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31 裏ボス

 タクシーに乗って、公園の入り口に来る。タクシーは後で別の車をつかまえればいいので、帰ってもらう。


 公園内は樹木が生い茂っているので、見通しが悪い。


 美沙はどこだろう。ところどころに街灯があるけど、明かりが届く範囲はわずかだ。 

 暗闇でちょっと怖くなる。


 人は全然いない。

 こんなところに美沙が一人でいて大丈夫なんだろうか。


 芝生地で人影が見えたので、歩みを早める。

「美沙?」


 問い掛けに応じたのは男の声だった。

「来たな、コジロウ」


 ぼんやり見えた顔の主は二度と見ることはないと思っていた男だ。

 

 毒島(ぶすじま)。僕をイジメまくった金髪の大男。


 ――しまった、罠だ――

 気づいて血の気が引いた。

 

 毒島の背後に美沙が横たわっている。口には猿ぐつわをされ、手足を縛られている。

 他の男が美沙が起き上がらないように手で地面に押さえつけていた。


 美沙は僕の方を向いて、んんーと呻いた。「逃げて、虎児郎」と言っているような気がした。


 僕の後ろで気配がしたので、振り返る。

 周りを合計で五人の男に取り囲まれている。


 前に、冨樫さんら僕の用心棒にボコボコにされて、ケツにバットを突っ込むとかの恥ずかしい写真を撮られた奴らだ。

 以来、不登校になっていたが、密かに反撃のチャンスを狙っていたらしい。


 ブラック部活を討伐して、浮かれた気分で完全に油断してた。


「美沙を犯すのがよお、最高の仕返しになるよなあ」

 ケラケラと笑いながら話す毒島。


「まさか、美沙をもうやったのか!?」

「ん、まだだよ。お前が来た時に抵抗する気力をなくしちゃってたらつまらんからなあ。それにお前が見ている前で犯すのがいいんだよ」


 美沙はまだ犯されてないと知って少しほっとする。

 しかし状況は絶望的だ。


「ククク、美沙からの連絡だったら疑わねえよな」

 毒島が見透かしたように言う。こいつは本当に悪知恵だけは回りやがる。


 図星だから何も言い返せない。


「今すぐここに冨樫らが来るってことはないだろう」

 毒島が付け加える。


 確かに、ここで冨樫さんに連絡をしても駆けつけるまでには時間がかかる。

 

「まずはコジロウをボコ殴りにして立ってられなくしてからだな」

 じりじりと毒島らが間合いを詰めてくる。


 最悪だ。こんなことなら警備会社と契約しておくんだったと後悔する。ボタン一つ押せば警備員が駆けつけて来るようなシステムを持っておくべきだった。


「んで、美沙を犯して写真を撮る。美沙の写真を流出させられたくなかったら、俺らの写真を消せって話だ。コジロウと美沙が俺らの奴隷になる番だ」

 詳細に計画を説明してくれる。


 言われなくてもそんなところだろうと思った。


 毒島が大きく腕を後ろに引いて、思いっきり殴りつけようとしてくる。


 前は、僕は無抵抗に殴られていた。

 どうせ殴られるから逃げるのは無駄だったからだ。


 だが今日は逃げる。


 毒島の大振りの拳をかわすと僕は人のいない斜め右の方向に走り出した。


 まさか僕が美沙を置いて逃げ出すとは思わなかったようだ。


 毒島らが追いかけるまでワンテンポ遅れた。


 僕が警察に通報すれば、美沙を犯している間もなく警官が来るんだよ。

 

 いくら低能でもそれに気づいたみたいで追いかけてくる。


「待ちやがれ」

 待つ奴がいるか。


 暗くて足元が見えないけど、この公園は隅々まで知っている。

 どこに段差や窪みがあるか、毒島たちは知らない。


 僕のようには全力疾走できないし、段差に足を引っ掛けたりするのでちょっとずつ背後の気配が遠くなっていく。


「回り込め」

 毒島たちは、全員一緒に追いかけていては広い公園をランダムに走り回る僕を捕まえられないと気付いたようだ。


 分散して包囲網を作っている。


 待ち構えているつもりだろうけど、僕は誰よりもこの公園を知っている。


 児童養護施設にはゲーム機なんかなかったから、他の子供のように家で遊ぶんじゃなくて、公園で遊んでばかりいたんだ。

 やすやすと目当ての場所に到達した。


 一番低い枝が、僕の胸の高さくらいの木がある。

 この公園では最も登りやすい木で、小学生の頃よく登った。


 枝をつかみ、跳び上がる。

 するするっと枝の上によじ登ることができた。さらにどんどん上の枝に登る。


 ここまでくれば毒島たちがよじ登ってきても蹴落とせる。

 

 振り返って下を見ると毒島が駆けてきた。


「こっちにいるぞ」

 仲間を呼ぶ。

 

 僕はズボンの尻ポケットからスマホを取り出す。

 右手は枝をつかんでいるので、左手だけでスマホを操作し、画面ロックを解除する。


 さ、通報だ。

 と思った瞬間、スマホが手から滑り落ちていく。


「あ」

 スマホは木の根元に落下した。


 すかさず毒島がスマホを踏みつける。


「よっしゃ」

という歓声とともにスマホのスクリーンが割れる音がした。


 頼みの綱の警察に通報できない――

 もうダメだ。 


 木の上で途方に暮れかけたが、小学生の時にこの木の上で美沙とした他愛無い会話が蘇った。


―ねえ虎児郎―

―なんだい美沙―


―美沙を絶対お嫁さんにしてね―

―いいよ―


―やった、美沙、虎児郎と一緒なら寂しくないよ―


 美沙は僕が守る

 そう誓ったら何も怖いものはない。

ひ弱な主人公が5人の不良に取り囲まれ絶体絶命。


主人公がいかにしてこのピンチを切り抜けるのか、次回の熱き戦いをご覧いただきますと幸いです。

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