27 ブラック部活は滅びろ
美沙の宣言に、蒲は歯軋りする。
穂香ちゃんが落ち着いた声で言い聞かせる。
「弁護士さんの話だと、証拠と証言は十分に揃っているから裁判での勝ちは確実。一刻も早く誠心誠意謝罪した方がいいですよ」
「ふざけるな。俺がいなくなったらバレー部は終わりだぞ。弱小チームに転落して、スポーツ推薦もなくなるんだ」
「あーその件なら……」
僕の担当だ。
「2012年ロンドンオリンピックで銅メダルとった選手に顧問に来てもらうことになったから」
「何だと!?」
蒲が目を剥く。
「女性だからセクハラはなくなる。早慶大とか、あちこちの大学に顔が利くからスポーツ推薦枠が増えそうだ。いいことづくめだな」
年収2千万円で、監督をやっている大学を辞めて来てくれる承諾を得ている。
お金は僕がカス高に多額の寄付をすることで、顧問にずっと払われ続けるよう校長とも話がついている。
「ついでに学校の隣に女子バレー部専用の体育館も建てて、最高の練習環境にするよ。実はもうバレー部の女子はみんなこの話を知っているんだ。知らなかったのは蒲、お前だけだ。この学校にもうお前の居場所はないんだよっ」
女子バレー部専用の体育館を建てる金も寄付する。
裁判をすれば悪評が立つのは避けられない。
ただでさえ評判の悪いカス高にあって、バレー部の人気が落ちるのは致命傷になりかねない。
金の力で、バレー部を支えるのが僕の使命だ。
「ふ、はははははははははははは」
突然、蒲が高笑いする。
「ん、ショックで頭がおかしくなったのか?」
「いいのか、私を訴えたりなんかして。部員どもの淫らな姿を写真に撮ってあるんだ。ネットにバラまいてやるよ。全員道連れだ」
蒲が切り札を出してきた。
「く――」
僕も美沙も穂香ちゃんも表情をこわばらせる。
「嫌なら、裁判とやらを即刻取り下げることだなあ」
蒲がほくそ笑む。
「ふっ写真は全部消してあるんだよ」
僕が鼻で笑って教えてやる。
困った顔をしてみせたのは演技だ、勝ち誇った蒲を突き落とすための。
「は?」
「スーパーハッカーさんが、お前のパソコンにハッキングして、写真とかを全部消してくれたんだよ。スマホもビデオカメラからもな」
「何わけのわからんことを言っているんだ」
「じゃあ、スマホを見てみたらどうだ。写真があるかどうか」
僕はニヤリとして蒲に言い聞かせる。
蒲は尻ポケットからスマホを取り出して、両手で操作し始める。
「な――そんなはずは――」
予想どおり蒲は顔をしかめる。
さっきサユリさんがゾンビ化したパソコン、スマホ、ビデオカメラを操って、写真とかを全部消去してくれたのだ。
「跡形もなくなっているだろう。クラウドにアップしていたデータも消してある。あと、友人がデータのコピーを持っているっていうのは、通信記録を調べてハッタリだと見破っているからな」
蒲はハッとした。
クラウドとか、友人はコピーを持っていないとか、蒲しか知らないはずの事実を暴いてやったから、僕の言うことが嘘じゃないとわかったのだ。
「バカな、ありえん、こんなことがあるはずない」
蒲はこんな日が来るとは夢にも思わなかっただろう。
女子の裸の写真とかを人質にしている限り、自分の王国は安泰。
だが、これは現実だ。
「もう女子バレー部員を性奴隷にはできないんだよっ これからは貴様が地獄を見る番だ。女の子の苦しみを思えば、貴様には地獄でも生ぬるいくらいだけどなっ」
びしっと指さして宣告する。
「お、お前は何なんだ!?」
わなわなと震える蒲。
「美沙のド底辺から一緒の幼馴染だよ」
僕は美沙と顔を見合わせる。美沙はすごくうれしそうに笑った。
穂香ちゃんがダメ押しする。
「校門の外で、刑事さんが待ってますよ。この後、蒲先生に署に同行を求めるそうです」
「な、なんだと――!?」
「女の子たちと話し合った結果、蒲先生にはお金で償ってもらうだけでは足りないということになりましたから、警察に被害届を出しています」
「あ、あれは指導だ、メンタルを鍛えてやったんだ」
蒲がほざいている。
「最近は警察も変わってきていて、女性の刑事さんが真剣に話を聞いてくれましたよ。強姦罪、強制わいせつ罪、脅迫罪、傷害罪。罪のオンパレードで、懲役何年になるかわかりませんね」
女の子たちの淫らな写真は残しておいて警察に引き渡すこともできた。だけど女の子たちは警察官にも見られたくはないから、消すことになった。写真はなくとも、録音や大勢の証言で証拠にはなるという。
「そ、そんなはずは……」
蒲がへたり込む。
「ブラック部活は滅びろ」
僕の声が廊下で木霊する。
今週もたくさんのブックマーク、ご評価を賜り、ありがとうございます。
シリアス展開では、続きをお読みいただけないんじゃないかと心配しており、ブックマークをいただくと心底ほっといたします。




