4話 ダンジョンの1日 中編
また花粉が出てきたのか、くしゃみが戻ってきました。きつい花粉症の方は体調にお気をつけください。
・・・いや、俺の嗜好の話は隣に置いといて・・・・・・この人造生命体の完成をさせよう。「生体魔導人形?」この二つに実際の所違いは”ほとんどない”と言える。
主な違いは”肉体そのものを使うか、細胞から作り出す”かだ。
『魔石』(純度20%)を出来上がった筐体の心臓部分の近くに融合させようと思う。
ただ現状の魔石の大きさは拳大(約10cm)位あるのでそのままでは内臓器官を圧迫する上、動力源としても非常に壊れやすいと言う欠陥がある。
「魔石の圧縮が出来ないもんかな・・・?」
ふと頭の中に浮かんだのは、地球で小学生の時”ジュースを凍らせた時”のことを思い出した。
「<精錬の錬金術師> <狂導の錬金術師> <魔石創造者> <魔力付与> <魔力凝縮> <純化錬成> <魔石生成> 」
<純化錬成>は複数を一つにまとめ、純度を上げるだけがこのスキルの真骨頂ではない。純化した残りの部分は”不必要”な結晶となる。それは<魔石生成>で加工する。
[クオンのスキル <魔石生成> は <魔核生成> に上位進化した]
ダンジョンコアと違う魔核が出来上がった。形は”菱形の8面体”で黒っぽかった色は何故か”真紅”に変 わっていた。大きさは500円くらいでコレならサイズ的には問題ない。ただ強度とかが心配なのは変わりなく付与を行う事にした。
「付与 <鉄壁> <自己治癒> 」
エンチャントした”コア・改”を筐体の心臓部付近に<融合>させた。融合させることによりエンチャントした効果が発動する予定だ。次に行うのは”魂”の準備だが今回の試みで成功した技術を使えば”純度が高く、強い魂”が完成するはずだ。
「<魂魄奏者> <魂の冒涜者> <精錬の錬金術師> <神に近づきし者> <純化錬成> <死魂術> <死霊術> <魔核生成> <魔力完全支配> 」
『幾億幾万の時の流れ 何処から始まろうと 終焉は同じ流れなり 幾筋もありし 未来を知るものは 世界におらず』
今までにない魔力の奔流。それが周囲を襲うことはない。それは余すことなく手の間に漂う魂を魔力をが凝縮させてゆく。
スキル<魔力完全支配>の真価は世界中に響き渡る。
『されど我は 終焉の転生を 知る者なり 『煉淵なる輪廻』!!』
魂を包み込んでいた魔力光は徐々に収まってきた。それと共に魂の内包する魔力と純度が上がってきた。とはいえ元々の魂の純度自体が低いのでそれほど高くない。せいぜい70%が良いところだ。
リリィと同様に裏切らないようにする。ただ知識内の竜人の情報だと"魔法は苦手と言うか壊滅的に悪く、逆に武術全般が得意"とあるが、わざわざ従うのはバカらしいと思うので少しくらいは使えるようにしたい。よくラノベにある"竜化"とかはないようで例外的なのは"人獣や人竜"の類いでベースとなる種の力を強化する形になる。
せっかく一から造った"配下兼家族"なんだ普通にして殺されたりするのは嫌なので世界常識を無視した。『竜人』ならぬ『龍人』はどうだろうか?『半龍人化』とか・・・うん、ロマンがあるね。
「身体的な変化だと”服が破れそう”な気がするから・・・術式的な感じが良いかもな」
そうクオンは呟くと作業に勤しんだ。数時間後にはなんとか満足のいく仕上がりになった。ステータスはこうなった。
ローナ
竜人
女
LV1
ステータス平均Eー(前衛系の為)
平均D+(前衛としての能力)
固有能力
半龍人化
特化能力
全属性耐性・弱 物理耐性 見切り 竜眼(威圧系) ステータス上昇UP ガーディアン 武芸百般
能力
槍術 剣術 斧術 格闘術 身体能力上昇
疾走 回避力UP
と、完璧な前衛・・・特に攻撃に特化したステータスになる。ハッキリ言って”初期のダンジョンボス”のタイラントオーガより強い。タイラントオーガも完全な前衛系だが平均D-と竜人のローナより低い・・・とは言ってもDクラスのステータスの冒険者より強いのは確かなので、2階層のボスに変更する。
そして待ちに待ったローナの覚醒が始まった。まあ覚醒と言っても”目を覚ました”ようなものなんだが・・・・・・。
Side:ローナ
徐々に意識がハッキリしてくる・・・。今までの私は無くなり、新しい”あたし”に生まれ変わる・・・そんな感じがする。
「おっ!目が覚めたか?自分が何なのか分かるか?」
目の前に現れた人物について考える。うっすらと感じるのはこの方があたしの”御主人様”だと言うことだ。
「あたしの・・・御主人様?」
「ふふ・・正解だ。君の名は『ローナ』ゆっくりで良い焦らずに体を動かしてごらん」
体中の感覚が目覚め始めたローナは、ゆっくりと指先から力を加えていった。片手の感覚を覚えるのに10分はかかっただろう。その間クオンはローナを急かすようなこともなく、彼女を膝枕していた。
ローナの全身のチェックが終わるのは開始から2時間後だった。この事を後で知ったリリィに膝枕をせがまれたのは蛇足である。
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自身での身体チェックを終えたローナを、俺自身の手で行っている。言葉だけで言うとアウトだろうが傍目から見たら”姉妹がじゃれ合っている”風に見えないこともない。泣いてはいないぞ?
「ふむ・・・精神と肉体のリンクにズレは起きていないようだな。左手から全力で握ってみろ」
俺の言葉にローナは全力と思う力を込めた。ステークスの関係上俺にはダメージはないのだが、この検査の主目的は”肉体の限界点”を見極めることだ。
「ん・・・ふぅ・・・・・・」
力の入れすぎで顔は朱に染まる。漏れる声も『妙に艶っぽい』と言うか『エロい』。そう、性欲が刺激されそうなほど・・・とっても『エロい』のだ。大事なことなので二度言う。肉体的には”18~20歳”位なので不思議はないんだが・・・、ローナは今創造したばかりなのだ。
右手も確認したが『エロい』の一言だ。
「良くわかった。ローナの利き手は”右手”になる。とは言えわずかな差でしかないがな・・・」
不思議そうな顔をしているので詳しく説明頷き返してくれたので、理解能力も高そうだ。
「さて、利き手を確認した理由は理解してくれたと思う。”利きとは不得手”そう俺は考えている。
だからコレからローナの教導は、その”不得手”をメインで鍛えてゆく」
俺の話を静かに聞いていたローナだが・・・尻尾の先はピョコピョコと動いていた。まだ汚れの知らない瞳が俺を見つめている。リリィと同じようなことしかしてないはずだが・・・・・・?
クオン自身の思惑通り・・・いや斜め上にローナの好感度は上がっていた。鰻登りである。原因は”ローナが無垢”であることだ。
「ぎゃぅぅぅぅ・・・・・・」
テロップで表すとこうなる。
〔ローナは雄叫びを上げてクオンに飛びかかった!〕
となるであろう。飛びかかった理由は簡単で『甘えたかった』だけである。コレはクオンが最初から知識を与えていなかったから起きたことである。
「遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで遊んで・・・・・・・・!!!!」
クオンにのし掛かり、クオンの顔を舐める。クオンの顔は涎まみれになってゆく。しかもローナの大きな胸がクオンの体中に刺激を与え、クオンの半身はえらいことになりかけている。
クオンの作戦負けである。
何とか半身の事情に気付かれる前に落ち着かせることが出来た・・・しかし安心できる気がしない!!!
「ご主人様~お昼の準備が出来ましたよ~」
そうラスボスの登場である。
「あれ?その女性はどなたですか?」
「リリィにとっては後輩になる、ローナだ。仲良くしてくれ。ローナ、お前の先輩にあたる"リリィ"、彼女はサキュバスだ」
「よろしくお願いしますね~♪ローナちゃん」
「よろしく・・・・・・」
ローナはリリィのことを警戒しているようだ。恐らくは警戒よりも”人見知り”であるなように感じるが・・・。
ティナに休憩仕様と話しかけ、昼にする。昼休憩中にルクレシア姫たちの状況をリリィに確認する。
「ラグズの姫様たちですか~?朝から真剣に話し合ってました~。ご主人様の庇護を受けるかで結構意見が分かれているっぽいですね~」
「そうか・・・。”夜3の鐘”が鳴る時間に全員で話し合いをするから、それまでに意見をまとめるように言っておいてくれ」
「わかりました~」
そう返事をしたリリィに軽くキスをして”自身の精気”をリリィに流し込む。サキュバスの食事としては簡素に見えるが、クオンの流し込む精気自体の純度は以外に高く、夜以外はそれで持つ。
「よろしいですね?ナイフとフォークはこのように使い、スプーンはこの様にして使うのです」
クオンがチラリと隣を確認すると、ティナがローナに食事の仕方を教えていた。生前が貴族であった故か美しい動きに感心してしまう。
幽霊が食事しているのに疑問を感じそうだが、料理の中に含まれるマナを効率よく分解して、マナを吸収すれば”普通”に食事は出来る。
「ティナ姉・・・とても難しいぞ?」
ある程度の知識を与えたローナは快活にしゃべり、自身の意見を順序立てて話せるようになった。ただ知識があっても経験は無いのは変わらず、作法などを苦労しながら覚えている。”物凄い速度”で・・・・・・。
「ティナはある程度の<魔力操作>を身に付けたようだな・・・。上手くいけば1ヶ月で<魔力支配>を覚えてしまいそうだな(笑)」
クオンの言葉に誇張はない。そうやっていい加減な判断による自信が、他人を巻き込む危険性をクオンは自身の経験上知っているし、"あの当時の事は若気のいたり"だったと思ってもいる。
「ティナは昼からは、魔法についての勉強をしよう。ローナも参加して”ある程度”の知識を持っている方が戦闘中の安全を確保しやすいからな・・・」
クオンの”ある程度”の言葉に疑問を覚えるが、家庭教師より詳しく教えてくれるので気にしないことにした。
「わかりました」
「あふぃー(はいー)」
「ローナ・・・口にモノを入れたまま話さないように」
クオンは軽くローナを叱ると、食事を終わらせる。そのとき一つの違和感を感じた。
「そう言えばクランドールはどこに行った?」
リリィが部屋の角を指さした。
「アソコにいますが~何故か話しかけにくいですね~」
ソコにはイジケて何かになったクランドールがいた。ハッキリ言って”近寄りたくない”とクオンは感じた。この世の終わりのようにブツブツ呟いていたクランドールを何とか慰め、仕事を任せる。
昼が終わり”ダンジョンボスルームに3人で向かう。現状ではただの殺風景な部屋である。
「この部屋の壁には<耐・魔力><耐・物理>の性質を持たせてある。現状の二人は愚か、俺ですら破壊するのが困難な代物だ。
まず『”魔法”とは何か?』だが、極論で言うなら『自然法則の書き換え』と言えるだろう」
「クオン様、先程<魔力操作>の段階で教えていただいた『エーテル』と『マナ』のことでしょうか?」
ティナは顔の横に手を挙げて質問する。
「良く覚えていたな。ティナに関しては後で詳しく説明するからココでは飛ばすぞ?」
ティナが頷くのを横目に俺は話を再開させる。
「二人とも良く覚えておいてくれ。”魔法”は”魔力”の消費によって起きる現象の一つだ。”技”のある意味では魔法の一種と言えるのかもしれないがな・・・・・・」
ローナを横目で見ると難しいのか悩んでいる。
「ローナの知識にもあるが、属性は”基本4つ”の火・水・風・土になる。派生系の術もあるが今回はなしにする。ティナはこの4属の強弱は知っているよな?」
「はい。『火は水に弱く、水は土に弱く、土は風に弱く、風は火に弱い』です」
隣に座っているローナも頷いているので、きちんと知識は引き出せているようだ。
「その通りだ。環境による補正はあっても、基本的にティナの言った関係になる。ローナは今の自分がどの力を持っているか感じられるか?」
「わかんないです!」
元気の良い返事が返ってきた。苦笑したクオンはゆっくりと説明しながら夜まで過ごすことになった。
現在徐々に投稿済みの本編を改稿しています。
また改稿による誤字・脱字がありましたら連絡をお願い致します。
次回の更新予定は4月30日を予定しています。




