ショタがしなかったざまぁはママンがする
本筋を考えていたら遅くなりましたm(__)m
「ふぅん、あの無能はとうとう幽閉されたの」
ヘルミーナ様こと異母のヘルママは庭園の東屋で、愚王達の結末の資料を読んでいる。
変態執事アレハンドロが合流して以降の情報を収集していなかったから、その分をお茶をしながらまとめていらした。
宰相達を軽く震え上がらせたヘルママは、王城内に数部屋確保してあるハイブルク家用の場所に行き、着替えられた。
シンプルでゆったり目のドレスは、上位貴族の女性にしては華やかさは控えめだけど、ヘルママには山脈があるので、装飾でマウントを取る連中なんて敵にもならない。
「バルト、王家派と側妃派の状況は?」
「セルフィルに代行ピアスを取られて大人しくしています。今のうちにその権益や、罪を洗い出して力を削ぎ落そうとしているところです」
「ふぅん」
下から答える長兄の言葉を聞きながら、俺の頭をナデナデしてくれるヘルママ。
ショタは優しくされたからといって、すぐには靡かない。
頭を撫でやすい位置になんか移動させないからっ。
「ピアスをすぐに返却しなかったのはいい判断ね。自分達が上と思い込んでいる連中はすぐ稚拙なし返しをしてくるから。それを押さえるのには効果的よ」
さらさらと目を通していた書類にいくつかの名前を書いて、テーブルの下に落とす。
それを長兄が受け取った。
「書いたのは私が知っている、考えなしに動こうとする過激派の連中よ。セイレム公爵、あなたの知っている貴族と合わせれば、大分押えられるでしょう?」
「ううむっ、この男爵がかっ」
「こちらの子爵もです」
長兄に渡された書類を横から覗き込んで唸るセイレム公爵。
険しい顔だけど、それは書類を見ているからというだけではない。
ヘルママが優雅にイスに座っているのに対して、セイレム公爵と長兄は床石の上に正座中だ。
慣れている長兄でも痛み、痺れる。
したことがないセイレム公爵には拷問に等しいだろう。お尻を上げているのを咎めないのはヘルママの優しさだろう。
いま東屋にはテーブルについた四人プラス膝上俺、世話をするメイド数人に、テーブル近くに立つ三人。
ヘルママの隣に座るグリエダさんに、その膝上に赤く腫れて痛いお尻をズラして座る俺。反対側にはちゃんとしたドレスに着替えたアリシアさんが着席していた。
彼女は緊張していて、背骨に剣が刺さったかのように背筋がピンと、不自然なほど伸びていた。
しょうがないよね。婚約者の実母にメイド姿を見られた後に、同じテーブルに座るのはなかなかの緊張を強いられるだろう。
長兄が俺がやらせたんだとバラしたせいで、ニッコリ笑顔のヘルママとグリエダさんに「後で」と言われたのは、なかなか恐ろしい。
グリエダさんは騎士団と毎日遊んでいたから俺の好意を知らなかったようだ。嫉妬してくれる婚約者を持つとつらいね。
アリシアさんの後ろにはマトモハリー嬢、グリエダさんと俺の後ろにはスナオ君、なぜかヘルママの背後には青褪めた顔のダッシュ君。
ずっと俺にどうして僕なんですかぁ!と目で訴えているけど、ヘルママが決めたのだから知らない。
たぶんアリシアさんは長兄の婚約者だから男性は駄目ってことだろうけど、男二人は何となくだと思うよ。
ハイブルク家のメイドも城にいるのに敢えて三人を使う理由は、ダッシュ君が逃げられないように俺がヘルママに、優秀な子を見つけましたと教えたのとは関係ないよね、うん。
スナオ君はどこの派閥か知らないけれど、これでハイブルク派になれたよ、良かった良かった。
マトモハリー嬢もハイブルク、セイレムが関わっていると認知されただろうから御家も大丈夫だろう。
傍に立たせるだけで、俺が雑に扱っていた三人の保護をしていると知らしめる、ヘルママは凄い人だ。
そして、正座中の長兄とセイレム公爵。
「大人のあなた達が子供に頼るのはいけないことだわ。バルト、あなただったら一人でもどうにか出来たわよね?少しぐらいハイブルク家に傷がつくくらいのことをしてもよかったのよ。あとでいくらでも取り返せるのだから。
セイレム公爵、忠義というなら自分で正しなさい。娘に任せて忠義を捨てることになったのは貴方のせいよ。ハイブルクは優秀そうな嫁を手に入れられることになったけど、子供を犠牲にしたと少しでも思うのならバルトと同じ様に座ってね」
とヘルママに言われて正座をしている男二人。
母の正論は強いのです。
そして権力者の女性の言葉は効くのだ。
可愛い末っ子に豆のフルコースを食べさせるお兄ちゃんはヘルママに叱られちゃえっ。
うん、よく考えたらセイレム公爵が強引にでも動いて、宰相達や国の為に反発していたハイブルクと手を組めば愚王を抑え込めたのだ。
それに気付いた昭和男前俳優公爵は自主的正座で落ち込み反省。
俺はまだ甘かったね、この二人にもざまぁをしないといけなかったのだ。
「さて、ジョディ」
ヘルママは書類を置き、正面の相手に話しかけた。愛称で呼ぶほど二人は仲が良いのだろう。
正面に座るのは王妃様だ。
表情は平然としているけど、その手に持つカップは少し震えている。
ヘルママがメイド服のアリシアさんを連れて着替えに行っている間に、王妃様にヘルママが来城していることが伝えられた。
東屋でのお茶会は長兄とセイレム公爵のざまぁや、嫁になるアリシアさんとグリエダさんと直接会ってみることがメインではない。
ヘルママが現在、エルセレウム王国の頂点である王妃様に会うためのものだ。
ショタが逃げる暇さえなかったように、王妃様もヘルママの電撃登城には何も準備は出来なかっただろう。
愚王遊びが楽しくて、お友達のヘルママを忘れていましたね。
まったく国の中枢にいる人達なのに、みんな重要人物のヘルママを忘れるのはダメダメだ。
ん?お前が筆頭だろうっ!と最近の遊び相手の宰相のツッコミが聞こえたような。
ちなみにグリエダさんは緊張することなくショタを撫でるのを満喫中だ。
ショタのお尻ペンペンをする義母になるヘルママに臆することなく、推しのアニメを見ているオタクのような顔で、アヒンアヒン鳴くショタを見ていたぐらいタフな人である。
この覇王様の精神状態を不安定にできた愚王はちょっと凄いのではなかろうか?
「それともジョデリア・エルセレウム国王代行様と呼ばないといけないかしら?」
「…ジョディでいいわ」
余裕の笑みのヘルママに対してお堅い態度の王妃様、どちらが上かもうわかるよね。
でも国内で最大級のプレッシャーをばら撒かないでください。
まだまだ経験が足りていないアリシアさんは、二人に挟まれてオロオロしているし。
ダッシュ君達なんか失神寸前で、膝からカクンと崩れ落ちそうだ。
頑張れ四人の若者達よ。
これに慣れたら大概のことには平気になれるから。
ショタは?うん、心のオッサンがよく、あと三時間で納品だぁっ!とか、この契約を結ばないと飛ぶからという同僚の接待に出たりしていたからね。
緊張なんて、心に考える余裕がある人がするものだ。
つまり緊張している王妃様も必死に考えているんだろう。
「ジョディ、私の子供達には手を出すなと遠まわしにだけど伝えていたはずよね」
「そちら側から手を出されに来たら、仕方ないでしょう?」
見えるっ。
二人の交わる視線の真ん中でスパークしているのが見えるぞっ。
熟じオホウッ!二、二人の麗しい美女プレッシャーが凄すぎる。あのヘルママ、下手な事は考えもしないので怖い視線を送らないでください。
それができない王妃様は愚王の裏方ばかりしていたからか、対人戦に余裕が無さそうでまだまだですな。
「王家の不祥事を最小限にしたセルフィルに対して、貴方がしたことはハイブルクに敵対する行為よ」
「あら、私が何かしたかしら?王家の威信を傷つけた子供をどうにかして助けてあげようと、王からの負担を増やしてでもしてあげたことはあるけど」
「それが私に通じると思っているの?」
「あら、王家への不忠者という不名誉がつかないようにしてあげるのは良くないことなの?」
ヘルママと対等にやり合っているように見えるけど、王妃様に余裕がないのが俺にはまるわかりだ。
だってグリエダさんに対しての配慮が殆どできていない。
夜会での惨状を見て、敵対してはいけない存在だと理解したはずなのに、ショタを一人の人間ではなく貴族の子供として交渉材料に使おうとしている。
それは悪手だ。
俺が王妃様を放置しているから、グリエダさんも中立でショタのお遊びに付き合っていてくれているのである。
「王妃様。それ以上の言はセイレムを敵に回すとお考えください」
俺しか会話に入れないだろうなと思ったら、セイレム公爵が先に発言した。
「…ごめんなさい。私も王家がこれほどまでに愚かだったとは思わなかったの。やり過ぎたと思っているわ」
意地を通そうとした熱がセイレム公爵の言葉で冷めたのか、王妃様はヘルママに頭を下げる。
あのまま王妃様がヘルママに対抗していたら、味方であるハイブルク、アレストの二家から見放された。
それを止めたのはセイレム公爵。
さすが年齢と経験かな。娘の恩人である俺を道具の様に扱うなと言っているようで、意地よりも実を取れと伝えているようにも思える。
おそらく他にもいろんな意味が含まれているはずだ。
ダッシュ君達、この場にいるだけでいい経験値になるからね。俺には教えられない部分だから、いろいろと吸収するように。
だけど正座でキリッとした顔の昭和男前公爵はマネしないでいいよ。
「まったく貴方は…。少しは肩の力を抜きなさい。今は気晴らしもできるのでしょう」
「ええ、若い子に良いものを贈られたから、よく眠れるわ」
ヘルママと王妃様の雰囲気が穏やかなものに変化した。
会話は愚王というおもちゃの話だけど。
その隙を逃さず待機していた侍女が指示してメイドが冷めたお茶を片付けて新しいものを置いていく。
床の二人にも飲み物をと持ってくるが、さすがに床に置くのはあり得ないので、どうしようと慌てていた。
長兄達がいらないと断る姿が、エルセレウム王国を代表する二人の公爵なのにちょっと情けない。
二人の分の菓子は俺とアリシアさんで分けた。木の実がふんだんに入ったクッキーは美味しいね。
とくに自分の周りに美女しかいないのと、正座する成人男性を見ながらなので最高だ。(ダッシュ君とスナオ君は視界フィルターで排除だ)
あ~、お尻が真っ赤なお猿さん状態でなければ、もっと美少女と美魔女の中間が無い貴重な時間をゆっくり楽しめるんだけどね。
「さて、王家はハイブルクにどういう賠償をしてくれるのかしら?」
謝罪だけですめば国どころか世界は平和だもんね。
少しだけですが口元が引きつっていますよ王妃様。
「それならアレストも賠償を求めようかな。私が平民に落とされ、辺境の地を取られ、セルフィル以外の男に物のように嫁がされかけた屈辱の分を、ハイブルクの隣の領地でももらおうかな」
「…王妃様、セイレムも理不尽に一度爵位を下げられました」
へい、知っているかい王妃様。
どんなに忠義があろうとも貴族は弱味を見せたら噛みついて取り分を引き千切ろうとする生き物なんですよ。
勉強になりましたね。
質問 ヘルママの印象は?
マザコンショタ「え、美魔女で最高ですよ。山脈がありますし!」
虚無長兄「自分より遥かに上の母がいる劣等感を知っているか?」
昭和公爵「あー、婿殿が人格者に育ってくれてよかったと思っている」
心中号泣宰相「ようやく譲歩させたと喜んだら、その数倍譲歩させられることになったときの気持ちがわかるか?」
ヘルママはショタがしなかった味方へのざまぁを軽くですが実行しました。長兄が含まれたのはヘルママしかできないからですね(^_^;)
王妃様との会話は酷いですね。
王妃様は王家と公爵家として対応しているのに、ヘルママは母親として対応しています。
セイレム公爵のせいで気づかれていませんが、気づいたら王妃様は娘を持つ身として親友の気持ちに共感して謝罪したでしょう。
つまりどうやっても謝ったことになります。
そして隙を見逃さないのが貴族です(;´д`)
わかります?
王妃様が謝罪したのを見たある三人が逃げれなくなったのを…(;・ω・)
ヘルママは何をするのか。まあ、ようやく本筋が進められそうです(^^)
ついでに宣伝をm(__)m
ノクターン行きなった筆者の拙作【釣り合う二人はバカップル】をなろうのほうで再投稿していきます。
まあ途中までは健全でしたからそこまではそのまま投稿で、そのあとは書き直しながらマイルドにしてボチボチとですね(^_^;)
ショタと覇王様の暇潰しに読んでもらえたら幸いです(^^)
【釣り合う二人はバカップル】
https://book1.adouzi.eu.org/n2564ia/
ラブコメですが、雨乞いフィーバータイム2.14という変なものが生息する謎物語です。食べながら読むのはお止めください。うどんだと鼻から飛び出てくるのでヾ(@゜▽゜@)ノ









