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マスター

ようやく書けた。

 今日も町をぶらぶらする。

 何か思いことはないものか。


 すると、向こうから背広を着てシルクハットをかぶった紳士っぽいプレイヤーが近づいてきます。すごく目立ちます。

 そしてどうやら、目的は私のようですね。

 なんのようでしょう。


「すいません。お時間よろしいでしょうか?」


 紳士っぽい方は私の前で止まると、声をかけてきました。


「ええ構いませんよ。何をしようか悩んでいたところですから。」


「それは良かった。それでは、さっそく本題に…」


「ちょっと待ってください。」


「?はい。何かありましたか?」


「いえ、立ち話もなんですし、どこか適当なお店にでも入りませんか?」


 私がそう言うと、紳士っぽいプレイヤーは


「…そうですね。それでは、いい店を知っているのでそこに行きましょう。」


 と、言ってくれました。

 よし、狙い通りです。ああ言えば、知ってる店に連れていってくれると思ったんですよ。

 私は、町のことをほとんど知りませんからね。

 教えてくれるのはありがたいのです。


 そして連れてこられたのは、お洒落なバー。

 これぞマスターという感じの人が、グラスを磨いてます。

 紳士っぽい方は、そのマスターっぽい人に、アイスティーとショートケーキを四人分注文してました。

 ちなみにマスターさんの名前はケルトさんというらしいです。


 さて、話を聞きましょうか。


「今回は、お願いしたいことがありまして、ノエルさんにお伺いした次第です。私は、『紳士同盟』の盟主、ロリスキーと申します。」


 たいへん個性的な名前ですね。


「どうもご丁寧に。知っているようですが、私はノエルです。それで、ご用件は?」


「はい。実は、用件ですが、簡単に言えば、私達紳士同盟を鍛えてほしいのです。」


「なるほど。理由をうかがっても?」


「はい。私達紳士同盟は、日々女性を影から見守り、危険があればそっと排除することを目的に活動しているのですが」


 ストーカーと何が違うのでしょうか。


「今のところ、それを許可してくれた方がいないのです。」


 ちゃんと許可をとるんですね。と言うか、誰も許可しないのは当たり前だと思うのですが。


「そこで、日々見回りをして、女性に対して強引に迫ったりしている者を成敗したり、幼女を騙そうとしている者に制裁を加えたりと、その程度しかできておりません。」


 思ったよりまともだった。

 というか、かなり立派なことをしてると思うんですが。


「しかし、私達は基本町の見回りをしているため、戦力の強化をなかなかはかれません。」


「それで、私に鍛えてほしいと。」


「そういうことになりますね。まあ、それだけではないのですが。」


「?」


「まず、私達全ての女性を守るためには、圧倒的に数が足りません。全ての不埒ものに、制裁を加えることもできないのです。そして、この国の貴族や大商人などが相手では、手がだせないのです。その助言などもいただければと。」


「なるほど。」


 んー、これは、面白そうですね。受ければ、かなり暇が潰せそうです。

 単純に強くするだけではだめというのもいい。

 なんというか、私に師事する人が多い気もしますが、まあいいでしょう。


「それで、お受けいただけませんか?」


「いいでしょう。お受けいたします。」


「おお、それはありがとうございます!」


「いえいえ、こちらも暇がつぶせますので。何より面白そうですからね。」




 そしてさっそく、紳士同盟のメンバーとの顔合わせとなりました。

 全員、ロリスキーさんと同じく背広を着て、シルクハットをかぶっていました。

 いったいどこに売ってるんでしょうね。

 あ、自作なんですか。メンバーに裁縫を専門にしてる人がいて、その人が作ってくれたそうです。


 それではまず、それぞれの戦闘方法を聞いてみたところ、全員見事な器用貧乏でした。

 杖術や棒術、体術に剣術、中には盾まで使う人までいました。

 そこにさらに魔法を二つ三つ、さらに隠密系統のスキルまで。

 どうやら、あらゆる局面に対応できるように、とのこと。

 んー、これは鍛えがいがありますね!


 その後、これからのことをいくつか話し合って、今日のところは解散。ちょうど明日、メンバー全員が集まるそうなので、その日に魔の森に連れていくことにしました。




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