エピローグ前(全てを持っていく覇王様)
あと一話!
死にそうだ!(o゜▽゜)o
風下でもないのに背後から這い寄って来る感覚が抜けず、建物のロビーまで走り抜けた。
デコルのいた部屋のある区画はしばらく封鎖することになった。
どうか餓死する前に救助してほしい。
修繕費はどこに出そうか副会長が呟いたけど聞こえないふりをした。
「久しぶりに全力で走れました」
エイプ子爵は動く身体に大満足のご様子。軋まない身体って良いよね!
「あのいいんですか?」
スナオ君は聞いてくるけど何のことわからないので大丈夫大丈夫と返しておく。いったいなんのことだろう?
先に逃げていたロンブル翁はどこから調達したのか瓶のワインをラッパ飲みしていた。あとで侍女長に職務怠慢と報告しようと思う。
「ダッシュ君大丈夫ですか~?」
「……無理です。おウチに返してください」
四つん這いでダウン中のダッシュ君。さすがに可哀想なので宰相には伝えておこう。でも帰る場所は王城だ。逃しはせん。
最後の一人、チェルシーだが、落ち着いた顔で躁なのか鬱なのかよくわからない。下手に手を出すと一気に鬱に傾くこともあるので、何の悪意も無いのじゃ姫に任せようと思う。偽ショタよりも幼女の無邪気さが薬になるだろう。
「よしっ! これで僕の案件の大半は終了ですね! さあお城に凱旋して徹夜中の宰相を驚かせましょうか!」
仕事終わりは楽しいものだ。前世はビールだったが、今は風呂上がりの牛乳が欲しい。三人メイドなら俺の行動を予測して風呂を入れているはずっ!
そうして俺は副会長を残して、ジジイとジジイと細マッチョ(改造中)と嘔吐未満とうっかり鬱まっしぐら娘を引き連れ魔法協会の玄関の扉を開けた。
「やあ楽しかったかい」
おやあ?
一度閉め、そして開けた。
「どうして閉めたんだい」
もう一度閉め
「おや? 姫様ではないですか。お早いおかえりで」
「ああ、先ほどな」
閉める前にエイプ子爵に外を見られて止まってしまった。
どうやら幻覚ではないらしい。
魔法協会の玄関前に、白い巨馬を背に我が婚約者グリエダ=アレスト女辺境伯が立っていた。
「えーと、おかえりなさい?」
「うん、ただいま。でもどうして疑問形なんだい?」
小首を傾げる姿も可愛いグリエダさん。
「いえ、僕の予想より二日ほどお早いご帰還なので幻かなと思いまして」
あと最近の徹夜ハイと、最終兵器自家製シュールストレミング改十三号の匂いをいつの間にか嗅いでしまった幻覚かと思ったのは秘密にしよう。
「君のところの騎士バーニンガーが優秀でね。効率よく討伐出来たから私だけ帰って来たんだ」
やばいぜ騎士バーニンガーよ。お前予定の半分の日にちで覇王様御帰宅とかどんなスケジュールを立てたんだよ。
「なるほど……。私の予想を一日超える働きをしたのはバーニンガーという騎士なのですね」
緊急通信っ! 緊急通信っ! 騎士ハンバーガーよ、お前アレストのジジイにロックオンされたぞっ! 交渉は長兄に、だってハンバーガーなんて名前の騎士しらないもん。
あと予想が俺より一日早い!? アレストの爺様たちは機械の身体で出来ているの?
「まあいろいろと聞きたいことはあるが、んっ」
グリエダさんは笑顔で両腕を軽く広げてフ〇ーザ様のポーズをとられた。
いや、わかるよわかっているよ。
でも、観衆がいる中でそれは……あ、別に平気だ。
とてとてと歩いてポスンとグリエダさんの腕の中に収まりました。
「ふふふ」
笑みがこぼれるくらい嬉しそうなグリエダさん。俺は柔いのやらなんやらで、心のオッサンが満面の笑みで飛び込もうとしている、草原に。
「一度王城に戻った方がいいだろうが、そちらのお嬢さんはどこのどなたかな」
ひとしきり愛でて満足されたグリエダさんはチェルシーにロックオン。幼女にも嫉妬する覇王様はボロボロのメイド服をきた幸薄そうな村娘も逃さないらしい。
「あ、え、う……」
「彼女は緊張しているようなので私が話しましょう」
覇王様のジェラシーの気に喋れなくなったチェルシーの代わりにエイプ子爵が話し出す。出来るジジイは格好いいね! 馬車の中に置いていた酒瓶を取り出しているウチの石投げジジイとは大違いだ。
「……」
チェルシーの壮絶な人生を聞いたグリエダさんは俺を降ろして彼女に近寄った。
「チェルシーといったか」
「は、は、はい……」
チェルシーは蚊の鳴くような返事を返すのでいっぱいいっぱいのようだ。
グリエダさんはさらに近づき、ガバッとチェルシーを抱きしめた。
「? ? ?」
「よくぞ生きていてくれた」
感極まっている様子のグリエダさんに抱きしめられて絶賛パニックのチェルシー。
ナニコレ?
「アレストはよく賊に村を襲われていまして、姫様は討伐に向かうことが多かったのでチェルシーさんのような身の上には弱いのですよ」
エイプ子爵が近づいて来てこっそり教えてくれた。
グリエダさんはしばらく抱きしめたあと、肩を掴んでチェルシーの顔をまっすぐに見た。
「何か困ったことがあったら、アレストの家名を出せ。私がお前の後援をしよう。わかったな」
「は、はひぃ」
あ、墜ちた。
前世の知識がある俺にはチェルシーの目にハートのフィルターが掛かっているのが見えるぞっ!
よしっ! と軽くチェルシーの肩を叩いてグリエダさんは颯爽と戻って来て俺を抱きしめた。
やはりイケメンヅカは女性に人気があるのかなぁ。学園でもグリエダさんは男性パートで踊ってたし。
チェルシーさん、どうか嫉妬の視線を送らないでほしい。
あんなに頑張ったのに恋に負けるとは……。延命になるならしょうがないけど納得いかないっ!
それから夜も遅いので王城に戻ることになった。
「婚約者様が来たら儂はお役御免だな。よっしゃ飲みに行こうぜ!」
「いいですな。それでは姫様セルフィル様をお願いします」
ただしジジイ二人は職務放棄して飲みに出かけた。
「お、お前も来い来い」
「え、いや、俺は」
「馬車に男二人と女性一人では気まずいでしょう。ダッシュ君は気分が悪いので手を出す余裕も無いですし。君がこちらに乗れば万事解決なのです」
スナオ君は連れ出されて夜の街にデビューすることになった。
そしてダッシュ君は恨みがましい視線を遠ざかるスナオ君に向けていた。元気はありそうなので【統合中枢詰め込み部屋】に詰め込んでおこう。
チェルシーよ。覇王様の前の席は俺専用だ諦めよ。
「それで城壁を崩せるなら崩して見せろと挑発してきてね」
「え、城壁があるような都市は討伐箇所にありませんでしたよね?」
「イラッとしたからランドン爺の槍で崩してやったよ」
「待ってください。え、前に言っていた槍で城壁崩すの本当なんですか!?」
「はははは、すまないがまた槍を一本貰えないかな」
「あげますけど、質問に答えてくださいー!」
「さっきも最初は王城に戻ったのだが……」
「あーっ! あーっ! 聞こえませんーっ!」
そして帰りの馬上で俺は覇王様とイチャイチャしながら王城に帰っ……戻ったのであった。
覇王様「戻って来たよ」
ショタ「わーい♪\(^o^)/」
すべり込みで帰って来たぞ覇王様!(´▽`)ノ
そしてかっ攫っていく覇王様。チェルシーの心を奪いましたね(;・д・)
さて、次回がこの章エピローグです。一章終わらせるのに時間がかかり申し訳ございませんでしたm(_ _)m
これからも飽きずに読んでいただけると筆者はウネウネと喜び悶えます(^^)
はっ!何終わった感じを出しているんだ!書いてきまーす(゜∀゜ゞ)









