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【完結】アイギスの歌姫  作者: 星輪 慧


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激闘 格闘ゲーム大会!

「ただいまかえりました〜〜っ!」


 葵が、元気よく本部のドアを開けるとそこには目を見張る光景が広がっていた。


「結成ライブお疲れ様〜!」


 ラボの人たちだけでなく、情報部や施設の清掃員の人までもが三人を暖かく出迎えた。しかもそれだけではない。玄関部分からでも置くまでびっしり装飾が施されている。予想していなかった出来事に葵も雫も、そしてカナリアまでもが呆気にとられていた。


「すいません司令。勝手にこんなことしちゃって……」


 清掃員の人がカナリアに謝罪した。状況から察するにきっとこの人が考えついたのだろう。


「いや、気にしなくていいぞ。私もサプライズなんて初めてだからな、正直嬉しいものだ」


 カナリアは照れながら顔を赤くした。普段あまり見せることのないその表情のギャップに葵は思わずキュンとしてしまった。


「三人のために豪華な食事を用意してくましたよ!」


 ラボの一人がそんな事を言った。


「…あっ………」


 ちょうどカナリアのお金でパーティー用の道具や食べ物を買ってきた雫がたどり着いた。


「ちょうど私もパーティー用品を買ってきたのだが……」


 気まずい空気が流れる。どうやら用意された食事も雫が奮発して”カナリアの金で”買ってきた食べ物もかなりの量があるらしい。一体何人がいればこの量を食べ切れるのだろうか。


 パーティーが始まり皆がそれぞれ一緒に居たい人と一緒に食べていた。私はカナリアのところで、雫はラボの皆と一緒に。


「葵ぃ〜、私に麦茶をくれ〜い」


 葵がクーラーボックスを開くと、それを見張っていたかのようにカナリアが頼んできた。

 クーラーボックスを開くと、そこにはお茶やソフトドリンクは数本あるだけで、あとはビールで埋め尽くされていた。


「カナリア司令?どうやってビールを買ったんです?」


 ぎくり、とカナリアの肩が動いた。


「まあまあ…いいじゃないか。ソフトドリンクもあるからな好きなだけ飲むと良い」


「まあ、コーラをくれるのであれば?今回の件は流してあげるのもやぶさかではありませんが…?」


 このチャンスを逃すまいと、葵はカナリアに付け入ってみる。


「……コーラの一本くらいなら別に構わないぞ……でも本当に飲めるのか?」


 葵は見事にコーラを勝ち取ることができた。しかし勢いで言ったけれどこれをどうしようか、と葵はコーラの入った2Lのペットボトルを見て思うのだった。



「秀治さん、あれから星座の乙女人形の研究は進みましたか?」


 葵とは少し離れたテーブルで八舞と雫が話をしていた。先程まで居た八舞を除くラボの人間は空気を読み、他のテーブルへ移動していた。テーブルには八舞と雫の二人っきりだった。


「天音さんはパーティーでも真面目なんですね。そういうところ流石です」


 八舞はニコリと優しい笑顔を浮かべた。その笑顔に雫は思わず頬を赤らめる。


「え……ええ、敵は強敵です。いくらパーティーと言えどもここで気を抜いていてはいざという時にうごいけないでしょう」


「あはは、そうかもですね。でも楽しめる時に楽しんでおかないと後々公開しますよ。天音さんだって普通の女の子なんですから」


 八舞の言葉は葵と話しているときの諭すような話し方とは異なり、敬語のいかにも誠実な感じの喋り方だった。そしてその喋り方は雫の好みをストレートに撃ち抜いていたのだ。


「たしかにそうかもですね。ところで秀治さんはお酒は飲まないんですか?」


 八舞は既に成人しているパーティーなのにお酒を飲まない大人がいるのだろうか、と雫は考えていた。


「僕はお酒があんまり得意ではないですから。それに酔っ払ったみっともない姿を見せたくはありませんしね」


 二人はその後も、ヴァーグや星座の乙女人形のことなどを語っていた。もともと勤勉な雫は八舞の話にかぶりつくように聞いていた。




「カナリア司令……そういえば琴音は誘わなかったんですか?」


 パーティーには渡しと同時に組織に入ったはずの琴音の姿はなかった。清掃員までもがいることなどから琴音を除く組織の全メンバーがここにいるだろう。そうなると余計に琴音がいないのが何故か気になる。


「あぁ、琴音なら準備するものがあるからって準備に行ったよ。と言っても私も言伝だからあまり詳しくは知らないが」


「準備?何してるんだろ?」


 琴音がいればもっとパーティーが楽しめたのだと思うとなんだかさみしく感じてきた。ウイングに入ってからというものの、学校もなくなりTriangle!の三人で合う機会が増えた。しかしそれにつれ段々と琴音と会う頻度も減っている。


「琴音、早くこないかな……」


 例えどれだけ距離が開いたとしても葵は琴音の親友で有り続けたい。この先葵に何が遭ったとしても……それだけは曲げたくない。そう中学生の時に約束したから。葵は再び心の中でそう強く思った。なんてことのないパーティー。それなのに葵がそんなことを考えたのにはおそらくヴァーグの一件があった故なのだろう。


 そんな事を考えていると、ウイーンとパーティー会場の扉が空いた。


「すみません!遅れましたっ!」


 扉から入ってきたのは琴音だった。


「琴音〜〜!」


 まさに噂をすればなんとやら。今までなかなか会えなかったがゆえに葵の喜びは溢れ出し、気付いたら抱きついていた。琴音の抱き心地、におい、呼気までもがヴァーグとの戦闘やらアイドル活動やらで疲れ切っていた葵の心を癒やすのに十分すぎるくらいだった。


 琴音が来てからというもの、パーティはより一層盛り上がった。というのも琴音が遅刻してきた理由は準備と言っていたが、それは近くのマーケットでゲーム機を買ってきていたのだった。


「うわぁぁ〜また負けたよぅ……」


 現在、葵たちはオンラインでレースゲームをしていた。現状は琴音の全勝。未だに誰も勝てないでいた。昔からそうだ。琴音はゲームが上手くて勉強もできるオールラウンダーなやつなのだ。


「うがぁ〜〜っ!次は格ゲーだっ!」


 しかし、懲りずに何度も挑み続けるのが葵。そんな二人のいつもの流れにウイングの皆も付き合ってくれていた。


 そうして格ゲートーナメントが始まった。一試合目はカナリアVSとある清掃員。


「司令官だからって、手を抜くんじゃないぞ!まあそうしなくても手も足も出ないだろうがね!!はっはっはッ!!」


 などと盛大にイキったのはいいものの、カナリアは絶望的にゲームのセンスがないらしく、完膚なきまでにボッコボコにされていた。


「と゛う゛し゛て゛.......」


 ボッコボコにされたカナリアはそう言いながら涙ぐんでいた。でも手を抜くなと行ったのはカナリアである。自業自得だろうになんとも子供らしい。でもカナリアはそこが可愛いんだよな、と葵は考える。


 続いて二試合目が始まる。二試合目は雫VS八舞のドリームマッチ。互いに気を使ったプレイが見れそうだ。


「天音さん、ここは容赦しませんよ。日頃ラボで機械を扱っているんです。ゲームクライアントでもなります」


「望むところです。日頃の戦闘技術秀治さんに見せつけてみせますッ!」


 葵は思っていたよりもガチガチの試合が行われそうで驚いていた。普通好きな人相手ってためらったりするものではないのだろうか?


「いざ尋常にッ!」


 試合が始まるとまずは雫の先制攻撃。雫の使っているキャラは素早い格闘タイプのキャラだ。対して八舞の使うキャラは魔法を使う技術系キャラ。キャラ相性という点では飛び道具をかいくぐれる雫のほうが有利。


 しかし、それでも試合は八舞が優勢だった。


「ぬぅ……何故攻められんのだ…」


 雫が負けじと苦し紛れの抵抗で必殺技を打つ。しかし八舞はその必殺技を避け、雫のキャラを難なく魔法で捌いていた。


 そしてトドメの一撃。八舞は必殺ゲージを3つ残して第一ラウンドが終わった。既にこの時点で先程のカナリアの対戦時間の三倍以上が経っていた。


「二度は負けない……」


 雫は悔しそうに声を発し、コントローラを構えた。


「次も負けるつもりはありませんよ天音さん!」


 パーティー会場もいよいよ大盛りあがり、さっきまで興味なさそうにしていた一部の人達も今では野次を飛ばしている。

 ……ふとカナリアの方を見てみる。カナリアは悔しそうに指をくわえながら画面を見ていた。そして「なんで勝てないのかなぁ」と呟いていた。


 そんなこんなで第二ラウンドが始まる。スタート時点では必殺ゲージを3つ残している八舞のほうが圧倒的に優勢だろう。

 なんて思っていたら雫が怒涛のスタートダッシュを決めた。雫の放った初動の技が八舞のキャラを浮かせると、着地させないように何度も対空技を振っていた。


「このまま押し切って見せるッ!」


 そう意気込んだ雫だが、まもなくして相手を地面につかせてしまう。そして起き上がりに掴み技を合わせた八舞は反撃に出た。なんと八舞は第一ラウンドでは見せなかった少ない格闘技で初見殺しを試みていたのだ。その作戦は雫に見事に刺さり、雫のキャラを瀕死にまで追い込んだ。

 

 そして追い打ちをかけるように必殺技を放つ。吹き飛ばされた雫のキャラはガードを貼るが、ジリジリとガード越しに削られていく。


「……これでとどめだ!」


 そう言うと八舞は最後の必殺ゲージを吐き出した。八舞はつかった必殺技は大きな火球の魔法を放つというもの。普通ならガードを貼っていれば大した脅威にはならないが今回の状況は相手が瀕死の状況だ。ガードを貼っても待っているのは敗北。雫は完全に詰みの状況に陥っていた。


「負けた……だと?」


 八舞の必殺技でついに長かった試合に決着が着く。負けた雫はよほど衝撃を受けたのか地面に手を付けて悔しがっていた。


「おぉ!八舞さんすごいっ!雫さんを打ち負かすなんて!」


 今まで見た中でもトップレベルに熱い試合だった。こういっては本当に申し訳ないが、カナリアとは大違いだった。


「天音さん!いい試合でしたよ。ありがとうございます」


「えぇ。ありがとうございます。しかし次こそは絶対に勝ってみせます」


 悔しそうな雫と微笑む余裕のある八舞で第二試合は終わりを告げた。


 そしていよいよ葵の出る第三試合が始まるのだった。

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