22 性奴隷にされて喜ぶ女
毎晩、美沙と穂香ちゃんがOGに電話をかけて、顧問の蒲に反旗を翻すよう説得している。
味方につけた先輩やOGからまず1学年上の人に電話して、簡単な話をしてもらう。
その上で美沙か穂香ちゃんが詳しい話をする。
蒲に撮られた裸の写真を消してくれるならと、味方になってくれるOGはいっぱいいる。
蒲が写真を人質に取ったことが裏目に出た形だ。
だが、蒲に心酔しているOGもいることがわかってきた。
カス高のバレー部で、蒲という優れた指導者に出会ったことで人生が変わった。
早慶大にスポーツ推薦で特待生として進学し、オリンピック日本代表にも選ばれた。
そういう女の子は蒲の性奴隷にされたことも、指導の一環だと思っているという。
メンタルを鍛えられたとか、大人の女にしてもらったとか、蒲に感謝しているくらいだ。
部活中に蒲を見る目付きも他の子と違う。蒲に何を言われても嫌な顔を全くせず、喜びに満ち溢れている。
他の部員たちから、あの子は危ない、と見てわかるのだという。
心酔しているOGを説得しようとすれば、蒲に即座に通報される恐れがある。
危ないOGには電話をしないように気を付けないといけない。
OGの学年つながりを一段飛ばしにすると、あまり面識のない者がOGと電話することになってしまう。
相手に警戒されて、すんなり味方に引き込むことができない。
タワマンの別室を覗くと、美沙と穂香ちゃんが頭を抱えている。
「難しいことをさせてすまん」
僕が言い出しっぺだから、二人に謝りたくなる。
美沙は顔を上げて首を振る。
「大丈夫。写真とかを消してほしいし、蒲から逃げ出したいっていう人はいっぱいいるから頑張らなくっちゃ」
最初尻込みしていた美沙だが、先輩やOGたちの苦しみを知って、むしろ僕以上にやる気を見せている。
美沙は普段どおり部活をこなしているからキツいはずだ。
早朝練習にも遅れずに出かけて行っている。
心と体を壊さないでほしいんだけど……
「予想以上に蒲は強敵ね……」
穂香ちゃんが嘆く。
「まさか蒲に性奴隷にされて喜んでいる女がいるとは思わなかったよ」
僕も同意する。全くの予想外だった。
ブラック部活で、顧問に支配されることを不快に思わないどころか快感に思う人間がいるとは。
僕がブラックなコンビニバイトしていた時、つり銭間違いの言い掛かりをつけられた。
給料を5千円も引かれて、めちゃ腹が立った。
ブラックなことをされて喜ぶ人間ていうのは、バイトで理不尽な目にあっても貴重な社会体験をさせてもらったと喜ぶようなものだ。
どういう神経してるんだ……
世の中にはいろんな人がいるから、変態がいても不思議じゃないけど。
変態のせいで、まともな人間が迷惑するし、ブラックがのさばるんだよね。
「ブラック部活の悪質なところね……セクハラが指導になる」
「バレーの指導と称して、女の子の体に触りまくるんだよな」
美沙の体も蒲にけっこう触られていると想像すると、もだえそうになる。
「指導に従っていれば上達するから、いつの間にか自分で考えずに何でも言うとおりにしてしまう。おかしなことをされていても麻痺しちゃうのよね」
穂香ちゃんの話を聞いていると部活って心底恐ろしいところだと思えてくる。
やっていることは洗脳と変わらない。
指導者を崇めて、何も考えないようにすること。
部活が、ブラック企業の根源だと言われてるけど、本当だ。
「ううぅ……穂香ちゃんの言うとおりだよ」
美沙も認める。
「おかしいと気付いたころには、写真を撮られて、手遅れになっているのか……」
「蒲のやり口は最悪……でも、度合いの違いはあっても似たようなことは日本中で起きているよ。同じ教師として、はずかしい」
「いや、穂香ちゃんは女だから、男の教師の悪さに責任を感じなくても……」
男の教師が女子の部活の顧問をやるのは禁止にしてほしい。
「……教員のセクハラがよくニュースになるけど、発覚するのは氷山の一角。本当に悪質なやつは、被害者が発覚を恐れて表に出ないのよね」
深くため息する穂香ちゃん。
穂香ちゃんをいきなり巻き込んで多大な精神的ダメージを与えてしまった。
最近は、美沙も同居しているから、ラブコメみたいにイチャイチャできないし。
参ったなぁ。こんなに苦しいなんて。
「ねえ、虎児郎。洗脳されているOGはどうしよう?」
美沙が尋ねてくる。
「……ほっとくしかないだろう」
こっちが説得して、洗脳が解けるとは思えない。
「だよね……」
「先輩やOGの中に一人でも蒲を訴えることに反対するなら止めるって言ってたけど、洗脳されている人
はノーカウントにしてくれ」
「うん……」
力なく美沙がうなずく。美沙もどうしたらいいのかわからないのだろう。
洗脳された子にとっては、蒲が指導者としてずっと君臨していた方が幸せなのかもしれない。
蒲がいなくなれば洗脳は解けて、性を搾取されていたことに気づく。
僕としては、洗脳を解いてやったと感謝されたいけど、本人は恨むだろうな。
「だが、恨まれてもやるしかない……もっと多くの先輩やOGが苦しんでいるんだから、助けなくちゃ」
僕はリーダーとして方針を示す。
とてもややこしいことになっているから、全員を幸せにできそうにない。
決断をしないといけないのはつらい。
だけど、ブラック部活は叩き潰す。
目指す方向は正しいはずだ。
「「わかった」」
美沙と穂香ちゃんの声がハモる。
二人とも目に光がある。二人が付いてきてくれて、僕はうれしい。
いよいよ明日の夜、僕の出番だ。
蒲の部屋に侵入して、淫らな写真を保存するパソコンにウイルス感染させてやる。
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