79 心の声「うわぁあああああああ!」状態です。
短めですが、これ以上伸ばすとギャグが入ってきてしまうので……。
「クレス。隣、良いですか?」
「ああ。」
私が来ていたこと、気付いていたんだろうな。こちらを見ていないのに、反応はごく自然だった。
クレスさんの隣に設置されていた、ひっくり返ったバケツに腰掛ける。クレスさんと同じように川の方を向いて座り、空を見上げた。
煌く星と、近くを飛ぶ蛍の様な存在が、まるで星の中を漂っている様に錯覚させる。
霊体化していた時に見た星もとても綺麗だったけれど……クレスさんの隣で一緒に見る星の方が断然綺麗に感じた。
「綺麗ですね。」
「……そうだな。」
そして静かに過ぎる時間。
この、何も喋らなくても心地よい時間をクレスさんも同じように感じてくれているだろうか。私の独りよがりじゃないだろうか。
「怪我もなく無事に帝国を出られましたし、私って恵まれていますね。」
今回の騒動を思い出しながら苦笑気味に言うと、クレスさんは顔を下に向けてしまった。
「チカ。今回はすまなかった。」
「え?何がですか?」
「俺が油断したばかりに、チカは大変な目にあっただろう?」
「それは、クレスのせいじゃないです。私も油断しまくっていたんです。」
そう、コランさんの報告で知った。私は油断した行動が多かったのだ。だから聖女と疑われて誘拐される羽目になった。完全に自業自得。クレスさんはそれを助けてくれただけなんだから。
「クレスが負い目に感じることなんて何もないです。」
「……。」
「それに、私はちょっとラッキーって思っちゃったんです。」
「ラッキー?」
「はい!だって、助けに来てくれたんですよ?めっちゃかっこ……いい……人が……。」
クレスさんは悪くないって事を言うつもりが……。勢いでやばい事言ってるぅぅぅーーー!
私も下を向く事になってしまった。恥ずかしい……。
あぁ……でもちゃんと言わないと!
「そ……その、だから!私はクレスのせいだなんてこれっぽっちも思っていないんです!……助けに来てくれて、本当にありがとうございます。クレス。……嬉しかったです。」
「そうか……。」
さっきの発言について聞かれることも無く、クレスさんは黙ってしまった。
しばらくして、顔を上げたクレスさんがこちらを向く気配がした。つられて私もクレスさんの方を見る。
ちょっとだけ困った顔。でもそこに後悔のようなマイナスな気持ちは見られない。さっき私が言った事、ちゃんと伝わったのかな?
私はどんな顔をしているだろうか……。頬が赤い事だけは間違いないと思う。
「俺は……申し訳ないという気持ちと一緒に……本当は少しだけ、残念に思ってしまったんだ。」
「残念?」
「ああ。……チカにキス出来なかった事が。」
「キ……。」
そこでその笑顔!反則ですよ!うわぁーーー!
絶対さっきより顔赤くなっているよね!?耳が、耳が熱いよ!
「チカが誘拐されて、暴れてしまいそうなほど怒ったし、自分の不甲斐なさに苛立った。そのあと帝都に着いて、チカが眠らされている事、起きるのにはキスをしなければならないと知って焦った。誰かにチカが……そう思ったら一人で城に乗り込んでしまいそうになる程、焦った。次の皇帝の妃にされる予定と知って……城ごと破壊してやろうか、とも思ったな。」
まって!待って待って!
そんな事言われたら……私嬉しくなっちゃうよ!いや、お城壊しちゃうとかめっちゃデストロイヤーで危険思考だけれども!でも……私の事を思って、そう考えちゃったって事でしょう?
そんなの……嬉しくなっちゃうに決まってるよ……?
「結局、キスの機会はスライムに奪われてしまったがな……。」
「スライム君……。」
め、が聞こえないように呟いた。スライム君めって言ったら……私も残念に思っているのが丸わかりだもんね!途中で気付いて言わないようにしましたよ!
ど、どうしよう……なんかめっちゃ嬉しいカミングアウトされちゃった……。どう反応して良いのかわからないよ!
「チカ。」
「……はい。」
恥ずかしすぎて、いつのまにか下に向けてしまっていた視線をクレスさんに向ける。
クレスさんの顔……赤いや……。
「好きだ。」
「っ!!」
「この先も、ずっと一緒にいたいと、誰にも渡したくないと思うほどに……愛おしいと感じている。」
嬉しい。嬉しいよぉ。嬉しすぎてちょっと涙目になってきちゃった。
……私もちゃんと言わないと!
嬉し涙が溢れないように、ゆっくりと息を吸って……。
「クレス……私もクレスの事、好きです。……帝国で眠らされた時、キスされるのなら、クレスが良いなって……思っていたんです。助けに来てくれるって言ってもらえて、すごく、すごく嬉しかったんです。ずっと一緒にいたいなって……。」
その先は言えなかった。
クレスさんの手が私の頬に触れて、顔を少しだけ持ち上げられる。目に入ったのは、クレスさんの優しく下がった目尻。ゆっくりと近づいてきて……私のまぶたは自然と閉じた。
優しくて、甘くて、軽く触れるようなキス。
嬉し涙が堪えきれなくて、一粒だけ落ちてしまった。
胸が喜びで満ちすぎて、苦しいくらい幸せを感じた。
恋愛タグさん、とうとうゴールを決めましたーーー!
芝生の上に膝立ちになって両拳を上げて震えております!よほど嬉しいのでしょう!
……ちなみに
お姉さん「動けぬと言ったが、見れぬとは言っておらん。ほっほっほ。精霊を通じてバッチリ見てやろうぞ。やはり、恋は良いものよのぉ。」
ペドリット君「……ははうえ、もう起きても良い?」
お姉さん「おぉ、忘れておったわ。もう良いぞ。そこの器どもとスライム、そなたたちはダメだぞ。」
人形達&スライム君 (ショボーン)
という事が家の中で起こっていましたとさ。
次が一応の最終話になる予定です。お読みくださってありがとうございます!




