、街中にはいる。
ベル様の屋敷に到着したトワは、近くにいたメイドに、ベル様への取り次ぎを頼むと、居間の方に移動した。
暫く待っていると、相変わらずのハイテンションでトワの前に現れた。
「いやぁ~トワ君! 街中で『ダンジョン攻略』の報が流れていたが、君が行ったのだろう‼ (^-^)/」
相変わらずのハイテンションにトワは苦笑する。
「──そうだ。証拠はコレだ!」
そう言ってベル様に身分証明書を渡す。もちろん見えるようにしたのは、称号の部分だけで、他の部分は見せていない。ベル様はカードに表示された『迷宮攻略者』の項目を見て、大層驚いていた。
「──ニャハハハハハ……本当にあるねぇ((((;゜Д゜)))」
ベル様は驚きのあまり、身体が震えている。トワにとってはどうでもいいので、状況の確認をする。
「これで、リヴィエルナ嬢の身柄は、俺預かりになるっんだよな?」
トワの言葉にベルフォートは顔を歪ませた……。
「──トワ君が表立って行動するなら、色々と手立てはあるのだが……トワ君は表立って歓迎を承け、この国のはじまりの英雄ににる気はないのだろ?」
「──ないな。そういう面倒なのは、勘弁してくれ!」
そんな事を話していると、クロードがリヴィエルナを連れて帰って来た。
「──トワ!? どういうことかせt……「すまないが、説明して欲しい‼」……」
リヴィエルナはクロードを押し退け、トワに食いかかった。クロードは壁の人になった。
「リヴィちゃん、コレを見るのだよ!」
ベル様がトワのカードを、リヴィエルナに渡す。それを見たリヴィエルナは崩れ落ち、床に座り込んだ。
「──私は……────」
感極まったのだろうか? 泣き出したリヴィエルナと、壁から這い出したクロードもカードを覗き込んだ。
クロードも目を伏せ、何か思い悩んでいるようだ──。
「トワ──頼む! 城に行って、ダンジョン攻略を父に……国王に、報告してくれないか?」
その言葉を聞いたトワの反応は、思わしいものではなかった。
「ベル様にも言ったが、俺は面倒事には関わりたくない……。
だから、そのままノコノコと王城に行って「我が配下に加えてやる‼ 感謝するがいい‼」 的なことを言ってくるバカがいたら、ボコボコにする自信がある」
そう言いトワはベル様を見る。
「──なるほど……そう言うことなのか。わかった、今すぐ王城に行って国王に、極秘に会うことが出来ないか聞いてこよう!
確実に面会をしてくれるね!?」
「わかっている。そこまで薄情なつもりはない。
ベル様、なるべく王族だけでの話の場を設けて欲しい」
「国王の護衛上、近衛兵が護衛に就くと思う。それくらいは、構わないね?」
「(近衛兵役に立たないと思うんだが……)」
トワの心の声は、ベル様には届かなかった。
「構わないぞ? ただ、騎士団長一人にしておいた方がいいな……(死体の量産なんかゴメンだし……)」
「? わかった。その様に国王に話してみよう」
「──あと、門前で大声で叫んでいたバカが、登城しているかもしれないから、身分証明書を確認した方がいい。
レベル五十位ないと三十階層のダンジョンボスを倒せないから……。見たからわかっていると思うけど、称号の確認はキチンとしといて。
コイツら、国家存亡の犯人だから……」
トワの言葉に唖然とする三人であった。国王との話し合いで、一連の騒動にケジメを着けたいと、トワは思っている。
今回の話が短くなってしまいました。
誤字・脱字がありましたら連絡をお願いいたします。
次回の更新予定は6月20日の予定です。




