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69 すごく、悪い子になった気分です。でも楽しいんです!

 さぁ、そろそろ怒りの鉄槌を下しましょうか!うふふふふふふふ……。


 「チカさんや……お顔が怖くなっておるのぉ。」

 「ふふふふふふ。」


 と言っても、準備はすでに完了しているのです!


 ユランさんのお話を聞いた後、お城に細かくお店を展開して、見えない迷路のようにした。

 クーデター開始の合図とともに、BL設定をして迷路のスタートだ。


 ちなみに、お城の外へ出るゴールは無い。中にはずっと同じ道をグルグルするようになって、出られない状態になる人もいる。


 皇帝の子供たちは中庭へ、皇帝タガロスは謁見の間にたどり着くように。その他の兵士さんは大広間みたいなところに、文官さんたちは食堂に行ってもらって、その他の人はずっとグルグル……。

 といってもみんなバラバラにいるから、その辺は後で調整するつもりだ。


 ……ラピスちゃんだけは別の部屋。ユランさんと連絡をとっている人が、ラピスちゃんは確保しておいて欲しいって言っていたそうなので。


 そして、クーデターの参加者さんたちは自由にお城内を歩けるようにする。


 お金を気にせずスキルを使うことなんて、きっとこの先もそうそう無い事だから、目一杯有効活用させてもらった。お金の心配が無いって、ちょっと楽しい!なんだかハイなテンションになりそうだよ!

 無駄に、あっちこっちにスキルを使ってしまいそうになるウズウズ感をなんとか抑えている。


 あーーー!もっといっぱい使ってみたい!どこまでお店出せるんだろう?このスキル……。可能性は……無限大?いや、お金の制限が無ければの話だけど!



 「そろそろかのぉ……。おぉ、合図だの。」


 ユランさんがそう言ったタイミングでドンッ!と一つ、大きくて低い音が響いた。まるで空で花開いた花火のような音だ。

 これが合図なんだね。


 「はい。では、設定を変えますねー。」


 私とユランさんはのんびりしたものだ。出来ることが少ないからね。私はスキルのBL設定を変えたら、後はあちこち見に行く予定だ。ユランさんは重要そうなところを回って、必要なら情報を送る予定らしい。


 あ、ちゃんと、ユランさんの体があるところにもバーリアーを張ってあります!体を人質として使われたら大変だからね!

 コックさんたちはお城から出て行ったのを確認済みです!



 「スキル『コンビニ経営』、BL設定。」


 設定画面が出てくる。いっぱいお店を開いている事になっているから、上にタブみたいなのが出ているんだけれど……数が大変な事になっている。お店二つの時は、画面が横に並んでいたんだけれど、たくさんになるとこうなるんだね。タブがいっぱい並んでいると、早く閉じないと負担ががが!って焦るよね。このスキルにはそんな重くなるような事は無さそうだけれど。

 設定は……。


 「お城に住む人、働く人っと。」


 これで、急に見えない壁が出来た事でしょう。みんなびっくりするかなぁ?

 後は要所要所に文官さん、とか兵士さん、とかを入れないといけない場所があるので、そこへ向かって、細かく設定する。あの人は行けるのに、自分は行けない!とか、面白そうだよね。


 あっちそっちで、ウワァ!とか、ブヘッ!とか聞こえる。ふふふふ……。


 「楽しそうだのぉ……。」

 「はい!とっても楽しいです!」


 困惑する人の声がこんなに楽しいなんて……。いたずらが大成功した時のような感じだ。


 「それでは、私は振り分け地点の設定を確認してきますね。」

 「うむ。みんなが来るから早くしないとのぉ。私は皇帝の様子を見に行くかのぉ。」


 私とユランさんは分かれて、それぞれの仕事をしに行く事にした。



 私はみんながよく使う十字路の通路に来た。

 分かれ道の手前でみんな見えない壁にぶつかっていた。


 「ダメだ!なんなんだ!この壁は!」

 「何をしても、びくともしないぞ!」

 「もうダメだぁ……おしまいだぁ……。」

 「トイレだけは行けたから良かった……。」

 「どの部屋にも入れないし……ここも行き止まりだとすると……俺はどうやって明日の仕事をこなせば良いんだ……。」


 トイレだけはどこの道の人も行けるようにしておいたんだ……良かった絶望する人が出なくて。トイレへの道は、すごく悩みながらお店を展開したんだよー。

 そしてなんだか仕事熱心さんがいる気がする……。見えない壁の摩訶不思議よりも、明日の仕事を心配するとは……お主、社畜だな?



 さて、兵士さんはこの十字路を通れるようにして、文官さんたちが通れる道はあっちだからここはダメで……。


 急に十字路へ足を踏み出せた兵士さんの一人はつんのめって転んだ。

 文官さんはそれを見て尻餅をついてビックリしている。しかし、尻餅をつきながらも見えない壁に手を伸ばして自分も行けるのか確認する。そして行けない事にまたビックリしていた。


 「これは……罠なのか……?」


 ビビってるビビってる。私が同じ立場でもたぶんめっちゃビビると思う。

 怖いから進まないというのも手だと思うし、進んでいって予定している部屋にみんなで集まっても良いし。


 この見えない壁は分断するためのものだからね。後はクーデターの人たちが良いようにしてくれるでしょう。ユランさん曰く、血を流さないクーデターって言っていたし。


 要所の設定を確認した私は、お城に入ってきているであろうクーデターの参加者さんたちを見に行く事にした。


 ……クレスさんいるかもだし!






 というわけで、お城の外にやってきました。


 絶賛、土煙が上がっております。

 まだ兵士さんたちと会ってもいないよね?なんで?



 「ほらほらほらほら!もっと早く動かないと怪我しちゃうよー?」

 「ぐっ!」

 「っ!はぁ……はぁ……。」


 なんだか聞いたことある声が聞こえるなー……。

 しかも辛そうな声の方も聞いたことある気がする。うん、たぶん馬車で帝国に向かっていた時に聞いた声だ。


 土煙の場所へ行くと、なんとなく見えてきた。何故、なんとなくなのかは……見えないから。

 見える場所まで近付いたのに、見えない。何これ。


 マディラさんの楽しそうな声が聞こえるんだけれど、姿がはっきり見えない。動きが速すぎる……。たまに溜めたような動きの時だけ、それっぽいのが見える程度だ。マディラさんが戦うところってほとんど見たことが無かったんだけれど、こんなにすごい動きをする人だったんだね。素で残像だ!をやっちゃう系だったんだね。


 そして、苦しそうな声の主はマータさんとビータさんだった。こっちは、まだ見えた。

 マディラさんが楽しそうに攻撃しているって事は、あのお二人が帝国から入ってきていたスパイで、獣人兄弟のお姉さん達なのか……。



 というか……めっちゃ打撃音聞こえるんだけれど……。血を流さないって、打撃系で行くよ!って意味だったのかな?


 「冒険者をやっているんだからわかってるでしょー?魔物との戦いで邪魔をするっていう事がどういう事か。ここでしっかり反省するんだねー。」


 マディラさん、笑いながら獣人姉妹を叱っていました。

 獣人姉妹は返事どころじゃなくて必死に応戦していた。


 二対一でこの圧倒的!感。マディラさんすごーい。


 でも、そろそろ許してあげて。もう姉妹の体力は限界よ!……たぶん。




 それからしばらくして、マディラさんのお怒りは鎮まった。獣人姉妹は頭に大きなタンコブが出来ていた。……痛そう。

 座り込んでしまった獣人姉妹を縛って転がしたマディラさんは、手をパンパンと叩くと満足げな顔をしていた。


 クーデターの人員っぽい人が、獣人姉妹に近付いて何か話している。それを聞いた姉妹は目を大きく見開いてから、なんとなく安堵したような顔をしていた。


 「はぁー。やっとスッキリしたー!さてと……次は息子たちかー。少しは戦いごたえがあると良いなー。」


 マディラさんはそう言ってゆっくりした足取りでお城に向かって行った。楽しそうだなー。


 皇帝たちが仕込んでいた、クーデターを混乱させる罠はこうしてあっという間に収められた。クーデターの人員さん達にはなんの支障も出ていないように見えた。良かった。



 ちなみに、クレスさんは見当たらなかった。別の場所にいたのかな?


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