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俺式異世界冒険譚!  作者: 明智 烏兎
最終章 ~俺式オープンエンド!~
79/80

エピローグ

 この庭を最後に見たのは、もうずいぶんと前の事のように思えた。かといって、つい昨日の事のようにも思えるから不思議だ。

 俺達──俺とルナとリピオ、そしてセイラは帰って来た。全てが始まった、この場所に。


 思えば、色々あったな。

 楽しかった事、苦しかった事。

 悲しかった事、嬉しかった事……それら全ての、出発点。

 無事に目的を果たし、一回りも二回りも大きく成長して……俺達は今日、この場所に帰って来た。

 扉が開き、懐かしい顔が俺達を迎えてくれる。


「ただいま、お父さん。お母さん」


 ふと、思った。

 俺は、ルナのこの台詞を聞きたくて旅をしていたのかもしれない、と。

 始まりは、新たな始まりを幾つも生み出した。アポカリプスを取り戻した事も、一番目の始まりが終わりを告げたにすぎない。


 密かに、心配していた事がある。

 アポカリプスを取り戻してここに帰って来た時、俺は役目を終えて元の世界へ帰ってしまうのではないかと……。

 しかしその心配は今、取り払われた。俺はまだ、【グランスフィアここ】にいる。

 変わり映えしない毎日の中で思い描いてきた、夢があり、笑いがあり、涙があり、恋があり……冒険がある、この世界に。

 今またこの場所が、新しいスタートラインとなる。俺の旅は、まだ続くのだ。


「じゃあ……ガナッシュさん、レイアさん、ルナ、リピオ。俺、精霊界に行ってくるよ」


 今度はセイラの兄を探す旅だ。それが終わっても、まだ旅は続くけど。

 それに新しい旅の途中で、また新しい始まりを見つけるかもしれない。

 でも……それでもいつか、俺は必ずここに帰ってくる。だってここは、スタートラインであると同時にゴールラインでもあるのだから。

 だから待っててくれよな……ルナ。


「……待ってるなんて……やだ」

「えっ?」


 思わず、俺は聞き返す。もちろんしっかりと聞こえていた。

 それでも、俺は聞き返した。心のどこかで期待していたその言葉を、もう一度聞きたくて。


「待ってるだけなんてヤダって言ってるの! だから、そのぉ……わ、私も一緒に行ってあげる。……だ、だってほら! セイラちゃんにはアポカリプス探すの手伝ってもらったし、友達だし!」

「本当!? ありがとぉルナちゃん! うんっ、一緒に行こうよ!」


 無邪気に飛び跳ねて喜びを表現するセイラ。よっしゃ! これで役者は揃ったな。


「それじゃガナッシュさん、レイアさん。ルナとリピオ、もう少しだけお借りしますんで」

「うむ。ふふ、やはりルナを旅に出して本当に良かったよ。こちらこそ、ルナをよろしく頼むよ」

「はい! 頼まれました、任せといて下さい」

「はは、頼もしいな。では……この旅に『ゼークヴァリス』の加護が……」


 今までにも何度か聞いた、旅の安全を願う言葉。だが、それはいきなり俺達の背後から放たれた一瞬の閃光によって中断させられた。


「な、何だ今の光!?」


 俺は素早く背後に振り向く。

 剣の柄に手を掛けて目を凝らすその場所には、一人の女の子が立っていた。し、しかも……全裸で馬車に繋がれている!


「んっ!? ちょ、ちょっと待てよ……?」


 純白の頭髪から伸びる、二対の長い獣耳。二股に分かれた細長い尻尾。それらの特徴が、本来そこにいるべき生物を連想させる。

 この現象は……リピオが人間になった時と同じ。つまりこれは、アガムキメラの転成か!? な、何で今さら……? ってゆーか、この子……。


「みゅ……ミュー、なのか?」


 恐る恐る、謎の少女に問い掛ける。

 何が起こったのかという表情で自分の両手を見つめていた少女は、急に何かを思い出したように叫んだ。


「カエデ様、お願いです! ……どうか……どうか“フィアル様”を、お救い下さいッ!!」



 ○   ○   ○



 この旅の終わりは、真の旅の始まりを示唆する序章でしかなかった事に、今の俺達は気付いていなかった。


 一つは終わり、一つは始まる。

 連鎖する運命の果てで、俺は何を成すのだろう。

 忘れてはいないか……あの時の、始まりの言葉を。


 『……助けて……わたしの声が届いたなら、お願いです。どうか……運命モロスを断ち切る剣になって……』




 ~俺式異世界冒険譚!~   完

 俺達の戦いはこれからだ!

 ご愛読ありがとうございました。明智烏兎先生の次回作にご期待下さい。


 え~と……冗談じゃなく、これで本当に終わりです。どう見ても続きがありそうですけど、終わりなのです。

 なぜかと申しますと……それを次回、本文を使って書いてみようと思います。作者の後書きみたいなものですね。

 「そんなモンには興味ない」という方もいらっしゃるかもしれませんが、ここまで来たら是非最後までお付き合い下さい。

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