25 ゾンビ化魔法発動
穂香ちゃんに膝枕してもらったまま、サユリさんと電話する。
「鬼畜顧問のパソコンは完全に我がゾンビと化した」
「パソコンの中にウイルス対策ソフトが入っているものじゃないんですか?」
僕は苦労して蒲の部屋に侵入したので、成功したと聞いてうれいしい。
だが、ちょっと信じがたい気分である。
「ウイルス対策ソフトなど、我にかかれば何の役にも立たん」
「駆除されないんですか?」
「されないな。ウイルス対策ソフトは既知のウイルスのプログラムと一致するかどうかでウイルスを識別する。だが、我がウイルスは特別に作ったもの。新種のプログラムだから検出はされないのだ」
「へえ」
「すでに我がウイルスはウイルス対策ソフトを圧倒して、支配下に置いている。ウイルス対策ソフトは動いているように見えるが、見せかけにすぎん」
「蒲は、異変に気付かないってことですか?」
「そのとおり、見た目は何も変わらない。だが裏では我が全てを操れる」
かっこいい。ようやくサユリさんがスーパーハッカーの本領を発揮している感じだ。
「肝心の……女の子の写真とかはパソコンにありますか?」
ドキドキしながら、確認する。
僕がメモリースティックを差したパソコンには写真とかはなくて、別のパソコンがあったら悲劇だ。
「写真は……」
「……」
「ある」
サユリさんの答えに狂喜する。
「ほんとですね!?」
「ああ、とんでもない写真ばかりだ」
「やっぱり?」
「うわ、これはまた何といういやらしいポーズをさせられているんだ」
サユリさんが写真を見た衝撃を伝えてくる。
女子バレー部員は蒲によって、ものすごく恥ずかしい写真を撮られている。
蒲に逆らうことができないよう、写真が流出したら人生が終わるようなものばかりのはずだ。
「そんなにひどいのですか?」
ゴクリ。僕は喉を鳴らす。
「うっ――こんな淫らなことをするなんて!?」
「一体どんなことをされているんですか!?」
「虎児郎くんも見るか? データを転送しよう」
「……遠慮しておきます。撮られた子は誰にも見られたくないはずですので」
とても気になるけど僕が見たら、美沙や穂香ちゃんに白い目を向けられそうだ。
女のサユリさんがチェックするために見るのがギリギリ許される範囲だろう。
「写真や動画のデータはいつでも消せる準備が整った。鬼畜顧問を訴える直前で消すとしよう」
「あと、蒲の友人は?」
最も大事なことを確認する。
友人も写真のコピーを持っていたら、蒲が持っている写真だけを消しても無意味だ。
「通信記録をさかのぼれる限り調べた。結論を言おう。友人にコピーを渡してはいない」
やはり蒲が友人にコピーを渡していると女子バレー部員に言い聞かせていたのはハッタリだった。
「間違いないんですね?」
「ああ。写真とかのデータは一つもメールとかで送られた形跡はない。ただし……」
急にサユリさんが声をひそめる。
「え、何ですか?」
「鬼畜顧問はクラウドを利用している」
「クラウド?」
「外部のストレージサービスだ。毎月お金を払って、データを保管するサービスを利用している。写真を手に入れるたび、コピーをクラウドに送っている形跡を確認できる」
「蒲が自分でもう一台のパソコンにコピーを作っているってことですか?」
「その理解で正しい。パソコンが壊れたら、人質に取っている写真が失われてしまうからな。バックアップを作っておくのは当然だろう」
「それは消せないんですか?」
消せなかったら、マズいと焦る。
「大丈夫、消せる」
「なんだ……」
胸を撫でおろす。サユリさんがもったいぶった話し方をするから消せないんじゃないかと心配した。僕を不安にさせるのは止めてほしい。
「我の技術をもってすれば、クラウドにアクセスする際のパスワードを手に入れることなど造作もない。パソコン本体の写真とかを消した際に、クラウドの方も消すことにしよう」
サユリさんは自分のすごさをアピールしたかったようだ。
「あ、でも、スマホはどうなるんですか。スマホにもヤバい写真があるかもしれませんよ。あと寝室にビデオカメラが三脚で置いてあって、撮影用に使ってるって」
蒲がビデオカメラでレイプを撮影しているのはさっき現場で耳にした。
加えて、女子の裸の写真を送れと指示をして、メール添付でスマホに送らせたりしているらしい。
悪逆非道の限りを尽くしているから、パソコンの写真とかを消せても、スマホやビデオに残ってしまう。
「問題ない。我のウイルスはスマホやビデオカメラにも感染を広げるのだよ、ふふん」
サユリさんは得意げだ。
「本当ですか!? すごすぎるんですけど」
「ウイルスは部屋のWiFiルーターに感染を広げている。最近のビデオカメラはネットに接続する機能を持っているからな。WiFiに接続するスマホもビデオカメラもそのうち我のゾンビと化す」
「おお。スマホもビデオカメラのデータも消せちゃうんですね」
「ああ、跡形もなく消し去って、復元は不可能にしてやろう」
「よっしゃあ」
スーパーハッカーすごすぎる。死霊術師の魔法のようにしか聞こえないけど、まさに求めていることを完璧にやり遂げてくれる。
ブラック部活打倒の難関、美少女たちの淫らな写真の消去が達成できる見込みになった。
僕も体を張った甲斐があったというものだ。
長きに渡る仕込みを経て、次回からブラックな奴をフルボッコにしていきます。
今後もお読みいただきますとありがたく存じます。




