6話 ”ハルティナの花”の伝承と真実
なかなか話の進みが遅いかもしれませんが、よろしくお願いします。
『再び、巡り逢う』
クリシア様から教えて貰った”ハルティナの花”の花言葉は、トワの中に一つの可能性を気付かせた。
「(”ハルティナの花”の伝承って・・・俺たちが関わることになった、『魂の共有化』の機構の事なんじゃないのか?)」
トワの考えは正しかった。最も、前世の記憶を保有し転生するのは”確率的にかなり低い”事であり、鏡面世界の”魂総量100億の5%にも及ばない。モンスターも人も合わせた数になる。
そうなると、前世を記憶を持ったもの同士が廻り逢うの天文的確率となる。しかし、このシステムの管理側にいる『トワとクオン』なら、高確率いやほぼ確実に実行出来ると感じた。他の人たちに納得させられなくても。
「(例え可能でも、俺たちの役目上・・・そう簡単に行うわけにはいかないがな・・・・・・)」
「どうかなさいました?」
結構長い時間、黙っていたらしい。クリシア婦人に心配をかけたのかもしれない。
「俺はそういう花言葉を気にも止めてなかったと思って」
そう返事をしておいた。何と無くだが、この夫婦は笑いながらも信じそうに思った。
「クロードはどう思う?来世で記憶を持ちながら、廻り逢うとしたら・・・。その時に、愛し合えるかは置いといて」
「そうだな・・・恐らくその時には、お互いに好きな人がいるかもしれないが、同じ時間を共有出来れば嬉しいな。私の考えは、"愛は記憶でなく、過去で育むもの"だと思うんだ。
この考えの大本は、私の両親にあるが・・・・・・」
王族ともなれば、政略結婚のあとに愛を育むことになるのだろう。恐らくだが、好きな相手と結婚出来ることの方が稀だろう。異世界だからではなく、地球でも”江戸時代”まではほとんどの、武家がそうだったのだ。
その点で言えば、クロードは”相手が幼馴染みであり、互いに好きだった”それが彼らの救いであったのだろう。
「俺は貴族じゃないからなんとも言えないが、彼女もクロードの事をかなり心配していたから、同じ気持ちなのかもしれないな」
これは、俺の本心である。もし、クロードのことを愛していないなら、俺に伝言を頼まないはずだ。
俺個人としても、彼女の覚悟に敬意を表している。
「トワ君もクロード君に負けず劣らず、ロマンチストなのだな!(ノ≧∇≦)ノ」
話の途中にわりこんできたのは、ベルフォード氏である。失礼だがどうみても、娘がいた父親には見えない。
妖猫種族とはいえ、外見が猫であり話をしていることが違和感でしかない。
「娘が『婚約者をどう思っていた』かは気にならないのか?」
「痛いところを突いてくるねトワ君。確かに”父親として”の心境としては、好きな男と家庭を持って欲しい。
しかしクリシュナ家の”当主”としては、”愛よりも両家を結び、跡継ぎを産めばいい”そう言う考え方になってしまう。
平民には平民の、貴族には貴族の矛盾点が生まれるものなのかもね・・・・・・(´・ω・`)」
ベルフォード氏もその辺は色々あるみたいだ。
心なしか耳も尻尾も垂れ下がっている。
「そう言えば、リーズ王国には死者に対する”死化粧”的なことはするのか?」
トワのこの一言が、”リーズ王国における死者の送り方”となり永劫に続くことになるとは、このときのトワにも、クロードたちも知らなかった。この言葉の発端は、エリスティナの状態にある。
家族以外の親族とかが見るには正直、控えた方がいいと言えたからだ。”四肢は折れ、紫に変色して”いて酷いところになると、潰されている部位があったりもした。トワとしても”このままでは彼女の最後に相応しくない”と思えたからだ。
「”死化粧”とはなんだね?」
「ベル様は、奥方・・シア様が、毎日化粧をしているのは知っているか?」
「当たり前だよ( ̄^ ̄)夫としては、妻に常に美しくあって欲しいものさ!」
この言葉を聞いたシア様は、頬を朱に染めクネクネとしていた。言い方としては”変”かもしれないけど、擬音語を付けるなら『イヤン、イヤン』だろうか?
「逆にシア様に聞くが、”見るにも耐えない状態の娘を送る”のと”美しく身嗜みを整えた状態で娘を送る”のでは、後者を選ぶと思うがどうだろうか?」
この言葉でエリスティナの状態を理解したのか、サッと顔色を青くした。
「母としても、同じ女としても・・・美しい方が良いです」
「死者の送り方・・・というわけか?」
クロードがトワに問いかける。
「正にその通りだ。もし行うなら、俺とメイドの方、数名に手伝って欲しい」
「私も加わっていいですか?エリーを・・・綺麗にしたいわ・・・・・・」
クシリア様も参加を決意した。俺個人としては、控えてほしかったが・・・・・・。
「了解した。ただし、気を強くもって欲しい」
俺はそういうと、汚れても問題ない部屋を用意してもらった。
当然、クロードとベルフォート様は作業時間中、居間にて待機してもらう。俺か?俺は別だ。彼女を保管しているのは俺であり、彼女の最後を看取ったのは俺だから全てを知っている。
「トワ君、そういうことなら妻と娘を頼む・・・・・・m(__)m」
「トワ・・・君の心遣いに、婚約者として、幼馴染みとして感謝する・・・・・・」
二人に、深く頭を下げられた。彼女との約束であり、彼女を介錯俺が出来る唯一のことだからだ。俺は二人に対し、照れ臭くなってしまった。
「任せてくれ!ただクロードよ、彼女が綺麗になりすぎて、再び惚れても知らんぞ?(^ー^)」
そんな要らないことまで、口走ってしまった。そんな俺を、二人して笑っていた。
「「そうか!楽しみだ!!」」
俺は、エリスティナの介錯をしたとき、後悔はしないと彼女に言ったがそれは元々無理なことだった。後悔はなくても、介錯は俺の体に重くのし掛かっていた。彼女の両親の包容力と言うのか、懐の広さなのか・・・それに助けられた。
今、俺が心配しているのは、彼女の妹に関してだ。クロードの話によると12歳とのことだが、すんなりと話が終わるとは思えない。”念のためにと、彼女が妹に対して遺言を残して”くれている。姉妹仲は大変良く、喧嘩はしたことがないとはエリスティナの弁である。
メイドの一人が、ベルフォート氏に耳打ちをしていた。うんうんと頷いたら、食事のことを話し出した。
「今回の場合、どちらが良いのかは分からんが、ランチの準備ができた。
冷めてしまっては申し訳ないので、食べないか?」
ピコピコ、ユラユラと耳と尻尾を動かしながら、ベルフォート氏が俺たちに食事を進める。
俺としては問題ない。なにせ、ゴブリンの巣の光景を直視した状況から比べると、比較的楽だ。心配なのは、夫人と対応するメイドになる。
「そうですわね。娘のことでどれ程時間がかかるか、分かりませんからね」
「ふんす」と効果音が着きそうなくらい、クリシア夫人は気合いを入れていた。
「そうですね・・・。食前酒などを控えた上でなら、問題ないかと思いますね」
クロードがさらりと、話に相づちを打つ。クリシア夫人かなり強かな女性である。
「では決まりだな!(^o^)/すまないが、リリステアを呼んできてくれないか?この時間だと、自室で勉強しているはずだ!」
「エリスティナ嬢の妹ですか?」
敬語っぽくなった。負い目があるのだろう。姉妹仲が良かったらしいので、姉の仇と言える俺を怨んでいないだろうか?
「トワ・・・君が何を心配しているのかは分かるが、12歳とは言えクリシュナ家の娘だ。年に似合わないくらい、とても賢い娘だ」
そうクロードが言っても、トワ自身は彼女のことを何も知らない。
「私が言っていいのかは分からないが、リリーはエリーに似て慈悲深い面がある(´・ω・`)」
ベルフォード氏もそう言ってくれた。彼女に何を言われても前を向けるようにしようとトワは覚悟した。
「わかった。俺自身が向き合わなくては、エリスティナに申し訳ないな…」
「昨日リヴィちゃんが、リリーと何か話していたそうよ?もしかしたら、エリーの遺言を話していたのかもね・・・・・」
リヴィエルナ嬢はエリスティナ嬢の妹にも、話をしてくれたのだろうか・・・・・・?
「姉さんは、おそらく説明をしている思う。トワはまだ知らないと思うが、姉さんは昔から心配りのことは過剰なほどしっかり先手を打つからな……」
クロードが何故か遠い目をしていた。その姿を見た俺は逆に怖くなった。リヴィエルナ嬢が何をどう話したのかが大変気になる。悪いことが起こらないといいのだが・・・・・・。
そうこう話している内に、リリステア嬢が広間に現れた。
「お父様・・お待たせいたしました」
リリステア嬢の姿は、エリスティナ嬢をそのまま幼くした感じだった。身長に関しては、クオンと同程度である。その中で一番目を引くのは、『金と銀の瞳』だろう。
アテンドールから貰った知識の中にある”魔眼”の一種だろう。知識からの推測では、『観察眼』が近いのだろう。内容に関しては、『モノをじっくりと見て、変化に対応しやすくなる』だったっけ?
「リリーは昨日リヴィちゃんから、彼のことを聞いてない?」
クリシア夫人は、娘に単刀直入で聞いた。
「リヴィ姉様の話していた『トワ様』でしょうか?」
金と銀のオッドアイが俺をロックオンする。直感は、彼女は憎しみなどの負の感情はないと言っている。金の髪の中から銀の耳が飛び出し、ピコピコ動いている。銀色の尻尾が体の後ろから見え隠れしている。
「トワだ。リヴィエルナ嬢からどの様に聞いているのかは知らないが、冒険者をしている」
「エリー姉様のこと感謝いたします。リリステアと申します」
俺の発言の中にあった、『冒険者』に反応したのか、好意?好奇心?の含んだ瞳で俺を見ている。
「冒険者って珍しいものじゃないよな?」
隣にいるクロードに話をふった。
「リリーは”とある事情”でほとんど屋敷から出たことがないんだ」
「その原因は『魔眼』か?コントロールが効かないとか・・か?」
この言葉に大きく反応したのは、ベルフォート氏であった。耳と尻尾をピンと立て、こちらをじっと見ている。
「なぜ、”魔眼持ち”だと思ったのだね?( -_-)ジッ」
先程までの、”軽い印象”はない。獅子を思わせる気配を、その身に纏っている。
「理由は簡単さ。第一に、左右の瞳の色が違う。第二に、体調不良を”起こしやすい”こと。
俺が知っている範囲で、この二つの条件が当てはまる人はほぼ”魔眼使い”だった」
「それだけだと、理由付けとしては弱くないかい?」
「ハッキリと言ってしまえば、俺は『鑑定眼』の魔眼使いだからな」
この言葉には、ベルフォート氏だけでなくクロードの驚いていた。
基本的に”魔眼使い”は、どの職種でも優遇される。その職種に対応する魔眼の場合だが。
「しかしそうだとしても、トワ君の瞳は同じ色だよねぇ?( ・_・)?」
「俺はその3に当たるタイプなんだ。”特殊血統”って呼んでいる。
ベル様は思い当たる人がいると思う。一番これに当てはまるのは”王族”になると思う」
俺たちの話に、クロードが割って入る。
「それって・・第一王女や姉さんが当たるんじゃないのか?」
「う~ん”遠からず”ってところか?」
「”姫巫女”ってことになるのか?」
クロードは心配になるほどのことが、リヴィエルナ嬢とかにあるらしい。
「何を心配しているのかは分からないが、『姫巫女』も『信託の巫女』も同じじゃあないのかな?」
俺には違いがあるようには思えない。どちらも”王族”であるわけだから。
「あくまでも俺の”独断と偏見”が入っているちと思う。だから深く考えないでほしい」
俺はベルフォード氏とクロードにそう言った。納得はいかないだろうが、知識だけのものだから。
クリシア夫人が食事のことを言ってくれたので食べることにした。
しばらく同じ内容になりますが、よろしくお願いします。
次回の更新は3月25日になります。
誤字・脱字ありましたら連絡お願いします。




