7 一緒に温泉入りましょうよぉ
「ええええ!?」
「な、なんでいるよ!?」
「ずっとそこにいたの!? 虎児郎君!?」
みんな引きまくっている。
「ご、ごめん」
僕は背を向けたまま詫びる。
「この変態、痴漢、スケベ、死ねっ」
上杉さんの罵倒が僕の謝罪を掻き消した。
「で、でもここは男湯だよ、君らが後から入ってきたんじゃないか」
「え、ここは女湯でしたよ」
志乃ちゃんが即座に言い返す。
「そんなバカな」
「間違えたふりをして、のぞきをしようなんていい度胸じゃないのよ」
「ち、違います。のぞきをしようなんて思ってません」
「前から私を見る目がいやらしかったのよね」
上杉さんがあくまで僕を変質者扱いする。
「うーん、でも虎児郎君はのぞきをするような子じゃないと思うよ」
穂香ちゃんが救いの手を差し伸べてくれる。穂香ちゃんだけはいつも僕の味方だ。
「じゃあこれはどう説明するわけ」
「本当に暖簾を見間違えたんだと思うけど」
「そ、そうだよ、悪気はないんだ」
「むーまあ、こんなお風呂の中に隠れようなんて思わないかな。いくらバカな虎児郎君でも、隠れ場所を工夫するものよね」
頭のいい上杉さんは、推理をして納得してくれる。
「そ、そうです。全然見てませんから」
「虎児郎さん、のぞきなんかしなくても、私の裸で良ければいくらでもお見せしますよ」
志乃ちゃんがささやく。
「だ、だめだよ、そんなエッチなこと」
「美沙はお子ちゃまだなぁ 虎児郎さん、私まだ15才でピッチピチですよ、ほらほら」
背後で志乃ちゃんが身をくねらせている。振り向いたらみんなに殺される。
「僕、出ていきますから、振り返らないようにして」
おずおずと申し出る。
「えー虎児郎さんも一緒に入りましょうよ。虎児郎さんがオーナーなんだから何でもありでしょう」
「私も虎児郎君と一緒のお風呂がいいかも」
穂香ちゃんが恥ずかしそうに言う。
「えー先生、大胆。さすが大人」
志乃ちゃんは僕と穂香ちゃんが同居してるって知らないから驚いている。
「わ、私も虎児郎がいてもいいよー」
美沙まで。
変質者のように潜んでいた僕にやさしくしてくれてうれしいよ。
「ダメよっ絶対。早く出て行って」
上杉さんは冷たく言い聞かせる。やっぱりこの人だけは厳しい。
「すみませんでした」
僕は立ち上がり、股間を両手で隠した間抜けな姿で露天風呂から出て行く。
「後できっちり罰をくれてあげるからねー 覚悟してなさい」
「ううう、これは事故ですよ」
僕は嘆きながら浴室に行く。
「上杉さん、そんな固いこと言わなくても。せっかく虎児郎さんと仲を深めるチャンスなのに」
「ふん、女狐は黙れ。汚らわしいっ」
「お子ちゃまですね。つるつるを見られたくないんでしょう」
志乃ちゃん、そんなこと言ってたら上杉さんに消されるぞ。
諍いを大きくしないよう早く出ていこう。
浴衣を着て、廊下に出る。
確かに今は、女湯の暖簾がかかっている。
おかしいなあ、入る時は男湯の暖簾を見た覚えがあるのに。
部屋に戻る。
ふうう……
この後、上杉さんから罰を受けると思うと気が重い。
穂香ちゃんが上杉さんを宥めてくれることを祈るしかないな。
とにかく反省と謝罪の意を示さねば。上杉さん達が帰ってきた時は正座して迎えよう。
僕は座布団を敷き、入り口の方に向かってあぐらをかいた。
うう……ずっと温泉に潜っていたからのぼせてしまった。
横になっとこう。みんなが帰ってきたらさっと正座だ。
数十分、ぼーっとしていた。
玄関の方が騒がしい。
慌てて身を起こして正座する。
「虎児郎ー」
美沙がガラッと襖を開けて入ってきた。美沙は浴衣姿だ。
「何だ、美沙か」
ほっとする。
「ねえねえ虎児郎も来てよ。卓球やろうよ」
「へ」
「大浴場の近くに卓球台があるんだ」
「それはまたベタだな」
「早く早く」
美沙は僕の手をつかんで引いて行く。
「上杉さんが怒ってんじゃないのかよ」
「んーもう気にしてないっぽいよ」
「ほんとか」
よかった。生きた心地がしなかったぜ。
大浴場の暖簾の前を通り過ぎて少し行くと自動販売機コーナー。
空いたスペースに卓球台がある。
浴衣姿の志乃ちゃんと穂香ちゃんがカコンカコンやっている。
上杉さんは横で見ていた。顔つきは穏やかだ。
僕は志乃ちゃんの後ろで見ることにする。
「先生、うまいじゃん」
志乃ちゃんの隅を突いた球を穂香ちゃんが打ち返す。
「でも志乃ちゃんが上手だよう」
穂香ちゃんは志乃ちゃんが左右に振ってくる球を打ち返すので精一杯な感じだ。
志乃ちゃんは飄々と打ち返している感じ。
さすがスポーツ少女の志乃ちゃんはバレー以外の競技も得意そうだ。
穂香ちゃんが動くたびに浴衣がちょっとずつずれる。多分、穂香ちゃんはブラジャーをしてない。
思いっきりラケットを振った瞬間、胸元がかなり開いた。
やはりブラジャーをしていなくて、おっぱいの膨らみが見えちゃった。乳首は見えなかったけど。
穂香ちゃんはおっぱいが大きいから浴衣に引っかかるんだね。でも見えそうで見えないってのはドキドキするね。
渾身の一撃を放った穂香ちゃんだけど、志乃ちゃんは余裕で打ち返してしまう。
コートの角に当たった球は、穂香ちゃんが追うのも虚しく地面に落ちる。
「あああ負けたぁ 強いね、志乃ちゃん」
「先生も上手でしたよ」
健闘を讃えあう二人。
「ねえ虎児郎、私とやろうよぉ」
美沙が僕を誘う。
僕は穂香ちゃんからラケットを受け取り、美沙と対峙する。
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