44 出来上がった作品は、足と耳が取り外せて、犬にも猫にもなるぬいぐるみでした。家庭科の先生、ドン引きしてました。
お米の老化現象の事を間違えてα化と書いてしまっていました。
正しくはβ化ですね。
誤字報告で教えてくださった方、ありがとうございました。
朝ご飯を終えて、みんながそれぞれの仕事を始める。私も昨日の続きをしよう。
子供達に、けんけんぱの難しいのが完成したからやって欲しい!とせがまれて、ちょっとだけ一緒に遊んだりしたけれど……真面目にやったよ。あの丸の大きさは絶妙だった。片足ジャンプ、限界への挑戦!って感じだった!
……はい。脱線したことは反省しております。
昨日もらった、もう食べないコッメをスライム君に精米してもらい、普通に炊く。炊けたコッメを木のボウルに入れて、あまり人のいない場所へ移動。
炊けたコッメを木べらを使ってひたすら練る!出来るだけ粒を綺麗に潰すように練る!ちょっと水分少ないかな?って思ったら少しずつ水を足してー……。
ねるねるねーーーるねる!……はぁ。腕が疲れるぅ……。
お米は、炊いたあと冷蔵庫などで保存するとβ化するんだって前にテレビで見た。それが今作っている物に関係しているのかはよくわからないけれど。テレビの知識ってこんなものだよね。β化したらどうなるんだろうね。ただ、冷蔵庫で保存すると味が落ちるって昔お母さんが言っていたから、良くないんだと思う。ごはんを保存するときは冷凍だね!
完成したものは、簡易お米ノリ。ここではコッメノリかな?本当はもっと細かくペースト状にしないといけないんだと思うけれど……そんな余裕も筋力もない!とりあえずこれで試してみたら良いかな。
完成を喜んでいると、いつのまにかコランさんがやって来ていた。いつもの貼り付けた笑みに、若干の疑問が浮かんでいる。
「これは何なのだ?」
「コランさん、こんにちは。これは羽付きモモ達を捕らえる罠の試作です!」
そう。リスペクトするGホイホイ様。その肝腎要の部分も真似できないかと思って作ってみたのだ。
木の板にたっぷり塗って、その辺の木に立てかける。
ちょっと離れた所から石を投げて、当たった後落ちなければ成功だと思う。
「てやっ!」
ポーン。
ポテ。
あれだ。ノーコントロールだったの忘れてた。板に石を当てることも出来ないのでは実験にならない!
「コランさん。はい。」
「……投げて板に当てれば良いのかね?」
私はこれでもか、と営業スマイルを作ってコランさんに石を渡した。コランさんと勝負になるくらいの貼り付けた笑顔だろう!二人を見て比べてくれる人がいないから、どっちが勝ちかはわからないけれども!
コランさんは、意図を汲んでくれたようだ。よかったよかった。
ヒュン!
ペチャ!
「「おぉ……。」」
コランさんの石の速度にもビックリしたし、石がペチャついて落ちなかった事にもうれしい驚きだ。二人で声が揃ってしまった。
これを罠として、唯一コッメ畑が見えるところに設置出来れば、Gホイホイ様の真似をした!と堂々と言えるだろう!……堂々と言って良いのかな?
とにかく……これで、みんなで羽付きモモをひたすら仕留めるという苦行の手助けが出来るのではないかと思う。
コランさんがとても感心したように私に向かって何度も頷いて言った。
「素晴らしい。この食物の特性をよく分かっていないと出来ないだろう。」
「いえいえ。……食べた時に水分が多く、噛んだ時の粘りが気になったんですよー。ははは。」
研究者気質なコランさんは私を褒めてくれているんだろうけれど、私はコッメにそんなに詳しくはないって事をアピールしておかないと……。
「ふむ。確かに粘りはあったな……。しかしそこからここまで発想を広げるとは……ブツブツ……。」
「ははは……。」
誤魔化せたかな?このまま二人でいるとスライム君の時みたいに質問攻めされそうだし、誰か人のいる場所に移動しよう。
コッメノリが入った木のボウルを抱えて、人がいる場所はどこかと彷徨った。
チラッと後ろを見ると、当たり前のようにコランさんも付いてくる。いいよ!付いてこなくていいよー!
家の立ち並ぶ方へ行くと、村の女性達がみんなで何かをしているのが見えた。
もうあそこだ!あそこしかない!黙って後ろから付いてくるコランさんとの間の持たせ方がわからん!とりあえず突撃しよう!
「お邪魔します!皆さん何をしていらっしゃるんですか?」
「んー?あぁ、冒険者のお一人さん……お二人さんだなぁ。」
「オラたちゃぁ刺繍さ、してるだー。」
「ほれぇ、これだぁ。」
女性の一人が見せてくれた。白い生地にたっぷりと刺繍されている。ここまで作り上げるのは相当時間がかかっただろう。
縦一メートル、横四十か五十センチくらいの幅の生地で、一本の大きな木が刺繍されている。その緑豊かな木には色とりどりの花が咲いていて、白や青の鳥が今にも木に止まりそうな様子が描かれている。
「……綺麗ですね。」
「あんがとなぁ。刺繍は女の魅力だー。良い刺繍が出来るかどうかで、良い女かどうかがわかるんだ。」
「なるほど。……あ、もしかして、家に掛かっている布って刺繍だったんですか?」
この村に来た時に目を引かれた綺麗な布。今までぜんぜんキチンと見ていなくて、綺麗な布だと思っていた。あれは刺繍だったのか……。
「んだぁ。ここの嫁ば、こんなすんごい刺繍が出来んだぞーって自慢してんだ。んで、嫁入り前の娘は、自分で刺繍したものを身につけて自分の魅力を男どもに見せつけるんだぁ。」
「素敵な習わしですね!」
丁寧に刺繍された布を返すと、別の女性がニヤリと笑いながら聞いてきた。
「あんたは刺繍できるんけ?」
「うぐっ。」
「……こりゃぁダメそうだなぁ。」
縫い物は……とっても苦手だ。小、中学校の時の家庭科の授業は辛かった……。子供向けの物を何か作れっていう宿題の時なんか、お母さんに泣き付いたからね……。
「ほれぇ、あんたもやんめぇ。」
「え、えぇ……。」
グイグイ来られて、断ることも出来ず……私は四苦八苦しながら刺繍を教わった。最初は笑いながら教えてくれていた女性達は、最後の方には残念な物を見る目だったよ……。うぅ……。
ちなみに、コランさんは私が唸りながら刺繍をしている時に、スゥーーっと消えていったよ。あの人、来る時もいつの間にって感じだったけれど、去る時もすごい影の薄さだったよ!でも私は気付いたもんね!去り際に、憐むような目で私の刺繍を見ていたからね!!憐む視線って気付くものだね!くぅーーー!
でも、私の歴代縫い物ランキングの中では一番よく出来たと思う!うん!簡単な図案の刺し方と、コツも教えてもらったから、暇な時に練習しよう!
刺繍を教わりながら、女性陣にも聞いてみた。
「羽付きモモが出た時、女性の方々は何をするんですか?」
「私らはなぁ、仕留めて皮を取ったモモの肉を捌くんよぉ。んで料理を担当さね。」
「……ほほぅ。」
料理は手伝えると思うんだけれど……捌く方は手伝えないです……ごめんなさい。見るのでいっぱいいっぱい。
「ん?じゃぁ、羽付きモモを男性陣が仕留めて持ってきてくれるまで、何をなさるんですか?」
「特に何もないさね。ただ、コッメが少なくなりすぎないように祈ってるだけだぁ。」
……という事は、女性陣は最初の方は意外と暇なんだ。
比較的強い女性が狩る側にまわる事もあるそうだけれど、基本は最初暇らしい。
なら、お手伝いしてもらっても良いよね?
刺繍教室が終わって、ふと足元を見ると、無残にもコッメノリが乾いて木のボウルに張り付いてしまっていた……。これ、取るの大変そうだなぁ……。
感想にて、気付いてくださった石臼の件ですが、
石臼→木摺臼にしようと思っています。徐々に直していく予定です。話の流れには変更はありません。
木摺臼だと玄米までで、そのあとは杵と臼で突いて精米しないといけません。
スライム君は籾摺りから精米まで一瞬……。スライム君、優秀だった。
追記
木摺臼への変更完了しました!
いつも誤字脱字誤用に気付いて下さってありがとうございます!助かります!




