32完 あれ 持ち金がめっちゃ増えてる
穂香ちゃんは世間話を始める。
一方的に穂香ちゃんがしゃべるだけで、僕は相槌も打たない。
でも穂香ちゃんは楽しそうに話している。
「ネットニュース見てたら、緒方ホールディングスが大儲けだって。虎児郎君が大株主なんでしょ。やったねー」
依然としてゲームに夢中で、僕は返事しない。確かに僕は、じいちゃんが総帥だったから、大量の株券を相続した。
「緒方ホールディングスはクリスタル株が大暴落した時に株を買い集めて、株価が戻ったところで売り抜けたんだってねー それで大儲けして、緒方ホールディングス株は爆上げだってー」
そうなのだ。
昨日、僕の口座を見たら資産が1兆2千億に増えていて、びびった。
僕はヴォルフに仕返ししてやりたかっただけなので、多少のお金を失ってもいいくらいだった。
なのに逆に持ち金が2千億も増えちゃったよ、わずか1ヶ月ほどで。
「クリスタル株はヴォルフ逮捕の混乱で、また株価が下がってるみたいね。絶妙のタイミングで売り買いしたんだね」
穂香ちゃんは感心しきりだ。
全て上杉さんの手によるものだろう。
ヴォルフをボコボコに打ちのめしたあげくに、クリスタル株を弄んで大儲け。ヴォルフのケツの毛までむしり取ってやった感じ。ざまあみろ。
上杉さんはマジ神。上杉さんには結構な報酬を払ったけど、その何百倍も働いてくれたわけだ。
上杉さんはヴォルフが逮捕されるという情報を知っていた。
裏情報を使った株取引はインサイダー取引という犯罪らしい。だが上杉さんがやるからにはギリギリ合法を装っているはず。やることの全てがレベル高すぎ。
「虎児郎君は、きっとまた、ものすごいお金持ちになったんだね……」
今の穂香ちゃんの声は、憂いを含んでいた。
「僕がお金持ちだとうれしくないかな」
気になったので、ゲームを中断して聞き返した。
「そうね……だって、虎児郎君がお金持ちだと、私だけじゃなくて他にいっぱい女の人を愛人にしそうだもん」
「そ、そんなことしないよっ」
「本当? 実はもうこのタワマンに愛人の部屋がいくつもあるんじゃないかな。いや、他の住人全員が愛人だったりして」
「あはは、あのねえ、穂香ちゃん、他の部屋の住人とはすれ違うでしょ。明らかに家族で住んでる人ばっかりじゃん」
笑ってしまう。なんていう妄想を穂香ちゃんはしているんだよ。
「心配だなあ。タワマンは千部屋あるけど、虎児郎君なら全部買えちゃうから。ハーレムを作るためにこのタワマンに引っ越したんじゃないかな」
「違うよー 穂香ちゃんとほのぼの暮らすためだよ」
「でも、時々すごく綺麗な女の人とか、美少女がいて、あ、この人、虎児郎君の愛人なんじゃってドキっとするのよね」
「面白いことを言うなあ、穂香ちゃんは」
やきもちを焼かれるのは悪い気がしない。
「……そうよね。虎児郎君とは学校でもおうちでも、いつも私と一緒だもんね」
穂香ちゃんは気を取り直して、明るい声になる。
穂香ちゃんと他愛もない会話をしながらダラダラ過ごすのは心地よいな。
いくら豪華なマンションでも一人で暮らしていたら、広い部屋に、ぽつーん、て感じで絶対寂しい。
やっぱり穂香ちゃんと一緒に暮らすことにして良かった。
あれ、タワマンの他の部屋といえば……美沙をどうしよう。
今まで児童養護施設で苦楽を共にしてきたってのに、僕だけこんな優雅な暮らしをしてたら、美沙が怒りそうだ。
急に、美沙を置いてきたことに罪悪感を覚えてしまう。
それに美沙とはずっと心が通ってたのに、別々に暮らしてたら心が離れちゃう。
美沙を施設から引き取って、他の部屋に住ませないと。
そこでテーブルに置いた僕のスマホがピポっという音を出す。
スマホを手にすると、上杉さんからのLINEメッセージだ。
<虎児郎君のタワマンに、私も部屋を買ったよー 時々遊びに行くねー>
おお、上杉さんも住人になるのか。賑やかになっていいな。
普段は東京にいる人だから、別荘ってことなのかな。
うちの県は、冬は超寒いけど、自然が豊かで食べ物がおいしい。
<大歓迎! 県内を案内します!>
返信して、スマホを置く。
ふと、穂香ちゃんの方を見ると、浮かない顔をしている。
「はあ、切ないわ。やっぱり虎児郎君の周りは美少女ばっかりになっちゃう。虎児郎君が素敵すぎるからしょうがないんだけど」
深くため息。
おかしいな。美沙のことを考えていたのは、穂香ちゃんにわかるはずないのに。
それに上杉さんはブラックな奴らと戦う時に大活躍する最強の魔法使いであって、僕とやましいことなんかないのに。
「僕が大好きなのは穂香ちゃんだよ」
笑顔で告げる。
穂香ちゃんが泣きそうな顔で僕に抱きついてくる。
抱きしめて、しみじみ思う。
憧れの先生、穂香ちゃんを守れて良かった。
◆1巻のまとめ◆
☆虎児郎の総資産 約1兆2千億円(2千億円増)
☆ハーレムの女性 2名(昔から確保・美沙、新規・穂香ちゃん)
※上杉さんにフラグが立っているが、虎児郎はパーティーの仲間と思っている。
1巻をお読みいただき、誠にありがとうございました。
よろしければブクマ、ご評価をつけていただきますと、2巻投稿に向けて気合が補充されます。
2巻はブラック部活と戦います。
今後もお読みいただきますと幸いです。




