夢見る幼女じゃいられない
のじゃ姫にプチアマゾネスを付加させたせいで書くことが増えました(´Д`)
長いので後半少なめですが二話に分けます。
少し話は前に戻る。
第二王子マロッドからの襲撃とその本性が判明した日、小悪魔と覇王様とのじゃ姫は仕立て屋に来ていた。
「僕は助けに行きませんよ」
ジェロイがいなくなった事で大泣きして、なんかイチャイチャしたショタと覇王様にドキドキしたら、仕立て屋に連れてこられたのじゃ姫リリィ。
育ての親が繕った服しか着たことが無かったので、ジェロイのことを忘れ興奮してはしゃいだのは子供だからしょうがない。
そこで平成魔法少女撲殺系にコスプレさせられたリリィは、小悪魔セルフィルにゼ、ジェロイの救出するのをお願いする前に断られる。
「な、何でなのじゃぁ」
「リリィを教育して一人前の王女としてお城に連れて行くまでが僕のお仕事と約束ですから、それ以外は管轄外です」
昭和魔法少女ステッキ謎ビーム系にコスプレの小悪魔セルフィルは、普段の男装より金糸や色とりどりの宝飾された衣装を纏って濃いめの化粧をした覇王様グリエダの膝の上で、ステッキでポンポンと自分の手を叩く。
そして覇王様は小悪魔の頭に花を飾り付けるのに夢中になっている。
「それにゼ、ゼ、ゼ、ゼンー」
「ジェロイだジェロイ」
「うひぃん!? えーとそのジェロイはハイブルク家の者でもありませんし、己の判断で屋敷を出て行ったのなら自己責任です。ウチの使用人に報連相をしておけば何とかしてあげたのですけどね」
グリエダに耳元で囁かれて悶えながらセルフィルは、リリィが望んだ答えをくれなかった。
「助けたいのなら自分でどうにかするように、まあこちらの都合もあるので護衛は付けてあげますから」
「ふぐうぅぅ」
ヅカ美女の膝の上に乗った魔法男の娘が魔法幼女にマウントを取って泣かせる。
その横では三人メイドにオネェ口調の仕立て屋主人が縫製技術でマウントを取っていた。メイド達が作る次回の小悪魔ショタの服はフリルとレースと決定した瞬間である。
そしてそんな中、仕立て屋の主の様に一番いい席でお茶を飲む王都商人の長老のお爺ちゃん。
ちなみにお爺ちゃん、覇王様のお尻を触ろうとして手首をクキッとされて、痛みで悲鳴を上げた時に腰をグキッとやってしまい。プルプル震えているのは年のせいでない、痛みのせいだと主張している。
そんな混沌とした中で、最初にSAN値が尽き始めたのはリリィであった。
心の支えだった兄同然のジェロイが自分を置いて行ったこと、セルフィルの自分を見捨てるような言葉、周囲の大人の関心が自分に無い事に、リリィの心から涙が溢れ出してくる。
「ジェ、ジェ、ジェロイを助けて欲しいのじゃーっ!」
それでも助けを求める。
ジェロイを、自分の家族を救いたいがために。
「お断りします。自分でどうにかしなさい」
号泣で鼻水も出てお願いしても小悪魔は折れてくれない。
「セルフィーがいじめるのじゃああぁぁーっ!」
「失礼な。幼女相手にいじめなんてしません。するならからかうぐらいです」
「「「結構酷くないかい(わね)(ですか)(かのぅ)」」」
あっさり拒否られたリリィはギャン泣きしてセルフィルの傍にも寄りたくない状態になってしまい。
落ち着くまでグリエダがアレスト家の屋敷にリリィを預かる形になった。
そこでリリィはアレスト邸で部屋に引きこもってしまう。
当主のグリエダは放置しておけと指示し、常識人の多いアレスト家の使用人は独りを好む気難しい客人の対応をリリィにした。
のじゃ姫リリィはその短い人生を恵まれて送ってきている。
誕生した瞬間から側妃に邪魔な存在として疎まれ、母の王妃がその魔の手から必死に逃してくれた。
そして王妃が少ない自分の公費から捻りだしたリリィの生活費を、ヒラリス子爵に横領されて貧しい暮らしになっても、育ての親のババ様とゼ、ジェロイの三人で楽しんで暮らしていた。
ババ様が亡くなったあとはジェロイが守り、その身を賭して彼女を王妃の下に行けるようにしてくれた。
出産して間もないのに生まれた我が子を手放す覚悟を決めた王妃。
リリィが素直にまともな常識を持って育つようにしたババ様のヒラリス元子爵夫人。
兄の様に接して守ってくれたジェロイ。
他にも彼女の幸せを願う者はいた。
皆がリリアーヌを籠の中で守ろうとしていた。
そのまま籠の中にいれば、リリィはただただ助けを待つ王女としていただろう。
だがそこに外に出てくるかな? 出てきたら面白い事を教えてあげようと、籠の鍵を外すだけ外した小悪魔なショタが待ち構えていた。
「まずはげんじょーはあくなのじゃ」
セルフィルとコスプレの合わせと決裂をした日から半日経ったアレスト邸の一室で、リリィはケロッとした顔でいた。
目元は先ほどまで泣いていたのか赤く腫れているけれど、感情に振り回されてはいない。
「じじょちょー教え、泣いていても何もはじまらないのじゃ」
ババ様やジェロイはリリィが泣いた時は慰めてくれた。
しかしハイブルク邸の侍女長はマナーのお勉強でぐずる彼女を慰めはしない。それどころか泣いた分に少し追加して、しっかりお勉強の時間をこなせさせられる。
終わった後には、休憩と称してお菓子を出されて、泣かなければもっと早くに食べれたのにと教えられたのである。
「わらわはグリエダのおうちにいるのじゃ。セルフィーのおうちと違って変態はおらぬのじゃ」
おそらくハイブルク邸の侍女長が聞いたら、珍しく悲しむ表情が見れるようなことを最初にのたまうリリィ。
「ジェロイを助けるのが一番なのじゃ。ーつだけにしないと何も取れなくなるのじゃ」
遠い目をする幼女。
ハイブルク邸の三人メイドと食材を掛けての追いかけっこをして、全員捕まえて全てゲットのはずが三人に振り回され体力が底を尽いて、塩豆スープのみの晩御飯ほど悲しかったことは無いリリィである。
「じょーほーが少ないのじゃ。ジジーがせいてーは事をしそんじると言っていたのじゃ。しそん汁は美味しいのじゃ?」
首を傾げる幼女。
よくリリィの相手をしていたハイブルク邸で一番暇人だったロンブル翁に、子供はお姉ちゃん達に人気があると連れて行かれた。
もちろん日中だったが、これで目当ての女の子とのお話のきっかけになるわと喜ぶロンブル翁に、何をするにしても調べる事が大切だと教わった。
その後きっちりと侍女長に、なんて所に連れて行ったのだと、監督不十分でロンブル翁とセルフィルはお説教をいただいている。
「でもどこからじょーほーを手に入れるのじゃ? まあどうにかなるのじゃ。明日から動くからしっかりと眠るのじゃ」
リリィはハイブルク邸でのセルフィルとグリエダの会話を寝たふりしながら聞いていた。それによればジェロイを助けに行くのはまだまだ先のようで、安心して一晩は眠れると彼女は判断した。
『いいですか。人は休める余裕がある時は休むべきです。考えつかない時は僅かな時間でも休めば頭がすっきりして冷静になれますよ。まあ大半は解決策も浮かばないですけど鈍ったままよりはマシですよね』
毛布に潜り込むときに、人を小馬鹿にした顔を思い出して唸るリリィ。
「うぬぬ。セルフィーはいじわるなのじゃっ! わらわだけでジェロイを助けるのじゃーっ!」
リリィはしばらく四肢をバタバタと暴れていた。けれどジェロイがいなくなって大暴れしてコスプレに喜んだりと体力精神共に使い果たした彼女は、ゼンマイが切れた様にパタンと眠りに落ちる。
寝ながらもやられたらやり返すのじゃなど不穏な寝言を言っていた。
セルフィルは王女リリィをハイブルク邸に迎え入れた時、どうせ礼儀作法や王族としての知識なんて子供は面倒で嫌がるだろう。それよりも人との相対力や、生存力を高めようと考えた。
考えて実行してしまったのである。ただし大半をハイブルク邸の者に任せて……。
次の日からリリィは行動し始めた。まずはグリエダの使用人達の人となりを調べる。
一応? 王女なのでグリエダはちゃんとした侍女に世話をするように付けていた。
「ダメなのじゃ。じじょちょーの言っていたマトモな使用人なのじゃ」
ハイブルク邸の侍女長から、あまりセルフィルと関りが少ないメイドを指差し、あれがまともな使用人で主に忠実で情報を漏らすような下手な事はしないと教えられていた。
グリエダの屋敷はその典型的な使用人達で、リリィにはお客様としか相手をしていなかった。
そして侍女長はまともなメイドの次に、婚約者に膝枕をしてもらい大の字で寝ている主を、いそいそと写生しようと準備している三人メイドを指差し、あれは使用人としては失格レベルであるとリリィに教える。
三人メイドがえっ? と驚いた顔を向けてくるけれどガン無視の侍女長であった。
それから部屋に閉じこもり落ち込んだふりをして窓から抜け出し、グリエダの屋敷を見回る。
二階ぐらいならおサルさんの様にスルスル降りられる技術を元暗殺者の変態執事に教授された。のではなく不良ジジイのロンブル翁が街に繰り出す為に屋敷から抜け出す方法を勝手に覚えてしまったのだ。
「うみゅぅ~集まらないのじゃぁ。グリエダは勘がいいから近寄れないのじゃ」
それでも屋敷を偵察中に慌ただしくグリエダの臣下が武具の整備や馬の体調を整える姿に、自分を護衛してくれる為なのかなと少しホッとする。
そんな姿を目端で見てほんわかするお爺ちゃん臣下達。
使用人には気づかれなくても、長年騎馬民族相手に戦ってきた彼らは歴戦の騎士である。子供の未熟なスニーキングなんてお見通しであった。
辺境伯領の孫と離れ、成長したグリエダは男装に大人っぽくなって反抗期? 反抗期? と娘が理解できない寂しい父親の様になっていたお爺ちゃん達。
そこに幼女が隠れながら興味津々に自分達を見てくるのにお爺ちゃん達張り切ってしまい、何人かギックリ腰になったのはしょうがない事だろう。
「ジジー達のお話ではもうすぐセルフィーがやって来るのじゃ。なら変態の誰かも付いてくるはずなのじゃ」
リリィが屋敷を動き回っているのには気づいていたグリエダから、危ない時以外は放置と言われていたお爺ちゃん達は世間話を装って情報を流した。
後でそれを聞いたグリエダは額を抑えて呆れながら、交代制で領地にジジイ達を帰すのを決めたという。
そして単独で第二王子マロッドと相対し、リリィの護衛するのをお願いする事をど忘れして、慌ててグリエダの屋敷にやって来たセルフィル君。
二人が別行動をする事を聞いていなかったグリエダには青天の霹靂で拗ねに拗ね。その後ご機嫌取りで、タイミング的に貴重な時間を大幅に消費することになった。
その間、護衛で付いて来た執事のアレハンドロは使用人の待機室にいた。
「おや? そこにいるのはリリィ様では」
「久しぶりなのじゃアレハナゾロ」
「アレハンドロです」
出された紅茶を優雅に飲んでいた彼は窓の外から覗くリリィを十字架の様に持ち上げて室内に入室させる。
「王女が窓の外から覗くなど侍女長様に叱られますよ」
「わ、わらわはセルフィーと喧嘩中で帰らないから大丈夫なのじゃ!」
この二人、のじゃ姫育成教育で頻繁に追い、追われる形で関わり合
いが深かった。
「私に声を掛けてきたということは何か御用がおありでしょうか」
「セルフィーの悪だくみを全部教えて欲しいのじゃ」
「私はセルフィル様の執事ですよ?」
超弩直球でネタバレの核心を聞いてくるのじゃ姫に誰がこんな風にしたんだと、アレハンドロは頭痛がし。
あ、敬愛する我が主に似たんだなとすぐに納得して痛みは晴れた。
「申し訳ございません。我が主の許可がなくば教え」
「学園でセルフィーが落書きを書いた紙の切れ端なのじゃ」
「答えられることなら何でも答えましょう」
使用人としての秘密厳守の心を、目の前に出された推しのアイテムにあっさり捨てるアレハンドロ。
のじゃ姫リリィは学習していた。
ハイブルク邸での教育でアレハンドロとは追いかけっこを主にしていた。砂かけや草を結んで足を引っかけるなどの妨害工作はセルフィルの切り札の一つである彼には殆ど効果は無かった。
だからといって何もしないでは、羞恥と屈辱のコスプレをさせられるので対策を講じなければならない。
そこでリリィはアレハンドロを観察する。
三人メイドを使用人失格と言った侍女長が『ただし自由を許されるほど主から全幅の信頼を受けている可能性が多いので、ある程度の交渉ができるかもしれません』と教えてくれた事を胸にとどめて、アレハンドロが主を敬……愛? している事を発見してリリィは取引をした。
セルフィルの使用済……持ち物を年下特権で貰ったりこそっと盗ったりして、教育が始まる前にアレハンドロに手渡すことで手加減してもらう。
やらせで楽をするのではなく、あくまで手加減をだ。
セルフィルにやらせがバレても成長したなと師匠面するだけだが、侍女長にバレるとリリィの教育の大半が礼儀作法説教になる。絶対に。
そんな交渉出来るアレハンドロがセルフィルのお付きでリリィの下に来たのは僥倖であった。
「おっとこれ以上は申し上げられませんよ」
「ふぬぬ。敵の装備がじつよーせいのないものばかりなんてじょーほーはいらないのじゃ!」
ただし情報を小出しに出されて、常日頃集めていた交渉材料のセルフィルの使用済……アイテムの殆どを放出することになったのは仕方がない。
「わらわに兄様と姉様がおったのじゃ?」
「いたようですね」
「どうしてその兄様達がジェロイをひとじちに取るのじゃ?」
「私にはわかりません。セルフィル様の言うにはリリィ様の為だそうですよ」
「? ? ?」
初めて知る己の兄達の存在と、兄の様な存在を自分の為に人質に取ることにリリィの幼い頭はついていけない。
幼女に難しい話を理解するのは無理であった。
「よくわからないからジェロイを助けた後、その兄様? を悪い事をしたからぶっ飛ばすのじゃっ!」
だからその気持ちのままに動く。
優しく育てられた素直な心はそのままに、生存方法を多めに学んだことで精神的にタフになった彼女は誰かに助けてもらう少女ではなくなっていたのだ。
「悪いことをしたらめー! なのじゃ。バレたらこらしめるのじゃっ!」
アレハンドロは吠える幼女を見て、自分の主の教育方法は間違っていないとうむうむと頷く。
この執事、小悪魔ショタ至上主義なのでセルフィルの行った事を全肯定するヤベー奴である。ハイブルク邸では変態執事が間違いを起こす前にボコれと重要事項になっていた。
つまり小悪魔が婚約者の覇王様の御機嫌取りをしている他家でアレハンドロを止める者はいない。
「こらしめるには武器が必要なのじゃ」
「ふむ。しかし今のリリィ様は何もお持ちにならないようで? さすがにアレスト辺境伯家も王女様に武器になるようなものは渡さないと思いますが」
「セルフィー達がいきなり連れて出たから、わらわのお出かけポーチはお部屋に置いて来たのじゃ。それを取って来て欲しいのじゃ」
リリィのポーチ、それはサバイバル技術を教えていた元軍人のロンブル翁とセルフィルの監修の下に用意された幼女が三か月ぐらい単独で生存出来るサバイバルセットが入ったウエストポーチである。
「確かにアレと護衛に付く者がいれば幼女のリリィ様でもゼンーラを助けることは出来るでしょう。しかし! 交渉材料を全て出し尽くしたリリィ様の頼みをタダで聞く程このアレハンドロ安くはありませ」
「取って来てくれたらお屋敷に隠したセルフィルが使っていたペンをあげるのじゃ。書く時に悩んで咥えていたやつなのじゃ。他にも隠しているのじゃ」
「忠実な犬とお呼びください」
といってもアレハンドロはセルフィルの執事であり、第二王子マロッドが動く当日までショタのサポートで多忙だ。
アレハンドロがリリィに出来ることはセルフィル以外の情報の提供と、当日にセルフィルの影武者をする三人メイドのアリーにポーチを手渡すリリィの依頼の手紙を渡すぐらいであった。
のじゃ姫「ヤらなければ何も食べることが出来ないのじゃ…」
ダッシュ「王女様に何をしたんですか…」
ショタ「いや、屋敷の者に任せいたんだけどね。どうしてこうなったかな~?」
お久しぶりでございます(゜∀゜ゞ)
そして遅くなり申し訳ございませんm(_ _)m
のじゃ姫の設定をプチアマゾネスに変更したせいで難産になりました(´Д`)
うん愚王の血筋は筆者に負担をかけてきやがります(`・ω・´)
そのかわりにハイブルク家らしさが出たのじゃ姫になったかと思います(*´▽`*)
この回が無かったら受身王女の王道パターンで書くの楽だったんですがボソ(;・д・)
あと編集作業に脳の処理がもっていかれているのもあります。近いうちにちゃんとしたお知らせをしたいですね(●´ω`●)
書くのが嫌だー!と現実逃避してたら、赤フンと具視が担ぐ神輿にJが乗って書けー書けーと脅迫してくる夢を見て、ごめんなさいと叫んで飛び起きました。でもバカップルを書く余裕は今のところありません(´・ω・`)









