表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/104

閑話 イケメン騎士の砕心

 イケメン騎士、レオナルドの視点です。

レオナルドは偽名のルードヴィッヒを名乗っています。

 結果から言うと、聖女の魔物退治は何の問題もなく終わった。


 聖女は、怖い怖いと私にしがみついていたのに、いざトドメを刺すという時には、無表情にメイスで殴りつけていた。私は魔物よりも、そんな聖女の方が怖かった。


 魔物を退治しに行ってから、影で言われているのが、撲殺聖女。

 無表情に何度もメイスで殴りつける様子は、一緒にいた兵士たちにも目撃されており、そこから広まったと思われる。刃物を持たせたくない、というアンタレス王子の要望でメイスになったが、もし刃物を持たせていたら、血まみれ聖女になっていたのかもしれない。


 「ルゥードさまぁー!」

 「ミレイ様。」


 聖女は走って近付くと、私の腕を取って、絡みつかせてくる。背筋が粟立つが、必死に我慢して笑顔を作る。

 魔物を退治しに行ってから、聖女に貢ぐ者が激減した。撲殺聖女が効いたか、それとも最近私にべったりな様子を見て諦めたのか……。冤罪をかけられることが無くなり、良かったとは思うが、勘違いされるのは勘弁願いたい。



 聖女は、他の者に強請ることはしなくなったが、代わりに私に言うようになった。


 「最近のドレスはレースがふんだんに使われた物が流行っているんですよね?私、このドレスにも飽きちゃったし……。流行りのドレスは私に似合うと思いませんか?」


 「口紅が肌に合わないみたいで、すぐに荒れちゃうんです。色ももう少し明るい方が似合うと思うんですけれど……。ルード様もそう思いませんか?」


 「蜂蜜って、お肌にも良いらしいんです。肌の荒れた聖女って変ですよね?……でも、蜂蜜って高いらしいんです。私には手が出せないなぁ……。」


 今まで貢いで来た兵士にも、こんな風に言っていたのだろう。ただ、流石にドレスなどは強請れなかっただろうから、そこは人を選んでいるのだと思う。なんとも狡賢いものだ。



 そして私は強請られるたびに、主人とマリアンヌに報告している。


 「今度は蜂蜜だそうです。肌荒れに使いたいのだとか……。肌が荒れた聖女は変なんだそうですよ。」

 「へぇ、蜂蜜ね……。肌にも良いんだね。マリアンヌ、今までそんな効能知られていたかな?」

 「いいえ。蜂蜜は甘味料としてしか使われていません。元々、採れる量が少ないため、研究にも使われていないでしょう。おそらく向こうの世界の知識だと思われます。」

 「なるほど。何か作れそうかい?」

 「……やってみましょう。」


 報告すると、それを利用した商品をマリアンヌ……この国一番の魔道具師、マリアが作るというのが定番になりつつある。

 唇に優しい口紅、髪に使うオイル、今回の蜂蜜を使った美容化粧品など、女性が喜ぶ品をどんどん作っているのだ。

 最近は髪を乾かす為のドライヤーなるものを欲していて、それをマリアは楽しそうに作っている。近いうちに完成するらしい。


 「悪いことばかりでも無いね。聖女も。まぁ、聖女じゃなくても良い事なんだけれどね。」


 ニコニコと楽しむように言う主人。新しい物がたくさん出来れば、他国に輸出する事でこの国も潤う。それは喜ばしい事だろう。


 「最近の聖女のステータスはどうなっているんだい?」

 「最近は人に見られる事を嫌って、一人でいるときに見ているようなのです。アンタレス王子にさえ、見せていないそうです。」


 メインである、ステータスの変化。聖女は最近ステータスを見せないようにしている。しかし、ステータスの出し方は未だにオープンな方なので、一人の時にひっそりと見ているようだ。


 「ふむ。マリアンヌ?」

 「はい。こちらに。」


 主人の机にスッと置かれた紙。聖女のステータスを書いた物のようだ。どうやって見る事が出来たのか、など……もう聞くのはやめることにした。マリアンヌは優秀なメイドだ。たぶん……。

 私も一緒に覗く。



  鈴谷 美麗   17歳   【強欲の魔女】

           レベル27

 HP 1890

 MP 1080

 力 35

 体力 70

 知能 12

 精神 40

 敏捷 22


  スキル

 【誘惑の光】【白魔法】【強欲】



 「これは……。」

 「彼女の願うままに叶えた甲斐があったかな?」


 聖女が欲した物を与え続け、聖女として堕落させる、という計画は思った以上に上手くいった。それも彼女が欲のままに生活していたおかげだろう。聖女から魔女になるとは思ってもいなかったが……。


 これで聖女は居なくなった。本来聖女が覚える、【聖女の御光】はこれで覚えられないだろう。


 【聖女の御光】は、聖女が高レベルに達した時に覚えられるスキルで、かつて喚んだ聖女は、そのスキルで国を半壊させる事が出来たらしい。国王達もそのスキルを覚えさせたくてレベルを上げていたようだが、その計画も崩れたようなものだろう。これで、聖女を戦争に使うことは出来ない。



 「あとは……時を見て、彼女が聖女に戻らないうちに、提案しに行こうか。」

 「はい。」


 満足そうな顔の主人を見る事が出来て良かった。

 ……私の精神を削った甲斐があったというものだ。はぁ……。

 聖女はジョブチェンジした!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ