エピローグ
終わりっ!(´▽`)ノ
あれから数日が経った。
ダッシュ君は仮病が判明して【統合中枢詰め込み部屋】に連れ込まれた。そしていまだにその姿を見ていない……。たまに書類に混ざって救助の紙が届くが、呪いの手紙と思って捨てている。
スナオ君は何も変わってなかった。ただ俺は立派な騎士になるっ! と張り切っていたから、改造計画を修正するつもりだ。目指せ細マッチョ。
ロンブル翁とエイプ子爵は元の仕事に戻って行った。ジジイたちとの日々は面白かったので、その内一緒に遊びに行きたい。……はっ! 前世の分気持ちがジジイ寄りになってるっ!?
「アレストの兵の皆さんが帰還しましたね」
「ああ、ようやく帰ってきたね。もう一日ぐらい早く帰ってくると思ってたんだが、後始末で遅れたのかな」
「予定の二日前に帰って来てますから凄いと思いますけどね」
そして俺たちは長い間世話になった愚王の私室を片付けながら話していた。
どうしてそんなことをしているかというと、魔法協会から戻ってきた翌日早朝、ショタ成分が不足していたグリエダさんにくっつかれてヌイグルミ生活を満喫していたら、来訪者がやって来た。
「出禁だ」
入室早々にそう言ってきたのは宰相だった。
命令口調なのになぜか土下座というわからない状況に説明を求めると。
「お前がやって来てから書類作業が終わらないのだ。それどころか机の上には書類が増えていく現象に私たちは恐怖している」
「いやいや、それを僕に言われても」
「わかっている。お前はどちらかというと被害者側だ」
「はっきり被害者と言ってほしかった」
「だが、お前にはトラブルが寄って来る。そして解決した時には予想の数倍の後始末の仕事になっているのだ」
「……」
「私のDOGEZAで王城から出て行ってくれるなら何度でもしよう。裸になれと言うなら城内を歩き回ってもいい。だから出禁に頷いてくれ。あの部屋いる者たちにも帰りたい屋敷があるのだ……」
悲哀のこもる声で言った。宰相は懐から一枚の紙を取り出した。
「あの時の君は宰相への嫌がらせの為に断ると思ったよ」
「僕だって赤い血が流れている人の子ですよ。国家の上層部全員の署名がされて王妃様が認めた嘆願書を見せられたら、さすがに心が痛むので頷くしかできませんよ」
「嘆願書で心が痛んで、宰相のDOGEZAには動かなかったんだね」
土下座はされる側にとって価値ある人でないと効果は薄いのです。宰相なんかに同情なんて湧かないからねっ!
なので俺とセットのグリエダさんも城から出ることになって、私物を片付け中なのである。
「片付けていると自分たちのものが増えてますね」
「結構な時間ここで過ごしたからね」
一応言っておこう。
拙僧はまだ十四歳也。そういうことは駄目っ! 絶対に駄目なのっ!
お前は抱き枕になった時の心のオッサンが自分の首を絞めて気絶した数を知っているかっ!
「そういえば宰相に騎士バーニンガーの事を聞かれたんだが」
「?」
誰? ……ハンバーガーか。
「どんなことを聞かれたんですか」
「送られてくる報告書が奇麗に纏められていて気になったらしい。現場の問題もそつなくこなし、急な予定の変更にもあらかじめ作成していたかのように対応してくれたと。ウチの爺様たちが孫やひ孫の婿にと大変気に入られたのも伝えたな」
なにそのスーパーマン。
「あー、僕ハイブルク家の臣下にはあまり手を出してないんですよ。そこまで優秀ですと長兄のお気に入りかもしれませんね」
「ふむ。エイプの爺が紹介しろと書類にまで書いて伝えてくるんだが、勧誘は無理か」
「本人が是非にと言えば、長兄も許可すると思いますよ」
無理に引き留めてもパフォーマンスが落ちるだけだ。騎士ハンバーガーよ、無理なら長兄に泣きつけ、最終手段はヘルママだ。
騎士ハンバーガーであの日の夜のあと魔法協会がどうなったかを思い出した。
まず魔法使いの派遣は今まで通り、ただし引き上げるなどの脅迫行為をした場合けしかけることになった。何を? と誰に聞いても顔を逸らすので、騎士団が見せしめに何人か処刑するとか残酷なことをするのだろう。
副会長は副会長のままだった。裏で何かが働いたに違ない。
そして会長はトーチョーが就任した。就任式のとき、そのデコはキラリと育毛剤の付けすぎで光っていたそうな。
元会長のデコルと取り巻きたちは……翌日救出された。激臭に嘔吐物と排泄物にまみれた彼らは水魔法で徹底的に洗い流されても酷い状態だった。
当初は王城の牢に繋ぐ手はずだったが、あまりにも臭過ぎて激臭の部屋の近くある部屋に留め置かれた。デコルは廃人のようになってぶつぶつ呟き、取り巻きたちは怪我で唸りながら自分から漂う臭いで吐いているそうな。
臭いが取れて動けるようになっても、彼らは実験素材になることが決まった。なぜかハイブルク公爵領でやらかした時の資料が書類に紛れていたんだよね。長兄かヘルママか。硝石作成だけは失敗すると追記しておいた。
「よしあとはそれぞれの屋敷に送ってもらうように手配してもらうだけか」
「ここら辺は処分してもらっても構わないんですけどね」
俺が指さしたのは執事服、メイド服、セーラー服、体操着などが積まれていた。持ってきたのはメイド服だけなので、あとは変態執事と三人メイドが持ってきたか縫製したかだろう。
「何を言っているんだい。処分したら見れなくなるだろう」
「……」
少しだけ婚約者が怖いです。
二人で部屋を出る。
「最初はあの愚王の私室で嫌だと思っていましたけど、居心地良かったですね」
「あれでも一応王だからな。最高級品のいくつか貰っていきたいほどだ」
今度王城に来た時には改装される部屋に感謝してドアを閉めた。
「少し遠回りしてもいいだろうか」
グリエダさんが指さしながら聞いてきた。
同意して一緒に歩く。
着いたのは中庭、それも王族が許可しないと入れない庭園だ。
そこには花冠を掲げているのじゃ姫と庭園の世話しているゼンーラ、そしてメイド服姿のチェルシーがいた。
音は届いてこない。
「あの花冠はチェルシーが作ったようだ」
ふっと笑うグリエダさん。聞こえているのですか?
のじゃ姫は掲げていた花冠を被り、足元に置いてあった歪な花冠を取る。そしてチェルシーの頭に乗せた。
「楽しそうですね」
「ああ」
チェルシーは臨時の王女付きメイドになった。
魔法協会から王城に戻ると門の前にマトモハリーが立っていた。
チェルシーが馬車から下りるとマトモハリーは駆け寄って彼女を抱きしめた。
一日ぐらいしか一緒にいなかったけれど、助けを願い戻ってきたことを喜べるほどマトモハリーは人の良い子なのだ。
ズリズリ降りて来たダッシュ君を見たら舌打ちして、書類が溜まってますから早く仕事をしなさいと容赦が無かった。
人は多種多様な面を持っているのだ。
チェルシーはしばらくは大丈夫だと思う。
のじゃ姫の傍にいれば忙しくて死ぬなんて考える暇なんてないはずだ。
「行こうか」
満足したのかグリエダさんは歩き始めた。
そのうちチェルシーは俺に故郷の場所を教えてもらいに来るだろう。常に彼女の中では死を望む声が響いているはずだから。
その時が来ないことを願い背を向けた。
「ああああーっ! いい天気です!」
「城内でも見れただろう?」
王城から出た俺たちを快晴が迎えてくれた。
「僕はほとんど城内に拘束されてたので、解放された格別なんです!」
娑婆の空気は美味いのだ。
「んん~、いい天気ですからお昼ご飯は街で食べ歩きでもしませんか」
「それはいいね。今日は出店も多く出ているだろうね」
気分で提案したけど、グリエダさんは乗ってくれる。
「ん」
待機していた馬車に歩くと告げたあと、グリエダさんは手を俺に向けて差し出した。
恥ずかしがらずに己の好きなことを実行する自由な覇王様である。
フッ、俺もそのくらいでは恥ずかしくないっ! 抱き枕で寝ることに比べればなっ!
グリエダさんの手に俺の手を重ねると、恥ずかしそうにして握ってくれた。
キュンッ
それは卑怯ではないですか? 覇王様は恋愛も天然で最強のようだ。
二人で城門をくぐる。
出禁なのでしばらくはここにも来ることもないだろう。
しかし、寂しくもなんともない。書類仕事と問題ごとばかりの場所だったからね。
さあっ! これから俺とグリエダさんのドキドキハラハラ学園ラブコメがはじまるのだっ!
娑婆最高―っ!
「ん?」
「どうしたんだい?」
「いえ、ポケットに紙が入ってまして」
取り出して広げる。
『そのうちご飯を狩りに行くのじゃっ!』
「「……」」
うん、食べに行くの間違いじゃないかな。
ショタ「これからミステリーな学園生活が始まります」
覇王様「そんなのより普通にセルフィルと楽しみたいな」
即変ショタ「普通のラブコメ学園が始まります!」
第三章終了ー!(*´∀`*)ノ
キャラクターに試された章でした。
ヒロインではないチェルシーをどこまで前に出していいのか、彼女の魔法をどう扱えばいいのか。
結果、彼女はただの村娘で、ショタは熱魔法を忘れることにしました。
たぶんショタは会わない限りチェルシーを思い出しません。なるべく死んで欲しくはないからです。
のじゃ姫は何も知りません。知らなくても癒せるならいいんです。
エピローグは王城からの卒業です。そしてようやく学園生活が始まるのです(≧∀≦)
ダッシュ?うん、仕事がおわれば?(;・д・)
それでは長い期間、第三章をお読みいただいきありがとうございました!(●´∀`●)









