忘れてはいけない発端はショタ
お久しぶりですm(__)m
やるなチャラ王子マロッド。
一通の手紙で覇王様とハイブルク家限定魔王様の二人を煽って完全排除対象と見なされ、俺のマスコットの地位を婚約者の事を何でも知りたい変態に陥れるとは、このショタの目でも見通せなかった。
「ですから商人が気を利かせようとしたんです。僕はお願いしていません」
「へぇ」
「セルフィル様。やっていないと真剣な顔で告げる時の男は大体嘘を吐いているのです」
「侍女長は味方じゃないの?あ、ロンブル翁の女遊びのせいですね。あのジジイめー」
敵対勢力への対応よりも、ショタのストーカー疑惑の方が注視なのは女性ならではだろうか。納得はいかなかったが。
「さてこれからどうしましょうかね」
グリエダさんと侍女長からの追求から短時間で逃れて、ようやく本題に入る。
彼女がマロッド達の首をコキッと折らないように、侍女長にお茶を用意してもらう。
それに加えてショタが膝の上に乗ることで動けなくした。
ちなみにグリエダさんが膝枕していたのじゃ姫リリィはベッドの上で大の字睡眠中である。
お姫様として少し心配だ。
ハイブルク家で鍛えられて野性化してないよね?いや、本能が鈍くなったペット化かな?
「だからこれから屋敷ごと伯爵公爵王子王女を更地にしようじゃないか。アレストの暇を持て余している連中を私が率いれば半日で終わるよ」
「ダーメーでーす」
はいグリエダさんは諦めていません。
彼女の即断即決武力行使は戦が多い地域生まれだからだろう。
あと圧倒的な個人戦闘能力からくる自信か。
「ぶっちゃけ面倒くさくなって、それもいいかな?と思いましたよ」
「ほら君もそうじゃないか」
胸を反らさないでください。
ショタの心のオッサンがそっと目を閉じて両手を上げ無罪を主張しています。
JKと接敵したら非難そして通報されると思っている習性が現代日本のオッサンには染みついている。
自分のことだけどちょっと悲しい。
「でもダメです。どんなに腐っても錆びても王族は王族。マロッドをどうにかすればグリエダさんが逆賊に認定されますから」
世紀末ならグリエダさんの方法が正しいのだが、あいにくとファンタジーな中世時代には上の身分ほど優遇される。
国防の要を担うアレスト家でも第二王子のマロッドを正当な理由あっても無くても、害せば族滅の対象になるだろう。
王族とはそれくらい身分で守られているのだ。
え?愚王を地獄に蹴落とした奴が何を言っているんだって。
あの時の俺は一時的に国の最高権力者にランクアップしていたのでいいのだ。
あのまま愚王を放置していたら、確実に貴族達は割れてエルセレウム王国は最悪崩壊していた。
宰相や俺を止める権限を与えた騎士団長が動かなかったのは、愚王よりも国の為に黙認したのだ。
先王の愚王至上マインドコントロールも、自分達の確実な破滅の前には勝てなかったようである。
「しかし挑発にセルフィルが襲撃もされて報復をしないのは……」
なるほど、グリエダさんがやたらやり返すことに執着しているのは、俺が襲われたからなのか。
ショタに独占欲と執着心が強い婚約者で、とても嬉しい俺です。
でも彼女に対しての襲撃の分は入らないのかな?
おそらくちょっと日常に刺激あったぐらいなのかもしれない。
二本の飛来してくる矢を、俺の眼球の前で摘まむように止めた覇王様だし。
「僕がマロッドの一番嫌がる悪夢を見せますよ。まだ考えがまとまっていませんし、情報も穴空きでどんな結末になるか今のところはわかりませんが、彼と」
「……」
返事は返ってこないけど、ギュッと背後から抱きしめられた。
これは不満だけど俺を立てて任せるということかな。
ならば期待に応えなければ。
それにこう見えても俺は男の娘!(ん?)
やられっぱなしは子供のショタは悔しいし、大人の心のオッサンはやり返す気満々だ。
「親友が、報復は慎重に。やる時にはクズ野郎が反省ではなく後悔するようなことを実行するように。と教えてくれたんです」
「セルフィルに友達がいたのかい?」
「なぜそこに驚くのですか?」
かなり酷いことを言われましてよっ!
「いや学園では私とほぼ一緒にいるから、一人ぼっちなのかなと」
「いますよっ!ダッシュ君にスナオ君、宰相」
「その三人は君が玩具扱いしている三人だよね」
「ええ、玩具達ですよ」
僕の悪戯にツッコミしてくれる友達ですよ。
どうして背後で首を傾げる気配がするのかな?
ちなみに親友は前世ではいた。
俺とクズ野郎への対応を飲みの席で話し合った変人だった。
唯一人、無駄知識を披露しあった人物で生まれ変わった今、その知識は非常に役立っている。
「まあそれは横に置いといて、現状僕達は報復行為も殲滅行動も地獄へ落とす事も出来ません。それはリリィが大切だと思っているかもしれない人物、じぇ、じぇ……」
「ジェロイ=ヒラリスかい?」
あだ名を先に付けると名前がどうしても浮かばない。ゼンーラ=カブトガニとかに改名してくれないかな。
「今のところは僕はゼンーラを見捨てません」
「ゼンーラ?」
スルースルー。
「子供が身内ともいえる人物を失うのは、心に消えない傷を負いますよね」
「ゼンーラは?」
「おそらくゼンーラの家のカブトガニはチャラ王子の手先になって、ゼンーラを何かしらの方法で呼び戻し。僕への人質にしたのでしょう」
「私をからかっているね?悪い子だ」
頬っぺたをムニ~ンと伸ばされながら、マロッドの手紙をヒラヒラと振る。
優しく頬を引っ張っていてくれたので痛くはない。
からかってはいませんよ。秒でゼンーラ=カブトガニに脳内で変換登録されただけです。
「ひゅふひぇひぃひぇ」
「おっと」
グリエダさんは指を外してくれた。
腫れていないかスリスリと擦ってくれる。
城でオッサンと美魔女に囲まれてストレスフル仕事をしているダッシュ君に、汗臭い騎士団のオッサン達に囲まれてむさい訓練しているスナオ君達よ。
羨ましいか俺の婚約者は優しいんだぞっ!
「襲撃で僕の身の危険を教え、手紙で自分が誰か伝えることで僕に忠告をし。そしてゼンーラの逃亡で、僕はリリィの心を守る為に動かないといけません。今の時点ではっきりとわかるのは、こちらの動きを制限、誘導していること。特にマロッドが王位を継ぐまでグリエダさんが絶対に動けないようにしてきていますね」
「私がかい?」
「こちらの最大戦力がグリエダさんというのはバレていますから」
アガタ公爵の屋敷を素手で半壊したので、マロッドはグリエダさんを要注意人物にしているはずだ。
ランドリク伯爵からも愚王の夜会での惨状を聞いているだろうし。腕がグシャァッ!や男のパァンッ!なんてかなりの女性大好きチャラ王子にとって恐怖の象徴だよね。
「だが私達を襲撃したのは悪手ではないかい?万が一セルフィルが怪我でもしたら、アレスト家の全てを使って王都を更地にしてでも首謀者を見つけ出して縊り殺すよ」
「それはグリエダさんの事を調べれば分の悪い賭けではないかと」
マロッドは俺が無傷で帰宅出来るとほぼ確信していたんじゃないかな。
辺境伯の交代劇になった騎馬民族との戦と、愚王が彼女を近衛に入れようとして騎士達を壊滅させられた二つは詳しくはわからない。
だが俺達の婚約を認めさせるために王城に木剣で殴り込み、動きにくいドレス姿で超常の使い手の魔法使いが複数付いていた騎士達を壊滅させることが、無傷で出来るグリエダさんが付いているのだ。
俺なら全額無傷にベットするね。
「現時点の情報で確実なのは、グリエダさんの期間を限定した拘束するぐらいですか」
「たかだか私を動けなくするためにねぇ」
自己評価が低い武神様ですね。
ハイブルク家の武力のトップ2の石投げジジイと元暗殺者変態執事が、正々堂々は無理、周到に準備をしたうえでのハイブルクの全軍で奇襲ならワンチャンある?と言っていたぐらいなのですが。
「もし私が動いたら?」
「ゼンーラ=カブトガニは殺されるんじゃないですか?貴族は御家の利になるなら、身内なんて消耗品よりも軽い命ですからね」
「兄弟がいれば尚更軽いか」
ああ~呆れながら俺の頭に顔をスリスリしないでください~。
こう見えてもショタはもうすぐ十四歳の男の娘(んん?)なんですよ。
心のオッサンが解脱魔法大人倫理を発動していなければ思春期爆発ーっ!しているところだ。
「僕も下手に動かないように釘を刺されますしね。ランドリク伯爵にちょっかいでも出せば、誰のかわからない小指ぐらい届けられそうですし」
そうなればゼンーラがハイブルク監獄から脱獄しただけでもパニック状態になったリリィがどうなるか。
せっかく施した、のじゃ女王育成計画が無駄になってしまうことだけは勘弁してもらいたい。
そこそこ商人達に動いてもらっているから、将来の有力貴族との橋渡し(長兄のお仕事)や、アレスト辺境伯領地への新規貿易路開拓の資材調達への優先権(長兄、セイレム公爵のお仕事)、御家断絶や降爵する貴族の領地の情報提供(長兄、宰相のお仕事)、政争のゴタゴタで落ちぶれた貴族の配下の連中が盗賊になったりするのを処理する騎士団の物資補給(宰相、部下任せにしていた騎士団長のお仕事)、と色々と融通を利かせることになっているのだ。
うむ、今更ながら気づいたが長兄の負担が凄いことに。
これはのじゃ女王育成計画は頓挫した方が、長兄の胃には優しいのではなかろうか。
長兄は王城に籠られたので、お願いを半分ほどまだ伝えていない。
おそらく怒られる。
長兄が本気で怒ると、侍女長の三割ぐらいで恐いのだ。
「このままマロッドに玉座を獲らせた方が楽かも、と考えてしまいました」
「セルフィルがいいならそれに従うけど。マロッドは一度でいいから殴らせてほしいなぁ」
それはマロッドをグリエダさんが殴ると、その部分だけ飛んでいきませんか?
「ふむ」
「?おうふ」
グリエダさんが俺の腰を掴んで持ち上げて器用に向きを変えた。
非力なショタは成すがまま、彼女と対面するように再びその膝の上にのせられる。
「それじゃあ。私の婚約者様は今回の後始末をどうするんだい」
いくら若年でもグリエダさんは辺境伯爵という貴族。
このお遊戯会である今回の舞台の大まかな結末はわかる人にはわかっているのだ。
そしてその結末の中で損害をどのくらい抑えていい方向に持っていくか、公爵家の末っ子の手のひらの上にあるのもバレている。
「そうですね。長兄にどこまでやっていいのか許可の手紙を出したら、相手側からの接触があるまで暇になりますからお出かけでもしましょうか」
「……うん。気晴らしをしないと、マロッド王子への苛立ちが収まりそうがないからね」
グリエダさんの質問に目先の答えではぐらかしたが、彼女はそれに少し考えて笑顔で乗ってくれた。
ただし最後まではぐらかしは許さないよ、と目の奥から訴えられているけど。
「はわわっ。こ、これがメイド達が言ってたイチャイチャなのじゃ……」
こらこらいつの間にか起きてフンッフンッ鼻息を吹きながらこちらを見る幼女よ。
中身は君の困った家族の話をしていたんだぞ。
まあヅカに抱っこされているショタは腐の人の恰好の的だろうが、そういうのに興味を持つのは学園に入ってからにしなさい。
あとウチの変態三人メイドは、このあと侍女長に一緒に説教してもらおう。怒りが分散するから丁度良かった。
「リリィを着飾って遊びましょうか。将来の子供の練習台にうってつけです」
「のじゃっ!?」
「むぅ……いいね。可愛いフリルの付いたドレスを着せようか」
「ティアラも乗せましょう」
やられて気分的に不愉快になったのと、これから面倒くさいお仕事のストレス緩和にのじゃ姫リリィには撲殺王女のじゃっ娘リリアーヌに変身してもらおうか。
たしかお蔵入り倉庫に先端にハートマークを付けたモーニングスターがあったはず。
ショタ「久しぶりのイチャイチャですね」
覇王様「イチャイチャだね」
ダッシュ「会話内容が…」
長兄「言うな。それより君の主の尻拭いを手伝ってくれるよな」
ダッシュ「いつの間にかセルフィル様が主にーっ!?」
大変遅れました(´`:)
後半へのつなぎ部分ばかりで少し考えながら書いていて、二度三度書き直していたら二週間も経っていました。
最近は寝ている間に小人さんが書いてくれないんです。
きっと知能レベルが足りていないんですね(*´∀`)(深夜のハイな筆者)
あとそろそろタイトルを変更しないとサギになりそうなので考えているのも原因です。
考えれば考えるほど、有名タイトルみたいになるし。
こう雨乞いフィーバータイム2や折れ鍬赤フン、具視軍団な神が降りてきてほしいです(;´Д`)
次回はもう少し早く投稿出来るように頑張りますので見捨てずお待ちくださいm(__)m
さてこれからバカップルを書きますか。
考えないから半日ぐらいで書けるかな?(。・ω・。)
雨乞い2、具視に興味がある方はこちらをどうぞ。
ただし、人前で読むと唐突に吹き出す可能性がありますので注意して下さい。
釣り合う二人はバカップル【ノクタ行き】
https://novel18.syosetu.com/n1277hy/
未成年の方はカクヨムでも投稿しています。









