7話 宝箱の中身とトラップ
GWが終わって一息つける様になりました。休みの日は寝て過ごしていました。
今回の話の中には少しだけ、Hなところがありますがそこまで酷くないつもりです。
俺はアッシュに宝箱の開錠を頼むことにした。
「罠があるかもしれないから、慎重に頼むぞ・・・」
自分の声が上擦っているのが分かる。今まで潜ったダンジョンでも宝箱はあったが、今回ほどの興奮はなかった。その原因の一つは”新生のダンジョン”だからだろう・・・。
この国にある他のダンジョンで出てくる宝箱には”中級どころか下級の武具すらでない状態”だからだ。この傾向は初心者ダンジョンに多く、登覇回数に比例してくる。
「分かっている・・・罠は”ある”前提で調べる・・・・・・」
アッシュの言葉にも緊張とそれを越える興奮が伺える。
「シリアはアッシュの3m後方で盾を構えてくれ。サーラにアリーはシリアの後ろでいざという時に動けるように待機、俺は後方の警戒をする・・・」
彼女たちが頷くのを見たら、アッシュに指示を出す。
アッシュか開錠を初めて5分が経つ。カチャカチャと金属音が無音の室内に響く。
「開いたぞ・・・・・・」
カチィっと音が鳴ってフタが開く・・・・・・。中に入っていたのは盾だった。
「盾か・・・?シリア、鑑定できるか?」
「見せてくれる?」
アッシュは慎重に宝箱から盾を取り出す。緊張した面もちで、シリアに渡し鑑定して貰う。
「ごめん・・・現状の私だと、きちんとした設備が必要になるわ・・・・・・。
呪いとかは無いようだと解ったのは、運が良かったのかしら?」
盾士のシリアに鑑定できないモノは、このチームのメンバーでは分からない。
「もしかすると・・・上級品かもしれないな・・・・・・。”呪い”は無いのだよな?悪いが装備してみてくれないか?」
「わかったわ。その代わりこの盾を貰ってもいいかしら?」
シリアはケインを見て言う。皆を見回したケインは、「キミしか使える者はいないだろ?」と了承した。他のメンバーにしても、共有装備でない以上はシリアに譲る気でいたのだ。
「ありがと。それじゃあ装備するわね?」
ウキウキしたシリアの顔は、装備した途端にヒクついた。
「皆ごめんなさい・・・。コレは、”潜在スキル”が3つも付いているものだわ・・・。もしかすると・・・”特級品”かもしれないわ・・・・・・」
装備したシリアの言葉に全員は驚いている。装備品の階級だが、下から普通・上級品・特級品・稀少品・固有品・固有稀少品となる。これ以上のモノがあるかは現在には伝わっていない。
「そうなのか!?”スペシャル”の階級の装備なんて上級冒険者でも1つ・2つが良いところだろ?」
アッシュの興奮は皆と同じだ。自分たちは中級者になったばかりで言うなれば”下級最上位”と言うことになる。
そんな自分達が一つだけとはいえ、スペシャル級の装備を入手したのだ。周囲からの妬み・嫉妬など要らない感情を買ってしまうこともありえる。そうならない為にも、この場できちんと話あうべきなのだろう。
「ケイン・・・この事を秘密に出来ると思う?」
シリアの震える声音に焦りを感じながらも、真剣な表情であることを口にする。
「所有者の固定化は行われているのだろ?・・・だったら答えは一つだ!”強くなる!!”それしか方法がないだろ」
ケインはシリアの瞳を見ながら、ハッキリと断言する。そんな彼らを、暗闇から覗く存在があった。
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Side:クオン
「ほう。この冒険者は”運”がいいな・・・」
クオンは彼らが、宝箱から出したアイテムを見てそう呟いた。あの宝箱は、面白半分で買った”ランダムボックス”である。どのような罠が仕掛けられていたかは分からないが、中身のアイテムは失敗作の一つである。
それが”良いもの”という評価に首をかしげる。
「アイテムの階級に関して、話してなかったな・・・」
クランドールの話によると、階級自体は”防具性能ではなく”付与されたスキル数”で階級が決まるらしい。
「そう言えばあの『堅牢の盾』には、スキルが3つ付与してあったっけ・・・?」
とそんなことをクオンは言っていた。実際のところ、その事をあまり気にしていない。
「どんなものを付与したのだ?」
「<重心安定> <身体硬化・微> <盾防御範囲上昇・微>の3つだったと思う」
そのことを聞いたクランドールは少し、目眩がしたように感じたそうだ。クオンにとっては”失敗作”でも、この世界の住人にとっては十分に、高価なモノになる。そんなクランドールとは対照的にクオンの顔は子供のように輝いていた。
「次の部屋に入ったら、奇襲を行う・・・・・・」
クオンの考えを理解したクランドールは、侵入者を写すディスプレイに意識を集中した。
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Side:冒険者
”スペシャル”かもしれない、盾を手にいてた俺たちは浮かれていたのだろう。後々考えるとその様に思ってしまう。
だが、そのおかげで彼らと出逢ったのは運命なのだろう。
「シリア、止まってくれ。此処から先には罠がかなりあるようだ・・・」
アッシュは緊張した面もちでシリアを止める。後続のサーラ・アリー・ケインが近づいてきた。
「どうした?罠か?」
ケインの質問にアッシュは頷く。
「逃げ場がないくらいにビッシリと仕掛けられている・・・・・・。連動型もあるように感じる」
「解除にどのくらいの時間が必要だ?」
ケインの言葉にアッシュは苦い顔をする。
「悪いが簡単には行きそうもない・・・。今までの罠と比べても数段厄介になっている」
アッシュの苦悩はメンバーに伝播した。各は緊張し、周囲を注意深く探る。それこそがクオンの仕掛けた罠だと知らずに・・・・・・。
「遺憾だが今回は此処までにして、撤退しようと思う・・・」
ケインは此処がターニングポイントだと判断した。その判断は間違いではないが、遅かったのは言うまでもない。
「「「賛成!!」」」
女性3人はケインの判断に即賛成した。この場で退くに退けないのはアッシュであった。盗賊に自分の力量不足で撤退することになるのだ。
それに今回の様に簡単に手に入らないアイテムを入手出来る可能性が在ることがアッシュの決断を鈍らせている。それが皆の”足を引っ張る”行為であり、盗賊の技能を教えてくれた先輩が口説く言っていた事である。
そんな事はクオンの知るところではないし、そうなるように”仕向けた”訳でもない。偶然に偶然が重なっただけである。
「アッシュ!!盗賊の大原則を思い出せ!!!」
ケインは有らん限りの大声を出した。危険な行為だと知りながらも、取らざるを得ない状況だったのだ。
「すまない皆・・・俺は我を失っていた・・・。ケイン・・・助かった」
こんな隙を逃すほどクオンは優しくない。
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Side:クオン
「愚かな男だ・・・。自身の力量との差を感じ取れないとは・・・・・・」
クオンは冷徹な瞳で盗賊のアッシュを見ていた。その瞳には温もりなどはない。クオンの感情は、自身の欲望の動作すら出来ないアッシュへの怒りがあった。
「クオンお主の気持ちは分かるが、その様に感情に飲み込まれては失敗するぞ」
クランドールの言葉に感情の高ぶりを落ち着かせ、冷静に状況の流れを見つめた。
「お主にしては感情的になっていたが、過去に何かあったのか?」
こういう時のクランドールに容赦はない。一呼吸置いて、クオンは過去にあったことを方って聞かせた。
「なるほど・・・そんなことがあったのか・・・・・・。それなら先程のお主の態度には納得がいく」
「その時は、暴走した奴を殺し、俺とトワの対応が間に合い阻止出来たが・・・一歩間違えれば、地球は”死の星”になっていただろう」
確かに、原因たる物体を産み出したのは当のクオンとトワである。そのことに危機感を勝手に持ち暴走したのは年配の、40くらいの人であった。
「その話は置いて、次の部屋で仕掛ける。待ちに待った”スライム湧く湧く君”の出番だ!精々楽しませてくれよ?」
その表情は正に”魔王”といえるモノだった。ちなみにクランドールも似たような顔をしていた・・・。
『この部屋に罠はないのか?』
『確認中だが、違和感とかはないな・・・』
ケインという男がアッシュと言う盗賊に確認を取っている。このアッシュと言う男にこのダンジョンの罠の見分けはつかないだろう。今まではワザと分かりやすくしていたのだから。
『ちょ!何もないなら早く進んでよ!』
シリアという女が叫んでいる。当然だろう。俺の指示ではないが、ゴブリンどもが投げているモノが原因だ。投げられているモノは当然”フン”だ。
「なあコアから産み出した奴らに”排泄機能”って付いていたのか?俺は”必要ないモノ”と認識していたのだが・・・」
「おかしいの・・・コアから産み出した奴らは”マナ”で肉体の維持を行っていたはずなのだが?」
クランドールにとっても現状はおかしいらしい・・・・・・。けど、見ている分には面白いから放っておこうか?
『扉がついているのね!?ラッキーじゃない!!』
混乱?のあまり異変に気付いていないらしい。遠慮なく”スイッチ”を押す。
『ガコン!!』
盾持ちの女性のシリアが扉を閉めると同時に、隠し扉を開ける。
『きゃあぁぁぁ!!スライムが天井から落ちてきたわ!?』
当然パニックになる。
『ネチョネチョが顔にぃ~~~!!』
『その様なところ・・・はっ!入らないでくださいまし~~~~』
『服が!?ちょ!そこはダメでしょ~!!』
大惨事である。(主に女性たち)
『『・・・・・・・・・』』
ちなみに男性陣はスライムの粋な計らいで、登場と同時に気を失っている。その場は混乱と混沌が支配していた。
笑っているのは、お馴染みのクオンとクランドールだけである。この場に女性陣が居ないのはクオンの計らいであり、コアルーム故に出来ることでもあった。
『そっ後ろの穴は、触ってはなりません~!!!!』
『ひぃうん!そこ・・・・・・ダメ・・・』
『いやぁ!何で・・・下着だけが・・・!?』
いや~結構結構。スライムたちも楽しんでくれているようだ。余は満足じゃ!!
それにしてもスライムたちの性癖が千差万別なのには驚いた。男を狙う奴に女を(性的に)虐める奴と種類が豊富過ぎる気がしないでもない。
ココは一つ指示をしますか?
「アル、スキル<体液変化>で自身の粘液を”媚薬”に変化させて胸の辺りに満遍なく塗り込め!」
アル、それはスライム湧く湧く君で産まれた”突然変異”のスライムのことである。本来ならダンジョンマスターの命令しか聞かないはずの”スライム湧く湧く君”産のスライムたちに対する『指揮権』を持ったスライムである。
コレを発見した時の驚きはかなりのモノだった。湧く湧く産のスライムではないのかと、色々調べたが結果は”不明”であったのだが、元々その事を気にしていなかったのでそのままにしてある。
「(プルるんプるん♪)」
まあ問題なくコミュニケーションが取れるので、名前を与えてみた。
名前:アル
種族:スライム
固有能力 <分解> <吸収> <自己再生> <同族指揮>
能力 <体液変化> <体液触手>
とステータスも含め、結構強くなったので訓練を行った結果と言える。ステータスは現在E-で”スライムの割に強い”感じに仕上がった。
触手を使った攻撃なども得意で、器用さも意外にある。ただスライム故か、素早い動きは苦手なようだ。這うように移動する以上は仕方ないかも知らない。近い内に訓練をしようと思う。
「”この程度でくたばるとは情けないぞ!冒険者よ!!”とでも言うと魔王らしくていいもかな?」
何処かズレたクオンの言い分は、魔王というより”悪代官”の様な気がする。しかもこの間冒険者の女性たちはスライムたちの快楽責め?を受け続けている。
このまま放っていたら、再起不能になりそうだ。(女として)
「そろそろ捕獲しても問題ないと思うが?」
この言葉を聞くまで冒険者の女性たちを放置していた事を思い出したクオンである。もう彼女たちは『あぁ・・・』やら『う・う゛ぅん・・・』とかすでに言葉を発していない。
「ダンジョンの機能に”捕獲システム”はないものか・・・」
無い物ねだりは理解しているが、何度確認しても”該当項目はない”ことだけが何度も示されている。
「クランドールも一緒に捕まえに行ってくれるか?」
「仕方ないの・・・男どもはどうする?ゴブリンどもが狙っているように感じるんだが・・・・・・」
「南無三・・・と言うしかないのかな?」
どうやらほとんどのゴブリンはメスであったらしい。追いかけている最中から、目が血走っていたワケだ・・・・・・。
「どうするかは、あの冒険者次第かな?」
俺は彼らとの話し合いを行うために、迎えに行った。
今回はこの辺りで終わります。
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