未来を選べ(幼女に言うことじゃない)
遅くなりましたm(__)m
長兄はマジで眠り続けて朝食にも起きてこなかった。
家宰が起こしに行ったら、ドアに最低昼過ぎまで起こすなと張り紙が貼ってあったらしい。
残念ながら長兄の胃を癒していた陶器のボトルは、そのまま長兄のものになってしまった。
時間が経って中身のスープが美味しくなっているはずなのに飲めないのは残念だ。
そして今、この朝の食堂には俺とのじゃ姫が相対している。
のじゃ姫はショタと同じ金髪だがより明るく派手目な色合いで、少し吊り目なところは知的な王妃様似なのだろう。
成長すれば確実に美人になるであろう美幼女だ。
昨日のじゃ姫に会った時は中級以下の服装をしていたので、正直パッとした華やかさは無かった。
昨晩からウチの三人メイドにかまわれて、髪質も良くなり、着ているドレスも公爵家で使用される最高級の布で仕立てられた(昔着た覚えがある)桃色のものに変わっている。
それなりの恰好になったのじゃ姫は王族風に見えるようになった。
襤褸を着ても心は錦だから風格がにじんで周囲は気づく?
ないない、人は見た目が殆どです。
どこかの坊主が襤褸の恰好で金持ちの家の前に立ち、お恵みをと求めて追い払われた。次の日ちゃんとした袈裟と法衣を着て行くと家の中に通そうとされた。
そこで袈裟と法衣だけ家の中に入れてくれと、自分の正体を明かしたらしい。
外見で見るな中身を見ろというありがたい話だそうだが、いやいや金持ちの対応は当たり前だろう。
中身がちゃんとしているなら、外見もそれなりにしておくのがマナーだ。
仮に娘が結婚するからと連れてきたなら、スーツ姿の男性とチャラ男、どちらに好印象を持つか。どう考えてもスーツの男だろう。中身が結婚詐欺師だとしても。
もしグリエダさんが対応をし、ヘルママの手紙と王妃様からの第二王女全権委任状を渡してくれていなかったら、俺は普通の上位貴族として、衛士を王城へ連絡に行かせ、学園長を呼んで相手をさせただろう。
貧乏貴族が必死におめかししたような恰好のお嬢様と、軽装の護衛一人に対する扱いは本来その程度なのだ。
俺がしたのじゃ姫と護衛へのやらかし?
あれはのじゃ姫の資質を計る為と、少しでも俺の被害者になった哀れな幼女という姿を周囲に見せつけたかったからだ。
正面の門で第二王女宣言などしてしまったのだ、愚王派の連中からしてみれば、ちょっと拉致して調べてみようかという対象にぐらいはなるのである。
グリエダさんがいたから大丈夫?いやいや、国内最高戦力を知ってもやらかした愚王の派閥だった連中相手に楽観はできない。
だから代行ピアスをパクられた親たちに話せばおそらく近寄るなと言われるような、ヤバいショタの手元にいるという印象を見せつけたのだ。
やり過ぎ?
そりゃあ、少しはイラっとしたからね。
俺のラブコメ学園ライフを邪魔されたのだからストレス解消ぐらいには付き合ってもらわないと。
あの黒い幽霊さん戻って来てくれないかなぁ。
こうGSに憑り付いてくれれば面白いことになりそうなのに。
最初の生贄はロンブル翁、そろそろいらないと思うんだ。
いくら一筋を夢見るショタでも、どこぞの店のマリーちゃんは可愛いだの、スーザンはおっきくて最高とか言われると、心のオッサンがゆらりとフリッカージャブの構えを取るのだ。
おのれージジイー、いつか数段威力を増したGSでスマッシュだ!
ちなみにスナオ君には下賜をやんわり断られた。チッ。
さてさてショタと幼女という不思議な空間。
のじゃ姫の護衛がマトモならこんなことにならなかったのにね。あと長兄が公爵の仕事を放棄しなかったなら。
周囲に家宰に侍女長、変態三人メイドがいるが、貴族からすればいない者として扱う。
口が堅く忠誠心がないと傍に置くことが出来ないので…。え、三人メイドは優秀なの?
ちなみにアレハンドロは朝から俺のベッドに忍び込もうとして、三人メイドにボコボコにされている、相変わらずの安定した変態だった。
「ハイブルク当主であるバ、バ…ん公爵の兄が具合が思わしくなく。弟である僕、セルフィル=ハイブルクが代わりにご説明いたします」
「よ、よりしく頼むの、のじゃ…」
噛んだ。
顔を真っ赤にして俯くのじゃ姫に、ハイブルク邸の使用人達がほんわりした雰囲気になった。
くっ、なぜだろうこの負けた気持ちはっ。
ショタにはない照れが刺さるのか!?
そういえばグリエダさんのスキンシップに恥ずかしがっていた初期の頃は、彼女はもっと喜んでいた。初々しさが興奮のツボなのかもしれない。
しまったな美貌のショタ以外に価値がない俺が、初心を忘れたチャンピオンみたいに研鑽しなくなったらハイブルクのアイドルの座から落ちることになっていた。
ありがとうのじゃ姫、これでショタは一段上のショタになれるよ。
感謝を目で表す。
「ひっ、こ、怖いのじゃ~」
どうして怖がるの?
たまに笑顔で接すると怖がる人がいるんだけど、不思議だよね。
怯えられているままだと時間がかかるので、変態だけどマルチに優秀な三人メイドゴーッ!
俺の目配せにアリー、セイト、カルナは素早く動いてのじゃ姫の周りを囲む。
「大丈夫ですか姫様?」
「う、うむ」
「泣かないだけ偉いです」
「わ、妾は泣かないのじゃっ」
「セルフィル様なんて十を過ぎても大泣きしておりましたから、凄いです」
おいセイト、自分の主を貶めるなよ。
それは泣けば大概のことは許してくれるからしていたことだ。目論見がバレて効果が無くなってからは一度も泣いてないぞ。
「もう昨日からになりますが、リリアーヌ王女はハイブルク邸にこれからもしばらく泊まることになります」
「うむなのじゃ」
のじゃ姫が落ち着いたところで話し合いを開始する。
「自分の状況はおわかりになっていますか?」
「わからぬ。ひとーつ、ふたーつ前の日に、母様からお手紙が来て、白い大きなお馬さんに乗った二人が助けてくれると書いてあったのじゃ」
ふむ、こき使う気満々だな王妃様。
「ヒラリスのみんなは心配じゃと言うたが、ババ様には母様からのお手紙には従えと言われていたから、ジェロイにお願いして連れて来てもらったのじゃ」
ババ様とは王妃の乳母だった女性だろう。
だが一年ほど前に亡くなったと長兄の資料には書いてあった。
まともな乳母の方だったようで、のじゃ姫は六歳、幼児が覚えられることしか教えられない中、必要な事を選んで教え込んだのは凄いと思う。
再び泣きそうになっているのじゃ姫をあやす三人メイド。
お前らそういうところは本当に優秀だよね、俺や長兄で遊ぼうとしない限りは。侍女長、そんなに心配なら構ってあげていいよ。
あの半裸兜は考えなしだが行動力だけは褒めてやろう。行動力だけだがな。
「ん~、まずこの屋敷にいる限りは、王女様の安全は大丈夫だと思ってください」
「うん」
「僕と昨日会った銀髪の女性は、今は貴方の味方です」
「女性?」
コテンと首をかしげるのじゃ姫。
おっと、そこからか。
「自己紹介はされましたが、あの男の服を着ていたのは僕のお嫁さんになるグリエダさんという方です」
そこの連中、どちらがお嫁さん?みたいな顔をするんじゃない。
このままだと結婚式はグリエダさんがタキシードで、俺がウェディングドレスなのかな?と不安に思っているんだ。
「なぜ男の恰好をしているのじゃ?」
「それは本人に聞いてください」
下手な事は言えないし、よく考えたらショタも知らないことだ。
なぜなのじゃ、どうしてなのじゃと聞かれてもわかんないのっ!
く、子供相手はすぐに他のことに興味が向くから難しい。
「王女様」
六歳に詳しく話してもわからないだろう。少しずつ教えていけばいいのだ。
「あなたは今、選ばないといけません。ここでしばらく遊んで元のお家に戻るか、それともいろいろと学んでからお城に行くことになるかです」
「…」
子供でも分かるように言葉を選ばないといけないのは中々難しい。
俺が真面目に話し始めたのがわかったのか、のじゃ姫はどうしてモードが解除されて聞きモードになっている。
「どちらがいいかは僕にもわかりません。小さい子供の貴方に選ばせることではないとも思っています」
実は王妃様とヘルママの企みを全てぶっ壊そうと昨日までは考えていた。
それは二人からの依頼よりも、のじゃ姫の未来よりも、グリエダさんとのラブコメ学園生活編の方が俺にとっては優先順位が上だからだ。
だからもういいと言われるまで、のじゃ姫はハイブルク邸でメイド三人に適当に相手をさせて、適当にからかってお茶を濁すつもりだった。
何も出来ない女王になり貴族の傀儡になるか、それとも王妃様が新しく作ってくれる籠の鳥になるか、俺にはどうでもいいことである。
「でも選んでください」
のじゃ姫の境遇には同情はしてやるが、それだけだ。
何も恩を返そうとしない者に手を貸すほど貴族の家は甘くない。
ただ五年も隠した王妃へ、そしてのじゃ姫の乳母だった女性へ、俺が敬意を表して一度だけだが選択肢を与える。
「…じゃ」
「聞こえません」
「学ぶのじゃっ!母様に会いたいのじゃっ!」
叫ぶのじゃ姫。
護衛がグリエダさんにアイアンクローされてオタオタしていた。ご先祖様黒歴史ツアーに黒いモノに出会って落ち込み号泣する。メイド達に甘やかされていいようにされる。
そんな子供を構うほどショタは暇ではないのだ。
乳母さん、貴方の育てたのじゃ姫は逃げないで自分で決断できる良い子みたいですよ。
「わかりました。では頑張ってお勉強しましょうか」
さてさて時間はどのくらいあるだろうか?
事務関係のダッシュ君達とは違うし、さすがの心のオッサンも女王様はテレビでしか見たことがない。
まあそこら辺はどうにでもなるだろう。
「あのなのじゃ…」
のじゃ姫が声を掛けてくる。
「ジェロイはどこに行ったのじゃ。せめてジェロイだけは帰してやってくれなのじゃ…」
「あ~彼ですね」
学園に放置されても困ると言われて、しょうがなくウチに届けるようにしたけど、そういえばどうしたんだっけ?
うん、問題のある臣下を心配するところは加点だな。
でも自分が地獄に行くから帰してくれみたいに言われるのは、俺の心に爪で擦ったぐらいの傷がついたので減点だ。
「ジェロイ、ジェロイはどこなのじゃ~」
質問ショタ「あの半裸兜はどうしたの?」
侍女長「躾がなっていませんでしたので、少しばかり教育中です」
のじゃ姫「帰してやってくれなのじゃ~」
後を考えながら書くのは難しいです(--;)
ダレている訳じゃないのに書くスピードが遅くなっています(;・ω・)
てか、第二章の文字数が序盤なのに五万文字越えているのはどういうこと?
次兄、姉、辺境、隣国…、過去の筆者よもう少し情報を削って書いておけっ!(°o°C=(・д・ )
さて、これからのじゃ姫人体改ぞ…ゴボンゴホンッ、いやいや精神改ぞ…ゴボンゴホンッ!
チュイ~ン。
筆者を改造中です。筆者を改造中です。
はい!ボクは頑張ってお姫様教育物語を書いていきますヾ(@゜▽゜@)ノ
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