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8 クイーンビーのプロフィール

 その夜、タワマンで穂香ちゃんが作ってくれた晩御飯をうまうまと頂いた。

 自分の部屋に戻る。


 机の上で充電中のスマホを見ると、LINEのアイコンの上に456と表示されている。前代未聞の未読件数だ。

 LINEを立ち上げてみると、全て彩音からのメッセージだ。


<つきあってるってゆうんだったら、知らないとおかしいことを質問させて>

<好きな食べ物は>


<好きなアイドルは>

<好きなマンガは>……


 細かい質問がずらっと並んでいる。


 彼女だったら知っているものなんだろうな。

 でも、一つ一つ答えていくのがめんどくさい。


<電話しようぜ、話した方が早い>

とメッセージを送った。


 即座に<ダメよ 忘れないようにメモを残しとかないと>と返ってきた。


 彩音は文字を打つのが早すぎだろ。スマホと体が一体化していて、脳からメッセージがスマホにそのまま流れているように思えてしまう。


 うう……こいつらに全部答えないといけないのかよ。


 質問を見返していく。


<初恋はいつ、誰>

<ファーストキスはいつ、誰と>


<初体験はいつ、誰と>

<好きな体位は>


 答えたくない質問も多い。てか、童貞だし。

 つきあっている子にも初恋を白状する必要はないんじゃないか……


 さりげなく僕の弱みを握ろうとしてないか。

 

 お、後半は彩音の情報だ。


<好きな食べ物はプリン>

<身長155センチ、体重は秘密>


<スリーサイズは77-54-76のBカップ>

 ほほう。やはりBカップだったか。


 自分の情報を明らかにしているところは好感が持てる。


<ファーストキスはまだです>

<もちろん初体験も>


 まぢで?


 金髪だし、遊んでいるっぽいのに。


 信じがたい。

 嘘も混じっているな。


 だったら、僕も正直に答えることはない。

 適当に答えとこう。


 僕は、ほとんど全部、嘘の回答をした。

 後で言ったことと違うことを言っても気にしない。


 人間て、ころころ言うことが変わるものだからな。


 何とか全部答える。

 2時間くらいかかった。疲れた。


<虎児郎とは、えっちしてることにするからね>

 彩音からそんな返信が帰ってきた。


 今どき、つきあってたら、えっちはするものだよな。

<了解>

と返しておく。


 こうして夜遅くまで虚構のキャラ設定が延々と行われた。


 こんなもんが役に立つのか疑問だが、彩音は真剣なように感じる。

 彩音なら活用できるのかもしれんな。任せておこう。

  

 ◆◇◆


 翌朝、僕は教室に来るなり、天使(えんじぇる)らギャルどもに取り巻かれる。


「おっはよー虎児郎様」

「早速ぱふぱふさせていただきますね」


 いつも僕がギャルどもを追い払うのが日常風景になっている。

 だが今日は、僕は何もしない。


 天使も(ぴいち)も僕に抱きついて来て、胸を押し付け、足を絡めてくる。


「あなたたちマジで止めてくれる――」

 彩音の毅然とした声が教室に響く。


 つかつかと彩音が歩み寄って来た。


「な、何よ!?」

 桃がいぶかしげな顔を彩音に向ける。


 彩音は左右の手を僕と天使や桃が密着しているところに差し込んでいく。


「虎児郎から離れなさいっ」

 彩音は渾身の力で天使らを僕から引き剥がした。


「何すんだよ!?」

 天使が本気で怒る。


「彩音がなんで邪魔すんの!?」

 桃もわけがわからないようだ。


 そこで彩音は右手の甲を口元に当てて笑う。


「ふふっ、あなたたちが虎児郎にくっつくのは許さないからね。だって、あたし、虎児郎とつきあってるからっ」

 高らかに宣言。


 彩音はノリノリで僕の彼女役を演じている。


「なにいいいいいいいいいいいいい――――――」

 教室中がひっくり返ったような騒ぎになる。


 魔王と勇者ぐらい敵対していた二人が、つきあうことになったのだから驚天動地の出来事だ。


 彩音は僕に腕を絡めてくる。

「虎児郎はあたしのものだもんねー」


 彩音は僕からも言ってほしそうだ。


「そういうことなんで、他の女の子は僕にくっつかないでくれよ」

 厳かに宣告する。


 一瞬、教室内が静まりかえった。

 だが、すぐに天使が金切声を上げる。


「信じられない。彩音は虎児郎様をイケメンじゃないってひどいことゆってたのに」

 顔を真っ赤にして怒っている。


「翔がいいってゆってた彩音が、虎児郎様とつきあうなんておかしいでしょ」

 桃も納得がいかない様子だ。


「実は、あたしと虎児郎は前からつきあっていたのよ。あたし、虎児郎をイジメたけど精一杯ご奉仕して許してもらったの。隠してたけど、あんたたちがウザいから明かすことにしたのよ」


「うそだー」


「虎児郎は優しいから、あたしが虎児郎とつきあっているとみんなに知られたら、あたしがイジメられるって心配してくれてたの。だから、あたしはワザと虎児郎を悪くゆってたってわけ。本当は虎児郎が世界一のイケメンだって思ってるし、大好き♡♡♡」


 語尾にハートマークが3つくらい付いて聞こえる。

 彩音は僕にくっついて、甘えて見せる。


「可愛いな、彩音は」

 僕は彩音の肩をすりすりする。


 精一杯、イチャラブ感を演出。

 天使たちは顔を引き攣らせていた。


「虎児郎に他の女が近づくのがイヤだがら、あたしはイジメられてもいいから、打ち明けようってことになったわけ」


 突然の交際宣言にはちゃんと前置きがあったように説明した。

 よく口が回るものだと感心する。


「彩音なんかのどこがいいんだよー?」

「虎児郎様は巨乳好きじゃないのー?」


 天使も桃はまだ認められないようだ。

 僕が巨乳好きってなんで言われるんだろう。美沙を好きだと思われているからだな。


 美沙が好きなのであって、巨乳が好きなんじゃないのに……


 咳払いする。


「彩音は可愛いし、話が合うんだよな。空気読むのが上手いから、つきあってて楽」

 できるだけ彩音を誉めてみる。


 カースト最上位にいる彩音のコミュ力の高さは誰もが認めざるをえないだろう。

 僕は内心でコミュ力を小馬鹿にして言ったつもりなんだけど、彩音はドヤ顔。


「くうう」

 天使は歯軋りする。


「で、でも、虎児郎さま、女は彩音以外にもいていいでしょ。あたしもハーレムに入れて下さいっ」

 桃が食い下がる。


「ダメよ。泥棒猫は消えなさいっ」

 彩音が桃に、しっしっと手を振る。


 昼ドラっぽいセリフが教室で交わされて、僕はクスリとしてしまう。

 桃はショックで口をパクパクさせている。

 

 予想どおり、僕を巡って醜い争いが繰り広げられている。

スクールカースト殲滅工作を開始していきます。


今後もお読みいただきますとありがたく存じます。

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