3話 依頼終了と、ギルドへの報告
花粉症で大変な目に遭いました。
皆様も、体調にはお気をつけください。
4月30日 本文の改稿をしました。
ようやく街が見えるところまで、帰ってきた。ユルイエの森から街道に出るまでにも、かなりの数のモンスターに襲われた。アテンドールの言っていた"勇者召喚"のせいだろうか?夜にでも、確認したほうがいいのだろう。
「(それにいてもやっと、街についたな)」
ハッキリとした時間は分からないが、出発してからそろそろ6時間は過ぎただろう。出発当初は、ここまで疲れるとは思っていなかった。不幸中の幸いは森から出たら、モンスターの襲撃が減ったことだろう。
入門の順番待ちをしている間、周りにいる人達の話に耳を傾けて、俺が遭遇した魔物襲撃と同じような話がないか聞いていたがなかった。
「お次の方、どうぞ」
俺の番が来たらしい。アイテムボックスからカードを取り出し門番に渡そうとして、その男がカードの作成につき合ってくれた青年だった。
「はい。身分証の作成をしてくれた人だよな?」
無愛想な話し方に感じるだろうが、トワが親しい者以外ではこんな話し方になる。
「もしやあの時のトワさん・・ですか?無事にギルド登録出来たようでよかったです」
どうやら間違いではなかったようだ。ちょうどいいので、ユルイエの森について聞くことにした。
「今日向かった”ユルイエの森”について確認したいことがあるんだが、時間は取れるかな?」
「丁度、今日の勤務が終わりますので、交代後で宜しければ私が伺いますが?」
タイミング的に丁度、良かったらしい。トワとしても異存はないので”渡りに船”である。
そんなことを入っている内に、交代する兵士が来たので二人は移動した。
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着いた部屋は、待合室とは違った場所だった。木の机に椅子、ランプ?の様なモノが置いてあるだけである。
「そちらに、座って下さい。飲み物をお持ちしますので」
3分くらいだろうか、待っていると”木製のコップ”を持ってきた。
「アルロースの茶葉ですが、癖がなく心は落ち着くので、お飲みください」
鼻を近づけると、”爽やか”なミントティーみたいだった。一口飲むと、スッと気分が落ち着く気がした。
「それでは、お話を伺いたく思います」
こちらの精神が落ち着いたのを感じたのか、流れを作ってきた。
「先程まで”ユルイエの森”に依頼で行ったのだが、あの森は初心者向けと聞いていたのだが、異常にモンスターと遭遇したのだが元々多いのか?」
俺の言葉を聞いていた青年兵士は、驚いて詰め寄ってきた。やはり今日の経験は異常だったようだ。
しかし青年の口から出た言葉に、俺は事態の重大さを自覚した。アテンドールの”勇者召還”が俺の脳裏で警鐘を鳴らしていた。
「ユルイエの森は初心者向けと言うだけあって、モンスターの出没はかなり少ないです。私の体感で”30分で1~2匹”くらいだったと思います」
その言葉に、俺は頭を殴られたような気がした。
「悪いが・・・今回俺が遭遇したのは、4時間分の時間で”100匹”は越えたと思うぞ?」
そう言い、俺は懐からカードを取り出し、『討伐情報』の項目を表示させた。改めてみると、結構な数のモンスターの討伐をしていた。常時依頼の討伐はホーンラビットだけで、他のモンスターは今回の依頼対象外になるので収入的には利益が出るが、依頼的には”骨折り損”としか言いようがない。
*冒険者討伐表
一角魔兎 50
猪魔獣 20
狼魔獣 40
小鬼魔獣 70
中鬼魔獣 6
魔鬼魔獣 2
剣鬼魔獣 2
鶏魔獣 10
少々・・・かなりか?討伐数が多かった。全部で200体ものモンスターを倒していた。
ゴブリンが一番多いのは、探索中”巣”らしいものを見つけて壊滅させたからだ。ゴブリンメイジが魔法を使ってきたので、この世界の魔法がどの様なものか少し理解できた。このまま見せて大丈夫か気になったが、黙っていたせいで対応が遅れ、街が滅んだとかは嫌なのでそのまま見せた。
「!!なんですか!?この数は!!」
案の定、驚かれた。討伐数もそうだが、話を聞いていると”ゴブリンが『巣』を作っていた”ことの方が、一大事みたいだ。
「全部で80匹もゴブリンがいただと?いうのか・・・・。これは私だけでは、判断できない。
すみませんがトワさん、このカードを南門の警備主任に見せても構いませんか?」
「俺を変なことに巻き込まないなら、その警備主任に見せても構わない」
俺がそう言うと青年は、部屋を出ていった。時間にして5分くらいだろうか?
部屋の外から、金属音が近づいてきた。鎧の当たった音だろうか?
「すみませんお待たせいたしました。こちらの女性が、南門の警備主任です」
「トワ殿でよかったかな?私が南門の警備主任の”リヴィエルナ・クラウセン”と言います。
再度同じことをお聞きして申し訳ありませんが、私にもお話願えますか?」
警備主任は女性だった。顔は小説とかでよくある『麗人?』と言うのか、美しさの中に凛々しさを兼ね揃えている感じだ。ちなみに身体は、”女性であることを強調している”とだけ言っておこう。
俺は先程青年に話した内容を、リヴィエルナ氏に話した。所々詳しいことを、補正しながら森でのことを話した。
「そうでしたか・・・。町を護る兵士としてだけではなく、一人の女としても貴殿の奮闘に感謝いたします。
残念なのは、今回拐われていた女性が皆亡くなっていたことです」
悲痛な面持ちで、下を向く彼女に”知識では必要ないこと”を行おうとした。それは、犠牲者の遺品の家族への返還だ。
本来、冒険者は”モンスターの巣内の金品”と”盗賊の略奪物”を回収した場合『それは討伐者に対する報酬であり遺族または、被害者に返品する必要はない。』とある。これは、冒険者が積極的に対応に当たるように国とギルドが話し合い決めたものである。だから、本来ならしなくてもいいことをするわけだ。まあ、前例が無いわけではないが・・・・・・。
「今回、回収した物品の中で、”犠牲者の遺品”は遺族に渡そうと思う。
あくまで・・カードを持っていた数名に関してだが」
「・・・・・・感謝致します。ですが、よろしいので?そのままお持ちいただいても、誰も文句は言いませんよ?」
「失礼な言い方ですが、『それ以外の物品・金品』でもかなりの儲けになるんだ。それに可能なら、家族の元に帰してやりたい・・・」
俺の言葉に彼女は、顔を伏せ涙を流した。もしかすると、行方不明者に彼女の友人でも居たのかもしれない。
無言で彼女の頭に、手を置き撫でる。(手は洗ってあるから、臭いはないはずだ。)ピクッ!っと反応はあったが、撫でられるままになっていた。それを見つめる青年の顔が何故か、”驚愕”を現していた。
「すみません。見苦しい姿をお見せしました。貴殿の好意に対し、必ずや家族の元にお返し致します」
「聞いていいことか分からんが、そこの青年が驚いていたが何かあるのか?」
その言葉を聞いた青年は、必死の形相で顔を横に振っていた。仕事上だけでない、上下関係が見えた気がした。
「貴殿の対応をしたのは、私の実弟になる。あとで、きちんと躾るので気にしないでくれ」
青い顔をした青年に、同情しないわけではないが『強く生きろ』と心の中でエールを送った。
「まあ・・構わないが。遺品で分かっているのは9人で、不明が10人になる。9人分は個別に布・・・悪いが衣服でまとめてある。残りの10名分は、一応そのまま貰っていくが何かあるかな?」
女性の目を見て、訪ねる。彼女は少し悩むが、話をしてくれた。
「実は、親戚に当たる娘が一人行方不明なのだ・・・・・」
「そうえば、なんか他のと違う死体があった。・・・確か、これだ」
アイテムボックスから、件の物を出す。その死体は他の物と比べても、”新しく、全体的に綺麗”だった。下を噛んで死んでいたが・・・・・・。その事を彼女に言うか少し迷ったが、話した。
「そうだったのか・・・。これだね?
間違いないよ・・・。エリーの物だ。実は、昨日帰ってくる予定だった彼女の馬車が帰って来ていなかったのだ。1・2日くらいの遅れは当然あるんだが、まさかゴブリン共に襲われていたとはな・・・・・・」
「そうだったのか・・・。気をつかえなくてすまん。
他の死体は、念のため燃やしたんだが・・・彼女に関しては、保管してある。俺が殺したと因縁をつけられないように・・・・・・」
無知のトワとしても、服が所々破れていても貴族に見えた彼女も燃やすと、親族に恨まれるかもと”直感”が囁いたのである。
「彼女の・・エリーを家族に帰させて貰えないか?エリーの両親には、今夜話に行くし遺品も含めて、謝礼金を払う・・・・・・。だから・・頼む!」
そんな彼女の弟は、呆然としていた。もしかすると、想いを寄せていたのかもしれない。
「最初に言ったが、『身元がわかる分は、家族の元に帰す』といったろ?
でも、先に遺体の確認をしてから、親御さんの方に連絡した方がいいと思うんだが?」
申し訳なさそうに、トワは微笑んだ。兵士姉弟は涙を流した。
二人が泣き止んだので、ギルドに向かうことにした。
ギルドの扉を開けると、何故か登録をした女性の場所だけが空いていた。皆、避けていないよね?
「おかえりなさい。依頼はどうでしたか?」
「ああ・・問題ないよ。依頼の報告と、重要な話があるんだが、ここの責任者と女性の人に対応してもらいたい事があるんだが、対応できるかな?」
「後ろの兵士の方が関係するのでしょうか?」
「お嬢さん、申し訳ないが”リヴィエルナが来た”と言って、例の部屋に呼んでくれないか?
あと、悪いがお嬢さんにも手伝ってほしいんだが・・・」
リヴィエルナは受付嬢にそう言った。かなり真剣な顔だったのは言うまでもない。
「か、かしこまりました!!少々お待ちください!!」
「(貴族だったとき・・・”エリー”と呼ばれた女性の『死』は、俺にどんな影響を与えてくるのだろうか?)」
トワ自身、あの女性が貴族であっても驚かない。元々可能性の一つとして考えていたからだ。しかし、それにより自由が奪われることの方が問題である。活動自体が果たせなければ、”この世界が滅んでしまう”そのことが今回のことで実感として感じられた。
最悪、この国を捨てることは現時点では問題ない。しかし、一国が滅亡したらこの大陸からの貴重な『戦力』を失うことになるのは、いくらなんでも避けたい。
「トワさん、私たちが貴方に迷惑はかけないように配慮いたしますので、可能でしたら最後までご協力をお願い致します」
門番の青年の拳は、青くなるほどに握りしめている。余程悔しいのだろう。
「心配かけたようだな。それに・・・え~っと「クロードです。」すまん。
クロードの方が年上に感じるから、もう少し崩した話し方をしてくれると嬉しい」
「もしかして・・老けて見えますかね?(笑)
実は、昨日17になったばかりなのですけど・・・・・」
「同い年か!それなら、敬語などはなしで話してほしい」
そう言いながら、トワはクロードに手を差し出す。それに気づいたクロードは、表情を崩して手を握りしめた。
「わかっ・・た。これから、色々あるだろうけどよろしく頼む」
「おう。手伝える可能な範囲は、力になりたいと思っている」
俺は、クロードに対して笑顔で答えた。力になりたい思いは本物だ。
これが、何かの”引き金になるのかは分からない”が少しの寄り道くらい構わないだろう。
「男同士、なに笑っているのよ?」
「ふむ。男同士の友情に、焼き餅をしているのか?」
トワは、ズバッと切り込んだ。恐らく彼女は、仲間はずれが嫌なのだろうか?
恋愛関係に疎いトワには、彼女が何を考えているのかは分からない。
「わた・・「おう!待たせたな!エルナの嬢ちゃん待たせっち待ったかい!?」し・・・・・・」
彼女の言葉を遮ったのは、野太い声だった。この声の主が、このギルドのマスターなのだろう。
一目見て思ったのは、『クマ?』と言う感想だった。
「彼は、ガゼットさんです。私と姉さんに剣術などを教えてくれた、師匠に当たる人だ。
クマタイプの獣人で、剣術や体術を得意としている」
クロードは、俺が何か言う前にクマ?の紹介をしてくれた。次の言葉に、今日一番の衝撃を受けた。
「先程、呼びに言った受付嬢の父親になる」
「おっさんの遺伝子負けてるじゃん・・・・・・。唯一、親子と言えるものって”瞳”くらいじゃねぇ?
むしろ、母親の遺伝子が強くて良かったんじゃねえの?」
歯に布を着せぬ言いように、クロードは息を飲んだ。
「おうおう!坊主、言ってくれんじゃねぇか。まあ、妻に似て別嬪に育ったからって、手を出そうものなら絞めんぞ?」
「クマに吠えられても、怖くないぞ?むしろ山ほどいた”ゴブリン”の方が、ゴミゴミしていて鬱陶しかったくらいだが・・・」
そんなギルドのマスターに、辛辣な言葉を返すトワである。退治したトワからしたら、全周囲を囲み魔法やら使ってくるゴブリンの方が面倒で鬱陶しい。
「おとうs・・「別嬪さんって自慢する割りには、おっさんの娘がいる”受け付け”無人だったぞ?誰一人も並んでいないのは、おっさんが原因だろ?
このままじゃ、娘さんは嫁ぎ遅れっちまうぞ?」ん・・・」
受付嬢の言葉を遮り、トワはギルドマスターの存在を否定する。”娘の恋路の邪魔”だと言い切った。
実際問題、娘さんは彼氏がいない。それどころか、口説かれたことすらない。「父親が元凶かも?」と最近、割りと本気で思い始めていた。
「なんじゃと!?娘に付く悪い虫を追い払って、何が悪い??」
おっさんの親バカっぷりに、軽く引いたトワであった。
「おっさんのことは置いといて、音が漏れにくい個室はないか?」
「こちら・・・になります」
「トワに怖いものは、ないのかい?」
呆れた声のクロードに、「別に?」と答えたトワであった。
通された部屋は、個室というにはあまりにも広かった。これからが、話の本番になる。
自分の方を向いた、4人に森に入ってからのことを話し始めた。
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次回の更新は3月10日の予定になります。




