閑話 恐怖っ!GS改
待たせたなぁっ!(´▽`)ノ
「ということです。魔法協会は国の支配下とまでいきませんけれど、上層部をこちらが融通する者に入れ替えることである程度は言うことを聞くようになると思います」
長兄は渡した報告書を見ながら、俺の報告を聞いている。
宰相の土下座から始まる王城からの退去も準備が整い次第だが、後処理を任せるためには現場で動いていた情報は伝えておかねばならない。
そこら辺はイタズラや嫌がらせは無しである。決して報告相手が長兄だからということはない。
ふぅと息を吐いた長兄。
「まあ予想の許容範囲だな。よくやった」
「え、」
俺の驚いた声にじろりと見る長兄。
「なんだ」
「やり過ぎたと怒られるかな~と思っていたので」
後始末をする人たちに多大な迷惑が掛かるのでシュールストレミングはやり過ぎたかなと思っている。
ちなみに敵対する者にはやり過ぎはない。
「怒ってはいない、少々後始末が面倒なだけでむしろ褒めてやりたいほどだ」
「やりたいのであってしないんですね」
「まあ、これで公爵領に派遣されていることになっている魔法使いが協会に払う分の金を支払わなくてすむから少しは褒めようとは思ったが、お前はすぐにやらかしの上限を上げるからなぁ」
しみじみと述べる長兄。
お兄ちゃんは弟のことをよく熟知されておりますな。
「そんなにお金が浮いたんですか?」
超常の現象を魔力という最小のコストで生み出す魔法使いを雇うのは一種のステータスである。それを調子に乗ったエルセレウム王国支部魔法協会は超高額で派遣して、その派遣料を搾取していた。
ハイブルク公爵領では魔法使いは大変不愉快な存在だったので、俺の魔法の解析の試料になってもらった。強制に洗脳に、まあいろいろと試行錯誤を行って、感涙して命令に従う連中以外は最後に硝石作成の実験に使われた。
「そうだな……。ハイブルク領からセイレム領への交通路の工事期間が大幅に短縮される」
「うわぁ。どれだけ暴利をむさぼっていたんですか」
「先王時代までは他国より少し高額ぐらいで済んでいたようだがな」
やはり愚王のせいかぁ。
幹が腐れば枝は枯れるように、愚王の腐敗は周囲も巻き込んでいたようだ。第一王子の婚約破棄が裏目魔法バックファイヤーを発動させなかったら腐り過ぎて王国滅んでね?
「お前は喜んでおけ。これで延期せざるをえなかったアレスト領までの交通路も整備出来るぞ」
長兄はゲ〇ドウスタイルで笑う。
これで経済圏を広げて……、と嬉しそうに呟く長兄は仕事が趣味の人である。いや道を造るのが趣味一つの人だ。
道路整備が発展の重要性の一つと教えた時から長兄は、東に不正役人がいれば俺を派遣し、西に反対する貴族がいれば次兄に鎮圧させ、南に権益を欲しがる無能がいたらお姉様に潰させ、北の道に盗賊が現れたら俺に試料だと行かせ、ハイブルク公爵領の統一をかなり短縮させた。
優秀な人が最先端の知恵をつけると暴走して周囲に負担がかかるのだと、俺より周囲に迷惑を掛ける次兄とお姉様から、長兄と一緒に注意されたのはいい思い出である。
それで反省するのが長兄なんだけど、一度どっぷり浸ったマニアに触れたらダメ。今、尋ねたら数時間ニヤニヤ顔で今後の交易路から広がる経済圏についての話をされるから。
だから話を報告に戻して今後の方針も話し合う方向に持って行く。
苦労人は趣味より仕事を優先するからね。
「ではしばらくの間は屋敷を仕切るのは僕でいいんですね」
「実際は侍女長に任せる。お前だと何かあっても私に負担をかける解決をして、胃が更に痛くなるからな」
「僕から動いてませんよぅ。あちらからやって来るんです」
「それを受け流さないで殴りにいくだろうが」
「当り前じゃないですか。反省も後悔もいりません、心労した分だけ無様な姿を見せろですよ」
本当は死ぬまで働かせて少しは悪行の清算をさせたいが、地獄島の維持管理がなんちゃって中世で造るのは難しかった。前世では完成したかなぁ、本人たちには何のやりがいも見いだせない無限作業。アレストの方で鉱山が見つかったら重犯罪者向けと提案してみよう。
「そういえばデコルたちの所にGS改ありませんでした?」
「じぃーえす?」
「装飾過多の槍です」
「……ああ、一時ウチの屋敷に飾られていたあれか」
GS(今後改省略)を回収するのを伝え忘れていたの。
一応俺が所有権利持っているので探さないといけない。そして見つかったらスナオ君に再び一時下賜するのだ。
あの日、ジジイ二人に夜の街に連れて行かれた彼は一皮剥けたように訓練を頑張っているらしい。
是非とも前後でGSによってどんな反応をするのか楽しみなのである。あと、ダッシュ君が結果次第で闇堕ちする可能性があるか……無理無理。
「いや薄気味悪い槍があったと報告は来ていないな」
「う~ん、もしかすると副会長に回収されたのかも、停滞していた魔法の進展のきっかけになりそうなものでしたから」
そんな将来大問題になるものを置いてくるなとめっちゃ説教された。
◆◆◆◆◆◆
「あんなに怒らないでもいいと思いませんか」
「僕は部屋から出た途端にセルフィル様の涙がピタリと止まったことに引いてます」
書類を持ってきたダッシュ君のおかげで長兄の説教は終了した。
「泣き真似は泣いてこそですよ。まあ長兄にはバレていたし、ダッシュ君に見られながらでは長兄も気まずいから解放されたのでダッシュ君には感謝ですね」
「……」
「数時間後に来ればよかったみたいな顔をしない」
お仕事は余裕を持つくらいがいいけど、無駄な時間をすごすのは心のオッサンが許しませんよ。
「ダッシュ君はGSがどこにあるか知らないですか」
「え、魔法協会で捨ててきたんじゃないですか」
ボケたの? みたいな顔で見てくるな。身体も頭も十三歳だから衰えなんて少しも無いのだ!
「なぜか現場に無かったみたいなんですよね。装飾を外して売ってお小遣いにしたんでしょうか」
「あの臭さが染み付いている限り売れないと思いますけど」
ダッシュ君とGSの行方を話しながら愚王の私室に戻る。
「あれ? ドアが開いてますね」
「閉め忘れて出たんですねセルフィル様が」
グリエダさんは賊討伐の報告中で時間的に戻っては来ていないはずだ。後に出たのが俺だからそうなのかな。でもダッシュ君に言われるとムカつく。
「ダッシュ君、中を確認してください」
「嫌です。不審者がいるかもしれないじゃないですか!」
「僕の為に散ってください」
嫌がるダッシュ君を押すが、室内が安全なことはわかっている。曲がりなりにも王の私室にたどり着くには通路に配された衛士が立っているし、王城に散らばっているウチの変態どもが悪意のある者を俺に近づけるようなことはしないからだ。
つまり小生意気にやさぐれた部下への軽い嫌がらせである。
「いちにーのさんっ! ですよ」
「それはさんで入るの? さんの後に入るの? それ次第で押すタイミングがズレちゃうのですけど」
「押すなら絶対に巻き込みますよ」
仕方がないので決して背の高さで配置を決めたわけではないが、上にダッシュ君、下に俺でドアの開いた隙間から室内を覗いた。
「「……アレは何です(か)?」」
それは執務机の前で異様な存在がいた。
窓から入る日のせいで黒くハッキリと女性のシルエットを主張している。ただ、その輪郭に触手ような影が何本もうねうねと生えていた。
「ひっ」
「コラーッ! この部屋に女性がいたらグリエダさんに浮気だと疑われるでしょうがーっ!」
「え、そこなんですかぁっ!?」
なぜか怯えるダッシュ君を無視して俺はドアを勢いよく開けた。
浮気駄目、浮気を匂わせるようなことも駄目である。俺に嫉妬させて興奮する性癖はないのだ。
「うわっ」
「ぐへっ」
勢いよく開けたせいでダッシュ君がバランスを崩して俺の上に倒れこんできた。その勢いのまま室内にはいる。
「あたた。ダッシュ君早くどいてください。可愛い僕の中身の何かが押し出てきちゃう」
「あれ? 誰もいませんよ」
いいからっ! 心のオッサンがニュルリと出てくるのっ!
「ふぅ、なんだ見間違いでしたか」
槍ジジイ直伝脱獄術(根性)で抜け出して謎の輪郭女性の方を見るけど、そこには誰もいなかった。いないかわりに装飾過多の槍が執務机に立て掛けてあった。
「あ~、誰かが届けてくれたんですねGS」
「いやいやいや、そんな普通な感じで流さないで、さっきまで黒いお、お、お」
「おー?」
大カブトムシかな?
「真っ黒のっ! 女がいましたよねっ!」
「そんな耳元で叫ばなくても聞こえてますよ」
「なんで冷静なんですかっ!」
叫ぶダッシュ君をどーどーと落ち着かせる。
「ダッシュ君よく聞いてください。アレは窓から入り込む光の加減でGSの影がそう見えていただけです」
GSに近づいて倒れないように掴む。
「え、ああ、そうです……ね?」
「と、思い込んだほうが精神的に楽になりますよ」
「やっぱり見えてたぁっ!」
「学園の寮で見ているのにどうして騒ぐのかよくわかりませんね」
「受け入れているセルフィル様がおかしいんです」
「ダッシュ君、たかだか理解不能なものより人の方が怖いのですよ……」
「宰相様が時々される、室内なのに遠い場所を見るような表情をその年でするなんて何を経験したんですか」
え、やだ。外見ショタにオッサンが滲み出てるの!? しかし、あの宰相と同じ……。
「いいから手伝ってください。僕にはGSは重くて引き摺るんです」
「触るのも嫌です!」
拒否全開のダッシュ君。じりじりとドアの方向に後ずさっているので、次の言葉を間違えれば彼はドアから逃げ出すだろう。
「スナオ君の所に持って行くんですよ。あの晩を超えた彼にGSがどんな反応をするか見てみたいと思いませんか」
ダッシュ君はそそくさと近寄って来た。
女性関係では何よりも友達が先に進むのを妬むのが青少年である。将来が有望が確定していてもそういうところはまだまだ若い。ちなみに将来は有望でも選択肢は数本しかないのが彼の現状だ。ドロドロの人間関係に沈みたくなければ、俺の下にいるのが一番なのだけど、そこら辺は本人次第。
「噛みませんよね?」
「槍が噛むはずはないでしょう。ほら、しっかり持ってください。僕の握力がそろそろ限界です」
俺の腕がプルプルと震え始めているのに、ダッシュ君は汚いものを摘まむように指を出すだけだ。
「ん?」
しっかり持つようダッシュ君に促していると、GSに変化が起きた。
刀身に一切の照らしも無い黒いナニかが滲み出て、それは読みにくいが文字を表していた。
「た……だ……い……ま? ふぅむ、これはおかえりと言うべきなのか。こら、ダッシュ君ちゃんと持って!」
どうやらGSは帰還の挨拶をしたらしいと考えていたら、執務机から離したGSの重みが俺に向けてかかってきた。
俺だけではその重みを支えることが出来ない。
慌ててダッシュ君に声を掛けると、彼は膝から崩れ落ち正座になって失神していた。
「なに満足した顔で逝っているのぉーっ!? あ、」
ツッコミを入れたせいで、身体のバランスが崩れて後ろに倒れこむ俺。
そして俺に重なるように倒れてくるGS。
「ふぎゃっ!」
強烈な痛みがおでこに走り俺も気を失った。
◆◆◆◆
「ふひゃっ!」
ビクッとして目を開いた。
\(゜ロ\)ココハドコ? (/ロ゜)/アタシハダアレ? パニッくってるパニッくっているのよほーっ!
「ん、目が覚めたかい」
「グリエダさん?」
はい、意識がはっきりしました。
美女の寝起きトロン顔が目の前にあれば誰でも起きます。
「どうして僕はグリエダさんと一緒にベッドで寝ているのでしょうか」
「それは私が報告をして戻ったら君がベッドで寝ていたから一緒に眠ったんだよ」
ふむどうやらダッシュ君が俺をベッドに移動させてくれたらしい。槍に押し倒されて床で気絶している姿を婚約者に見られるなんて恥ずかしいからグッジョブだダッシュ君。3手下ポイントをあげよう。
「ダッシュ君が執務室の床でのびて気絶しているのを見た時は襲撃されたかと思ったが、セルフィルはベッドで気持ちよさそうに寝ていたからホッとしたね」
「……」
おやぁ?
「あのダッシュ君は?」
「さすがにそのままに出来ないから衛士を呼んで自室に連れて行ってもらったよ」
「あの……グリエダさんが僕をベッドに運んでくれたんですよね?」
お願い聞き間違いであってほしい。
「いや気持ちよさそうにベッドで寝てたね」
「ではダッシュ君の傍に何か落ちていませんでした。室内にあって違和感ありまくりの長くてギラギラ光っているものとか」
「? よくわからないが違和感のあったものは、膝を曲げ仰向けで頭の上に両腕を伸ばして倒れていたダッシュ君だけだな」
なにプラ〇ーンごっこしてんのダッシュ君。
そっかー無かったのかGS。
何か黒いのがニュルリと生えて俺をベッドに運び、ダッシュ君を面白気絶ポーズにしたのかな。
んで、グリエダさんが戻って来るまでにどこかに消えたのか。まあ、実際はウチの使用人の誰かだと思うけど。
「そういえば寝ているときから気になっていたんだが、そのおでこの押し付けたような跡はどうしたんだい?」
「えっ!?」
「おでこの中心に目を縦にしたような形であるよ」
「はうあっ!」
慌ててつるつる美肌の額を触ると眉間の上あたりにへこんだ感触があった。
そういえば倒れてくるGSの柄に宝石が埋め込まれていたけどそれが当たったのだろう。
心のオッサンがグフッと呻いて倒れた。
第三の目が開いた漫画を読んだ男の子で額に書いたり爪で跡を付けたりしなかっただろうか、俺は前世でした。そして来世の今でも精神を抉ってくる黒歴史である。
「ふむ、どうして可愛いおでこにそんな跡が付いたのかな」
「あ、いや、これは、その」
グリエダさんは驚いて確認したのを何かを隠して動揺したと思ったのか、ニヤニヤと楽しそうに俺を追い詰めてくる。
さすがにGSからニュルリと手足が生えて介抱してくれたなんて言えない。言ったら頭がおかしいのか認定されちゃうのっ!
◆◆◆◆
これは後で聞いたのだが。
使用人たちは何もしていなかった。
そして行方不明のGSは数日後、ダッシュ君とスナオ君の共同部屋に見つかったそうな。
人が駆け付けた時、叫ぶダッシュ君に戻ってきた……と呟く死んだ目のスナオ君がいたらしい。
あまりにも被害が酷いので鎖をかけて騎士団預かりになり、そのうち持ち主の俺に引き渡されることになった。
預かりになったのはGSの効能を信じない騎士団員が返却を渋ったからだ。被害がある前に返してもらいたい。早く調査してみたいのだ。
◆◆◆◆
さらに後で聞いたのだが。
デコルと愉快な取り巻きたちがやたら槍に怯えるらしい。
腰が砕け、穴という穴から漏れ出しながらコカーンを押さえて呟くらしい。
『槍が槍が突き刺しに来る……』と
兵士の標準装備は槍なので、最初は現場が酷いことになったそうな。
何をしたと苦情が王城から何通も届いたけれど、俺は置いただけで何もしていないのに酷い風評被害である。
GSはハイブルク邸で再び飾ってみても何もおきず。装飾過多が屋敷に合わないと取り外されて、前世の記憶やいろんな計画を立てる俺の資料部屋に置くことになった。
調べても何もわからなかったが、変態執事が部屋の近くに来ると嫌そうに顔をしかめるので変態男性専用の蚊取り線香のようなものかもしれない。
今後もパワーアップする機会があれば投入しよう。
次は二人も置いてくるつもりだ。
ショタ「ふっふっふっ」
覇王様「何か良いことがあったのかい」
ショタ「はい、ダッシュ君の育成を宰相たちに取られたので、新しいものを育成しようかと思いまして。やはり成長する武器って格好いいですよね!」
覇王様「?武器は手加減しないとすぐ壊れる消耗品だよ」
ショタ「おおう。予想外のお答え」
GS改(二(ショタは知らない))設定更新
魔法使いから魔力と精力を削り取って、ニュルリと真っ黒な手足を出せるようになった。
装備者はスナオ君だが、持ち主はショタなので先に帰還の挨拶をしに行ったら大ごとに(;・д・)
そのままだと覇王様のご帰還時にへし折られると考え、ニュルリと手足を生やしてショタをベッドに寝かした。
その後、スナオの所に戻ろうしていたら、のじゃ姫に見つかっで逃亡劇をひろげる。数日後になったのはそのため。
これを信じるか信じないかは読者様次第です(っ´ω`c)
お久しぶりです<(_ _)>
奇人変人、奇具変具を書くのが大好きな筆者は生きておりますよー!(>_<)
いや、大雑把な構成でほぼ一日で三万文字も書くものではないです(;´Д`)
その後の思考力ががた落ちで、書きたいものは山ほどあるのに、一行も書けない日々でした。
現在、ぼちぼち集中力が戻ってきたかな?という感じです(^^;)
今回の前半長兄でひと月半、後半GSが二日で書き上げております。GSが四千文字ぐらい書いているのかな?
無理すんなよ筆者ーっ!(`Д´)
自分だよこんちくしょう!(*≧Δ≦)
まあ無理しないくらいで投稿復帰したいと思っております。今後とも見捨てずお読みいただければ幸いです<(_ _)>
最近の癒し
コミカライズ版を原作者で先に見られて楽しいです(*´∀`*)
ご感想、評価、ブックマーク、いいね、してもらえると頑張れます。
ご感想ではネタバレ返信をすることもしばしばあります(;・д・)
コミカライズ版のことでも答えられる範囲は返事しますよ(´▽`)ノ
待たれる間にもう一つの拙作でもお読みいたたければ幸いです。
【釣り合う二人はバカップル】
ノクタ版
https://novel18.syosetu.com/n1277hy/
カクヨム版
https://kakuyomu.jp/works/16817139556484842815
ノクタ版はエチエチが入ります。ノーマル版はカクヨム版を。
ただのバカップルを書いていたのに、人前で読むと大変に危険物と化した物語です。
ショタの前世の親友、魔王様も少し出ます。
笑わずに読めたら是非ともご感想を!
君は雨乞いワールドから逃れられるか!(*´∀`*)ノ









