使い捨ての軍と一人も失わせたくないショタ(おや?)
さあ蹂躙の始まりだぁっ!(*´∀`)
マロッド陣営が大きく動き出す。無謀な突撃を停止し配置の編成をし始めた。
ん~あ~、どうやら前に小太り金ぴか鎧の騎兵を少数置いて、いや槍で脅して強制で先頭に配置されているようだ。
その両翼の奥に見えるのはギラギラした眼をする歩兵達。
ちょっと俺の考えが正解しているか、こちらの主だった者を呼ぶ。
「マロッド王子が使い捨て出来る兵を手に入れたようなので、ここから本番ですが何か意見がある人―」
「はいっ!」
「新人以下のスナオ君と、更にその下のダッシュ君には発言権はありません」
「クソーッ!」
「地味に俺もいじられてる……」
悔しがるダッシュ君と落ち込むスナオ君は横に置いておく。
アレスト兵の代表ランドン男爵が手を上げた。
「明らかに戦闘経験のない貴族を正面にぶつけ、その間に歩兵の殆どをこちらの両側面に突撃する布陣を取っておるのう」
「ですよね~。そして潰れた貴族を押しのけて、精鋭が正面からでしょうか」
「バレバレじゃからのう」
マロッドはこちらの弱点を突いてきた。こちらの防壁は城門前をコの字に囲んでいる。それは圧倒的に兵数が少ない人数で防衛するためだ。
三面を同時に一斉攻撃されたら物量差で、こちらに被害が出てしまう可能性があった。
功績を独り占めしたい連中の散発的な攻めなら、ロンブル翁のスナイパプと、コンパウンドボウジジイ達で仕留められた。その為に初手で大規模落とし穴を仕掛けて出鼻を挫いたのである。
「ま、マロッド王子にカリスマがあってそこそこ軍略に通じていただけです。想定の範囲内なので、アレスト兵は左右防壁をお願いします」
クックックッ、側面がこちらの弱点? いやいや、グリエダさんに一兵も欠けることなくアレスト兵をお返しする為にわざと作った個所なので、歴戦のコンパウンドボウジジイ達がいたら歩兵は近寄る事も出来ずに全滅するはずだ。
「……」
「何か?」
どう調理してやるか考えていると、ランドン男爵が俺の顔を見ていた。
「儂らはウチの姫に坊主に従えと命令されとるが、坊主を命をかけて最優先に守れと頼まれておるからのう。無茶な事するなら、矢を射かけ槍を持ってちょいと皆殺しに行こうと思ったんじゃが」
「無理無茶なんてしませんよ!?」
「余裕のある目じゃから大丈夫そうじゃな」
ランドン男爵は納得して持ち場に戻っていった。
「目的の為なら己の命も使う武人は価値観が違い過ぎて怖い」
フーと額の汗を拭く。
心配性のグリエダさんが寄越したアレスト兵は、命を懸けて俺の身を守ろうとするから本当に困った。
借りたものは損なうことなくお返しする俺とは相性が悪い。おかげで事前にマロッドへの対策方法を教えて、どれだけ俺が安全なのか納得してもらった。のだが、ちょくちょく危なかったら命を懸けてマロッド達の首刈ってくるぞと脅されるのだ。
敵より味方の方が怖くて疲れるわー。
「それじゃあ、真面目に対処するからダッシュ君達は僕の傍にいるように」
「絶対に僕達に何かしようとしてましたね」
「安全を確保したうえで、突撃してくる臨場感を味わわさせてあげようとは考えていたよ。はー滅多にない経験なのにもったいない」
二人は絶句して「「悪魔だ……」」と呟く。
昔から敵にも味方にも言われ慣れているから平気です。
「「「うおぉぉぉおおおっ!」」」
戦が始まる雄たけびが城門に響き渡る。
ようやく攻め手側が本気になった。
槍で脅された貴族が不器用に馬を操り突撃し、その両翼からカリスマによって狂わされた兵士が我先にカーブを描きながら防壁側面へと駆け出した。
「ふーん、次陣は騎兵でなく魔法使いか」
貴族のなんちゃって乗馬の奥に見えたのは、ローブを着た者達が精神を統一して呪文を唱えていた。
「貴族ごとこちらを攻撃するつもりかな? そして混乱の渦になっているところに精鋭騎兵を投入で詰みと。単純で兵にはわかりやすく、こちらが何らかの手を打つ前に潰す気満々でゾクゾクしますね」
スナオ君は震えながらも俺の傍でGSを構えているのはグッド。ダッシュ君は少しでも目立たないよう、俺の座る石畳の玉座の後ろに隠れようとしたのでバッド。
「アーーッ!」
そして悪い子は、石畳の玉座の分掘られた、俺の緊急用落とし穴にボッシュートだ。本来は玉座の後ろに逃げ込み、背もたれを倒して潰れたように見せかけるギミックなのに。使わなかったからダッシュ君が落ちて良い供養になった。
「だが甘いぞマロッドよ。今の僕の切り札はメイド達の魔法と、変態執事と、先ほどから反応しなくなったから多分飲んでるジジイですが」
俺のどの切り札も物量と速度には少々負けてしまう。
カルナの土魔法は並外れた魔力で大規模に地形操作出来るけれど、その速度はゆっくりで事前に落とし穴みたいなトラップでもないと避けられる。
セイトの伝心魔法は流石に見えないのでバレていないだろうが、単体では攻撃力皆無だ。
変態もジジイも速度のある物量作戦には弱い。
「僕の切り札に切り札が無いとお思いですかな」
待機していたメイドのカルナとセイトが一歩前に出る。
その互いの手は重ねられていた。
「小石一つ当たれば途切れる集中と、棒立ちで長ったらしい呪文を唱えなければならない旧世代の魔法使いどもよ。魔法は規格化されるものではなく、身体能力と同じ努力と技術と才能で表現されるものと知れ」
手をゆっくりと頭より上に振り上げる。
カルナとセイトの切り札は、今の俺の身の安全を確実に保障するもので、アレストの爺さん達の納得を得るために披露したら、『悪魔じゃ悪魔がおる!』とドン引きされた。ついでに現在、俺の影武者でおそらくグリエダさんに迷惑を掛けている治癒魔法使いのアリーがいる場合を教えたら、大悪魔になってしまったショタの俺だ。
そういえばのじゃ姫リリィは間に合わなかったな。
作戦が俺の命を大事にのアレストの爺様達のおかげで、ダッシュ君達の教育時間は無くなり、速攻でマロッド陣営を倒すことになってしまった。
まあしょうがない。のじゃ姫より爺様達の命が大切なのだ。うん、一瞬で大逆転されて絶望する大人達を見たいよね。
「喰らえっ! 暴徒鎮圧魔法、重度のふつ……か?」
後は俺が手を振り下ろせばマロッド達はある意味屍を晒すことになる。
なのに手が止まってしまう。
う~ん、見えてはいけない場所に、見覚えのある存在がいるぞ?
楽しそうなマロッドの後方、その上空。
白の巨躯の馬が空を飛翔していた。
その背にはタイミングが合わなくて見れなかった鎧姿のグリエダさんが騎乗している。
あっれ~、俺の予想では今の時間には絶対に戻って来れないはずなんだけどあっれ~?
訂正のご案内
前書きに虚偽がありましたので、お詫びいたします<(_ _)>
薩摩爺ズ「「「いつ捨て奸をするんじゃ?」」」
引き攣りショタ「しません!そんなキラキラした目で見てもしませんっ!」
マロッドの最初で最後の晴れ舞台、それはショタをも困らせる薩摩アレスト爺達によって、一瞬で潰され……おや?(゜ロ゜;)
そして、切り札メイド2、3(´▽`)
魔法を無詠唱ぐらいで満足するショタではありませんでした。元のモノよりクオリティを上げるのがジャパン魂。
でも無双ゲーの人に活躍場面を乗っ取られて未遂で終了(´Д`)まあ、大平原編ぐらいで書くでしょう。(そこまで続刊出来れば……)
さあ、全てを力で捻じ伏せるチート、いやバグキャラ覇王様が戻ってきました(´▽`)ノ
無理無茶強行軍を味わったのじゃ姫は生きて帰ってこれたのでしょうか?(;・д・)
次回をお楽しみに~♪(*´ω`*)









