3 頂点に立ちたいんじゃない。スクールカーストを殲滅したいんだ
しかし、中には僕に対する態度を変えない女子もいる。
ふと、僕は視線を感じて、教室の前入口の方を向く。
スクールカースト上位の女、杉森 彩音が僕を見ていた。
僕と視線が合って彩音は即座に目を逸らし、後ろの席を向いた。
彩音は長い髪を金色に染めているギャルだ。
顔は美形と認めてやってもいい。女子力に加えて、一軍の男子とつるむ高いコミュ力を持つ。
カーストの上位を占めるギャルどものリーダー的存在である。
クラスの女子は半分くらいが、けばけばしいギャルで、残りは文化部系とか、体育会系とか、オタクっぽい子だったりと雑多だ。ギャルは単体でもうるさいのに数も多いから、他を圧倒する最大勢力である。
彩音の後ろの席は、宿敵の翔。
二人はいつもしゃべっている。翔は美沙にふられたから、彩音とつきあうことにしたのだろう。
最近は暇つぶしにスマホで、忌々しきスクールカーストについて調べている。
アメリカのハイスクールのカースト制では、アメフト部のクオーターバックの男子がジョックといって最上位。
そして、そいつとつきあうチアリーダーの女子がクイーンビーと呼ばれて、ナンバー2になる。
この教室では、翔がジョックで、彩音がクイーンビーというわかりやすい構図である。
ちょっと前までは、僕はカーストの最底辺だった。
翔が僕を散々にイジメるから、彩音も空気を読んで僕を嘲笑っていた。
スクールカーストの地位を決める最大の要因はコミュニケーション能力だそうだ。
コミュ力、その正体不明のスキルは、教室どころか日本中を支配していると言っても過言ではないだろう。
就職活動では、コミュ力が最重視されるらしい。
コミュ力は学校で習わない。生まれつきのもので、日本企業に入社できるかが左右される。
学力よりもコミュ力……当人の努力の全てを否定する理不尽なことが日本ではまかり通る。
空気を読め、同調圧力、職場の雰囲気、出る杭は打たれる……コミュ力が欠乏している僕のような者は、コミュ力保有者によって、一生虐げられ続ける。
僕はそう思って絶望していたものだ。
だが、僕は真実を知ってしまった。
ぶっちゃけた話、コミュ力よりもカネの方が強い。
金があれば、会社勤めで無能なオッサン上司にこびへつらう必要もない。
普通、高校生はみんな金を持っていないので、所持金でカーストが変動することはない。だが、僕くらいの金持ちとなると話は別だ。
高校でさえも、コミュ力より金の方が勝る。僕が金持ちになったことで、無数の女子が言い寄って来ることからそれは明らか。群がりすぎて、うっとおしいぐらいになる。
コミュ力不足に悩む男子は、コミュ力を身につけることより、金持ちになるチャンスを探した方がいいと思ってしまう。
株や仮想通貨で一発当てたり、人気ユーチューバーになるとか大金を手に入れる方法は無数に転がっている昨今だ。僕が巨額の遺産を相続してラッキーだったように、幸運は突然やってくるかもしれない。
そう。僕は金持ちになり、スクールカーストが崩れつつある。
カーストの頂点はもはや僕なんじゃないか。
彩音と翔は現実をすんなり受け入れるのだろうか。
そして僕が、彩音と翔とどういう関係になるのか。
彩音や翔と僕の間は一触即発という空気を教室内の誰もが感じている。
果たして、平和裏に権力は移り変わるのか。
とりあえずクイーンビーの彩音を翔から寝取ってやろうかな。
僕がジョックに取って代わるってことだよね。
でもって、彩音には僕をからかった償いをさせる。彩音の体で……!?
フフフ……
だが、僕が最終的にやりたいのはスクールカーストの頂点に立つなんていう、つまんないことじゃない。
やりたいのはスクールカーストの殲滅、すなわちコミュ力の無効化なのだよ……ククク
……自分で何言ってんのか、よくわかんなくなってきたな。
スクールカーストの滅ぼし方はおいおい考えよう。
ギャルの一人が彩音に話しかける。
「彩音はさあ、虎児郎様の女になりたくないわけ?」
「あたしは翔がいいもんね」
「へぇマジ?」
「あたしはイケメンが好きなの。男は金より顔よ」
彩音はわざと僕に聞こえるような大きな声で言っている。
最近は、こんな感じで、意地を張る彩音や翔と小競り合いが行われている。
「彩音に気がないなら、競争相手が減っていいや。虎児郎様が好きなのは隣のクラスの美沙って子っぽいけどね。彩音なら美沙に負けないのにな」
ギャルが言うことにびっくりする。
僕が好きな子は美沙だって、バレている!
ギャルどもは僕のことを必死に観察しているんだな。
だが彩音が美沙に負けてないというのは、とんでもない事実誤認だ。鼻で笑ってしまう。
僕は断然、美沙が好みだ。
ポニーテールの美沙は初々しい自然な可愛さ。
金髪の彩音みたいなケバケバしさがないのがいい。
そして胸は美沙が推定Gカップなのに、彩音はBカップだろう。
無論、仮に彩音の方が美しくて胸がでかくても、僕は美沙を選ぶが。
しかし僕が美沙を好きなのを知っているはずなのに、美沙と僕の距離感は幼なじみのままだ。
「虎児郎の彼女にしてください」と言ってくれたらいいのに。即OKしてやる。
だが全然言ってくれない。
僕が金持ちになって態度を変えるやつは信用できないから、まあいいんだけど。美沙が態度を変えないにもほどがある。
美沙こそは空気読めないアホの子だし、バレー部でレギュラー獲得に必死なんだな。美沙が僕に告白してくれる日は気長に待とう。
彩音に僕がイケメンじゃないとディスられようが、彩音が僕に言い寄ってこなくても僕は気にしない。決してこれは負け惜しみではない。だって、僕は世界一かっこいいんだから。
彩音は気丈に振る舞ってはいるが本心では、僕が毒島をシメたように酷い報復をしてくると怯えて暮らしていることだろう。
だが未だに僕は何も仕掛けていない。
僕が見逃すと淡い期待を抱いているのか。
内心でせせら笑う。
今までは超巨大ブラック企業のクリスタル自動車、ブラック部活の女子バレー部顧問の討伐で頭がいっぱいだったからだ。
それらが決着した今、いよいよ報復する。
翔の家が上級国民だとしても、1兆2千億円を有する僕からすれば庶民と変わらない。
翔をまだ生かしておいたのは、特別待遇をしてやるためだ。
3年の不良グループにボコボコにしてもらうぐらいでは済まさない。徹底的に破滅させてやる。
総合評価が1500Pを超えました。
過激なことばかり書いててお読みただけるのか、社畜作者は心細いです。
たくさんのブックマーク、ご評価が心の支えになっております。ありがとうございます。




