前哨戦で壊滅してもいいかな?(大体フリ)
ダッシュが居ると書きやすい。ショタの手下に引き上げた筆者グッジョブ!(´▽`)ノ(超自画自賛)
「船頭多くして船山に上る」
「なに格好つけて変な言葉を言っているんですか」
「僕の扱い雑になっているよねダッシュ君」
土魔法で作られたなんちゃって玉座で格好良い事を言って、隣で同じ様に暇をしているダッシュ君にこの人スゲー! 下僕でいってよかったー! とか崇拝の眼差しを向けて欲しかったのに、目の下に真っ黒な隈を作って半目でジトーと冷たい目で俺を見てくるの。
「ほぼ徹夜で石畳の道を掘り起こさせられて、やっと眠ろうとしたら拉致られて戦場のど真ん中でに立たされたら雑にもなりますよ」
「なるほど寝不足だからそんな人を視線で殺すような目つきをしているんだね。でも上司には媚びを売っていた方がいいですよ」
「くっ! 嫌味が通じないっ!」
え、嫌味なのそれ。前世の上司と後輩の嫌味は心を抉ってきたよ。ダッシュ君はまだまだ精進だね。
「それで、せんどうなんたらってなんですか」
「昔の人が体験から得た言葉です。船頭は船の行く先を決める人で、指揮が複数いると船を操る人達がどちらの命令を聞けばいいか混乱して、船はありえない山の方向に進んでしまう、リーダーは一人にしないと現場は大混乱するからちゃんと決めろよと未来の僕達に金言を残してくれたんですよ」
「なんとなくわかりました。それって下で働く人が大混乱するってことですよね。僕みたいな理不尽を受けた人が……」
大人になってちゃんと理解できることわざ。でも大体が実際に起きてから思い出すんだよな。ダッシュ君、最後に自分を付けたのはなんで?
「それが現在、マロッド王子陣営で起こっています」
「うわぁ」
右手の先をご覧くださいと指した先、俺達陣営が篭る防壁土塁の前には理不尽な突撃命令で騎士兵士の死体が山の様に重なり合っていた。
「ただただ娘が王に気に入れられただけの実力の無いランドリク伯爵に、手柄を独占したい貴族達、そしてマロッド王子。これだけ上がバラバラだと軍としての体を成さないよね」
ランドリク伯爵は自分の周囲を守らせ、功名が高い貴族はバラバラに攻めている。
「戦力の逐次投入は愚策と言われますけど、個々で勝手に動けばもう最悪と」
今も馬鹿貴族に槍で追い立てられた兵士達が叫びながら土塁に突撃して矢で射られた。頭部を一射で仕留められているのは慈悲なのか、コンパウンドボウの性能を試しているのか。
「このままだと、ゆっくり削られ城を占領する数も維持できずに崩壊。バラバラに逃げられることになるでしょう」
ここで処理しないと一般平民に迷惑を掛ける連中だから、それは困る。
「あの、自分の命がどうなるか間際の状況なのにどうして纏まらないんでしょうか」
「いい所に気づいたねダッシュ君」
理解できない顔のダッシュ君。まあ、自分の平穏の為なら友人のスナオ君を売る君には一生理解できないことだ。
「彼等は死んでも持っている権力を、そして増やす権利を手放したくないんです。死んだら全部無くなるというのにね」
権力は麻薬のようなものだ。優越感を与えてくれる愉悦を、腐敗した連中が人に預けるなんて絶対にありえないのである。
「ダッシュ君の様に後先考えずに自分の命さえ残ればいいから逃亡するタイプには絶対にわからない人種とわかっていればいいと思いますよ」
「僕馬鹿にされていませんか?」
何をおっしゃるダッシュ君。項羽から何度も逃げた劉邦、危険とわかれば即逃亡の家康の様に天下を取れる才能があると言っているんだよ。ただ、志が無いとただの逃げ腰野郎だけど。
「ま、暴走する連中は底を尽いた頃でしょうし、そろそろ動きがあるはずです。ほら、本命が動き出しました」
ダッシュ君への実地指導も終わりかな。
ほーら、マロッドが貴族達を支配下に置き始めたぞ。ようやく船頭は一人になるのである。
◆◆◆◆◆◆◆◆
突撃を兵に強制させる貴族の罵声、矢と槍で殺されていく兵の悲鳴。それらが耳に心地よく感じる自分は屑の二人の血を持っているのだなと自覚させられる。
今眉間に矢を受けて死んだ男は、乳母の母様が料理人に頭をさげてもらったパンを踏み潰した男爵だ。
王に見向きもされないとはいえ、王子と王女に手を出しにくかったらしく。私達の育ての乳母である母様を蔑み貶して嘲笑していた貴族は多くいた。
彼等にはたかがそんな事だったのだろう。
私が玉座を取り戻して、腐臭漂う享楽に復権出来ると這い寄ってきたゴミ屑共。最初の突撃で死んだ子爵は、母様に娘の仇の子を育てるとは畜生だと言った。その三つ隣で死んでいる騎士は私達が作った小さな生きる為の畑を踏み潰した。
やった側の屑共は覚えていないかった。だが、やられた側の私は覚えているものだ。
「おいっ!」
悲鳴と罵声の音楽に浸っていると、汚い大きな声が邪魔をした。
その方向に振り向くと、この場で最も醜悪なモノが息を切らせて寄ってきた。
「ああ、お爺様どうなされました」
「どうしたではないっ! 私の軍が負けているではないかっ!」
腐った血の元凶が、いつの間にか烏合の衆を率いてることになっているのには笑いたくなる。
「負けていますねぇ」
「だったらなんとかしろっ! 私が退却するまで持ち堪えさせるんだっ!」
少し上を向いて空を眺める。雲一つなく綺麗な青色が綺麗だ……。もういいか。
「退却するのです? いえ逃げるのですか?」
「は?」
「ここから逃げることは出来ませんよ。ほらセルフィル君が私達の背後に置いた化け物がいるんですよ」
私達の後ろでは褐色の肌を持つ執事服の男が、逃亡する者達を殺し、移し、積んで小山を幾つも作って容易に逃げ出せないようにしていた。
今も逃げそうとした貴族、騎士、兵士達が、彼の腕が奮われる度に倒れ伏している。
セルフィル君も私と同じ気持ちのようで嬉しいね。
「た、たくさんの兵士を向かわせれば……」
「ええ、それだと突破出来るでしょう。ですから貴方はどこに逃げようというのです」
何もわかっていない。
「私達は王城に剣を振り上げ槍を向けた反逆者ですよ」
ずっとずっとわかっていない。
「屋敷や領地に戻っても国賊として討ち取られるだけです」
こいつが無能のくせに欲を出したせいで。
「欲に塗れた家臣も小狡い使用人も飢えさせるだけの領民も、負けた王の愛人の父の貴方を助けましょうか」
母様は娘の命を失ったのだ。
「おや? 見てください」
だから報いを受けろクソ爺。
私が前線の方に視線を送るとランドリク伯爵も追って見てしまった。
「ヒィッ」
「第二王子の為に集まった彼等を私の軍と私物化した上に、自分を逃すための捨て駒にしようとは。いくら私の祖父でも庇えませんよ」
無理矢理連れて来られた兵士、成り上がりたい騎士、自分がいれば勝てると思っている魔法使い、怠惰な栄光を取り戻したい貴族。
彼等は隠れて動きもせず、自分達を見捨てるどころか捨て駒にして逃亡しようとするランドリク伯爵を殺意を持って睨んでいる。
「私の下に集まった君達っ! 老体をおして出陣していた祖父のランドリク伯爵は限界がきてしまったようだ。かわりにここからは私が指揮を執る」
裏切り者への視線が、その傍にいる私に全て移る。
「皆で私を王に押し上げてくれ。成ったあかつきには、君達はその傍で誉れを受ける身になるだろう」
何の保証もない言葉。
だが縋るものが無ければ動くことも出来ない彼等は見つけてしまった。落ち目どころか落ちたランドリク伯爵の代わりを私に見つけたしまった。
「私が再編成しなおすっ! 兵に騎士達よ貴族達を捕らえるのだっ! まず彼等には民を守る義務を思い出してもらおうか!」
「「「なっ!?」」」
「「「お、おおぉぉおっ!」」」
そして無謀な突撃命令しかしなかった貴族を、一番数が多い兵の生贄に捧げる。いくら騎士が兵より強くても、数の暴力には勝てない。大人しく兵達と共に己の主君に剣を向けた。
「タエルス」
「はっ……」
先ほどセルフィル君相手に反逆者認定されたのを大きな失態と考え、大柄な体躯を縮みこませていた騎士を呼ぶ。
「どうせ私達は城に攻め込んで反逆者となった。それでも失態と感じるのなら、私を王にしてくれ」
「ぉおおっ! 吾輩が必ずやっ!」
笑みを浮かべて優しくしてやるだけで、脳みそが足りない騎士は剣を私に預ける。傷心の騎士モドキのならず者にひと時の夢を見せるぐらい、女性を喜ばせるより簡単な事だ。
「ではランドリク伯爵の魔法使い、騎士、兵をまとめるんだ。何人か殺しても構わないよ」
「ははぁっ!」
タエルスは騎士を引き連れて伯爵兵を掌握に向かった。古巣なので大した手間もかからないだろう。
「な……あ、わ、私の……」
「ランドリク伯爵、貴方はまだ生きてもらいますよ」
さすがに周囲から見捨てられたとようやく気付いたのか、目をギョロギョロさせて自分を助けてくれる存在を探すランドリク伯爵。しかし、誰一人裏切ろうとした元権力者に視線を向けることは無かった。
その傍に馬を寄せて肩を叩く。
「護衛を付けますので、お爺様。私が勝利したら、無能で国の膿の貴方は、地位も資産も全てを剥ぎ取って惨めに殺しますので、敵側の勝利でも祈っていてください」
勝っても負けても多少の差しかない悪夢に怯え続けるのはおまけでつけてやる。
「さあ、私の最初で最後の軍の采配を行おうか。王と側妃を殺す為に手を抜くことないから、セルフィル君には苦労を掛けてしまうね」
私の事をわかってくれた彼とは友人になれたかもしれない。だが、エルセレウム王国に混乱をもたらしてでも、母様の怨みを忘れられずにいるうちは無理だろう。
あ、セルフィル君と視線が合ったね。かかってこいとニヤリと笑ったように見えた。
恋人女友達は沢山いるけど、男友達は一人もいないんだよね。
もしかすると友達と勝負するのはこんな感じかもしれない。
挑発ショタ「挑発してますね。ならこっちはダッシュ君の背中に負け太と書いて挑発仕返ししましょう」
ダッシュ「はいはいよくわかりませんが、書けばいいんですね書けば」
ショタ「寝不足のダッシュ君はつまらないな~」
お久しぶり小悪魔ショタです(^^)あとダッシュ
完璧な統率、変化する防壁チートアイテムコンパウンドボウ、歴戦のジジイ達、スナイパージジイに背後は変態化け物が封鎖中。
有象無象の連中では10倍でも勝てねぇ(つд`)
なのでマロッドが、そこそこの損害と祖父カードを犠牲に、使い捨てていい軍を手に入れました(´▽`)
勝てるかショタ!?(`ω´)
次回、ダッシュ死す
ダッシュ「っ!?」
ファイッ!
ただいま「このライトノベルがすごい!2025」が開催されています。
https://questant.jp/q/konorano2025
注意点
グリエダは女性です。女性部門で投票をお願いします。母が仕事仲間に1巻の表紙を見せたらこれBL?と言われましたが、グリエダは女性です。
セルフィルは男の娘で女性部門は……いけるのかな?
物書きならすみっこに載ってみたいです。投票よろしくお願いします<(_ _)>









