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さあ教育だっ!(まずは考えろ!)

寒いっ!

 のじゃ姫ことリリアーヌ王女の護衛、半裸兜はどうやらハイブルクの使用人達によって教育中らしい。

 いったい何をやった、半裸兜。ウチの使用人は報連相がしっかりしているはずなのに全員が笑うだけで教えてくれないの。

 最初の頃はのじゃ姫も心配していたが、一度侍女長がどこかに連れて行ったらカタカタ震えて戻ってきて、もういいのじゃ…と言って、それ以来半裸兜に触れることは無くなった。

 いったい何があった、のじゃ姫。

 アレストの爺さん貴族達と仲良くなったので、辺境の新兵教育を施してもらおうとしたんだが、まあハイブルク邸のどこかで生きているのだろう。

 いつか成長してのじゃ姫を颯爽と助けにきてくれるさっ!

 まあ、今来られない時点でのじゃ姫の記憶からは薄れていくのだが。


 そして始まるのじゃ姫の教育なのだが。


「のじゃぁぁ。無いのじゃぁ。パスなのじゃぁ」


 自分の手に持つカードとテーブルの上に並べて広げられたカードを見比べて悶える幼女。


「私も無いね、パスだ」


 肩をすくませパスする白銀の貴公子グリエダさん。

 勝負中なのでグリエダさんは一人で座っている。

 長い脚を組んで座る姿は超イケメン、ドキドキするこの心は乙女心?いや、ドレス姿に寝間着姿、お山にもドキドキしているからまだセーフだ。


「おっと、僕もないですね。パスで」

「ハートの4です…」


 恐る恐るカードを出すのはダッシュ君だ。

 止めていたくせに、のじゃ姫からの圧力に負けて忖度するするところが、小物らしくてショタ的にはヘタレポイントを上げたい。


「はーとの2は持っているのじゃ。誰が3を置かないのじゃっ!」

「知らないね」

「知りませんよ」

「セルフィル様です。絶対に」


 俺を売るダッシュ君、この子は人生が俺に握られているはずなんだけど、ちょくちょく裏切るから面白い。

 だが残念だな、止めているのはグリエダさんだ。

 年齢差のハンデでパスを一つ多めに貰っていたのじゃ姫が最後のパスを使用する。


「セルフィルが出してくれないから、また置けなかったよ。パスだ」


 人のせいにして、容赦なくのじゃ姫を追い詰めるグリエダさん。

 俺だけにクスリと笑顔を魅せるのは止めて下さい。していることは俺を犯人に仕立て上げていることですから。

 ほら、のじゃ姫がショタを睨んでいる。


「しょうがないですね。子供に嫌われるのは嫌なので出してあげましょう。3でいいんですね」

「のじゃっ!?よいのか?」

「ええ、僕はこれで不利になって負けるかもしれませんが」

「のじゃぁ」


 ショタの献身に感動する幼女という光景に、ほっこりする気配が周囲に生まれる。

 観客を飽きさせないこともゲームをする側のお役目なんだが、まだのじゃ姫には無理そうだ。


「はい。これでいいですよね」


 一枚カードをテーブルに出す。

 その数字は赤色の3で、これで俺がトップに立つ可能性は消え去った。


「3♪3♪はーとのさ…のじゃ?」


 ご希望のカードが出たことで、喜んでハートの2を出そうとしたのじゃ姫の手が止まる。


「どうしました?ご希望の3のカードですよ」

「ち、ち、ち、違うのじゃーっ!だいあの3じゃないのじゃっ!はーとの3なのじゃ!」


 首を傾げる俺に、のじゃ姫はテーブルをバンバン叩いて抗議する。

 ちゃんと彼女のご希望通りの3を出したのにおかしいね。ハートの3は持っていないからダイヤを出してあげたのに理不尽だ。まあダイヤは次の2まで俺が持っているんだけど。


「ふみゅ、ダ、ダッシュゥ~」

「すいません…。僕は負けたくないんです~、パスで」


 涙目の幼女は隣の椅子に座るダッシュ君に縋るが、残念ながらその子は自分に不利益ならあっさりと裏切ることのできる漢なのである。


「うええ~、出せないのじゃぁ~」

「はい、ドベはリリィですね」

「ならハートの3だな」

「のじゃっ!?」


 のじゃ姫が負けを認めたら、あっさりと止めていたカードを出すグリエダさん。

 リリィという愛称は王女様と呼ばれて調子に乗らないようにと、もろバレだろうが一応隠匿するつもりとで、本人に呼び方を考えさせたらリリィになった。

 その後はパスを使いきった三人のスムーズな試合運びですぐに終わった。

 順位はトップがグリエダさん、ダッシュ君、俺、のじゃ姫とドベ以外は僅差で決まっている。


「やはりあそこでダイヤの3を出したせいで一手足りませんでしたか」

「でもクラブの9の出す順番を遅らせれば私が負けていただろうね」


 俺達がしていたのはトランプの七並べ。

 子供でも分かりやすいルールで、少々人間関係が拗れるだけのゲームだ。

 トランプは前世からの知識から作り出して、ハイブルクが出資している商家で細々と売り出しているのだが、この世界にも同じ様なカードゲームが既にあったので売り上げはそう伸びていなかった。

 イカサマ防止に質を上げ過ぎたせいかワンセット金貨一枚(約十万円)もする、ゲームルールもよくわからない、そんな物は売れないのだろう。

 ほぼハイブルク家限定の遊び道具になっていたので、のじゃ姫のお勉強に使ってみることにしたのだ。


 女王になるための教育?

 そんなの六歳が理解できるわけがないじゃないか。

 のじゃ姫はやる気はあるけど、一度教えられただけで覚えられるような天才ではなかった。良くも悪くも普通の六歳児。少し決断力が高いところが評価できる幼児だ。

 なので礼儀作法を侍女長達に任せて、俺は俺なりの教育を施すことにした。


「さてリリィ、今回は誰のせいで負けたのかわかりますか」

「…セルフィーが妾に嘘を吐いたせいじゃ。ダッシュも助けてくれなかった。グリエダ~」


 のじゃ姫は下唇を出して不満を表しながら答えていくが、途中で悔しさが増してきたようで、隣に座るグリエダさんに手を伸ばして抱きつく。

 一人っ子だったグリエダさんは小さい子には甘いようで、抱きつくのじゃ姫の頭を嬉しそうな顔で撫でている。


 もしかしてショタも子供枠なの?とふと疑問に思って質問したら、真顔でそういう部分もあるが、ちゃんと男としても意識していると返された。

 その割合は?と尋ね返したら、真顔なまま顔を真横に背けられる。二八か三七といったところなのだろう。

 あと数年は身長が伸びる猶予はあるので耐えるつもりだ。


「間違っていますね。同情を誘ってダッシュ君に一枚出させたのはいいですが、彼も敵なので得になることを示さないとすぐに切り捨てられます。次の回でパスしたところに義理は果たしたからもういいよね?という感が表れています」


 今の俺の言葉に顔を逸らしたのがいい証拠だ。甘えていないで見ておこうね。


「僕は嘘は吐いていませんよ。ちゃんと3を出すと言って出したんですから」

「うみゅ、でもはーとじゃなかったのじゃぁ」

「2を持っているから3を出せと言われて出す人は、状況次第ではいるでしょうが普通はいません。現にグリエダさんが僕に罪を擦り付けて出さなかったでしょう?」

「のっ…じゃぁ」


 自分が抱きついている相手に嵌められたのを思い出したのじゃ姫だったが、豊かな実りの山の誘惑に負けて更にしっかりと抱きつく。

 それはショタのモノだけど、幼女には貸してやろう。男だったら子供でも許さん。


「でも手札を教えるのはいい手でした」

「のじゃ?」

「教えられた数字の一つ前を持つ人は、その数字より先を所持していたら出そうかなという気になりますからね」


 俺の言葉に笑顔になっていくのじゃ姫。


「ですが、それは相手が持っていると確信した場合です。リリィはただ自分が出したいから教えましたよね。減点一です。そこは自分に全く関係の無い箇所をあたかも持っているように言うべきでした」

「それなら私はハートの3を出したかもしれないね」

「ほら、グリエダさんはリリィの言葉に騙されて出してくれたかもしれませんよ」

「ううっ」

「それではリリィが負けたのは誰せいです?」 

「…妾のせいじゃ」


 小さい声で返してグリエダさんの山に顔を埋めてふてくされる幼女。

 むう、それはグリエダさんに抱きしめられない限りショタも出来ないのに、羨ましくなんてあるんだからねっ!


 俺がのじゃ姫にする教育の一つは、考えて動くことだ。

 国の歴史、計算、文字なんてウチのメイド達が教えるだろうから、軽くゲームをしながら判断能力を上げることにした。

 何をするにしても自分で思考しなければ何も起こせないのだ。

 真面目に教えていたら幼児は飽きるし、第一俺は婚約者のグリエダさんを放っておくことが出来ないナイスガイなショタである。

 巻き添えは近場によくいるダッシュ君とスナオ君。次兄の婚約者候補のベラ嬢もお仲間にしようとしたんだけど、候補の文字が取れるように授業を真面目に受けているようで、未来の義弟としては邪魔できなかった。

 ダッシュ君達?うん、いいお友達てしただよね。

 あと学園のいつものテラス席ですると生徒の皆さんが興味を持ってくれて、トランプを買ってくれるので一石二鳥なのであったりする。

 その売れた一割が俺の懐に入…らず、侍女長の元に送られてのじゃ姫のおやつ代になっているのは納得がいかない。


「自分で理解できたので、5ゲーム連続ドベっ子は侍女長のマナー授業を倍に増やしますね」

「嫌なのじゃーっ!じじょちょーはババ様より怖いのじゃーっ!」


 こらこら、暴れてお山を歪ませない。

 最下位にはちゃんと罰ゲームも用意してある素敵なルールだ。

 のじゃ姫は負けるたびにハイブルク家での授業が増えていく。

 最初授業の時間は一日三時間だったのが今では倍、下手すると三倍になるのじゃ姫。


 俺達にもちゃんと罰ゲームはある。ダッシュ君と交代で護衛をしているスナオ君は額に負け太と日本語を、ほっぺたには二重丸を書かれて、生徒に笑われ教師に憐れまれて死んだ目をして立っている。

 グリエダさんもお情けで負けて犬耳カチューシャを装着しているのだが、イケメンワンコになるだけで女子生徒の人気を伸ばすだけだった。

 ダッシュ君は初日にドレスを着させられて王城にGO!をされてから忖度して負けることは殆どなくなった。


「ではまだ続けますか?そうですね、次のゲームに勝てば侍女長の授業は無くしてもかまいません。そのかわりに最下位になったら今日のおやつは無しです」

「…するのじゃ」


 少し考えるそぶりを見せてから返答するのじゃ姫。

 ちゃんと考えて決断できるようになって少し成長したなと少し嬉しい。だが勝つ手段もなにも考えないで相手に任せるのはダメだ。


「ではリリィの勝率ゼロのバカをしましょうか」

「のじゃっ!?だいふごーにして欲しいのじゃっ」

「決定権を放棄したので駄目でーす」


 甘いな、のじゃ姫。

 ゲーム以外も注意していなければ敗北必至な世界に君はいるのだ。


 ちなみにバカは前世のオッサンの故郷ではそう呼んでいるだけで、他の地域でどう呼ばれているのか知らない。

 四枚の手札を見えないように持ち、山札から取って連番や図柄揃いになるか、他の人が手札を伏せた時に自分の手札を伏せる簡単なゲームだ。

 そして最後までみんなが伏せているのを気づかずにゲームを続けた者がバカになる。


「スナオ君も入るように。君とダッシュ君は負けたら王城に行っても女言葉で過ごしてください」

「「悪魔だ…」」


 マトモハリー嬢にはしばらくの間、二人が面白いことになるので弄ってくださいねと連絡してあるので、見ないふりはないから。爆死はないから。


「じゃあ、私は何をするんだい?」


 バカの勝率百パーセントのグリエダさんがニヤニヤ笑いながら聞いてくる。

 このゲームは動体視力が圧倒的に優れた彼女の独壇場なのだ。

 運の要素が少なくなれば魔力使いの身体能力お化けの彼女に勝てるはずがない。

 すでにのじゃ姫の負けが確定しているのに俺に聞いてくるとは地味に悔しい。


「では、グリエダさんが負けたら女子の制服を着てもらって、二人でお出かけしましょうか」

「…それは悩むねぇ」


 目を少し見開き苦笑するグリエダさん。

 負けが無いなら自分から負けさせればいいのだ。

 つまり罰ゲームがご褒美になればグリエダさんは自分から負けにいこうとする。だけどそれだけだとつまらないので、俺の願望も追加させてもらった。


「妾も一緒に行きたいのじゃ~」


 のじゃ姫がグリエダさんにおねだりするけど、あなたはお家でお勉強です。

 さて、次のゲームはどうなるかな。


 え、ショタの罰ゲームが決まっていない?

 それはもう次の罰が決まっているから誰も何も言わないのだ。

 すでに女子の制服をスカート短めにして着こなしているショタの罰ゲームは、少し透けすぎなショーツを穿くこと。

 風が吹くとかなり危ないの。

 知ってるかい?いくら強くても狙い撃ちにされると、どうしても負けるときがあるのよ。

 その分、ダッシュ君達の罰ゲームが酷くなっていくのだけれども。

 小道具はハイブルク家きっての変態アレハンドロが三人メイドから託されて学園に持ち込んでいた。嫌な忠臣達である。

 たまに視界の端でハァハァしているから、衛士の警備訓練の為に容赦なく殺害して欲しいとお願いしている。

 ねえ、その尻尾はどうやって着けるの?

 幼女がいるからアウトなものは止めてほしい。


「よしっ、勝たせてあげるよリリィ」

「のじゃ?」


 グリエダさんの脳内で勝ったのは天使?悪魔?それとも覇王様の誰だろう?

 こういう作戦もあるのだよ、のじゃ姫。


 そして周囲の生徒の皆様、こういう風にして相手に好意を抱かれているか確かめられるのだよ。

 だからトランプを買ってください。

 のじゃ姫が遠慮なくおやつを食べるから、ショタのお小遣いを使うかと長兄と侍女長が話し合っているのを聞いたの。

 おかしいよね、公爵家の者なのにお小遣い制なんて。

 でもダッシュ君達が忖度して、面白くもない女性口調は無くなったからいいだろう。


 本当に幼女を鍛えながら楽しむのは難しいね。

 と思ってゲームを始めたら、何故かダッシュ君とスナオ君がグリエダさんを最下位にさせないように動いてデートがおじゃんになった。

 どうして?


悩みショタ「なぜだ。ボクの作戦が潰された」

ダッシュ&スナオ((誰がイチャイチャさせるかっ!))

(苦笑)覇王様(二人が殺すような目でセルフィルを見ているから諦めるか)

喜色満面のじゃ姫「勝ったのじゃーっ♪」


寒いっ!頭が働かないのっ!(>_<)

のじゃ姫育成ゲームが始まりました(*´∀`)

ショタ独特教育ですが(;・∀・)

トランプゲームは無意識でも脳を働かせます。ショタは意識させて、のじゃ姫の考える力を強制上昇させようとしていますね。

遊びながら鍛えられる。罰ゲームでちゃんと基礎勉強も完璧、婚約者とも離れず楽しめる、とショタはショタなりに考えています(;・ω・)


グリエダにトランプのスピードをさせると悪魔のような速さで出していきます。カードが良いのがきてないと勝てません。

動体視力や反射神経を使うゲームで彼女に勝てる人は存在しません(;´д`)負けたらショタを贈呈とかにすれば負けてくれますが(^^;


この回を投稿する時点で前話のいいねが108いいね…。

筆者の煩悩はもっとありますよ!(°▽°)

できることなら覇王様にちゃんと女子の制服を着させて、プラスけもみみを付けて恥ずかしがらせたいっ!とか?(;・ω・)




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【コミカライズ一巻も発売するよ!】 【ハイブルク家三男は小悪魔ショタです1~3巻、コミックス1巻絶賛発売中!】 表紙絵 表紙絵 表紙絵 表紙絵 表紙絵
― 新着の感想 ―
[一言] あれ? これでのじゃ姫が女王になったら、のじゃ姫の趣味or知育玩具としてトランプ売れるんじゃね? でも当ののじゃ姫はトラウマから大人になってもプレイしなさそう。
[良い点] >できることなら覇王様にちゃんと女子の制服を着させて、プラスけもみみを付けて恥ずかしがらせたいっ! 短いスカート丈と尻尾も込みで、ショタとお揃いで。 ……ショタにも覇王様にも、罰ゲームにな…
[一言] 礼儀作法とかはともかく知識系列はトップは教養として必要な部分さえ押さえとけばある程度は部下任せでいけますからねえ。でも決断力とか観察力、人物眼あたりは部下が代行できなかったり持っておいた方が…
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