24 先生の膝枕
そうだ――
閃いたことをすぐに実行するには――
3階から飛び降りないと。
ベランダの手すりから下を見る。やはり高い。
だけど、行けなくはない。
手すりをまたぎ超える。
いけっ――
飛び降りる。
下はモルタル。
ドンッという衝撃が足に来る。バランスを崩すが手をついて、受け身。
いっつぅ――
「虎児郎君が――」
穂香ちゃんの悲鳴。
よろよろと立ち上がる。
急がなくちゃ――
僕は足を引きずるようにして歩く。
マンション正面の自動ドアをカードキーで開けて入ると、足の痺れが消えてきた。
廊下をダッシュする。
目当ては非常用ベル。
躊躇なくボタンを押し込んだ。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ――――
マンション内に非常警報が鳴り響く。
これで蒲はレイプしている場合じゃなくなる。
僕は急いで階段を駆け上がる。
マンション内に防犯カメラはないから、見つからないとは思うけど、いたずらを咎められたくない。
3階にたどり着く。
ベルはまだ鳴っている。
蒲の部屋の横を通ると、
「何なんだ!?」
と蒲が狼狽えている声が聞こえてくる。
「先生。火事なんじゃ」
「仕方ない、服を着てろ」
よしよし、OGを助けられた。
マンションの管理人が駆け付けてきて、火事じゃないってことを確認するのに時間がかかるだろう。
OGは新幹線で帰ると言っていたから、蒲にもう襲われることはない。
やった。やってやったぜ。
自分の部屋に戻って、玄関に倒れ込む。
右足が猛烈に痛くなってきた。
着地の衝撃で痛いんだと思っていたが、捻挫したようだ。
穂香ちゃんも部屋に駆け込んで来た。
「虎児郎君っ」
「動けない……」
「大変!? 救急車」
「そこまでは大丈夫。ちょっと横になりたい」
僕がぐったりしていると、穂香ちゃんは僕の靴を脱がせる。
引きずるようにしてリビングに連れて行った。
部屋には家具が一つもなく、がらんとしている。
座布団もないから、穂香ちゃんはフローリングで正座して、僕の膝枕になってくれた。
右足の痛いところもさすってくれる。
「もう、虎児郎君、無茶するんだから。飛び降りた時、心臓が止まるかと思ったよ」
「仕方なかった」
僕は頬で穂香ちゃんのフトモモの感触を味わいながら話す。
これが膝枕か。いいなあ。
和むわぁ。
世の中の男の子は、母親に膝枕してもらってんだよな。そして耳掃除してもらったり。
期せずして、初体験することになった膝枕に感動する。
穂香ちゃんが母親役をしてくれるから、僕の人生の欠落がどんどん埋められていくよ。
「もう、虎児郎君は優しすぎるよ。どうしてこんなにみんなに優しくするの?」
額に穂香ちゃんの涙が落ちてくる。
僕が大怪我するんじゃないかと本当に心配したんだな。
「当たり前じゃん」
困っている女の子を助けるのはね。
「当たり前じゃないよ。お金持ちの男の子だったら、面倒なことに関わらず、女の人とエッチなことばかりしているものでしょう」
穂香ちゃんの声には、自分に触れようともしない僕への当てつけがこもっている気がする。
「うう……ほっとけないんだよなぁ」
美沙や穂香ちゃんが他の男の餌食になりそうなら何がなんでも助けるでしょ。
「大好き、虎児郎君」
穂香ちゃんが覆い被さってくる。
豊かな胸が顔に当たる。
「大好き大好き大好き大好き虎児郎君が好きすぎるよぅ」
穂香ちゃんは気持ちを隠そうとしない。
照れるなぁ。
「お願いだから、もう危ないことしないでね」
耳元で懇願される。
「僕だって、したいわけじゃないんだけどね」
ヤレヤレとため息する。
痛かったけど、やり遂げた。
次はサユリさんの手番。
きっちりパソコンをゾンビ化させる死霊術師の仕事をしてもらわないと。
お読みいただきありがとうございます。




