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第16章 戦乱の風 東部山塊越(その2)

 シレンティウム行政庁舎、行政長官執務室


「まさかあなたがここにいらっしゃるとは思いもしませんでしたな」

「はは、まあ自分でもそう思う。ここへ来たのは爺さんの言付けでね、ま、半分は仕方なくと言ったところかな?」


 珍しく驚いた表情で言葉を発したシッティウスの目の前には、鎌と藁が入ったずだ袋を傍らに置いた小クィンキナトゥス卿こと、シレンティウム南街区に住む農民、グナエウス・クィンキナトゥスが座っていた。

 格好も農作業に適した動きやすく泥だらけの貫頭衣である。

 かつて帝都においては白亜の議場を舞台に丁々発止の議論をし、その爽やかな弁舌と揺るぎない信念で、市民派貴族の新たな指導者として名声をほしいままにした青年元老院議員の面影はそこに無い。


「…もう半分は?」

「もちろん、楽しんでやっている!…夜道を歩いていて突然石が降ってくるような命の危険はないし、馬鹿な貴族派貴族がいないだけでも素晴らしいのになあ~食い物は美味い、農作業は楽しい、可愛いお姉ちゃんはいるっ、こんな良いところは無い!」

「…そう言えば戸籍官吏のピエレット嬢とイイ仲だそうですな?」

「お?なんだ、情報が早いな相変らず、ま、そういうところだ」

「変わりませんな…」


 呆れた声色を出したシッティウスの面前には元老院から送られてきた越境許可と、外国軍隊に対する防衛要請が記された元老院文書の転写物があった。

 小クィンキナトゥス卿が先程持ち込んだ物である。


「…で、どうするかな?新興国の宰相殿は?」


 面白がるような言葉にシッティウスは元老院文書を手にちらりと小クィンキナトゥス卿の方を見ると、徐に口を開いた。


「では早速アダマンティウス市長に連絡を取りましょう」

「んん?ちょっと待て、アダマンティウスだって?辺境護民官殿はどうした?」


 シッティウスの口から出た人物の名前が自分の予想とは違ったことで、小クィンキナトゥス卿が訝しげに言葉を返す。


「アキルシウス殿ならばもう出陣なされましたが、何か?」

「…えっ?」

「そうですな…今頃はルグーサを攻めている頃でしょうかな」


 驚いたところへ更に言葉を被せられ、小クィンキナトゥス卿の口が目一杯開かれた。

 ついでに目と鼻の穴も開かれる。


「な、ななっ、なにーっ!?」

「おや、聞こえませんでしたか?」


 驚きの大声を上げる小クィンキナトゥス卿とは全く対照的に、極めて平静な口調でシッティウスが問い返すと、小クィンキナトゥス卿は目の前で手を左右に激しく振りながら言葉を返した。


「い、いや、聞こえている、確かに聞こえているがっ、ルグーサだって?帝国と方向が正反対じゃ無いか、どうしたってそんなところを攻めているんだ?」

「もちろん、帝国を助けるためです。越境権限が無い以上は帝国の国外を通る他ありません、まあ、今回都合の良いことに敵はシルーハでしたので、侵攻しても問題ありますまい」


 極めて事務的に淡々とシレンティウムの戦略を伝えるシッティウスに、身を椅子から乗り出していた小クィンキナトゥス卿がドサリと後ろへ尻を着いた。

 そして目を見開いたまま絞り出すように声を出す。


「……なんてヤツだ、辺境護民官は何を考えている?」

「先程も申しましたが、シルーハ側からユリアルス城を攻め、その途中ついでにシルーハ側のいくつかの都市も攻めておきます。そうすれば驚いたシルーハの施政評議会は軍を自国へ呼び戻すでしょう」

「確かに、まさか目標がユリアルス城とは思わないだろうな…北の新興国が隙を突いてシルーハの領土を掠め取りに来たと見るだろう」


 ようやく頭が回り始め、シッティウスの説明しているシレンティウム側の戦略が理解出来た小クィンキナトゥス卿。


「ま、そういうところですかな」


 その言葉と共に吐かれたため息を受け、シッティウスは幾分得意げに答えた。

 考えれば考えるほど、まさかとの思いしか無い。

 小クィンキナトゥス卿が驚愕するのであるから、実際に攻め立てられるシルーハは肝を潰すだろう。

 小クィンキナトゥス卿の脳裏には、精強な北方軍団兵がシルーハの南方歩兵を蹂躙している光景が浮かんだ。


「……そうか、まさかそんな発想があるとは」

「如何ですかな、我が北方連合の戦略は」


再度のシッティウスの言に、小クィンキナトゥス卿は深く椅子に掛けたまま、ひらひらと手を振りつつ苦笑いと共に答えた。


「流石だ…いや、しかし、北方連合ねぇ。やられたな、爺さん達の苦労も全くの無駄になってしまったよ」

「いえ、そうでもありません」

「何?」


 シッティウスは小クィンキナトゥス卿の言を否定し、言葉を継ぐ。


「その越境許可があればユリアルス城から更に駒を進められる上に、もう一つの戦略も生きてきます」

「それは聞いても良いのか?」

「ナイショですな」

「ふふふ、そうか!ま、そうでなくては!その時がきたら自分も同道するから宜しく」


 面白そうに手を打ち、そう言った小クィンキナトゥス卿に、面白くなさそうにシッティウスが答えた。


「そうですか、それでは宜しくお願いいたしますかな」

「シッティウス、お前も相変わらずだな…ホント良くそれであんな美人の嫁がくっついたよなあ」


 呆れた口調で言う小クィンキナトゥス卿へ、シッティウスが口をへの字に曲げて言い返す。


「…この件と妻は関係ありませんが?何か文句でも?」

「いや、そうじゃなくてだな…」


実は旧知の仲のこの2人。

 いつになく砕けた様子のシッティウスに行政府の官吏達は面食らっていた。

 無駄話をするシッティウス。


 考えられない…


 シッティウスの言葉から、尋ねてきた帝国人農民が実は帝都の貴族であろうということは察せられた。

 しかしその農民と話し始めた時、いつも通りの仏頂面ではあるが、いつになく楽しそうで表情豊かなシッティウスを見て驚いたのである。

 尤も、普段密接に長時間接しているからこそ気が付いた変化ではあるので、そういう意味では官吏達もシッティウスとは旧知になったと言えよう。


 仕事をしながらも、世間話に興じるシッティウスから目と耳が離せない官吏達であった。





 シレンティウム同盟占領地、ルグーサ郊外


 ハル率いるシレンティウム軍4万余りは、ルグーサを出発し、ユリアルス城に向けて進軍を開始した。

 ルグーサには若干こじつけのきらいはあるものの、シレンティウム同盟の新たな領土との位置づけから、同盟協約に基づいて防衛の際動員出来る部族戦士団を召集して防備に当らせることになっている。

 その為、近隣部族であるアルマール族の北方軍団兵2000とソダーシ族から戦士団2000名が派遣され、ヘオンの邑長であるグーシンドがこれを率いて駐留していた。

 他にシレンティウム軍が1000名、残置の軍として残っているものの、シルーハの大軍が来襲した場合は、ルグーサを速やかに放棄してヘオンへ退却することが決まっている。

 シレンティウム軍の残置部隊1000名は、遅れてやって来る補給部隊と合流してユリアルス城へと向かい、その後ルグーサは放棄されるのだ。


東部山塊を越え、あっという間にルグーサへ迫ったハル率いるシレンティウム軍は、僅か3日でルグーサを開城させた。

 とはいえ、これはシレンティウム軍の手柄では無く、ダンフォードのお陰である。

 実はルグーサに居た兵士達を根こそぎ動員してしまっていたダンフォード。

 与えられた1万の兵を脅しに使い、無理矢理都市守備兵まで引き抜かれてしまったルグーサの太守には、シレンティウム軍へ対抗する術が無かったのだ。

 まさかダンフォード軍が全滅してしまうとまでは思わなかったルグーサの太守は、当然シレンティウム軍が攻め寄せてくることなど全く思惑の外で、朝になって包囲されていることに気が付いて腰を抜かした。

 ダンフォードに兵を引き抜かれた時点で、首都パルテオンへ報告はしていたが、代わりの兵が来れば良いとタカを括っていたのも仇となった。

 陰者を使い、この状況を掴んでいたシレンティウム軍が素早く動いたことも大きい。


 シルーハ北東の国境では、当初動かなかった東照帝国軍が越境してシルーハの国境守備隊を撃破しており、未だ盛んに周辺へ兵を出して砦や村々を落としている。

 当初の計画において東照軍は国境を越えないことになっていたが、黎盛行がどうやら旺盛なサービス精神を発揮し、積極的な活動を開始したようである。

 シルーハの首都警備部隊は1万5千の兵を持って一旦ルグーサに迫ったシレンティウム軍を撃破すべく動こうとしたが、東照のこの動きで首都パルテオンへ籠ることを選び、援軍の見込みが無くなったルグーサの太守も降伏する他無くなったのだった。


 城門を閉じ、2万の兵で守られていれば如何に東照とシレンティウムが一緒に押し寄せようともパルテオンを簡単に陥落させることは出来ないが、シレンティウム軍へ向かった後、東照に隙を突かれては一溜まりも無い。

そう考えたシルーハの首都警備隊長は、唇をかみしめて籠城へと作戦を変えざるを得なかったのだ。





『わはは、順調である!見たか我が大戦略を!!』

「先任…まだこれからでしょう…ユリアルス城はシルーハ側に向けて堅固に造られているんですから、大変ですよ」

『ふふふ、しかし今となってはシルーハの城、背後に気を配っている者はおらん!しかも知らせは未だユリアルスに届いておらぬのである』


 アルトリウスが言うとおり、シルーハ側の伝令や間諜は楓の派遣している陰者が尽く捕殺しており、シルーハの命令伝達や情報収集は著しく遅れていた。

 またルグーサを落とし北の道を押さえたことで、シルーハの首都パルテオンからシルーハ北西部への道を遮断してもいる。


『此度は速さこそ肝心!幸いにもルグーサが思った以上に早く落ちた。補給は後で構わぬので走って走って走りまくり、ユリアルス城を攻め立てるのである!敵に情報を把握し、立ち直る隙を与えてはならぬのであるっ』

「いや…分かってますから、そんな耳元で叫ばないで下さいよ…」


 自分の肩で騒ぎ立てるアルトリウスに辟易し、思わずそう漏らすハルであった。





 同時期、ポータ河畔


「ほお、突っかかってきたか…帝国軍も勇敢だな」


 騎乗したアスファリフの眼前には2万余りの帝国軍が鈍色の鎧兜を陽光に燦然と反射させ、整然と戦列を組んで整列している様子が見えた。

 大楯を前面に隙間無く構え、左右には帝国重騎兵が配置されている。

 翻って、自軍の南方歩兵は雑然とした戦列を組むのがやっとで、装備も簡素な丸盾と槍に短剣、いかにも農民兵といった風情でしかも既に腰が退けていた。


「まあ、歩兵に関しちゃ無理ないか…ウチの子分共に頑張って貰う他無いなあ…」


 しかしその農民兵、数だけは多い。

 アスファリフ率いるシルーハ軍は南方歩兵4万にシルーハ騎兵1万、それにアスファリフが個人的な伝手で雇い入れた西方諸国の重装傭兵が2万と騎兵傭兵が1万余り。

 アスファリフは帝国軍の陣容を見て虎の子である重装歩兵を前面に出し、左右に南方歩兵を分厚く配置し直す。

 そして騎兵は本営付近に固めて配置するという変則の方陣を組んだ。


「よおし、いっちょやるかっ…前進!」


 アスファリフの号令でシルーハ軍が僅かに動き出し、それに呼応して帝国軍も動き出した。





 1刻余りの矢合わせの後、最初にぶつかったのは帝国兵とアスファリフ虎の子の重装歩兵傭兵である。

 長槍を装備した重装歩兵傭兵に対し、盛んに投げ槍攻撃をしかける帝国兵であったが、普段ならここで戦列を乱すはずの敵が一向に戦列を乱さない。

 帝国兵の戦法は長槍を装備した相手に投げ槍攻撃で怯ませて槍衾が緩んだ際、懐に飛び込んで剣で切りまくるというものであるが、相手が怯まないのではその隙が見いだせない。

 投げ槍を受けて倒れる長槍歩兵達であるが直ぐさま後列の歩兵が間を補完して隙を作らないのである。

 そして帝国兵の投げ槍が尽きた。


「くっ…長槍歩兵の練度が高いっ…!」


 そしてその上数も敵が多い。

 1万5千の帝国歩兵に対して重装傭兵は2万余り。

 ロングスが焦るものの、次第に帝国軍不利のまま白兵戦へ移る最前線。

 乱れの無いまま突き進む長槍装備の重装傭兵を攻め倦ねて帝国兵が押し込まれ始める。

 こうなれば武器の長い敵が有利となる。

 長槍が大盾を貫通して帝国兵の身体を食い破り、鋭い突きが大盾の列を崩す。

 また一瞬の隙を突かれた帝国兵が首筋を貫かれ、別の帝国兵は突撃しようとして果たせず槍玉に挙げられてしまった。

 突貫しようにも長い槍が邪魔で果たせず、大楯での防戦一方の帝国兵達は善戦しつつもどんどん押され、前線正面は帝国側不利のまま戦闘が推移していた。




 一方、左翼の帝国重騎兵は分厚い南方歩兵の槍衾を突破出来ずにいた。

 南方歩兵を弱卒と侮っていたが、堅陣を敷いて粗末な槍を前面に突き出し、騎馬兵を牽制する姿は堂に入っており、とても潰走が代名詞の南方歩兵とは思えない。

 数度の突撃で兵を損なったのはむしろ帝国重騎兵であり、最後は乱戦に巻き込まれて次々と討ち取られる帝国重騎兵。

 戦列に乗り崩しを掛けても重装騎兵1騎に10人近い歩兵が10本の槍を繰り出して群がるのである、勝てるわけが無い。

 終には帝国騎兵は数に圧倒されて我慢しきれず敗走してしまった。




 そして右翼の帝国騎兵はもっと悲惨だった。


「よおし、隙だらけだ…突撃!!」


 右翼と同じように南方歩兵に手間取っている内にいつの間にか本陣から移動してきたアスファリフが直卒するシルーハ騎兵に背後へ回られていたのである。

 南方歩兵達に足止めを受けている隙に、強烈なシルーハ騎兵の突撃を背後から受けた帝国の右翼騎兵達は一瞬で突き崩されて潰走する。

 しかしそこにアスファリフから追撃を受け、帝国の右翼騎兵は槍で背中を刺され、矢を後頭部へ射込まれて次々に討たれ、最後は全滅してしまった。

 最後の1騎が手槍を脇腹に繰り込まれ、血反吐を吐きながら落馬するとアスファリフは上機嫌で叫んだ。


「よおしっ良い感じだぞ!」


 しかし今度は重装歩兵同士がぶつかっている正面を見て片眉を上げる。

 兵数に勝り、装備に遜色ないはずの傭兵達が帝国兵を攻め倦ねているのだ。


「ふむ、やはり帝国の歩兵は強いな…このまま敵の背後へ回るぞ!」

 



 左右の自軍騎兵達が壊滅したのを見てとったロングスは、勝ち目が無いと判断して退却することにした。

 しかも右翼を壊滅させた敵の騎兵が背後へ回り込もうと大きく帝国軍の後方目がけて迂回し始めてもいる。

 このまま背後へ完全に回られれば帝国軍は包囲されてしまい、今は不利ながらも辛うじて支えている前線の帝国兵も腹背に圧力を受けて崩壊してしまうだろう。

 騎馬の圧力が消えた左右の南方歩兵も帝国軍を数で押し包もうという動きを見せ始めており、このまま戦い続ければ包囲殲滅戦の哀れな犠牲者となる恐れがあった。

 そうはさせない。

 最初から兵数に格段の差があり勝ち目は薄かったのだ、それは最初から分かっている。

 但し帝国内で好き勝手を許すわけには行かないので敢えて不利を承知で戦いを挑んだが、やはり結果は明らか。

 いずれにせよ時機を見極めて退却しなければならないのだが、敗走に繋がらないようそれは慎重に行われなければならない。

 幸いにもここから北辺山脈までの距離はほとんど無く、目標とする山岳都市へ逃げ込めばしばらくは保つだろう。

 圧倒的不利でここまで粘れば帝国軍の誉れも傷付くまい。

 ロングスは声を張り上げた。


「退却するぞ!殿は我等第1軍団が引き受けるっ!後退先は…コロニア・メリディエト!伝令を回せ、急げ、包囲される前に態勢を取れ!」





「あらら、その判断早すぎるでしょ…さては最初から考えていたかなこれは?」


 鮮やかに退却態勢を取って退き始める帝国軍にアスファリフは渋い顔でつぶやいた。

 騎兵で後方からの一撃を加えはしたものの、これを予想していた帝国軍に大きな打撃を与えきることが出来ず、再度の突撃を敢行しようとしたところで帝国軍が退却を始めたのである。

 ここでもう少し大きな打撃を与えて立ち直らせないようにしておきたいところであるが、折角の勝ち戦、強引に攻め立てて損害を増やすことは無い。

 それで無くとも味方の補充を受けにくい敵地である上に、シルーハは総力に近い形で軍を編制してアスファリフに預けているので、補充出来る兵そのものが無きに等しいのである。

 帝都攻略も視野に入れているアスファリフとしては損害はなるべく減らしたいところであるので、相手が退くならばそれで良いという思いもあった。


 ましてや帝国軍の逃走先は辺境護民官の治める地で、下手にこちらからつついて蛇ならぬ龍を出したくない。


「…まだ帝国にも目端の利く将官がいるみたいだな」


 帝国軍の背後に回り込んでいたアスファリフは、河川を巧みに使って背後を庇いつつ、見事な隊形変換で退却し始める帝国軍を見て一旦追撃を諦めた。

 軽装の南方歩兵ではいくら追いすがったところで装備に勝り練度も高い帝国兵に敵わないし、重装傭兵は長い槍が邪魔で追撃戦には向いていない。

 追撃に適した騎兵を多数擁してはいるものの、敵地での深追いは危険である。

 一応の地形や帝国軍には他に援軍が無い事を確認していたアスファリフであったが、北にいる辺境護民官の動きがイマイチ掴みきれない以上無理はしないことにしたのだ。

 退却を許したとは言え、それでも帝国軍の3分の1程度に打撃を与えることには成功し、退却へと追い込んだのだから、文字通りの大勝利である。


「ま、今は戦力の補充と周辺地域の制圧に力を注ぎますかね…依頼主の要望はそっちの方が強いしな。あ~雇われってのは気楽だがつまらん!戦いだけに集中したいもんだ」


 そう言うとアスファリフは戦場に散った味方を集め再編する作業に移った。

 帝都からの援軍はこれで退けたので、一旦休みを取った後リーメシア州の州都であるコロニア・リーメシアを攻めるのだ。


 市長のパーンサはアスファリフの降伏勧告を拒否した。


 他の帝国都市への見せしめのためにも徹底的に叩かなくてはならない。


「まあ、かなり大きな街だし、略奪品での見返りは十分以上に期待出来そうだから、良しとするか」


 アスファリフは舌なめずりすると遠くに霞むコロニア・リーメシアの城壁を見遣り、そう獰猛な声で言うのだった。




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