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ショタの目測はいつも甘い

あぁ、ヒラリス親子がいないだけでこんなに書くのが楽しいっ!(*´▽`*)

「そしてゼン……ジェロイは、どんなことになっても妹から離れないと誓いました。これにて【平凡な兄の波乱万丈な人生】第一幕終演でございます」


 はい皆さん拍手拍手、とねだるアリーに私ともう一人が拍手をした。


「ところでその過去の内容のどのくらいが本当なんだ?」

「失策なされたセルフィル様が本気でお調べになられたのと現状から私が推察したものですが。八割は固いのではないしょうか」

「つくづく私の婚約者は恐ろしいな」

「そこがお嫌いではないのでしょう?」

「勿論だ」


 ひゅ~断言だ♪ と茶化すのは見逃してやろう。


 彼が自力で人質から脱したからには敵に遠慮はいらない。ちょうどテーブルの上に磨かれた石で出来た灰皿があったので、それを掴んで窓に向けて投げた。

 外で待機しているアレスト家の隊には、異変が起きたら制圧しろと命令しておいたから、窓が割れるのは十分異変だろう。すぐにいたるところから破壊される音が起きて、屋敷は鎮圧された。

 ただ殆どをハイブルク家の兵が制圧したと聞いた時には驚いた。

 アリーが言うにはCQBというのを全員が訓練しているらしい。狭い屋内での近接戦闘らしいが、小さいセルフィルがどうしてそんな訓練方法を知っているのか気になるところだ。

 今は……ジェロイが現れてリリィが抱き着いてから少し時間が経った。暇な時間だったので、アリーのジェロイについての小話を聞いて状況の整理をしていたのである。


「さて、王女がその状態ではどうしようもないので、私が取り仕切っていいんだな?」

「はい。セルフィル様の婚約者であらせられるアレスト女辺境伯様がこの場で一番上の方かと」

「私もそう考えます」


 私の質問に、いつの間にかメイド服に着替えたアリーと、側近のエイプ子爵が賛成した。

 エイプ子爵は屋敷を制圧維持を他のものに任せて、私の傍についている。


「そうか。お前もいいな」

「はい」


 意見は聞くつもりはないので決めつけた言い方をしたが、相手のジェロイは素直に頷いた。

 顔つきが学園で会った間抜けな貴族かぶれの時とは違い、確固たる意志を秘めた青年の顔つきになっている。先ほどアリーが語った話の中みたいに気持ちの整理が出来たのか、それとも『ハイブルク邸での地獄の特訓が効いたようですね』と自慢するアリーの言葉の内容のせいかはまではわからない。


「まあ、取り仕切ると言っても王女がその状態では、このまま待機するしかないのだがな」

「……申し訳ございません」


 お手上げする私にジェロイは恐縮そうに頭を下げたる。

 その身体にはがっしりとエルセレウム王国第二王女リリアーヌがしがみついていた。


「感動の再会の余韻を壊してまで無理に離そうとはしないさ」

「ウウ~」


 私の声に反応して引っ付き虫が手に力を込める。くっついているから、拷問の痕がある上半身裸のジェロイは肩に毛布を被るしかできていない。


「それに仕切るとしても、ここでの私の出番は無くなったし、あとは暇つぶしに君の話を聞くぐらいだが」

「……どうか王都に早馬を出してもらえませんでしょうか。第二王子マロッド様と第一王女オーレッタ様の助命をお願いします」


 屋敷を制圧している間に、ジェロイには王都の状況をアリーが教えている。その後はリリィを抱えたまま考え込んでいた。


「断る。すでに第二王子マロッドは王城に向けて兵を向けた。言い訳のしようがない国家反逆罪が適応される」

「あの方はそんな人ではありません。きっと理由があるはずです」


 私の言葉に反論するジェロイ。


「それは自分の妹を気に掛けた証拠があるからか? そんなものでは助命は出来ないな」

「……」


 ジェロイは沈黙した。己の言葉に納得させる力がないと心が肯定したのだろう。


「それに何の得も無い。私は貴族だぞ、こちらに利益になるような理由でも無ければ、家を捨てたお前の義理に付き合うなんてするはずがないだろう」


 しょげている成人の男を見てもつまらん。

 こいつの直情径行な行動で、こちらは多大な迷惑を被ったのだ。途中の誤差はあれど、セルフィルから教えてもらった情報から予想出来た結末通りだった。

 つまり私はここから動くことが出来ず、やさぐれた気分のはけ口をこいつに求めて残りの時間を費やすことになるのだろう。


「ジェロイをイジメたのじゃ……」


 はぁランドリク伯爵の首を討ち取りたかったなとため息を吐くと、落ち着いてきたのかリリィが動いた。

 ゆらりと上げた顔は怒っている表情だった。


「リリィ……」

「それはそいつの身内が起こしたことで第二王子の責ではない」

「知らないのじゃっ!」


 ジェロイが止めようとするのをリリィは腕を伸ばして拒否し、彼から離れてソファーに足を横に広げて腕組みし、フンッと鼻息を放った。ジェロイが愕然としている所から、ハイブルク邸で覚えた悪い例の一つだろう。おそらくはセルフィルがしたのを見たのだ。


「わらわの為になる事をしてくれているのは、ジェロイとおはなししていたのを聞いたのでなんとなくわかったのじゃ」


 六歳ならなんとなくでもわかればいい。


「でもジェロイが怪我したのじゃ。悪いことをしたら、わらわはじじょちょーにお尻ペンペンされたのじゃ。だから……」

「だから?」

「第二兄に右フックを喰らわせてやるのじゃっ! お仕置きなのじゃっ!」

「アリー?」

「格闘技は私の分野ですので……、素直に申し訳ございません。しかし、勇敢な精神はセルフィル様の影響ですっ!」


 主人を売るなメイド。腰をしっかりと回して右の拳を突き出していると感心するなエイプのジジイ。ジェロイは唖然と意識を飛ばすな、私がこれを収めないといけないんだぞ!


「あ~、やる気があるのはいいが、ここから王都まで兄を殴りに行くにはかなり遠いぞ」


 王都からジェロイがいたこの屋敷までかなりの距離があった。リリィが乗ってきた馬車では到着するのは夜になってしまう。そこまで王都の反乱鎮圧に時間はかけないとセルフィルは言っていた。


「歩いてでも行くのじゃ」

「無理だ。ほらジェロイが困っているだろう」


 暇つぶしにしようと考えていた彼がオロオロとリリィに手を伸ばしたり引っ込めたりしている姿は哀れに思う。しかし止めるんだ、お前の大事な妹なのだろう。


「ジェロイ」


 リリィは妙に腰の入った打撃を止めて、やけに真剣な顔でジェロイを見た。


「わらわは王女なのじゃ。わらわの兄上なら止めなければならぬのじゃ」

「リリィ……」

「あれは騙しにいってますね。ハイブルク邸で料理長に嫌いな野菜を入れて欲しくないと泣いて訴えた時と同じ匂いがします」

「セルフィルは本当に何を教えていたんだ……」


 幼子が成人男性を誑し込んでいるのは見るに堪えない。

 ジェロイが決意した顔で勢いよく私を見た。


「どうかリリィを王都に連れて行ってはいただけないでしょうかっ!」


 ああ、こいつは騙されやすいな。横でニヤリとしている妹の顔は見せられない。


「……早馬と同じだ。これ以上アレスト家の兵を使うなら明確な益を示すんだな」


 ため息をついて拒否する。

 もう殆ど変わる事の無い結末。たかだか子供が一人介入しても戦いの最中ではどうにもならない。

 この時、私は気が抜けていたのだろう。

 何も差し出すものが無くなった男に、ただ周りに大事にされただけでまだ何も成し遂げていない幼子に、辺境伯家に何の利益もたらさないと。

 だがその年齢ゆえに忘れていた。彼女はある意味英才教育を、私の捻くれ者の婚約者に施されたことを。


「兵はいらないのじゃ」

「いらないだと?」

「わらわは一人でも行くのじゃ。でも誰かが守ってくれないとたぶん途中で死んじゃうのじゃ」

「……で?」

「セルフィーは護衛をつけてくれたのじゃ。それはグリエダなのじゃっ!」


 さすがに幼女に指先を突き付けられたのは初めての経験だ。


「なるほど。なら安全の為にこの屋敷に閉じ込めておこうか」

「のじゃっ!? ちちち、違うのじゃっ! グリエダのお家にじゃなくてグリエダに良い事なのじゃ!」


 私の提案に焦るリリィ。


「私に?」

「そうなのじゃ。今のグリエダはつまらなそうなのじゃ。それはセルフィーと離れているからなのじゃ!」


 ……子供に気づかれるほど不機嫌が顔に出てただろうか? 婚約者のメイドとジジイは頷くな。


「わらわを守らないといけないグリエダは傍にいないといけないのじゃ。ならば第二兄をめーっしに行くわらわを守ればセルフィーに会いに行けるのじゃっ!」


 どうやらリリィは私に自分の護衛をする名目を使えと言っていた。私はセルフィルの下に行けるから、自分を王都に連れていけと。


「フフッ」


 思わず笑ってしまった。


『王都に残るなら情に流されない名君になれると思います。途中で引き返すなら方針がブレるので傀儡の女王にされるでしょうね』

『もし助けて王都に戻って事態を解決出来たら?』

『あっはっはっは、そこまで僕は甘くありませんよ。有象無象無能の貴族に時間はかけません』


 セルフィルは最後だけどのような王になるか言わなかったが、小さなリリィは君の英才教育のおかげで自分の意思で動き出したようだぞ。


「いいだろう。アレスト女辺境伯ではなく第二王女リリアーヌの護衛を任された一人として王都に同行しよう(連れて行こう)か」


 あと私の相棒を忘れているなセルフィル。白王は並みの馬ではないぞ。


漢馬「ブルルッ(呼んだかい?)」

のじゃ姫「はくおーなのじゃーっ♪」

覇王様「白王は昔から子供の人気者だな」

ショタ「え、子供に僕も入ってませんか?」


書くのがちょー楽しー!(●´∀`●)

美女と幼女とメイドを書いていると思うと、ご飯が美味しい筆者です(^o^)

あ、石を投げないでっ!クズ親子で心が死んでいたのですぅ!癒しが欲しかったんですぅ!(ToT)


ここから一気に進みます。たぶん?だって覇王様がやる気を出したので……(‥;)


コミカライズですがもうすぐ皆様に披露されます(´▽`)ノ

その時には是非ともお読みください。セルフィルはやはり小悪魔ショタでしたよ(*´∀`)


ただいま「このライトノベルがすごい!2025」が開催されています。

小悪魔ショタに投票しなければ筆者を宰相の下で、24時間監視で仕事をさせると、担当様に脅されています(ノД`)(大嘘)

https://questant.jp/q/konorano2025

物書きならすみっこに載ってみたいです。投票よろしくお願いします<(_ _)>


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【コミカライズ一巻も発売するよ!】 【ハイブルク家三男は小悪魔ショタです1~3巻、コミックス1巻絶賛発売中!】 表紙絵 表紙絵 表紙絵 表紙絵 表紙絵
― 新着の感想 ―
[良い点] 本当にクズが重荷だったんだなと更新通知見て思いましたw しかしゼンローイはオツムの方を鍛え…いややらんなあの家は。 リアル時間ではそれなりに経過したけど、ショタは仕事を終わらせることが…
[一言] 王女様、たくましくなったなぁ。 交渉も育ての兄より達者になったし。
[一言] え?灰皿投げるの? 石やクリスタルの灰皿は相手の頭を殴るのに存在するんじゃ? で、次回はマロッドに率いられるクズの濃密描写ですね
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