16完 家に帰るまでが遠足
僕は浴室を抜けて、脱衣所に。
玄関近くの籠に着替えを置いてある。そのうち帰るつもりだから浴衣じゃなくて私服だ。
ところで、女子はどこで着替えするんだろう。
視線を横にスライドさせると、ところどころの籠に女性の服が入っている。
みんな男風呂で脱いだんかい……まあ女湯で脱いでからこっちには来ないわな。
「急げ急げ」
美沙が背後にいる。
「頼む、見ないでくれ」
僕は籠の方を向いたまま、後ろの女性陣に言い聞かせる。体を拭いて、服を着る時に股間が露わにならざるをえない。
「それはこっちのセリフよー」
上杉さんが言い返してくる。
あなたを守って蜂に刺されたというのに……
女子が体をタオルで拭いている音がする。
振り返れば、全裸の美女が4人いる。
ドキドキしっぱなし。
とにかく急ぐしかない。
僕は適当に体を拭いて、服を着る。
駆けるようにして、廊下に出た。
蜂に刺された痛みはもうない。
ショック症状は出る気はしないんだけど。
浴場の前のマッサージチェアに座っていると、女子も暖簾をくぐってきた。
「虎児郎君、大丈夫?」
上杉さんがとても心配そうな眼差しを向けてくる。
裸を見られたくなかったからツンツンしてたけど、服を着たら優しくしてくれるようだ。
顔が赤い気がするけど……なんでだろう。のぼせたのかな。
「ぜんっぜん平気ですよ。みんなはまた温泉に入ってきたら。今度は女湯でお願いします」
「ダメよ、早く車に乗っとかなくちゃ」
上杉さんは僕の提案を一蹴する。
「そうだよ、虎児郎君にもしものことがあったら、私は生きていけないから」
泣きそうな穂香ちゃん。
そこまで僕のことを愛してくれているんだね……
「わかりました。名残惜しいけど、もう帰りましょう」
立ち上がった僕の背を上杉さんが押す。
「とにかく応急処置よ。旅館の人に手当してもらいなさい」
「はあ、蜂に刺されたら何すんだっけ……」
ガキの頃は放置してたな。
ロビーの椅子に座らされると、多くの仲居さんが集まって来て大騒ぎ。
上杉さんが真剣な表情でスマホで対処法を調べて、指示を出す。上杉さんなりにものすごく気をつかっているみたいだ。
仲居さんが刺されたところをきれいに拭いて、軟膏を塗ってくれた。
「これでもう十分ですよ、ありがとうございます」
僕は立って、明るく御礼を言う。
「早く車にっ」
上杉さんが急かす。心配性だなあ。
「しょうがないな。帰るか」
僕の右腕に白いTシャツ姿の美沙が抱きつく。
「楽しかったよ、虎児郎」
「私もでーす」
同じくTシャツ姿の志乃ちゃんも負けじと左腕に抱きついてくる。胸はないけど、抱きしめる力は美沙より強い。
「最高だったよ。本当にありがとう虎児郎君」
並んで歩く穂香ちゃんも幸せそうな笑顔を浮かべる。
「私も御礼を言っとくねー 誘ってくれてありがとう。また誘ってくれてもいいからね」
上杉さんも呟く。色々ドタバタしたけど、満足してくれたようだ。
慌ただしく、車に荷物を積み込んだ。
全員が乗って、助手席の上杉さんがお約束のセリフを口にする。
「いい、家に帰るまでが遠足だよー 気をつけて運転してねー」
上杉さんはテンプレが好きだよな。アニメをよく見てそうで、微笑ましい。
「はーい。びっくりするから虎児郎君に告白するとか止めてよね」
「女狐は黙ってなさいよー」
穂香ちゃんも上杉さんも、志乃ちゃんをテロリストに指定。僕も異存はない。
志乃ちゃんは最後部で一人座らされた。
美沙が僕の隣。
「しっかりシートベルトしときなさい」
上杉さんが睨んでいる。
帰り道、麓に田んぼが広がっている光景を見降ろしながら、しみじみ思う。
楽しかったな、女の子の普段と違う一面が見れて。
ちょっとエッチすぎる気がしたけど……
旅館の買取とポッキーゲームの賞金で5億円くらいつっこんでやったから充実感でいっぱいだ。
いい旅館のオーナーになったものだ。
貸切にして、またみんなと来よう。
美沙が目頭を押さえている。
「虎児郎、旅行ってこんなに楽しいんだね。ありがとう、連れてきてくれて」
美沙にとったら初めての家族旅行って感じなのだろう。
「ああ、家族がいない僕たちに家族ができたな」
全16回を連続投稿するという暴挙にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
投稿直前に、もっとこうしたらと思いついたり、誤字を見つけたりで、直しているうちにあっという間に時間が経ちました。
マラソンを走り切ったような状態です。愛は地球を救う。(?)
絵師さんの忙しいスケジュールから2枚、背景付きで挿絵を描いていただくことができました。
もし、番外編連続投稿を評価してくださり、レビューお寄せいただけるようでしたらあなたの推しヒロインを教えていただきますとうれしいです。今後、小説の出番を増やしたり、挿絵をお願いしたりしたいと思っております。
エッチなシーンを盛り込みすぎで、食傷気味にさせてしまったのではないかと思います。
読者のみなさまのご評価が心配ですが、よろしければブクマやご評価をつけていただきますと第3巻に向けて気合が補充されます。(巻完結型の連載ですが、まだ続きをかいております)
お読みいただき、ありがとうございました。




