ボク ダッシュ トテモ フコウ ダヨ(裏主人公その1)
お久しぶりです。
賞が決まった時に書きかけていたダッシュの話を加筆して投稿しようとしたら、ショタとのつじつま合わせもあって、ひと月も…。申し訳ございません。<(_ _)>
のじゃ姫リリィがショタと約束した少し後の、不幸な少年のお話。
僕はダッシュ。
ちゃんとした名前はあるけど、ある人物のせいでダッシュがみんなの中で上書きされてしまったので、元の名前で呼ばれるのはもう諦めた。
最近はダッシュと呼ばれるのに体が普通に反応するのが悲しくてたまらない。
「はあぁぁ~学生って最高の特権階級だよね」
「は? お前何言ってんの?」
机に顔を付けてだらけている僕の独り言に同級生がこいつおかしくなったか?という表情をしている。
いいなぁ、僕にもそんな顔をしていたことがあったよ。
「いやいや、教えてくれる先生がいるって最高じゃないか。わからない箇所は質問すれば答えてくれるんだよ。答えのないものから答えを出さなくてはいけなくて、わからないからたずねるとそれが君の役目でしょ? と言われて付き返されて。一つ間違えれば何百人規模の人生を狂わせるかもねと脅されて…ああっ! トクナシ男爵の使用人さんごめんなさいっ! 僕が一桁間違えて報告したせいで路頭に迷わせることになってごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「落ち着け!」
話している間にトラウマが呼び起されて悲鳴を上げ始めた僕を同級生達が抑えつけてくれた。
「はあはあ、ありがとう。あのままだったらもっと嫌な事を思い出して走り回っていたよ」
「「「こえーよ」」」
そんな引かなくても。
城の文官さん達ぐらいになると、最初に今からおかしくなりますので処理お願いしますと手を上げて言ってから狂うんだ。僕はあの領域まで逝っていないから大丈夫。
「そんなに城勤めってきついのかよ」
「前はそれほどじゃなかったらしいけど、今は城勤めのひとが激減したから」
今の僕の日常の大半はお城にあると言っていい。
悪魔に召喚されて地獄に放り込まれた僕。
宰相様って怖い人で一生会うことは無いと思っていたのに、ほぼ毎日顔を合わせて胃の調子を心配する関係になっているのはどうしてだろう。
「スナオ君は一緒に来なかったの?」
「彼もあだ名が定着しているんだね。僕だけじゃなくてよかった」
一人よりも誰かが一緒だと諦めるのも早くなれるよね。
「彼は騎士団について王都郊外の調査中かな」
「騎士団か。いいよな、気に入られたら将来安泰だろう」
一人のクラスメイトの言葉に周囲が頷く。
騎士団は貴族でも上位なら持っている。だけどだけど皆が一番目指すのは国家騎士団だ。
王国で最強の頂点というのは男の子にとっては憧れの存在だろう。
時々やって来るグリエダ様一人に壊滅判定を与えられていることは最高機密になっているけど。
情報が広まったら国家規模の恥で、他国からの干渉が強まる可能性が高い、と言われたら怖すぎて口を滑らすはずがない。
スナオ君なんて、初日にグリエダ様の騎士兵士死体(仮)製造現場に立ち会ったせいで、憧れは一切無くなったと後で言っていた。
僕が大人になったんだねと声を掛けたら、涙を流しながら殴りかかってきたのはどうしてなんだろう。
「ダッシュもいいよな。いろんなところから勧誘がきているんだろ?」
「ハハハハハハ」
確かにお誘いはきたよ。
一応、小悪魔に相談したら。
『う~ん、別に誘いに乗ってもいいですど、僕やハイブルク家と有利な交渉が出来るとは考えない様に各部署に通達しておきますね。ついでにダッシュ君には僕の一割も事務処理能力が無い事も伝えておきましょう。あとは僕基準の使える人員の教育方法も教えておきましょうか。三日に一度の二、三時間の睡眠と一週間に一度の帰宅を一年ほどこなせば、一人前の文官になれますけどダッシュ君もやってみます?』
小悪魔が通達したおかげで殆ど立ち消えて、小悪魔のお兄様である公爵様直伝のDOGEZAを繰り出すことになったけどね。
その後からお誘いをしてくれた人達が笑顔で優しく接してくれるんだ。
でもみんなの目が憐れんでいるのはどうしてだろう?
あ、右目から水が。
「ダッシュ様お時間です。王城に戻りますよ」
「ひぃっ! なな、なんで騎士のお方達が学園に!?」
僕の癒しの教室に鎧を着た騎士様達が入ってきた。
「小悪魔から今日の王女教育が終了し、ダッシュ様を引き取ってよいと連絡が入りましたのでお迎えに来たのです」
「あの小悪魔ぁ……!」
久しぶりに帰宅していいよと言われて、直帰で楽園の学園に来たら、小悪魔に王女様のゲームの相手をさせられた。
公爵家の小悪魔、女辺境伯様に、お姫様に伯爵子女様に忖度しない男爵五男なんていないよ……。
忖度? あの小悪魔が、今後の僕が一番使用するからって教えてくれたよ!
忖度ゲームが終わったら閉園ギリギリまで学園に残り、家の者が寝静まった頃に帰宅して、城で親しくなった料理人見習いの子に作ってもらった夜食を食べて寝て、早朝には学園に逃げ込んで生徒に紛れ込もうとしたのにいぃぃっ!
「とダッシュ様なら考えるだろうから、今捕獲しないと自分でも捕獲が難しいと、小悪魔が」
「小悪魔あぁぁああっ!」
ダッシュのダッシュ君だからね、とか小悪魔が言っていたけどダッシュってどんな意味がとか聞かれても僕だってダッシュが何なのか知りませんよ!
「僕なんて小悪魔の十分の一も仕事が出来ないんですよ! お城の皆さんは知っていますよね! あ! 腕を持ち上げないでっ!」
「その十分の一で並みの文官の何倍も処理出来ているのです。どうか大人しくご同行を」
「僕より優秀なホリー嬢がいるじゃないですか! 彼女なら小悪魔が褒めるとか言ったらやる気を出すでしょう」
「彼女は現在、ハイブルク前公爵夫人の侍女も兼ねていて大変お忙しく。ああ、そういえば彼女から伝言がありました。『逃げたら貴方の家を潰す』だそうです」
「ああぁぁああ! 本気で実行できるのがわかるうぅぅう!」
両腕だけでなく両足も抱えられてしまう。
魔力使いでもない僕に騎士から逃れられることは出来ない。でも体をよじってお城に着くまで時間を稼ぐんだ。
あの書類地獄に堕ちるのを少しでも遅らせるんだ!
「仕方ありません。こちらをお読み下さい」
ため息を吐いた一人の騎士がある一枚の紙を見せてくる。
その紙は僕を王城に召還する書状だった。
セイレム公爵様、ボルダー侯爵宰相様、ヒルティ子爵騎士団長様、ようやく体調が良くなって復帰された財務大臣様に他の大臣様方の署名があった。
それ王命よりも強制力ありませんかぁ!?
「酷い、酷いよぉ。こんなの逃げ道もないよぅ。僕はまだ中等部生なのにぃぃぃ」
「くっ!」
「情に流されるなよ。彼を連行しなければ俺達が書類の山に埋もれて帰宅出来なくなるんだぞ!」
「それに小悪魔の情報では、彼は諦めていない時はどんな手も使ってくると書いてあったろう」
「俺は産まれたばかりの子供の顔を毎日見たいんだ。そのためなら誰を犠牲にしてでも……」
「俺だって、最近忙しい忙しいって会ってくれないのねって恋人に言われて……」
「そうだな俺達はみんなの未来を託されているんだよな……」
「「「「すまない。騎士団の礎になってくれ」」」」
「犠牲って言ったああぁぁー!」
僕は全力で暴れた。
他人の為の自己犠牲精神なんて持ち合わせていない!
「嫌だぁーっ!」
「くっ、あの小悪魔の情報通り騎士に近い力を出しているぞ!」
「縄を打て! 暴れて体力が尽きたから仕事が出来ないと言い訳をするらしいからな」
「それを教えたのは小悪魔ですよね! モゴゴゴッ」
布で口を塞がれ、縄で全身をグルグル巻きにされた僕は木材をかつぐ様に運ばれていく。
「ヲゴゥワァボォボッデェヴグブウゥゥ! (僕は戻ってくるぅー!)」
ダッシュ君は不屈の言葉(ただし誰も理解は出来なかった)を叫びながら強制帰還王城行きになった。
「俺、文官を目指していたけど諦めるわ」
「俺も寄親の衛士を紹介してもらおう」
この年の生徒で、縁故が無ければ狭き門の文官を目指す者は少なくなったのは、今回の出来事のせいかもしれない。
ダッシュ「僕の人生どうなるんだ…」
小悪魔ショタ「え、面白おかしい人生でしょ」
裏の主人公ダッシュ君のお話しです(´▽`)ノ
ちょっと逃げ癖がある普通の男の子ダッシュ。ショタに目をつけられから人生が一変しました。
いつかショタから逃げられる日は来るのだろうか。
残念!ショタからは逃げられない(*´▽`*)
今回お話し少なかったですよね。
大幅に遅れた分、まだまだダッシュ君のお話し続きます。
筆者は分けて投稿するスキルを習得したのです!ヽ(´▽`*)ゝ
あと三話、ダッシュ君のお話しをお楽しみください。
さて、次話は何時投稿するか。
右手よ、すぐに投稿ボタンを押してはダメだ!少しは休みたいのぉー!せめて一晩…(つд`)









