情報は金より重くて恐怖を生む
サブサブタイは、ショタを敵に回すと詰む(チートではないブラックな経験のおかげです)
今回は今までの中でも一番困難でした。三千字ほど書いては、書き直しを数回。
真面目に書くのを止めたら三時間ほどで書けました(;´д`)
一万五千文字ぃー(T_T)
交渉の結果、同じカフェのケーキをこちらが支払うことで解決して、メイドのセイトの案内で行きました。
そこは落ち着いたカフェ。
奥の方で演奏者が意識しなければ心地よい風のような音楽を奏でています。
ご年配の店主と若い店員さんの二人で最低限の接触のみ。場の静かな雰囲気を楽しむことを目的にしたお店のようです。
お店に入った時には私達しかお客はいませんでした。
バルト様は私の前に着席し、護衛は各々自分の位置に着きました。
「そうだな。何から話していいものか…」
バルト様は白湯が入ったカップと胃薬の入った容器をしっかりと掴みながら、大きく息を吐かれた。
私はミルクと蜂蜜をたっぷり入れた紅茶をいただいている。
二つ隣の席ではメイドがケーキを幾つも頼んでいるのが気になります。
「まずはこの手紙か」
バルト様が私が妖精さんと心の中で呼んでいる彼の末の弟セルフィル君が書いた手紙を指差しました。
「君もわかっていると思うが、この手紙では公爵の私を蔑ろにした越権行為にはならない」
「はい」
セルフィル君の手紙はハイブルク公爵への謀叛と取られてもおかしくないものです。
嘘と書いてありますが、当主であるバルト様が冗談では済まされないと言えば彼は処罰されます。
ですがバルト様は否定なされる。
これ以降の話ではそれを前提に話されるということ。
バルト様はご弟妹を、家族をこの程度では切り捨てないというのを、私に教えてくれているのです。
信用されているようで嬉しいです。でも軍を動かすことより国盗りをしたことの方が大問題と考えるのは…考えないことにしましょう。
「何を最終的な目的にしているかは本人を〆て聞いてみないとわからないが、弟は王についた者達を排除するほうに動いている」
「それは…」
バルト様の言葉に息を飲む。
「公爵家の軍は幾ら母上が代行のピアス所持していても、私が認めない限り動くことは無い。そのくらいはセルフィルも…あれは覚えているか?」
「ヘルミーナ様にお願いすればいっか、とおっしゃられたのでおそらく覚えておられないかと」
メイドの横入りの言葉にバルト様はありうるなと呟かれる。
逆方向に信用がある妖精さんです。
「アリシアはどう思う?この意味のない悪戯の手紙を私に届けたことを」
「…」
軽い質問なのだろうか、それとも私への課題なのだろうか。
少し思考する。
ランドリク伯爵にアガタ公爵、その二つの貴族の派閥が現在の王国を蝕む存在です。
王妃様達が王が排除された今のうちに力を削ぎ落そうとされていますが、もちろん反発があって、長い時間の権力の奪い合いが始まる可能性が高いです。
それは第二王子、第一王女を囲われたことでさらに悪化している。
お二人は王が失脚したときの出来事には関与されておられません。
ですが私が知っているだけでも様々な方から恨まれている王とヘレナ様の御子というだけで今はお命の危機ですから、安全と思われる場所に逃げ込まれたのでしょう。
手紙の内容は軍を王都に呼び寄せる内容、おそらく私の父にも宰相様達にも軍を出させる嘘の内容と同じだと思います。
もしその嘘が事実だったら?
「敵対勢力との争いが長期になるのを避けるために、自分達の力を見せつけ焦らして短絡的に動かせようとしているのでしょうか?」
「そうだな。ランドリク伯爵とアガタ公爵が知れば動き出すだろう。私達側の軍が来れば王都から逃れることは出来なくなり、貴族院にいる者を動かしても武力で即座に握りつぶされることになる。彼らには時間制限が付いたことになった」
「しかしそれは虚偽です。実際に動くことはありません」
嘘では実現しなければ誰も怯えることはありません。
「この場合は虚偽でいいのだよ」
「え?」
「情報と言うものは知るのなら正確でなければならない。そして敵対する者には誤ったことを教えるのが常套手段だろう。だが中途半端な情報で混乱させるのも手だ」
意味が分からず、はしたないと思っても眉をひそめてしまった。
バルト様は顔をしかめて胃薬を一飲みされた。
「アリシアなら敵が増強するのを知ってしまったらどうする?そのために敵側の重要人物達が動く素振りをしたら、そんな情報が入ってきたら」
バルト様の言ったことは悪魔の囁きです。
人は意識してしまったら知りたくなってしまう。
「私なら調べます。証拠が見つかるまで」
「それは徹底的にかい?」
「はい」
「セルフィルの罠に自分からかかりにいくことなっているよ」
「行動しなければ解決するものもしません」
妖精さんの行ったことは悪辣でした。
情報を創り出して強烈に意識を向かわせて、どうやっても見つからない証拠を捜索させるという容赦の無さ。
ランドリク伯爵とアガタ公爵達にとってこの情報は自分達の未来を決めるものです。それを調べないということにはならないでしょう。
希望の一筋を与えているけど実は絶望だったのと、音だけの狼の群れで追い立て崖から落ちるのを早めるのはどちらが酷いのでしょうか。
(同じ所に行きつきますからどちらもたいして変わりがないと思いますよ)
「ですがこの手紙だけでは何の意味も成しません。噂や虚偽の情報は伝わってこそ効果が発揮されるものですから」
「うん、アリシアはよく勉強しているね」
ふぁっ!?
バルト様が腕を伸ばされ私の頭を撫でてきました。
褒められ慣れていないので、頬が熱くなるとのと同時に子ども扱いされているようで少し不満です。
「だがそれを理解しないで動く私の弟ではないんだ」
ああ、胃薬を一杯二杯と入れていかれるバルト様です。手元のカップの中身が薄い茶色を通り越して黒く見えるのは心配になります。
「私に手紙が届いた時点ですでに伝わることは決まっているのはわかっているね?」
「はい。ハイブルク公爵バルト様とセイレム公爵家の私が連れ立って王都に出向けば監視対象になります」
私はわからなかったけど護衛の者達が教えてくれた。
私達二人には外出時は数名の護衛者が付いています。今は同じカフェ内で邪魔にならないように囲むように配置して座っています。
それは高位の貴族なら幼少期からの当たり前のことなので気にもしません。
おそらく店の中が私達だけで占められているのは、護衛をしやすくするためにしたのでしょう。
ちなみにですがバルト様の護衛は褐色の肌の執事服の男性一人です。
ときおり悶えるので驚いてしまうのですが、護衛としては一流で一人で済むからと顔を背けながらおっしゃるバルト様が見れたので我慢していました。
「おそらく監視しているのはランドリク伯爵にアガタ公爵の者達だろうな」
「私もそう思います。ですがその者らが見ていたとしても内容まではわかりません」
だから私は何の意味も成さないと言ったのです。
王城に届けられたヘルミーナ様達への手紙で内容がわかったら、私なら軍が王都にやって来るとほぼ確定したとして動くでしょう。
「私なら母上の方を探り、すぐに領地に逃げ帰る用意をするだろう。後は何年も続く消耗戦だ」
バルト様も同じ考えのようで話の内容から不謹慎ですが嬉しい気持ちを内心に隠してこくりと頷きます。
「今の時点ではセルフィルのしたことは、想定していたことの最低とまではいかないが悪い方向に向くだろう。だが弟はそれをさせない、あの悪戯小僧の網は嘘欺瞞でゆっくりと狂わせるのだよ」
バルト様は胃薬湯を一口飲まれます。
「私達貴族は大体が貴族社会の中で情報を得ようとする。そしてだいたいは配下の者に正しいか調査させる。その配下はさらに下の方から調べていくだろう。ではその下とは誰だろうか?それは平民だ。貴族の周囲には多くの平民がいる。貴族の屋敷は多くの平民が使用人で雇われているし、領地を維持してくれるのも平民の者達だ。その中でも特に貴族に関わり、多くの貴族を貴族よりも知っているのが商人だ」
ゴクリとはしたなく息を飲みます。
私は国とは王、王家、貴族、国民に分けて考えていました。そして上に線引きされた線を侵した時、上位の存在からの罰が落とされるとも。
国は民によって支えられている。
その言葉は貴族として心に刻んでいるつもりでした。
ですがバルト様のお言葉を聞いてそれが上辺だと感じました。
領域を侵されるどころではなく、王族貴族の方から請うて手元に来てもらっていることに、支えどころではなくて己の二本の足だったのです。
「貴族と密接な商人は、数日後に人が訪問してくるのか、それは誰なのかぐらいは言い当てることが出来るらしい」
商人にいたっては今まで考えたことはなかったのですが、貴族にとってなくてはならない人達です。
着ているドレス、アクセサリー、化粧品、食材、馬の飼い葉まで調達してくれる。
逆算していけば貴族の私が何が好きなのか、何かを変えたことで何か行動を起こすことがわかるかもしれません。
そして貴族当主と懇意にしていれば秘匿される話も聞き出すことも…。
「セルフィルはその商人達から神と呼ばれるぐらいに崇拝されているのだよ…」
「は?」
意味が分かりません。
「宰相辺りなら気づいているだろうが、ここ数年で商人からの税が何倍も増えている。それらはセルフィルが王都に来て、商人達に干渉し始めてからなのだ」
もっと意味がわかりません。
「あいつ、『貴族なんて嫌味妬み僻みの足の引っ張り合いで国を発展させないじゃないですか。僕はサシミが食べたいんです、甘くて美味しい物を手軽に食べたいのです。ショウユミソコメーッ!というわけでチュウセイ商人達を鍛えてキンダイ商人にレベルアップさせます。いやーチュウセイの法には大きな穴があって、地域の価格差だけでも儲かっちゃうなー』と言って、王都の商人の殆どを手下にしてな」
全く以てわかりません。
バルト様は異国語を話しておられるのでしょうか。
あ、このカフェはセルフィル様の為に商人たちが無償で建てましたとか言わないでくださいメイドのセイト。
「バルト様、申し訳ございません。私はまだまだ勉強不足のようです。バルト様のおっしゃられることの半分、いえ四分の一、いえ十分の一もわかりません」
「それが普通の常識を持っているということだよアリシア。私はいまだに弟妹母達の異常がわからない」
「バルト様っ!」
未熟な私に優しく微笑まれるバルト様のお顔が光り輝いています。
「おいウチの姫様が洗脳されていないか?」
「あれはまだ恋する乙女よ。三日前に人の気持ちがわからないのねと言われて別れたあなたは何も言ったら駄目よ」
「え、マジで?」
「おまっ!?」
「別れた彼女から昨日聞いたから間違いないわ」
私の護衛達がうるさいです。
バルト様のお顔を見なさい。優しくこちらの心に寄り添ってくれています。
(それは自分の悩みを分かち合えるパートナーが出来たと喜んでいるのだと思います)
「あの弟が商人達にしていることは、我が家にシャレにならない量の贈り物が賄賂でなく感謝で贈られてくるから怒るに怒れないんだが。まあそれくらい信仰されていて、ちょっとしたお願いなら聞いてくれるのだよ。例えば、あなた方が注目しているお家が大量に食料や大勢が長期間駐留できる生活用品を注文されようとしている気配がありますと言うぐらいな」
ようやくバルト様がわかるお言葉で話されて、意味を頭が処理をすると血の気がサーと引きました。
バルト様がおっしゃられたことは国をどうとでもできる方法です。
商人が情報を集め、嘘を流し、最後に手を引かれたらどんな貴族でも、国でも盗ることができます。
いま追い詰められているランドリク伯爵にアガタ公爵が仕掛けられたら、いえセイレム公爵家でも知った今でも大損害を被る可能性が高かった。
護衛の者達も絶句しているからどれだけ悪辣なことかわかっているのだろう。
でもバルト様はまだ婚約者でしかない私に教えて下さった。
それは私を信頼してか、セイレム公爵家がハイブルク公爵家に同調してくれると思ってくれているのか。
それともこのくらい知られてもどうというとこは無いという自信の表れなのか。
「私達がこの店を出たらランドリク伯爵にアガタ公爵の手の者が来るだろう。店長、ハイブルグが軍を呼ぶとだけ言っておけ、後は適当にごまかせばいい」
バルト様がそう言うと、店長は調理をしていた手を止めて軽く頷いた。
「この店に来たのも弟の指図だろう。ああもうっ!乗らざるをえないどころか、すでに乗っている状態にしやがってっ」
お口が悪いバルト様は子供っぽく見えます。
ご家族の前では公爵の顔を外して、今のようなお顔をなさるのかもしれない。
「私は第二王子と、第一王女、第二王女の王妃で争ってもらってある程度力を削ぎ落してもらおうと考えていたのだが。はぁ」
バルト様はセルフィル君の行動力に息を吐かれます。
そして、紙とペンを店に頼んで持ってこさせられました。
「セルフィルは甘い。アレスト女辺境伯の印象が強すぎて自分が薄れているのは気づいていないのだろう。これくらいはしないとギリギリの不安感は望めない」
綺麗な字で書かれたのは、バルト様のもう一人の弟ダドリオ様に兵五千を率いて王都に進軍させること、そして妹のルデガルド様と先王弟カシウス様を王都に呼び戻すことでした。
「やるなら甘い部分は無くした方がいい。セイトこれを持って帰れ。追いかけてきたら焦ったふりをして落として構わん」
そう言って再びお作りになられた胃薬水で胃薬を飲まれるバルト様はハイブルク公爵になられていた。
ならばその横に立つのに相応しいように私も動きましょう。
もう一枚紙を用意していただき、私は父であるセイレム公爵への言伝を書く。
「…アリシア、君はセルフィルの影響を受けていないかい?」
「そんなことはありませんよ。王太子妃の教育が無駄になりませんでした」
私が書いたことはバルト様の先王弟カシウス様の擁立を支持して欲しいというものでした。
もちろん屋敷に戻ってから嘘でしたと父には伝えます。
「私の方は城にいる父に届けてもらいましょう。もしかするとうっかり落としてしまうかもしれませんけど」
どちらの紙も知れたら大混乱になるでしょう。
もし私の方が父にまで届いたら、王妃様や宰相も混乱なされるでしょうね。
あとで謝りましょう。
セルフィル君がドゲザをすれば全ての罪は許されると手紙に書いていましたので、ダメでしたらセルフィル君のせいです。これも人のせいにすればいいと書かれていました。
バルト様は公爵として、そして家族を護る夫として素晴らしい方です。
私もその隣でお支え立てるように学んでいきます。
でも今はデエトを楽しんでもよろしいですよね。
アリシアさん「頑張りますっ!」
長兄「婚約者が弟みたいになりそう。嫌」
抗議ショタ「は?僕はただのペンフレンドですよ。自信がなさそうなので、殺ってみて自信をつける方法を助言しただけです」
吐血長兄「やはりお前かぁ!ゲフッ」
アリシアさんデート編は終了です。
この人素直だから何でも吸収してものにするから怖い怖い(^^;
長兄のためにハイブルク家のおかしい家風を学ぼうとしています。せめてショタが嫁いでからにしてほしい(--;)
ショタの国盗り方法その2
商人支配下に置いて、貴族の連中ガッタガタにしてやろうぜ!でした。
自分達が上と思っている貴族では近世の商人には勝てません。物と情報で振り回されるのがおちです。
中世のガバガバな商売を少し見直しただけで、あら不思議商人の資産が何倍にも増えちゃった♪(^o^)
ショタのジョブ覧にはショタ、小悪魔、悪夢、女装、商売の神があります( ´∀`)
データを書き起こして共有するだけで、時代を数歩先を中世世界ではいきます。
そしてショタは何百キロ先の情報を最短で半日もかからず知ることが出来ます。
いろんな事をハイブルク家に差し出しているショタですが、余程の事がない限り教えないこともあるのです(^^)
しばらくはショタメインで書こ(;´д`)
真面目な子で書くのは難しいです。
感想欄がおかしくなっております。ショタのせいで\(^o^)/
え?ち、違うよ!筆者のせいじゃないよっ!(;・ω・)









