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ダブル・サイド  作者: 四宮 皇季
第二章 永久冒険者になる。
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6話 ”ハルティナの花”の伝承と真実

なかなか話の進みが遅いかもしれませんが、よろしくお願いします。

『再び、巡り逢う』


 クリシア様から教えて貰った”ハルティナの花(買ってきたもの)”の花言葉は、トワの中に一つの可能性を気付かせた。


 「(”ハルティナの花”の伝承って・・・俺たちが関わることになった、『魂の共有化(ソウル・リンク)』の機構(システム)の事なんじゃないのか?)」


 トワの考えは正しかった。最も、前世の記憶を保有し転生するのは”確率的に(・ ・ ・ ・)かなり低い(・ ・ ・ ・ ・)”事であり、鏡面世界(ヴェラリーズ)の”魂総量100億(・ ・ ・ ・)の5%にも及ばない。モンスターも人も合わせた数になる。

 そうなると、前世を記憶を持ったもの同士が廻り逢うの天文的確率(・ ・ ・ ・ ・)となる。しかし、このシステムの管理側(内側)にいる『トワとクオン(俺たち)』なら、高確率いやほぼ確実に実行出来ると感じた。他の人たちに納得させられなくても。


 「(例え可能でも、俺たちの役目上・・・そう簡単に行うわけにはいかないがな・・・・・・)」


「どうかなさいました?」


 結構長い時間、黙っていたらしい。クリシア婦人に心配をかけたのかもしれない。


 「俺はそういう花言葉(モノ)を気にも止めてなかったと思って」


 そう返事をしておいた。何と無くだが、この夫婦は笑いながらも信じそうに思った。


 「クロードはどう思う?来世で記憶を持ちながら、廻り逢うとしたら・・・。その時に、愛し合えるかは置いといて」


「そうだな・・・恐らくその時には、お互いに好きな人がいるかもしれないが、同じ時間を(・ ・ ・ ・ ・)共有(・ ・)出来れば嬉しいな。私の考えは、"愛は記憶でなく、過去(思い出)で育むもの"だと思うんだ。

 この考えの大本は、私の両親にあるが・・・・・・」


王族ともなれば、政略結婚のあとに愛を育むことになるのだろう。恐らくだが、好きな相手と結婚出来ることの方が稀だろう。異世界だからではなく、地球(向こう)でも”江戸時代”まではほとんどの、武家がそうだったのだ。

 その点で言えば、クロードは”相手が幼馴染みであり、互いに好きだった”それが彼らの救いであったのだろう。


 「俺は貴族じゃないからなんとも言えないが、彼女もクロードの事をかなり心配していたから、同じ気持ちなのかもしれないな」


 これは、俺の本心である。もし、クロードのことを愛していないなら、俺に伝言を頼まないはずだ。

 俺個人としても、彼女の覚悟に敬意を表している。


 「トワ君もクロード君に負けず劣らず、ロマンチストなのだな!(ノ≧∇≦)ノ」


 話の途中にわりこんできたのは、ベルフォード氏である。失礼だがどうみても、娘がいた(・ ・ ・ ・)父親には見えない。

 妖猫種族(ケットシー)とはいえ、外見が猫(・ ・ ・ ・)であり話をしていることが違和感でしかない。


 「娘が『婚約者をどう思っていた』かは気にならないのか?」


 「痛いところを突いてくるねトワ君。確かに”父親として(・ ・ ・ ・ ・)”の心境としては、好きな男と家庭を持って欲しい。

 しかしクリシュナ家の”当主(・ ・)”としては、”愛よりも(・・ ・ ・)両家を結び(・ ・ ・ ・ ・)跡継ぎを(・ ・ ・ ・)産めばいい(・ ・ ・ ・ ・)”そう言う考え方になってしまう。

 平民には平民の、貴族には貴族の矛盾点が生まれるものなのかもね・・・・・・(´・ω・`)」


 ベルフォード氏もその辺は色々あるみたいだ。

 心なしか耳も尻尾も垂れ下がっている。


 「そう言えば、リーズ王国には死者に対する”死化粧(・ ・ ・)”的なことはするのか?」


 トワのこの一言が、”リーズ王国における死者の送り方”となり永劫に続くことになるとは、このときのトワにも、クロードたちも知らなかった。この言葉の発端は、エリスティナ(彼女)の状態にある。

 家族以外の親族とかが見るには正直、控えた方がいいと言えたからだ。”四肢は折れ、紫に変色して”いて酷いところになると、潰されている部位があったりもした。トワとしても”このままでは彼女の最後(・ ・ ・ ・ ・)に相応しく(・ ・ ・ ・ ・)ない(・ ・)”と思えたからだ。


 「”死化粧”とはなんだね?」


 「ベル様は、奥方・・シア様が、毎日化粧をしているのは知っているか?」


 「当たり前だよ( ̄^ ̄)夫としては、妻に常に美しくあって欲しいものさ!」


 この言葉を聞いたシア様は、頬を朱に染めクネクネとしていた。言い方としては”変”かもしれないけど、擬音語を付けるなら『イヤン、イヤン』だろうか?


 「逆にシア様に聞くが、”見るにも耐えない状態の娘を送る”のと”美しく身嗜みを整えた状態で娘を送る”のでは、後者を選ぶと思うがどうだろうか?」


 この言葉でエリスティナ()の状態を理解したのか、サッと顔色を青くした。


 「母としても、同じ女としても・・・美しい方が良いです」


 「死者の送り方・・・というわけか?」


 クロードがトワに問いかける。


 「正にその通りだ。もし行うなら、俺とメイドの方、数名に手伝って欲しい」


 「私も加わっていいですか?エリーを・・・綺麗にしたいわ・・・・・・」


 クシリア様も参加を決意した。俺個人としては、控えてほしかったが・・・・・・。


 「了解した。ただし、気を強くもって欲しい」


 俺はそういうと、汚れても問題ない部屋を用意してもらった。

 当然、クロードとベルフォート様は作業時間中、居間にて待機してもらう。俺か?俺は別だ。彼女を保管しているのは俺であり、彼女の最後を看取ったのは俺だから全てを知っている。


 「トワ君、そういうことなら妻と娘を頼む・・・・・・m(__)m」


 「トワ・・・君の心遣いに、婚約者として、幼馴染みとして感謝する・・・・・・」


 二人に、深く頭を下げられた。彼女との約束であり、彼女を介錯(殺した)俺が出来る唯一のことだからだ。俺は二人に対し、照れ臭くなってしまった。


 「任せてくれ!ただクロードよ、彼女が綺麗になりすぎて、再び惚れても知らんぞ?(^ー^)」


 そんな要らないことまで、口走ってしまった。そんな俺を、二人して笑っていた。


 「「そうか!楽しみだ!!」」


 俺は、エリスティナの介錯をしたとき、後悔はしないと彼女に言ったがそれは元々無理なことだった。後悔はなくても、介錯(その事)は俺の体に重くのし掛かっていた。彼女の両親の包容力と言うのか、懐の広さなのか・・・それに助けられた。

 今、俺が心配しているのは、彼女の妹に関してだ。クロードの話によると12歳とのことだが、すんなりと話が終わるとは思えない。”念のためにと、彼女が妹に対して遺言を残して”くれている。姉妹仲は大変良く、喧嘩はしたことがないとはエリスティナの弁である。


 メイドの一人が、ベルフォート氏に耳打ちをしていた。うんうんと頷いたら、食事のことを話し出した。


 「今回の場合、どちらが良いのかは分からんが、ランチの準備ができた。

 冷めてしまっては申し訳ないので、食べないか?」


 ピコピコ、ユラユラと耳と尻尾を動かしながら、ベルフォート氏が俺たちに食事を進める。

 俺としては問題ない。なにせ、ゴブリンの巣(地獄)の光景を直視した状況から比べると、比較的(・ ・ ・)楽だ。心配なのは、夫人と対応するメイドになる。


 「そうですわね。娘のことでどれ程時間がかかるか、分かりませんからね」


 「ふんす」と効果音が着きそうなくらい、クリシア夫人は気合いを入れていた。


 「そうですね・・・。食前酒などを控えた上でなら、問題ないかと思いますね」


 クロードがさらりと、話に相づちを打つ。クリシア夫人かなり強かな女性である。


 「では決まりだな!(^o^)/すまないが、リリステアを呼んできてくれないか?この時間だと、自室で勉強しているはずだ!」


 「エリスティナ嬢の妹ですか?」


 敬語っぽくなった。負い目があるのだろう。姉妹仲が良かったらしいので、姉の仇(・ ・ ・)と言える俺を怨んでいないだろうか?


 「トワ・・・君が何を心配しているのかは分かるが、12歳とは言えクリシュナ家の娘だ。年に似合わないくらい、とても賢い娘だ」


 そうクロードが言っても、トワ自身は彼女のことを何も知らない。


 「私が言っていいのかは分からないが、リリーはエリー()に似て慈悲深い面がある(´・ω・`)」


 ベルフォード氏もそう言ってくれた。彼女()に何を言われても前を向けるようにしようとトワは覚悟した。


 「わかった。俺自身が向き合わなくては、エリスティナ(彼女)に申し訳ないな…」


 「昨日リヴィちゃんが、リリーと何か話していたそうよ?もしかしたら、エリーの遺言(こと)を話していたのかもね・・・・・」


 リヴィエルナ嬢はエリスティナ嬢の妹にも、話をしてくれたのだろうか・・・・・・?


 「姉さんは、おそらく説明()をしている思う。トワはまだ知らないと思うが、姉さんは昔から心配り(その手)のことは過剰なほど(・ ・ ・ ・ ・)しっかり先手を打つからな……」


 クロードが何故か遠い目をしていた。その姿を見た俺は逆に怖くなった。リヴィエルナ嬢が何をどう話したのかが大変気になる。悪いことが起こらないといいのだが・・・・・・。

 そうこう話している内に、リリステア嬢が広間に現れた。


 「お父様・・お待たせいたしました」


 リリステア嬢の姿は、エリスティナ嬢をそのまま幼くした感じだった。身長に関しては、クオンと同程度である。その中で一番目を引くのは、『金と銀の瞳』だろう。

 アテンドールから貰った知識の中にある”魔眼”の一種だろう。知識からの推測では、『観察眼』が近いのだろう。内容に関しては、『モノをじっくりと見て、変化に対応しやすくなる』だったっけ?


 「リリーは昨日リヴィちゃんから、彼のことを聞いてない?」


 クリシア夫人は、娘に単刀直入で聞いた。


 「リヴィ姉様の話していた『トワ様』でしょうか?」


 金と銀のオッドアイが俺をロックオンする。直感は、彼女は憎しみなどの負の感情(・ ・ ・ ・)はないと言っている。金の髪の中から銀の耳が飛び出し、ピコピコ動いている。銀色の尻尾が体の後ろから見え隠れしている。


 「トワだ。リヴィエルナ嬢からどの様に聞いているのかは知らないが、冒険者をしている」


 「エリー姉様のこと感謝いたします。リリステアと申します」


 俺の発言の中にあった、『冒険者』に反応したのか、好意?好奇心?の含んだ瞳で俺を見ている。


 「冒険者って珍しいものじゃないよな?」


 隣にいるクロードに話をふった。


 「リリーは”とある事情(・ ・ ・ ・ ・)”でほとんど屋敷から出たことがないんだ」


 「その原因は『魔眼』か?コントロールが効かない(・ ・ ・ ・)とか・・か?」


 この言葉に大きく反応したのは、ベルフォート氏であった。耳と尻尾をピンと立て、こちらをじっと見ている。


 「なぜ、”魔眼持ち”だと思ったのだね?( -_-)ジッ」


 先程までの、”軽い印象”はない。獅子を思わせる気配を、その身に纏っている。


 「理由は簡単さ。第一に、左右の瞳の色が違う。第二に、体調不良を”起こしやすい”こと。

 俺が知っている範囲で、この二つの条件が当てはまる人はほぼ”魔眼使い”だった」


 「それだけだと、理由付けとしては弱くないかい?」


 「ハッキリと言ってしまえば、俺は『鑑定眼』の魔眼使いだからな」


 この言葉には、ベルフォート氏だけでなくクロードの驚いていた。

 基本的に”魔眼使い”は、どの職種でも優遇される。その職種に対応する魔眼の場合だが。


 「しかしそうだとしても、トワ君の瞳は同じ色だよねぇ?( ・_・)?」


 「俺はその3に当たるタイプなんだ。”特殊血統”って呼んでいる。

 ベル様は思い当たる人がいると思う。一番これに当てはまるのは”王族”になると思う」


 俺たちの話に、クロードが割って入る。


 「それって・・第一王女や姉さんが当たるんじゃないのか?」


 「う~ん”遠からず”ってところか?」


 「”姫巫女”ってことになるのか?」


 クロードは心配になるほどのことが、リヴィエルナ嬢とかにあるらしい。


 「何を心配しているのかは分からないが、『姫巫女』も『信託の巫女』も同じじゃあないのかな?」


 俺には違いがあるようには思えない。どちらも”王族”であるわけだから。


 「あくまでも俺の”独断と偏見”が入っているちと思う。だから深く考えないでほしい」


 俺はベルフォード氏とクロードにそう言った。納得はいかないだろうが、知識だけのものだから。

 クリシア夫人が食事のことを言ってくれたので食べることにした。

 しばらく同じ内容になりますが、よろしくお願いします。


 次回の更新は3月25日になります。

 誤字・脱字ありましたら連絡お願いします。

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