愛する者の為に動く
お久しぶりです<(_ _)>
まだ書いてるよ!(´▽`)ノ
第二王子マロッド
女性にモテるチャラ男から、余裕のあるイケメン王子にクラスチェンジして、自分中心が集まる側妃派と妹を操り元王家派を一時的とはいえまとめ上げたカリスマ。
俺と会話しながら恋文を何通も書ける頭に、来ない確率の方が高かったチャンスをモノにする見極め。
女性の為に馬に乗れるようになったと言っているから、調べたマロッドの彼女達の趣味だったものは詩に花、歌にダンスに行儀作法、剣術、戦術……。
長兄並みのパーフェクトメンじゃね?
それに対するは絶賛王位継承権放棄中の第二王女リリアーヌ。
側妃ヘレナの悪意から逃すために、城を離れて乳母の元で育つ。
のじゃ語、ゲームで思考と判断の強化に、ハイブルク公爵家侍女長行儀作法、変態からの逃亡方法、魚鳥スッポンの取り方、それらの絞め方に野営調理。ロンブル翁と変態執事の急襲ドキドキ単独二泊三日サバイバルキャンプ。
花の事を聞いた時には、グリエダさんが全部食用か治療用の草花ばかりだと教えてくれ軽く眩暈がした。
ハイブルク公爵家は女王ではなく、アマゾネスでも製造しようとしていないかな?
王として非の打ち所がないマロッドと、女王として非の打ち所しかないリリィ。
う~む、99対1ぐらいでのじゃ姫リリィの大敗北だ。
「久しぶりだね、セルフィル=ハイブルク君」
「ランドリク伯爵の屋敷以来ですね。第二王子マロッド=エルセレウム様」
「そんな堅苦しく呼ばなくてもいいよ。気安くマロ君でも」
「ではマロ。僕のことはセルフィル様と崇め奉りながら呼んでください」
「では私はセルフィル様の奴隷アレちゃんと」
「……ヤバいの飼っているねぇセルフィル様」
「こらアレハンドロ。左手で頬叩きしているところに、飛び蹴りかますようなことはしないの! あ、セルフィル君でいいですよ。セルフィは親しい人以外には呼ばれたくないので」
「じゃあしょうがないね。私は様付けかな」
ウチの狂犬が割り込んできたけど、マロッドとの軽い挨拶を交わす。
愚王についていた貴族なら額に青筋立てて襲い掛かるだろうに、彼には軽く躱されてしまった。
「まさかセルフィル君がこの場にいるとはね」
「少しマロッド様には聞きたいことと、驚かせたかったのと、あと大半は嫌がらせの為に無理を押し通して僕はこの場にいます。意外でしたか?」
「そうだね。リリィと同じ馬車に乗っているはずの君がここにいるのは驚きだよ。どうやって戻って来たんだい?」
無視しないでほしい。ボケにはツッコミが必要なのよ。
うーん、ダッシュ君を強引にでも横に置いておくべきだったか、『そんな事の為に僕はここにいるのー!』と叫んで絶望してくれそうで面白そうだったのに。
マロッドの疑問通り、本来俺はのじゃ姫リリィと王都を出ているはずだった。
「そんなの最初から馬車に乗っていなかっただけです。乗っているのは僕の替え玉のメイドですよ」
別に難しいことはしてない。
ハイブルク家のメイドであるアリーが俺の影武者だっただけだ。
昔、ハイブルク公爵領で少しやらかした時に、仕方なく一番俺と体格近くて金髪碧眼だった三人メイドの一人アリーを身代わりにした。
化粧をしなくても男の娘になれる俺と、俺と同じぐらい小柄で金髪のアリーが俺の変装をすればあら不思議。兄妹? と見間違えるぐらいには一目ではわからないぐらいになる。
影武者は久しぶりなので、成長した俺とアリーでは差が出来ているだろうと思っていたら、俺の方が背が低くなっていたショックだった……。
「それはおかしい。君とアレスト女辺境伯には、他がおろそかになるほどの監視をつけた。王都を出るまでは完璧に私の下に伝えられるはずだ」
おそらくここまで自分の想定内で進んできたマロッドの初めての予定外に眉間に皺を寄せていた。
「別に絶対というわけではないでしょう。貴方の配下は人を蹴落として贅を貪る無能な連中なんですから穴は出来ますよ」
「その無能な連中だけでは信用出来ないから、信頼できる恋人達に穴を埋めるのを任せたんだがね」
そこで悩むマロッドに、恋人達を疑わない彼に好感を持った。だから、彼女達の愛が報われるようにしてあげよう。
「ハイブルク邸から馬車が出発した後、兵の一部が分かれたと報告がありませんでしたか」
「あったね」
「おかしいと思いません? そんな怪しい行動しているのを無能で信頼できない連中だけに追わせるのは」
「……」
考え込むマロッド。
おかしいよね。だって彼とその恋人達しか知らない事を俺が喋っているのだから。
「あぁ、私は恋人達に裏切られていたのか……」
「いえいえ、彼女達は裏切っていませんよ」
芝居がかった嘆きをするマロッドにツッコんでしまう。
美形が仰ぎ見るな。手を広げて額に置くな。悲し気に息を吐くな。
口元が苦笑しているぞ、わかって俺をからかっているなタラシ王子め。でも愚王や第一王子ジェジェ? の様な会話が成立しないのに比べれは会話が楽しい。
俺はマロッドの恋人達を寝返らせようと工作活動を行った。
女性に贈り物をしない男なんていないから、王都の商人に調べてもらうと彼の恋人達の情報は手に入った。その人数に傍にいた三人メイドはちょっと引いていたけど。
そしてその情報で遊びまくって顔が広いロンブル翁に彼女達と交渉してもらったのである。
あのジジイ、経費だ経費と飲み食いしやがったけど、貴族商人平民女性全てに対応して口が回るのがジジイしかいなかったんだよね。
「本当に彼女達に裏切られていたら、私は今ここにいないだろうね」
「優秀過ぎません彼女達。さすがに途中で露呈すると思っていたんですよ」
「女性が本気で隠すと男にはわからないものだよ……」
超同意―。ハイブルク家の女性陣なんかは俺のポヤヤン実母も入れて全員何考えているか分かんないもの。
元々はマロッドが引き返せないところまで影武者がバレなければ最良だったんで取引は成功なんだけど、さすがに俺がバラすまでマロッドが気づかないなんて、女の本気の隠蔽工作凄すぎです。
「それで彼女達のおかげで、王都に散った兵達は君の後ろに集まったのかな」
マロッドが視線を向けた俺の後方には、土を盛って出来た防壁に囲まれたフル装備の兵士達がいた。
「王都に散らせた兵を集合させたのは僕ですけど、彼女達のおかげで思っていたよりも集まりました」
ついでに生王子にオロオロしているスナオ君と、逃亡しようするダッシュ君。そのダッシュ君を逃さない様にメイドのセイトとカイナが逃亡の進路を阻んでいる。何やってんの?
「やるなぁ。自分から注目を逸らせるために奇異に見える行動を起こさせ、分散させることで追っている者に見逃す隙を作り、その隙から抜け出せた兵を集めるなんて面倒くさい事、私ならやらないよ」
「アレスト女辺境伯グリエダさんを途中で引き返させれば済む、でしょうか」
そうだと、マロッドは頷いた。
グリエダさんを投入する。
それは彼女の武力を知っていれば、当然の甘い誘惑だ。
マロッドはグリエダさんの騎士百人切りや玉座まで一直線、愚王失墜の夜会を調べているのだろう。
「マロッド様は僕よりグリエダさんがご希望のようで。人の婚約者に手を出すと火傷しますよ」
「あ、いやいやっ違うよ!? 予想ではアレスト女辺境伯がこの場にいる可能性が高かったという意味で。私は他人の女性に手を出したことは一度も……ないよ?」
最後が疑問形になると不安になるだろうが王子。
「僕でもグリエダさんに任せたい誘惑にかられました。楽ですもんね、ゴミを処分するのに」
騎乗しているマロッドに一歩近づく。
見上げる角度がさらに上がるけど、彼の顔が良く見えるように位置を変えた。
おや? 近づいた僕を見てどうして怯むんですか。これからなんですよ貴方の顔を面白おかしくするのは。
「でもどうしてグリエダさんなんです? 誰だってよかったでしょうに。騎士団長にセイレム公爵でもいいですね。二人なら今後の国政の為に不慮の事故でマロッド様を確実に殺してくれますよ」
王妃様は自分の娘のリリィの為に嬉々として許可を出してくれるはずだ。そして王家の血筋がか細くなることに宰相は卒倒するだろう。
「ですが騎士団は自称貴族の盗賊殲滅に精を出していますし、セイレム公爵は第一王女オーレッタ様を拉致して、自分の領地に逃げ込もうとしているアガタ公爵を追ってもらっています」
「だろうね。二人を王都から引きはがすのは結構苦労したんだよ。おかげで戦力の大半には王都近辺で」
「そこは僕もマロッド様には感謝していますよ。兄の嫁の父親に王族殺しなんてしてもらいたくありませんからね。あ、オーレッタ様はセイレム公爵が責任を持って保護してくれるそうです」
「……あの子は私の操り人形だった。しかし建前はあっても罪は罪、修道院にでも入れられるのかな」
「でしょうね。どこぞの誰かさんが王妃側の貴族に第一王女はマロッド様の傀儡だと吹聴してくれたおかげですね」
そんなことをしたのは誰だろう。
きっと妹スキーな大迷惑王子と、親戚になるオッサンが罪を被らない様に世界一美少年なショタが頑張って情報操作をしたのかな。
「そこで気になったんですが、どうして騎士団長とセイレム公爵を関わらせない様に工作をして、どうしてグリエダさんには何もしなかったのかって」
「それは君達を襲撃して、セルフィル君を護るように仕向けたはずだが」
「それだけですよね。まだグリエダさんに選択の余地があるじゃないですか、僕なら真っ先に余地を潰しますよ」
まあショタにご執心のグリエダさんには襲撃の効果は抜群だろうけどさ。その後放置されたら覇王様投入で一件落着? ぐらいは考えちゃうよね。
逐次、狙っているぞと脅しをかけて行動不能に追い込むぐらいはするだろう。
「予定では今、マロッド様の前に立っているのは僕じゃなくてグリエダさんだったんですよね」
「ああ、そうだね。さっき言ったように一番可能性が高かったのがアレスト女辺境伯だったけどね」
「愚王派の貴族を一気に処分出来るからですか」
「そうだね。彼女の力なら容易いだろう?」
「グリエダさん一人なら、隙をついて少数で城に侵入出来るからですか」
「そうだね。圧倒的でも単独では同時に対処出来はしないだろうからね」
ゲームで無双出来ても無数に雑魚がいたら少しは取りこぼす。
でも武力999のグリエダさんにショタの考えたチート武器255(重量制限特大)をあげたから余裕で瞬殺じゃないかな?
「まあ自分の婚約者を都合の良い道具の様に扱われるのは甚だ不愉快です」
「それはすまないと思っていたよ。しかし私は王族で彼女は貴族だ。今の王の不始末をすぐにでも対処しなければ、国内は荒れるだろう。そこに付け込んで大平原の騎馬民族が攻め込んでくるかもしれない。もしかすると隣国も同時に侵攻してくるかも。それらを防ぐ為なら私は何だって使うよ」
「貴族は道具ですか」
「そうだ」
「恋人達も兄妹も?」
「そうだ」
「国の為ですか」
「民の為だ」
少しの迷いもなく答えるマロッド。
今の彼を民が見れば、自分達の理想の王に立つお方だ! と諸手を上げて賛成するだろう。
「素晴らしいお考えですエルセレウム第二王子マロッド様」
だが甘い。
「それが貴方の中で一番だったらよかったんですがね」
その理想が一番では無い事は、俺は知っているのだよ。
何が一番なのかは予測はさっきの言葉でほぼ確定しているけど、できれば当たってほしくなかった。まあ、この後が少し面倒になるくらいだけど。
斜め後方に待機しているアレハンドロに手を向ける。
グリエダさんのおさがりの服にしまうのは少しキモかったので、変態執事に持っていてもらっていた物が手のひらに載せられた。
けっして忘れて慌てない様に、俺から渡されると肌身離さず所持するよう変態執事に三日前から持ってもらっていたのである。
あ、生ぬるっ!? どこから出した変態! 胸元か!? 胸元だよな!?
それが見えたマロッドの表情が僅かに歪む。
はい隙を見せて、俺に情報を与えたな。
俺の前世のブラック上司ならそこを突いて、五つぐらい仕事を任せて定時で帰宅するぞ。
「それは私が届けてくれるように君に渡した恋文じゃないか」
そう俺の手に置かれたのは、ランドリク伯爵邸でマロッドの恋人達へ渡してくれと頼まれた数通の手紙だった。
「恋文に暗号を書いて、敵対するかもしれない相手に渡すなんて気が触れているんじゃないかと思いますよ」
「ハハハ、オーレッタの状況を心配し、リリィの為にランドリク伯爵とアガタ公爵を抑えろと暗号で書いたやつだね」
あっさりと同意してくれるね。
「ほとんどが女性を称える美辞麗句の文を、暗号込みで書かれるのは才能だと思いますよ」
「女性に接する最低限のスキルだからね。セルフィル君も学んだらいい」
他人のだだ甘の恋文の中からキーワードを取り出す作業がどれだけ苦痛か知らんなこやつめ。俺は三人メイドに任せてたからその苦痛は知らないけど。キャーキャー言っていたから喜んでいたのかな。
あの頃に、ダッシュ君とスナオ君が宰相達に取られなかったら、精神耐性をつけさせるために任せたんだけどな。チッ。
「おかげで僕は愚王についた貴族達を、一斉在庫処分しようとしたんですがね」
「その処分しようとしたのを私が全て頂いて有効活用させてもらったね。セルフィル君が兄妹愛に騙されてくれたおかげだよ」
「僕が騙された?」
指の間で手紙を移動させて遊びながらコテンと首を傾げる。
その手紙を微笑しながら指さすマロッド。
「ああ、これですか。確かに僕は騙されましたね。でも兄妹愛ではありませんよ。深読みしすぎて読み間違えたんです。お母様の事が大好きなご兄妹達だなと」
追い込みショタ「さあ暴きますよ!」
マロッド「あはは、お手柔らかにお願いするよ」
二章のいいところだったので、まとめて投稿したかったのですが、序盤だけ投稿(´Д`)
まだ後半部分は書き終えておりません(´・ω・`)
でも投稿しておかないともっと遅くなるし、書籍化のことを少しお知らせしときたくて(つд`)
GCノベルズ様の新刊情報にショタと覇王様の情報が掲載されていますよ奥さん!(*´∀`*)ノ
先取りした読者様に感想欄で教えてもらう筆者…(´・ω・`)
実感と不安が筆者の脳に注入されて、深夜にカレーを作る日々を送っています。
え、書け?
のじゃ姫メインなのにマロッドがいいキャラ出してきたせいで大幅に変更しているのですよ~(´;ω;`)
本編のストレスをカレーと書籍化にぶつけている筆者です。
発売日までに二章終わるかな…(・_・;)









