あ、忘れていた変態だ
遅れました~(;´д`)
俺達が住んでいるエルセレウム王国は、現在ちょっとした転換期を迎えている。
専制君主政から違う政体に変わろうとしているみたい。
少し前に無能な王子様が馬鹿な婚約破棄で国家分裂の危機を犯して鎮圧されたら、それに憤慨した愚かな王が便乗して血沸き肉躍る戦国の世になりかけて、結構やばかったエルセレウム王国。
そこに現れたのは美ショタの俺、セルフィル=ハイブルクっ!
非業の死(トイレで溺死)の転生チートでばったばったと無能王子と転生性女に側近(笑)を打ち倒し、悪役令嬢の心を手に入れた。
そして愚王と権力を狙う卑劣(愉快)な貴族達を大逆転のざまぁで一件落着。
僕は公爵になって幸せに暮らしましたとさ。
んなわけあるかあぁぁあっ!
チートッ!?
公爵家で役立たずの三男で生まれるのがっ?
美少女に見える体ぐらいしかチートはなかったのよ。あと現公爵の長兄との仲は良好だし、あんな胃に穴が開きそうな地位なんていらない。
あ、でも最近最強チートに手に入れられました。
手に入れるではなく手に入れられがなんともまあ情けないところだけど。
無能王子と性女の企みを潰したときに、実家のハイブルク家に咎が及ばないように、王家や側近の恨みが自分に向けられるように目立ちまくった。
おかげで国王と王子の母親である側妃からの熱烈なデスコールを受けて、王家のオモチャか死ぬ(偽装)の二択しか取れなくなった時。
銀髪のイケメンが婚約者になってくれた。
訂正、銀髪のイケメン美女に貰われた。
ん~間違ってないよ?
イケメンで美女なグリエダ=アレスト女辺境伯さんです。
魔力という不思議な力がある世界で破格の実力を持つ可愛いモノ好きな覇王様。
すでに愚王になった愚王の裏目魔法バックファイヤーが最も炸裂した瞬間だったね。
チート覇王様は全てを覆すものだったんだけど、そこは十六歳の女の子。
愚王、最後の晴れ舞台の夜会で精神的ダメージを与えられた彼女は、後で知ったけど愚王の頭をパーンッしようとしたらしい。
非力なショタの俺だけど、婚約者のグリエダさんの心を癒すために奮起したよ。
そのためにエルセレウム王国を国盗りしてやった。
愚王が彼女に出したおかしな王命を、すぐに無かったことにするにはそれしかなかったんだよね。
そのついでに愚王とゆかいな仲間たちは地獄に沈んだ。俺のおかげで周囲への迷惑を最小限に抑えられたのだから、ありがたく思って欲しい。
そのぶん本人達の沈み具合は深くなったので、草葉の陰から号泣していることだろう。
前半は御家の為に自分犠牲覚悟で他人の婚約破棄のざまぁをし、後半はグリエダさんの為に国盗りざまぁをした。
その二つの出来事で、エルセレウム王国は未曾有の危機を回避できた。
「つまりセルフィルが私のモノになるというお話だね」
「まあそうなんですが、お国を救ったのはグリエダさんの中ではおまけなんですか?」
グリエダさんの愛馬、白王に騎乗して学園までの道すがら、これまでの事をお話ししていた。
俺の脳内説明を恥ずかしい所だけ削除してだが。
なのにグリエダさんにはその部分も聞こえていたみたい。
うん、今日も後頭部に当たるお山はやわこいなー。
「それを今話すのはどうしてだい」
「う~ん、最近忙しいのが納得いかないというか。王家のやらかしを二つも防いだのはまだ学生の僕達です。幾ら任せろみたいなことを言ったとしても後始末ぐらいは大人達でしてもらいたいなと思いまして」
人は慣れていく生き物だが、本当に良いものには慣れるなんてことは無いんだねっ!
白王の歩みに合わせてポヨンポヨンと当たるお山は常に新しい感動を与えてくれるのだよ諸君。
ちなみに心の中のオッサンは布団です巻き状態で就寝中だよ。
グリエダさんと出会ってから編み出した秘技、前世のオッサン部分は逃避の術はかなり心の負担的に有効だ。
セクハラはオッサンにキツイらしいけど、じゅうさんさいのセルフィルには難しい言葉はわかんないの、テヘッ。
「ぶっちゃけると宰相をからか、王城でお国の為の奉公に飽きました」
「君は本音を隠すことを覚えようか。どちらもあからさま過ぎるよ」
おっと、心のオッサンが寝ているせいで子供っぽさの方に精神が傾いているようだ。まあいつも通りとも言う。
「まだ子供と呼ばれてもいい僕達をこき使うのは止めてほしいんですよ」
俺の兄、長兄の嫌がらせの豆料理に屈して、大人たちの尻拭いのために内政に干渉するはめになった。
まったくダメダメな大人達である。
中世風ファンタジーな世界なんだから、理不尽な理由で敵対した貴族を処分すればいいのに、俺に監査を任せるなんて。
一人では量が多かったので逃げるの大好きダッシュ君と、不幸の女の子マトモハリー嬢を暇つぶ・・・ゴホンゴホンッにお願いして奴れゴホンッ!手伝ってもらう。
おかげで宰相(宰笑プッ)の予定を大幅に上回って大体は終わらせた。
なのに他の業務まで手伝わせようとしてくる卑劣な宰笑。
「私は訓練の相手に困らないからいいんだけどね」
「毎日毎日、学園王城屋敷は嫌なんです~」
サービス残業は無いけど、癒しが朝の登校と昼休み、そして帰りしかないのは子供の俺にはおかしいと思う。
心のオッサンが竹の先に国盗りすんぞと書かれた紙を付けて城に突撃しそうだ。
グリエダさんは身体を動かすのは楽しいのだろうが、そろそろ騎士団の人達にも休みをあげましょう。大の大人達から迎えに来る俺に助けてと、ウルウルした目を送られるのが気持ち悪いんです。
人の専売特許を取りやがって・・・。
「遊びましょ~、愚王の夜会からずっと遊んでいません」
馬上で俺はグリエダさんの前が定位置で、後ろ向くのは危ないのできない。(頭部固定)
なので手綱を握るために俺の身体に回された腕の袖をクイックイッと引っ張る。
「・・・っ!」
「遊びましょう。舞台を見に行きましょう」
甘え声でお願いするのがコツだ。
ただし、からかったり嘘ですると手痛いしっぺ返しをくらうことになるので要注意。なぜかグリエダさんにはバレる。あと侍女長とママン達と姉、なぜなんだろう?
「グリエダさんの屋敷・・・は何時かで、ハイブルク邸の庭でゴロゴロしましょう」
ついでにグリエダさんちに初訪問と考えたが、手綱を握っているグリエダさんの手に屋敷と言った時、力が入ったのを見逃さない。
「ん、んう。そうだね、私も当主の仕事が滞り始めたし。そろそろ城に行くのも止めないといけないと考えていたよ」
「わぁ、僕と同じ気持ちだったんですね」
俺は知っている。
グリエダさんがかなり本能のままに生活していることを。
夜会の時に会ったアレスト家のお爺ちゃん達から、最初は婚約のお祝いのお手紙もらい。その後はグリエダさんに当主のお仕事をさせてという悲痛なお手紙を何通もいただいております。
国家騎士団を鍛えるという名目でサボるのはいけません。
ショタを愛でる以外はちゃんとしてください。
「それじゃあ、今日の登城の時に今後のことを話そうか」
「やったー!」
ふっ、これでだらけた日々にもどれる。
騎士団いじめに夢中のグリエダさんをどうにかしないと、ずっと国の政務に関わることになりそうだったのだ。
愚王蟄居から内政ができる貴族が減ったせいで、嫌がらせと仕方なく長兄は俺を召喚したんだろうが、王妃様と宰相が逃さないようにし始めているんだよね。
いつの間にかズブズブの関係にすれば、グリエダさんとハイブルクも文句を言うくらいで済むだろうというのが透けて見える。
国の舵取りをする人達はどうして虎の尾を踏むようなことをするだろうか。たぶん自分には被害はこないとか思っているのだろう。
さすがにこの二人が潰れると、本当に長兄か姉の婚約者の前王弟様を担ぎ出さないといけないので、自主的に逃亡することにしたのだ。
王妃様と宰相とてあの夜会で恐怖の象徴になったグリエダさんの行動を止めることはできないだろう。
そして覇王様の装備品であるショタも止めることは出来ないのだ!
ダッシュ君(嫌がらせ)とマトモハリー嬢を鍛えて置いていくのでたぶん大丈夫。
長兄は仕えるには良い人、宰笑は嫌味な上司と無意識の部分に植え付けたから業務に差が出るだろうな。
「ではお昼にどんな舞台があるか二人で選びましょう。ええ、こんなこともあろうかとメイド三人にお小遣いを渡して劇場巡りをさせています」
「私が君のお願いを受け入れると決めつけていたね?ね?」
覇王様はショタに甘いのはわかっている。
ハハハ、抱きしめても喜ぶだけですよ。
あ~昼はイチャイチャできるから楽しみで、午後は騎士団の笑顔と、宰笑が俺がいないことで遅れる仕事に苦渋の顔が見れるのは本当に楽しみだ。
「そういえばウチの侍女が新作の舞台が良かったと言っていたね」
「ふむふむ、それは気になりますね。遠出するのもよくありませんか?」
いや~ようやく学園青春編が始まりそうだよ。
あれだね、これから新キャラが出てきて面白いことが起きるんだ。
運命に導かれる主人公(ダッシュ君)、不幸な運命のヒロイン(マトモハリー嬢)、ライバルから親友になる貴族(スナオ君)、傲慢な貴族とか(ショタ)、ラスボス(覇王様)。
・・・んー、全員そろっている。
でも攻略不可能なラスボス様だ。
よしっ、傲慢な貴族である俺は師匠ポジにチェンジして徹底的に鍛えてあげようではないか。
「ん?門の前で何か騒いでいるな」
学園が近づくと正門の前辺りで人が集まっていて、馬車が渋滞を起こしていた。
まだ遠くてよくわからないが、学園付きの衛士が誰かを取り囲んでいるように見える。
それは門柱の近くで、衛士だけなら馬車も通れたろうが、その周囲を生徒達が野次馬になっていて門の半ばまで溢れている。
「何をしているんですかね?」
「ん・・・ああ、面白いことになっているみたいだ」
少しだけ騎乗している白王の歩く速度が上がった。
常人には見えない距離でもグリエダさんは見えたようだ。しかも少し楽し気な声になっている。
馬車ではない俺達は道の間をスルスルと抜けていく。
近づいていくと衛士に囲まれている中心の場所には一人男性がいるよう・・・。
「て、アレハンドロじゃないですか」
その男はハイブルク家の執事であるアレハンドロだった。
褐色の肌の元暗殺者でショタの俺が好みのどストライクの変態。毎朝変態メイド三人と俺の寝顔を見るために激闘を繰り広げているド変態だ。
なんでこんな奴を雇っているんだろう?
「っ!セルフィル様あぁぁ!ブゲシッ!」
近づいたおかげで俺に気づいたアレハンドロは、元凄腕の暗殺者だけあって衛士の肩を掴んで体を引き上げ、さらにその肩を足で踏んで跳躍した。
いつもの無表情の顔のまま頬を少し赤らめて俺に向かって飛んできた変態は、グリエダさんに顔を掴まれて地面に叩き落とされる。
「ブルルッ」
「ぐほっ」
そして白王に踏まれた。
「最近見ないなと思っていたら、学園前で出現するとは・・・。そいつは無駄に格好良い顔のくせに僕の貞操を狙う変態ですから、そのまま踏み潰してください白王」
「まてまて、白王は優しいから戦場でもない限りそんなことはしないよ」
「チッ、命拾いしましたね変態執事。でも職務を忘れてその性癖を謳歌していたら、衛士に捕らえてもらって縛り首ですからね」
「グウゥッ、ぞんざいに扱われるのはいつものことだが、さすがに今回は酷過ぎる・・・」
変態がスウッと涙を流した。
はて?首輪が外れてヒャッホォーイッ!の交尾相手を探しに脱走した犬みたいに屋敷から逃げたので・・・あ。
「そういえばヘルミーナ様のところに向かわせていましたね」
長兄の頼みで王都に向かっている前公爵夫人ヘルミーナ様のもとに派遣していたの忘れていたよ。
よく見たら少し汚れたハイブルク家特注の執事服を着ている。
「無駄になるとわかっても向かわせていたから完全に忘れていましたよ。変態にも帰巣本能はあったんですね」
「よくはわからないが、さすがに言い過ぎではないかい」
グリエダさんは優しいですね。
でもハイブルク家を舐めてもらっては困る。
「ハァハァ、セルフィル様が騎乗している馬に踏まれているっ」
なぜか俺の元には変態しか集まらないんですよ。アレハンドロはその筆頭です。
白王に命令して足をどかそうとしないでっ。
せめて衛士に拘束させてからでお願いします。
変態「ハァハァ」
悩み覇王様「このまま処分しないとセルフィルが襲われそうだな・・・」
ショタ「是非ともしてもらいたいですが、ハイブルクでロンブル翁の次ぐらいに強いから処理できないんですよね」
本題に入るまでが書くので一番難しいです(;´д`)
変態を派遣しておいてよかった~(^_^)
はっきり言おう!一章の後半を書いている時には完全忘れていたキャラだ(^o^)
アレハンドロは元暗殺者で、それはもう波乱万丈な人生をおくったイケメンです。ショタに出会うまでは(;・ω・)
実は登場人物の中で唯一ちゃんと過去設定を考えているキャラです。書かれることはないですが\(^o^)/まあ変態ですから雑にあつかわれます。
メイド達とショタを狙って毎朝敗北しているのは本気を出すと殺す技しかないからです。
ボコボコにされるのが好きではないです、たぶん(;・ω・)
さあこれからが本番だ。泥沼の中から物語を書いていくぞーっ!今年中にあと一話ぐらいは(;´∀`)
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