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7 キャラ改変

 僕は咳払いをして話を戻す。

「とにかく、つきあっている男には事情を話していいから、僕とつきあうふりをするのを許可してもらうんだな」


「あたしは誰ともつきあってないよ」

 苦笑する彩音。


 ほお……

 つきあっている男がいないなら、そいつに恨まれる心配はないってことだ。


「だったら話は早くないか? ギャルどもをおっぱらってくれ」

 僕は彩音に結論を求める。


「……虎児郎は、成り行きであたしを自分の物にしようとしていない?」

「はああ!?」


 僕は思いもよらないことを彩音に言われてびっくりする。

 なんで僕が彩音を攻略しようとするんだ。


「少女マンガじゃ、つきあっているふりをするだけのはずが、いつの間にかつきあうってのがよくあるパターンなんだけど」


「……マンガの読み過ぎだ」

 現実にはありえない展開だろ。


「あるいは最初、仲悪い男女がくっつくパターンも定番」


「あのなぁ……」

 呆れて物が言えないとはこういうことだな。


 僕と彩音の関係は仲悪いどころじゃない。殺意を覚えているくらいだ。


「大嫌いだったのに、意外にやさしいって気づいて、魅かれ始める……」


「はいはい。少女マンガの王道パターンだっていうなら、そうなってほしいもんじゃないのかよ」

 僕は頭を掻きながら、ようやく言葉を見つけた。


 彩音の言ってることがめちゃくちゃだ。

 その展開が好きなんだったら、なぜ僕とつきあうふりをするのを嫌がるんだよ。


 僕は少女マンガのヒーローみたいにカッコよくないからお断りなんだね。

 こっちも彩音と本当につきあうのはお断りだっての。


「他の女子がそういう展開に憧れてるってゆうだけで、あたしはどうかと思う」

 なんだよ。彩音がそうなってほしいわけじゃないのかよ。


 ひねくれた女だな。

 しょぼいラブコメっぽい会話をしてしまって、気勢を削がれてしまった。


「……どうしようかな」

 まだ彩音は迷っている。


 四の五の言える立場かよ、と思うが、答えを待ってやる。


 彩音がためらっているのは、ちょっと不思議に感じる。

 僕の女になることは、教室では垂涎の的。


 ギャルどもは、つきあうふりでも喜んでしたがるだろう。

 彩音は僕をディスっていたのを許してもらいたいけど、つきあいたいとは思っていないみたいだ。


 つきあっている男がいるならともかく、いないのに僕とつきあいたくないのは、なぜ?

 

 僕をイジメていた気まずさとか、意地を張っていたいということがあるんだろうけど。


 生理的に僕が好みじゃないからが大きいのかな。僕の所持金に惑わされず、彩音が自分の好みに素直なのは良いことだ。


 彩音にとって僕が好みじゃないのは、まったく不快ではない。ギャル()けスプレーが不要になった時に、あとくされなくて好都合。


「虎児郎にギャルを寄せ付けなければ、あたしを許してくれる?」

 彩音は横目で僕を見つめてくる。


「働きぶり次第だ。ギャルどもは手ごわい。彩音の誠意を見せてもらおう」


 僕は曖昧に答える。彩音が頑張っても、まだ足りないと言う余地を残しておく。我ながらちょっとずるいと思う。

 だが、彩音が僕をディスりまくっていたのはそう簡単に許せない。


「やってみせるよ」

 不敵な笑みを浮かべる彩音。言葉には力がこもって感じられた。


「ふ……では早速、明日から僕とつきあっているふりをしてくれ」

 僕は急展開すぎて、彩音が困ることがわかっていて命令する。


 ギャルを追い払うことに費やすエネルギーと時間がもったいないのだ。


「あ、明日から? 急すぎるんですけど」

 敵対関係にあった彩音と僕が突然つきあうのは、無理のあるキャラ設定の改変だ。


 教室内ではキャラが固定化している。一度定着したキャラ設定を変えるのは容易でないから、みんな苦しんでいる。


 そこを僕は急激に変えろというのだから、無茶ぶりもいいところだろう。


「彩音の高いコミュ力を見込んでのことだ。なんとかギャルどもに疑われないような感じで振る舞ってくれ」

 僕は彩音に任せて楽をするつもり。


「うううう、どうしよう」

「どうにかしてくれ」


「じゃ、じゃあLINEのI D交換しなくちゃ。つきあってるってゆうなら、LINEしてないとおかしいって」

 彩音は大事なことに気づいた風だ。


 そういうものなのか。僕はつきあったことがないから知らない。穂香ちゃんとはLINEしてるけどね。


「まずは形から入るということだな」

 ちょうど駅に着く。


 軒先に立って彩音は傘を閉じて、スマホをカバンから取り出す。

 僕のアドレスに彩音が加わる。


「困ったよぅ……どういうことにしよ」

 彩音は別路線。


 難しい顔をしながら去って行った。


 明日から、僕とつきあっているふりをどんな感じでやろうか悩んでいるようだ。

 本気でやるつもりだという気迫は伝わって来る。


 こうして敵だった彩音と、奇妙な取引が成立した。


 さて、彩音が使える女か見定めさせてもらおうじゃないか。

 僕は圧倒的に優越する立場なので気楽である。

現実恋愛の週間と月間ランキングを見たら、拙作が載っていて驚きました。


みなさまからたくさんのブクマ、ご評価をいただいたおかげです。ありがとうございます。

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