表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダブル・サイド  作者: 四宮 皇季
第二章 永久冒険者になる。
16/39

5話 彼女の両親と・・・猫?

 花粉がどんどん多くなってきて、花粉症には大変です。

 昨夜、忙しく動き回った為かイマイチ疲れが取れていない気がする。実際に昨夜寝たのは、『朝1の鐘(深夜2時)』まで設置に時間を取られた。何より一番、ギルドマスター(おっさん)の役立たずっぷりには、流石に俺たちよりおっさんの(・ ・ ・ ・ ・)娘の受付嬢(・ ・ ・ ・ ・)がとても(・ ・ ・ ・)怖かった(・ ・ ・ ・)


 「お父さん・・・・・・手伝っているつもりなの?それとも・・・邪魔しているの?」


 ・・と、とても暗い笑顔で笑っていた。あれは、一般人だと裸足で逃げ出してしまうだろう。

 邪魔と判断した娘(・ ・ ・ ・ ・)に簀巻き(・ ・ ・)にされた。哀れと思う前に、俺とクロードは恐怖に支配されたように(支配されていたと思う)動き回った。ちなみに、おっさんは受付嬢が引き摺って(・ ・ ・ ・ ・)部屋に持って行った。


 外からは”3の鐘”の音が鳴り響いている。死者を送るには、少し上天気過ぎる気がしないでもないが、送り出す以上晴れてくれて助かった。そろそろ朝食を食べに行かないと、クロードが来てしまう。


 「ハルティナの花か・・・。きっと何かしらの『花言葉』があるんだろう。」

 

 そんなことを考えながら、朝食を食べた。今日の朝食は、ハム?と卵に薄味のスープが付いていた。この世界の食事は、ほとんどが『パン』であり『米』があるのかが心配だ。このパンにも幾つか種類があるらしい。

 一番安い『黒パン』は、色が黒くそして固い(・ ・)。冒険者が保存食の一つとして利用するのがコレだ。固い理由は、”パンの水分(・ ・ ・ ・ ・)が少ない為(・ ・ ・ ・ ・)保存が効く(・ ・ ・ ・ ・)”それの代価が”歯が立たない”固さとなる。安い宿に多いらしい。単価は20~30リム。

 二つ目が、表面が『茶色く焼けているパン』である。地球(向こう)のパンにかなり近く、柔らかいがそれ程長く保存は出来ない。精々、2・3日くらいとの話である。現在の宿がコレを出す。単価は70リム前後。

 最後が一番高い、『白パン』になる。”高級品の小麦粉”と『エルーミュ』と言うモンスターから採って作った”バター”っぽいものを原料にして、焼かず(・ ・ ・)蒸して(・ ・ ・)あるものらしい。

 金額はピンきりで最低の価格が1000リム以上になる。他の二つとは比べられないほど、高級なのは材料(・ ・)が原因だ。ちなみに、保存にはむかず”当日中の消費”が定着している。


 スープとセットで、『黒パンは60リム前後』で『茶パンだと100リム前後』になる。

 高級な『白パンだと1500リム前後』なる。これほど高額になるのは、そのような料理(モノ)を出す店が高級店になるからだ。


 そんな話はさて置き、クロードが宿屋の入口から入ってきた。今日は、鎧姿(・ ・)ではなく落ち着いた服装だ。

 今日の役目(する事)を考えれば妥当な服装と言える。トワの方は、動きやすさ重視の丈夫な服だ。


 「おはよう、トワ。今日はよろしく頼む。」


 「おはよう。あんまり肩肘張っていると、夕方まで保たないぞ?」


 さあ、ハルティナの花を買いに行こう。


 ■□■□■□■□■□■□■□■□


 あれから『2の鐘』くらいの時間、街中を歩き回り結構な時間探し続けた。回った花屋の数は、20店舗に及ぶ。そろそろ昼の時間が近付いてきた。


 「クロード、そろそろ昼の時間になるが、今日の予定的に昼飯はどうなるんだ?」


 「エリーの家族と顔合わせをして、姉さんが説明しているけど、出来ればトワの方からも話して上げて欲しい。」


 「クーリッシュ家の当主たちと?」


 ちなみに『クーリッシュ家』とは、トワが連れ帰った”彼女(・ ・)”の実家になる。

 ”エリスティナ・クーリッシュ”それが彼女の名前で、リヴィエルナ嬢から帰り際に教えられた。トワ本人としては、あまり貴族と関わりを持ちたくない。その本音は”世界を崩壊させない(使命がある)”為だ。

 別に毛嫌いしたり、反発する気はない。クロード自身も貴族(・ ・)らしいのだ。個人的な繋がりは持ってもいいが、”貴族家(・ ・ ・)”としての関わりは今の所(・ ・ ・)持ちたくはない。


 「ええ。姉さんの説明(話し)のお陰か、エリーの両親が昼食を兼ねて先に会いたいらしいんだ。」


 「けど・・理由あっての”介錯”でも、親としては文句はないのか?」


 「お二人はかなりの人格者です。詳しいことを聞かれはするでしょうが、私の父上の信頼も厚いです。」


 この言葉に立てていた仮説(・ ・)が正しかったのを、望まぬ内に理解してしまった。心境としては”成るようになれ”である。


 「侯爵家の当主になると、それこそ『国王(・ ・)』の信頼も厚くなるよな?」


 そう無意識に返事していた。少し驚いたようだが、苦笑を返され「何時から判ってたんだ?」と言われた。


 「クーリッシュ家が侯爵家と分かった時点で、”もしかして(・ ・ ・ ・ ・)”とは思っていたさ。」


 本当にもしかして・・でしかなかった。しかし、”騎士王子(・ ・ ・ ・)”ならぬ”兵士王子(・ ・ ・ ・)”とは恐れ入ったが。この国限定のことだろうか?


 「しかし何故、兵士(・ ・)をやっているんだ?」


 「父上の考えもあるが、私と姉さんは”第2王妃(・ ・ ・ ・)”の子供なんだ。第1王妃には2人の王子がいるし、王女も一人いる。そうなると私たちは・・・「争いの元になる・・・か?」・・・そうだ。」


 そんなことを言っているが、クロードは父親を嫌ってはいないのだろう。尊敬しているかどうかは不明だが。


 「私はまだましな方だ。姉さんは・・・・・・」


 「政略結婚の生け贄(ダシ)になる・・・か。世知辛く思うが、王族に生まれた”王女()”の定めか?」


 「最悪はそうなるだろう。身内びいきになるが、側室とはいえ王女だし・・・それに美しい。」


 トワは「クロードは”シスコン”か?」と内心思ったが、その言葉をなんとか飲み込んだ。


 「まあ否定はせんが・・・」


 そう言うことしか出来ないトワを責めないで欲しい。


 「で?クロードはクーリッシュ家に降家(・ ・)というわけか?」


 「そうは言っても、私もエリーも互いに”愛し合っていた”から基本的に問題はなかった。」


 婚約者が亡くなった以上、クロードはこれからどうなるのだろう?俺の心配しているのが顔に出ていたのか、苦笑しながら話してくれた。


 「エリーの妹と結婚することになるだろう。まだ12歳になったばかりだから、3年後になるだろうがな・・・。」


 別段、おかしなところはないのだが、地球(向こう)での感覚がちょっと邪魔をする。クロードの表情は落ちつきていて、その妹との仲は良いのだろう。


 「クロードも大変だな。俺もある意味、ハズレを引いた様なもんだが。」


 初依頼でモンスターの大群と戦い、ゴブリンの巣で”侯爵家令嬢(・ ・ ・ ・ ・)”の介錯をすることになる。登録当日にそんなことにあって、生き残れたのはトワだけだろう。


 「トワにとってはそうかもしれんが、エリーを連れ帰ってくれたことには感謝している。私もそうだし、姉さんも、エリーの家族も同じだ。トワがしてくれたことは、他の冒険者ではしてくれないことだ。」


 少し悲しそうな顔をしながら、「国と冒険者は”金”と”利益”で繋がっているから・・・」と言った。

 現実問題、トワも”冒険者(・ ・ ・)”だ。今回のことだって、彼女が『死んで』いたらそのまま(・ ・ ・ ・)だったと、自分自身で思っている。会話を交わしたからこそ、地球(向こう)での感情がトワを引っ張ったのだから。


 「感謝して貰っても、今回の事はたまたま(・ ・ ・ ・)だ。状況が少しでも違ったら、連れ帰っていないと思うぞ?」


 「『たら』『れば』は無用のまさか(・ ・ ・)だろ?」


 そう言いながらも歩き続けること30分。”貴族区”にある、クーリッシュ家の門前に辿り着いた。

 クロードが門の柵を開け、トワに入るように言う。荘厳な扉に付いている、獅子?らしいノッカーで扉を叩いている。


 コンコンコン


 高めの音が玄関に響く。扉の向こう側から、人の歩く音が近づいて来た。


 「お待ちしておりました、クロード様。お隣の方が、トワ様で御座いましょうか?」


 「ああ、彼がトワだ。ベルフォート様とクリシア様に到着したと伝えてくれ。」


 このやり取りを聞いていると、クロードが王族(・ ・)だと納得してしまう。今まで無かった、〈威厳〉的なものを感じたからだ。


 「広間でお待ちになっております。」


 そう言うと『優雅』と言えそうな佇まいで、俺たちを案内した。メイド服(・ ・ ・ ・)って”異世界共通”なのだろうか?そう心の中で思った。


 コンコンコン


 「旦那様、クロード様とトワ様がお見えになられました。」


 流れるような動作で、一連の動きを行う彼女に見取れてしまった。


 「村育ちだと、メイド自体が珍しいのか?」


 クロードは面白そうに話しかけてくる。「頼むから、大きな声で言わないでくれ!!」と心も中で叫んでしまった・・・俺は悪くないはずだ。


 「おお!待っていたよ!入りなさい。」


 かなりフレンドリーな声が聞こえてきた。入室すると目に映ったのは『()』だった。驚きのあまり固まった俺を、クロードは腹を抱えて笑っていた。


 「やっぱりトワもそんな顔をしたか!(≧∇≦)b」


 「キチンと説明はしてくれるよな?」


 ギギと音が聞こえそうなほど、変な動きをする。


 「おや?クロード君は、我が一族のことを説明していないのかい?(*ゝω・*)ノ」


 笑いながら、俺に声をかけるベルフォート氏?

 黒い毛並みに、60センチくらいの体高。はっきり言って『猫』以外の何者でもない。

 頭に浮かんだのは、一つの種族(・ ・ ・ ・ ・)だった。


 「”妖猫種族(ケットシー)”か・・・?」


 「その通りだ!改めて紹介しよう!

 ”ベルフォート・クーリッシュ・ケットシー”ワシがクーリッシュ家の当主だ!ε=ε=(ノ≧∇≦)ノ」


 俺の周りをチョコチョコ周りながら、自己紹介を始めたベルフォート氏。隣にいるのは”猫獣人種族(タイプ:キャッツ)”の女性がいた。当然、彼女はベルフォート氏の妻である。


 「クリシア・クーリッシュ・ケットシーと申します。此度はお招きに応じていただきありがとうございます。」


 丁寧な口調で話しかけられて、返事が返せなかった。


 「あ~ご丁寧にどうも。冒険者7級(・ ・)のトワです。」


 本人的には、丁寧に話したつもりだ。しかし、ベルフォート氏たちは笑っていた。


 「娘の恩人だ。無理に敬語を使わなくて結構だ(^_^)ノ」


 クロードの方を見ると、頷かれたので問題ははないらしい。有り難く、好意に甘えよう。


 「そうだな、ワシのことは『ベル』と呼んでくれ(ゝω・)」


 「私のことは『シア』と呼んでね?(*^▽^*)」


 何ともフレンドリーな夫婦である。貴族として、いいのだろうか?と思わなくもないが、敬語の苦手な人間のセリフではない。ここはあまり、気にしないようにしよう。


 「クロード・・・どうやったら、この二人から彼女が生まれるんだ?」


 疑問を口にしてしまう。どう見ても彼女は"人族"にしか見えなかった。


 「獣人族(・ ・ ・)人獣族(・ ・ ・)にの違いって知ってるか?」


 この言葉に俺は頷き返した。

 獣人族は"人をベースに獣の部分(・ ・ ・ ・)がついている"種族で、クリシア氏がこれに当たる。

 人獣族は"獣が人族のように二本足で(・ ・ ・ ・)生活し、手を動物より器用に使う"種族で、ベルフォート氏がこちらに当たる。


 「基本知識としてはそうだが、少し違うところがある。エリーは"先祖返り(・ ・・・)"したので、人族の様な姿だったんだ。

 そうは言っても、少しは獣人の特徴があったんだ。」


 詳しく彼女を観たわけではないので、どうだった(・・ ・ ・ ・)は分からないが、あの時感じた違和感(・ ・ ・)を思い出そうとした。


 「・・・もしかして・・瞳か?」


 「よく分かったな!私は教えて貰うまで気付けなかったんだが・・・」


 少し落ち込んだ表情のクロードを見て俺は、「しっかりしろよクロード(婚約者)」との言葉をなんとか飲み込む。


 「クロード君ですら、エリーが教えて気付いたのにスゴいではないか!ヾ(o´∀`o)ノ」


 この猫が侯爵家当主とは・・未だに実感がない。尻尾がピコピコ動いている。


 「うふふ・・・。クロードさんは”ハルティナの花”のこともエリーに教わったのよね?」


 シア婦人が、おっとりと笑っている。その姿を見て「娘を産んだとは思えんよな?」と言いたくなる。

 実齢は知らないが、外見からは未だに”令嬢・ ・”と言っても誰も納得しそうだ。


 「それで、”ハルティナの花”は買い占め来てくれたんだよね!(*ゝω・*)ノ」


 猫の顔が器用に”悪い顔(・ ・ ・)”をしていた。案外俺がそう感じ取っただけなのかもしれないが。

 この場で”ハルティナの花”ついて聞いた方が良いと<直感>が告げている。


 「そういえば、買ってきた”ハルティナの花”がどういったものなのかを知らないんだが?」 


 俺がそう言うとシア婦人が答えてくてれた。


 「”ハルティナの花”の合言葉は、『再び、巡り会う』。死んでも再び、愛し合う二人は出逢うそうなの。」


 そう教えてくれた。

 お読みいただきありがとうございます。

 誤字・脱字ありましたら連絡お願いいたします。


 次回更新は、3月20日の予定になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ